副業解禁のトレンドと政府の動きについて。解禁の注意点とは

これまで日本は副業に関して否定的で、多くの企業が副業を禁止していました。ところが近年政府も副業を解禁する動きになってきており、それに先がけて大企業ではすでに社員に対して副業を認めるところも出てきています。なぜ、副業解禁の背景や、副業解禁による政府の動き、副業解禁のメリット・デメリットなどを説明していきます。

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副業解禁の流れ

将来の収入不安

かつては有名大学に入り、就職活動をして一流企業に就職すれば生涯安心して暮らしていけるだけの賃金が約束されていた時代もありましたが、今は大きく様変わりしています。『終身雇用制度の崩壊』というキーワードを耳にすることがあるように、もはや就職さえすれば、後の人生は安定しているとも言い切れないのです。

さらに、企業に就職できず派遣会社に登録をし、派遣社員として働かざるを得ないようになると収入は目減りします。中には、将来のことで不安になり、結婚にさえも踏み切れないという人が大勢いることも事実です。しかし、副業が解禁となり、本来の収入の他に収入を得ることが出来れば収入面でも大きくプラスになるため、将来の不安もかなり解消されることになります。

現役時代だけでなく、老後に関しても不安が募っています。日本は急速に高齢化社会への道を歩んでおり、今後定年後支払われる年金の受給開始年齢が今よりも遅くなったり受給額が少なくなることが懸念されています。老後の生活を安定させるという意味でも副業解禁は多くの人にとって将来の不安を解消してくれる出来事の一つでしょう。

副業の多様化

今まで副業と言えば本業の他にアルバイトや日雇い労働をして収入を増やすといった肉体労働的なものが主流でした。肉体労働の副業は体の疲労が溜まる上に睡眠時間も削られることとなるため、本業にも支障をきたす可能性があると懸念されていたのが政府や企業が副業解禁に踏み切れなかった大きな理由の一つです。しかし、今はインターネットの普及によって副業は多様化しています。

アルバイトなどで勤め先まで出勤しなくてもパソコンか携帯電話があれば自宅で稼ぐことができる仕事は数多くあります。例えば、オークションなどで商品を売り買いすれば拘束時間もそれほど多くありませんし、肉体労働と比較すると身体的な負担もずっと少ないでしょう。このように働き方が今までとは大きく様変わりしたのも副業解禁に踏み切った大きな原因の一つと言えるでしょう。

働き方改革の方針

副業解禁に政府が踏み切った背景には、政府側も将来の日本に不安を抱いているからという側面があります。先ほども解説した通り、日本は少子高齢化への道を歩んでいます。少子高齢化になれば働き盛りの世代が減少します。

働き盛りの世代が減少することによって、一人の高齢者を支える若い人が少なく成り、年金が確保できなくなる恐れがあります。その上、働き盛りの世代が少なくなるということは収入を得る人も少なくなるということになり、結果的に政府に入る税金の収入も大きく減少します。そこで副業を解禁し、本業以外での収入を多くの人に得てもらうことによって税収を増やそうというのが大きな狙いです。

政府は2017年より働き方改革の方針の一つとして、企業に対して副業を認めていくように推進する考えを示しています。現在は調整段階ですが今後この方針が推し進められれば実際に多くの企業で副業が認められるようになるでしょう。

副業解禁をめぐる政府の動き

今ままで副業が禁止されていた背景を説明していきましたが、副業解禁に向けての動きはどのような流れでおこなわれていったのでしょうか。以下では、解禁への政府の動きを解説いたします。

旗振り役は厚生労働省

今まで企業が基本的に副業を廃止していたのにはっ厚生労働省が定めているモデル就業規則の第11条に許可なく他の会社に従事しないことと記載されていたためです。

ところが、この就業規則を定めた厚生労働省が2017年に第11条の文面から許可なく他の会社に従事しない事という文面を削除し、新たに副業を認める内容に改正する案を提示しました。これによって事前に届け出をおこなうことを前提に、労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができるといった文面に改められます。つまりこの文面によって国が全面的に副業を認める形になった、ということになります。

モデル就業規則

モデル就業規則とは、企業がそれぞれ作成する就業規則の土台になるものです。就業規則は基本的に会社が独自に作成するものとは言え、あまりに自由に作成させていては労働基準法などから大きく逸脱した就業規則を作成される可能性があります。

大手企業も続々解禁

政府のモデル就業規則の改定による副業解禁の動きに伴い、すでに大手企業では続々と副業を解禁するところが出てきています。以下では解禁した企業などを紹介していきます。

注目の的になったサイボウズ社長の言葉

副業解禁の大きなきっかけになったものの一つとして、サイボウズという企業の社長である青野慶久氏の言葉があります。青野氏は自社社員の副業を社長自ら認め、厚生労働省が2016年に開催した「働き方の未来2035」という会合において、「企業の副業禁止規定を禁止しよう」と述べ、同時にインターネット上で副業解禁を呼び掛けたことによって日本における副業解禁の立役者として大いに注目を集めるようになりました。

副業解禁の歴史 副業を解禁した企業を時系列で紹介

政府の働き方改革の話が元上がるよりもずっと前、2012年から先ほど紹介したサイボウズは自社社員の副業を容認しています。しかも、他の副業を認めている企業が事前の申請を条件としている中で、サイボウズは副業をする際に事前の申請が必要ないという独自の方向性を打ち出しています。

また、製薬会社であるロート製薬も政府が働き方改革を推進する前から副業を解禁している大手企業の一つで、2016年から社員が週末などに副業をすることを認める「社外チャレンジワーク制度」を導入しています。対象は入社して3年目以降の社員で終業時間が居や休日を使うなど、本業に支障をきたさないことが条件です。

リクルートホールディングスも早くからグループも含めて副業を容認している企業の一つです。会社本業と競合しない事、事前に申請をすることという条件付きではありますが副業を容認しており、在職中に副業で別会社を立ち上げる事さえ認めています。

リクルートホールディングスでは優秀な人材は副業を抱えていて当たり前だと感じているのです。そして、政府の働き方改革の推進によって多くの大企業が副業を容認するようになっています。

現在の副業事情

実際に日本国内で副業を認めている企業の割合や、実際に副業をしている人の割合はどのくらいなのか、副業事情について解説いたします。

日本で副業を許可・推進している企業の割合

帝国データバンクが所有している企業データーから、ランダムに企業を選んで質問したところ、副業を容認している企業は全体の2割程度という結果になっています。

職種別の内訳を見ていくと、建設業が最も多く、次いでサービス業や製造業といった職種でも容認する割合が多くなっています。地域別で見ていくと、北海道と沖縄が最も多く、次いで首都圏の企業で副業を容認する割合が多くなっているという結果になりました。

日本で何らかの形で副業を実施している人の割合

では、実際に副業を何らかの形で実施している人の割合はどれくらいなのでしょうか。NPO法人がおこなったアンケート調査によると、大企業に勤めている社員で実際に副業をしている人は全体の17パーセント近くとなっています。

正社員としてすでにフルタイムで働いている人の中で17パーセント近くの人が副業を実際にしていると考えると、かなり多い数字だと考えられます。同じフロアで働いている人の中に1人か2人は副業をしている人が居ると考えてもおかしくないほどの数字です。また、同じアンケート調査で1年以内に副業をしてみたいと考えている人は40パーセント以上にものぼっています。

アメリカの副業事情

一方、アメリカの副業事情を確認すると、アメリカではそもそも終業時間外に別の仕事に従事することを禁止するという規則自体がそもそも存在しません。ですから、国の方針で考えればどの企業に勤めていても副業を自由におこなってよいということになっています。

副業をおこなって良いのは一般的なサラリーマンだけではありません。公務員も許可を取れば自由に副業することが可能です。

副業解禁のメリット

副業の事情などは理解できましたが、実際に副業を解禁することによって、どのようなメリットが得られるのでしょうか。以下では、どのようなメリットがあるのかを紹介していきます。

採用面での利点

副業を解禁することによって、これまで働きたくても働けなかった企業に多くの人が本業以外の時間を利用して働けるようになります。企業側としては、より優秀な人材を確保しやすいと言ったメリットがあります。

優秀な人材は多くの企業から引き合いの声がかかるようになり、多くの企業で活躍することによって企業の成長が加速していくこととなります。また、限定的な時間であっても人材を確保できるので企業の人材不足を補えるという面でも副業解禁は大きなメリットが期待できます。

従業員の成長

1つの企業にとどまっていると、その企業でのスキルや技術しか身につけることができませんが、副業を解禁し、本業以外の仕事に従事することによって今まで学ぶことができなかった新しいスキルを学ぶことができます。新しいスキルを学ぶことによって従業員は間違いなくそれまでよりも大きく成長します。

そして、自分の企業に戻ってきたときに副業によって培ってきたスキルを活かすことが出来れば企業にとって大きな成果を生み出す元となります。また、副業を解禁することによって自分の会社の優秀な人材が他の会社に流れていかないというメリットもあります。大手企業が相次いで副業を容認する方向に動き出しているのは、人材を成長させることができるというメリットを狙ったことによる面が大きいです。

企業イメージの利点

また、副業が解禁されることに伴って現在従事している社員だけではなく、これから就職しようと考えている学生の間でも副業を容認している企業に就職しようという動きがこれからますます加速して行くことは間違いありません。

優秀な人材を確保するという側面もありますが、自分の企業イメージを上げるために副業を容認する企業がこれからどんどん増えていくでしょう。副業容認の波に乗り遅れると人材を確保すること自体が難しくなる時代が近いうちにやってくるかもしれません。

副業解禁のデメリット・注意点

しかし、副業解禁はメリットだけではなく、デメリットもあります。安易に副業を容認するとデメリットによって大きなトラブルを招く可能性もあります。以下は、公務員が副業をやるうえでのデメリットを紹介します。

労務管理

副業をするということはどのような仕事であっても単純に労働時間が増えます。労働時間が増えるということは少なからず身体的な負担を負う事となります。今までは自分の会社での健康状態だけを確認していればよかったのですが、副業は基本的に終業時間外での業務になるので会社の目が行き届きません。

会社側は副業に関しては労務管理をおこなうことができないため、副業をする際の体調面は自己管理を徹底する必要があります。無理な副業をすると過労による身体的なトラブルを招くこととなります。万が一過労によって重大な病気やケガをした場合は本業によるものとなるのか、副業によるものとなるのかの判断も難しいです。

また、残業の問題もあります。企業では8時間労働が基準となっていて、それ以降は残業となり、残業代を支払わなければいけません。一例として、ある企業が副業を認め、そこに従事している社員が朝6時から8時まで副業をし、9時から6時まで本業で仕事をしたとすると、4時以降は残業扱いとなります。現在ではこの場合は残業代を支払わないという暗黙のルールが成り立っていますが、今後世間的に副業が認められれば従業員から残業代を請求される可能性もゼロではありません。

情報漏洩

企業側が懸念しなければいけないデメリットとしてもう一つ、情報の漏洩があります。情報の漏洩というのはなにも企業の機密事項だけではありません。従業員が持っているスキルを全く別の人に伝達するのも情報漏洩です。

そもそも副業をしていなくても会社内の情報や社員のスキルや情報というのは口外してはいけないという事となっていますが、副業をしてより多くの人に接することによって情報が漏洩する機会が更に増えることは否定できません。

情報の漏洩を防ぐためには、自分の会社と同じような仕事をしている企業には勤めさせないようにし、副業をする際にはどのような仕事をするのか企業側にしっかりと通達するなど、副業をおこなっている人の副業に関する基本的な情報はしっかりと握っておく必要があります。

公務員の副業解禁

政府の働き方改革は、一般の社会人だけが対象ではありません。公務員も対象となっており、副業の容認によって一般的な社会人よりもさらに副業の範囲が狭かった公務員も副業の幅が大幅に広がることになります。一般的な社会人とは何が違うのでしょうか。

これまで問題なかった副業

公務員の副業に関しては一般的な会社員とは違って法律で禁止されていたため、副業に関してはほぼおこなうことは不可能でした。これまで公務員がおこなうことができた副業はたった4つです。

まずは家業の手伝いです、実家が何かお店をやっていて、繁忙期限定で本業に支障がない範囲で家業を手伝い、収入を得ることは認められています。

2つ目は不動産賃貸業です。不動産賃貸業とは、賃貸マンションなどを購入し、部屋を貸し出して入居してもらった人に家賃を支払ってもらうことによって収入を得る方法です。なお、不動産物件の売り買いはおこなえません。

3つ目は株式やFXなどの投資です。ただし、公務員は一般の人が知りえないような重要情報を握っている可能性があり、そういった情報を利用して投資をすると法律違反として罰せられるので注意しましょう。

4つ目は警察官など特殊なケースになりますが、仕事の対象者に近づくためにそのお店で働いて収入を得た場合も立派な副業です。

自治体から始まる解禁の流れ

しかし、公務員と言っても様々で、特に地方公務員は一般的な会社員と比較してそれほど収入が多いわけではありません。そこで神戸市や奈良県の生駒市など地方自治体で徐々に副業を解禁する動きが出てきています。

まとめ

2018年は各所で『副業元年』と呼ばれた印象的な年でした。政府の旗振りもあり、今後も副業を容認していく流れは継続していくとの見方が強いです。副業するつもりのない人でも、周囲で副業をしている人が増えてくるに違いありません。副業している人がどういうマインドで仕事をしているのか知るためにも、副業する人もしない人も、副業のあるキャリアについて考えてみる必要がありそうです。


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