デザイン料はどのようにして決める?
デザインの仕事の料金はどのように決めたらよいのでしょうか。その考え方を整理していきましょう。
料金設定に悩む人は多い
デザインの仕事には決められた価格表がありません。発注側と受注側の双方で合意があれば、どんな金額にも設定可能です。
もちろん発注側としては安ければ安いほどよいし、受注側としては高ければ高いほどよいということがありますから、デザイン料の設定は常に悩ましいところになります。
価格表を用意するにしても、この要件であればこの額、この量であればこの額とは単純には決めにくいものです。案件に対してどういったデザイン料が双方にとって適切かは、ケースバイケースとしか言えない部分があります。
算定基準や料金表を参考にしよう
価格設定の基準の一つとしては、同業のデザイン事務所や会社がネット上に提示している算定基準や料金表を参考にするという手法があります。
ただ、デザインの同業といっても、個人事務所から大会社まで幅広くありますし、制作物のクオリティもさまざまです。自分にとって、どのレベルのものが参考になるかを考えなければなりません。
このようにして大雑把な相場をつかむことはできますが、実際に自分の地域を相手にデザインの仕事をしていく場合は、その地域の相場を考えることも必要でしょう。都会と地方では同じ制作物でも価格の相場が変わってきます。
地域の相場を知るには、行政が発注している仕事の価格を参考にしてもよいでしょう。行政が発注する仕事は必ず複数の業者の相見積もりの結果なので、決定した業者の受注額を知れば、その地域の業者の相場を把握することができます。
JAGDA制作料金算定基準から相場を知ろう
グラフィックデザイナーの全国組織、JAGDA(公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会)は、料金設定のルールブックとして、JAGDA制作料金算定基準を公表しています。こちらを参考にして料金を考えるのもよいでしょう。
JAGDA制作料金算定基準の制作料金は以下の式で算出されます。
制作料金 = 質的指数×a作業料 + b作業料 + 質的指数×量的指数×a作業料 + 支出経費
- 質的指数:制作者の能力度の指数(標準的能力の制作者の質的指数を1とする)
- a作業料:質が大きく関わる作業
- b作業料:質に関係の少ない作業
- 量的指数:制作物の数量など、制作者の能力や知名度以外の、付加価値を生み出す要因
- 支出経費:材料費や交通費、通信費などの経費
以下、具体的な各制作物別の基準を見ていきます。
チラシやパンフレット
まず折り込みチラシの料金表の早見表を見てみましょう。一番上の欄、分類2Pのものを例に説明します。質的指数は『1』、量的指数はタブロイド版発行部数5万部程度ということで『0.2』で計算された料金が記載されています。
2Pのタブロイド版で5万部程度の、折り込みチラシのデザイン料金は、表に記載されている料金を合計して『36万円』が目安ということです。
内訳のCD(クリエイティブディレクション)とは、コンセプトを開発しアイデアを具現化するべく、全体を指揮する仕事です。D(デザイン)は具体的なデザインの、C(コピー)はキャッチコピーなどを考える仕事です。いずれも『a作業』に当たり、質的指数が乗じられているので、質的指数が増減すれば連動して増減します。
ラフ、カンプ、フィニッシュは、それぞれ、雰囲気をつかんでもらうためのラフの制作、デザインをつかんでもらうための作成、印刷用版下データの作成といった仕事で、いずれも『b作業』に当たる作業です。
ブランドマークやロゴ
次に、ブランドや企業のロゴマークを作成する場合の料金を見てみましょう。チラシなどの場合と異なり、量的指数はブランドや企業の年間販促費をもとにします。大規模な販促に使用されるものであればあるほど、指数が上がり、料金も応じて上がっていきます。
名刺や名札
名刺や名札などの場合も、ロゴマークなどと同様、量的指数は年間販促費をもとにします。
ベーシックアプリケーション(名刺や名札など)デザイン料金早見表
料金設定のポイント
ここまでに紹介した料金設定は、世間並みの相場はどうか、という基準での考え方でした。一方、受注側と発注側の事情からも料金設定を考えてみる必要があります。
作業内容に見合った金額かどうか
依頼されたデザインを納入するまでにかかる作業の内容、かかる時間からも料金設定を考えてみましょう。
いくら相場が安かろうと、その安いデザイン料で仕事を受け続けて生活が成り立たないのでは本末転倒です。一方で、ひとまず低料金でこの仕事を受けることで将来の仕事につながるといった判断もあるでしょう。
制作者側の事情を常に基準にするわけではないにしても、仕事を重ねてステップアップしていくなかで、自分の行っている作業に見合った料金になっているかどうかという視点は、折にふれて思い起こしましょう。
時給で考えるのも有効
単純に時給に換算して考えてみるのもよいでしょう。自分の生活を成り立たせるため、また他の仕事と比較して、自分の料金設定が時給として妥当かどうかということです。その際、仕事にかかっている時間は制作作業時間だけではないことも考慮しましょう。
打ち合わせの時間、そこまでの移動の時間、売り込み営業に費やす時間、デザインの勉強にかかる時間なども、本来時給換算の際に労働時間として入れるべきものです。
まとめ
デザイン料金の相場について、考え方や参考になる基準を見てきました。価格に正解はありませんが、自分の技術の向上や状況に応じて、料金は何度も見直していくものです。
クライアントとの関係や、自身のクリエイターとしての価値に直結する数字でもありますので、様々な基準をもとに設定するよう心がけましょう。悩ましい問題ですが、自分の作品と仕事について、折にふれて見直していくきっかけにもなることでしょう。