SI業界とは
SIとは『システムインテグレーション』の略語です。SI業界は情報技術を使い、会社に必要なあらゆる仕組みを構築して問題を解決していく分野です。
表舞台に立たず裏方として重要な役割を果たしているSI業界とは、一体どのような業務を行なっているのでしょうか。ここではSI業界の内容について具体的に紹介します。
ITシステムを構築する情報サービス業界
情報化社会において不可欠な、さまざまな業界のITシステムを、情報技術を活用して構築する企業をSI企業(システムインテグレーター)と言います。
具体的には顧客が抱える課題解決のために、顧客の業務を理解した上でコンサルティングや仕組みの設計、開発、さらにその運用や保守を行います。
トータルコーディネーターとして全ての行程を一貫して請け負い、業務を進めていくのです。SI企業はSIer(エスアイヤー)とも呼ばれています。
SIerの種類と代表的な企業
SIerは企業の成り立ちによって、『メーカー系』『ユーザー系』『独立系』の3つのジャンルに分類されます。ここでは、それぞれの仕事の内容と代表的な企業を紹介します。
1つ目の『メーカー系』は、コンピューターやハードディスクを中心としたハードウェアメーカー関連のSIerです。独自のハードウェアと組み合わせたサービスを提供し、企業の問題解決に努めます。代表的な企業をいくつか紹介します。
- JBCC
- 東芝情報システム
- 富士通マーケティング
- 日立ソリューションズ
- NECソリューションイノベータ
- 東芝デジタルソリューションズ
- 三菱電機インフォメーションシステムズ
2つ目の『ユーザー系』は、もともと大企業の一つの部門だった情報システム部門が独立して生まれたSIerです。親会社や関連会社の依頼を受けるだけでなく、広く一般に仕事を請け負います。
もともと商社やメーカーなど特定の業界の情報システムを構築していましたが、そこで培ったノウハウを活用し、さまざまな業界の企業からの仕事を請け負っています。代表的な企業は以下のとおりです。
- 伊藤忠テクノソリューションズ
- NTTコムウェア
- 日鉄ソリューションズ
- 野村綜合研究所
- SCSK
- 日本総合研究所
3つ目の『独立系』は、システムインテグレーションの事業を行うことを目的に設立された企業を指します。
メーカーや親会社の意向や要求に縛られることなく、クライアントが必要とする仕組みを構築し、一貫管理するトータルコーディネーターの役割を果たします。具体的には以下のような企業が挙げられます。
- 内田洋行
- トランスコスモス
- 大塚商会
- TIS
- JBCCホールディングス
- DTS
- NSD
- 富士ソフト
SIerの業務
ITシステムの設計から開発、運用や保守まで一貫した情報サービスを提供するSIerですが、その業務は大きく4つの段階に分類されます。ここではSIerの4つの業務を、それぞれ具体的に解説します。
戦略立案
クライアントが現在直面している問題を探り出し、調査や分析をすることで重要なポイントを浮き彫りにします。ポイントを整理し、どのように解決すべきなのか、その具体的な方法を考えます。
ゴールを明確にして、立案した戦略が確実に実行されるように意思決定していく段階です。
要件定義
クライアントが導入すべきシステムの要件を考えます。要件定義とは、システムやソフトウェア開発において備えるべき機能や性能を明確にしていくことです。
クライアントにヒアリングしながら、抱えている問題を明らかにし、予算や人員といったリソースを考慮に入れながら、課題を解決するために必要な機能や性能を明確化します。
設計・開発
要件定義で明確にした内容を元にして、システムやソフトウェアを実際に設計します。何を使って、どのような行程で、どんなシステムを作るのかを順番に設計していく段階です。
現場では主にテキストや表を使って基本設計を行います。設計書が完成したら、プログラマーが設計書に沿ってプログラムを開発し、様々なケースを想定したテストを行います。
運用・保守
SIerは構築したシステムの運用、保守まで行います。システム運用は、システムが毎日正常に稼働しているのか観察し、維持していく業務です。ユーザーが快適にサービスを利用できるように万全の体制を整えます。
システム保守とは、万が一システムに不具合が発生した場合に、迅速に対応する業務です。問題を発見し、システムに変更や修正を加えるための高度な知識やスキル、経験が必要とされます。
SI業界の今後の動向は?
将来ITエンジニアの人材不足が懸念される中、SIerの将来性を不安視する声があります。SI業界の今後の動向はどうなっていくのでしょうか。以下に解説していきます。
クラウド化の流れがある
情報システムはクラウド化の流れが徐々に進行しています。従来のように、SIerに依頼して自社専用のシステムを『作る』のではなく、クラウド上で既に提供されているさまざまなツールを『利用する』方向に変わってきているのです。
クラウドを利用することでコストが抑えられて、利便性も高いというメリットがあり、現在のビジネスモデルが成り立たなくなってきています。
多重下請け構造の問題への対処が課題
SI業界は『多重下請け構造』が定着しています。大手企業が自社で雇用する正社員を最小限に抑えて、外部の中小企業に仕事を割り振る構造になっているのです。
その外部の企業もさらに仕事を細分化して、二次請けや三次請けが行われます。下請けになるにつれて報酬も下がり、仕事の内容も単調な事務処理作業になって労働環境が悪化する傾向があります。結果として、若者のSI業界離れを引き起こしているのです。
この多重下請け構造の問題に対処することが課題と言えるでしょう。
SI業界で働くなら考えておきたいこと
顧客のITシステムの仕組みを作るSI業界の役割は重要であり、そこで働くITエンジニアには高いスキルが求められます。ここでは、今後SI業界で働くなら考えておきたいことについて紹介します。
業界の動向に注意を払う
テクノロジーの急速な発達に伴い、日々新たなサービスが誕生している中で、SI業界を取り巻く環境も目まぐるしく変化しています。
常に即戦力として活躍するには、業界の動向に注意して情報収集を怠らないように努力することが大切です。
SI業界では頻繁に勉強会やセミナーが開催されています。横のつながりを作る良い機会にもなりますので、積極的に参加して情報を交換するようにしましょう。
自身のキャリアプランを持つ
ITエンジニアは今後二極化すると言われています。IT技術の進歩に『乗り遅れるエンジニア』と、時代の変化に『うまく対応できるエンジニア』の2種類に分かれることが考えられるのです。
常に変化するIT業界においては、自身のキャリアプランをしっかり持っておくことが重要になります。
自己研鑽は不可欠
SI業界でエンジニアとして将来生き残るためには、自己研鑽は不可欠です。常に新しいスキルを身につける努力をし、市場での価値を高めていく必要があります。
SI業界の動向に限らず、高いスキルを有する優秀なエンジニアは、常に必要とされる人材になり得るでしょう。
まとめ
顧客が直面している課題に対して、IT技術を用いて幅広く問題の解決に取り組むSIerは、社会で必要不可欠な仕組みを作り出す大切な存在です。しかし業界を取り巻く環境や問題のある構造が影響し、将来が不安視されている側面も否定できません。
SI業界で働くのであれば、学習を怠らずにスキルを磨き続け、市場価値を高める努力をすることが必要でしょう。SI業界の現状を知るために、できるだけ多くの情報を収集し分析してみることも大切です。