IoTの概要
テレビや新聞などのマスコミを中心としたさまざまな媒体で、『IoT』という言葉を耳にすることが多くなりました。
多くの人がIoTの将来性に期待を感じながら、実はIoTという言葉の意味や内容を正確に理解している人はそれほど多くはないです。
なぜ、近年さまざまな業界でIoTは大きな注目を集めているのでしょうか。ここでは、IoTの概要やその価値について具体的に解説します。
インターネットに接続された物
IoT(アイオーティー)とは『Internet of Things』の略称で、私たちの身の回りにあるさまざまな『物』が、インターネットにつながる技術や仕組みのことを指します。
もともとインターネットは、パソコンにつながっているものでした。次第に、パソコンから携帯電話、スマートフォン、テレビと、徐々につながれるものが拡大していきます。
これまでインターネットにつながっていなかったあらゆる物が、インターネットにつながることにより、利便性を高めていったのです。
AIとの連携でより価値が高まる
人工知能であるAIの技術の発展により、人間が行うような知的作業を、さまざまなシステムが行うようになりました。
お掃除ロボットや自動運転システムを搭載した自動車など、身近な物も徐々にAIを搭載しつつあります。AIとIoTが連携することにより、IoTで収集した情報を即座にAIに反映させることが可能になるのです。
AIを搭載したロボット単体では、できることに限界があります。しかし、IoTと組み合わせることで、活動範囲は急速に拡大していくでしょう。
IoTが注目される理由
IoTに関する情報は、毎日のようにテレビや新聞、雑誌などあらゆるメディアに頻繁に登場しています。
それだけIoTに関連する技術が急速に発展しているのと同時に、今後のIoTの可能性を高く評価している人が多いことの表れと言えるでしょう。
それでは、IoTの魅力は一体どこにあるのでしょうか。ここでは、IoTが注目されている理由について解説します。
生産性の向上につながる
IoTを活用して多くのデータを収集・分析することで、企業は多くのコストやエネルギーを削減できるようになるのです。
これまでは人的資源を導入してきた設備の保守点検やデータ管理などの仕事が、IoTの活用により、人の手を介することなく行われるようになっています。
今後IoTの技術が発展すると同時に、IoTが活用される範囲は広がり続けるのは確実です。それにより、あらゆる産業で無駄なコストが削減され、生産性が大幅に向上することが期待されています。
新しいビジネス市場として魅力的
今後、さまざまな物がインターネットとつながることで、これまで存在しなかった新しいビジネスが誕生することが予想されます。
新しいビジネスの具体例として、IoTの技術を活用して血糖値を管理できるコンタクトレンズの研究が進んでいます。
さらに、駐車場の空き情報をリアルタイムで知らせてくれるサービスや、女性の体に特化して身体データを収集する基礎体温計の開発など、IoTの技術を駆使した新しいサービスが誕生し、ビジネス市場を形成しているのです。
ITとの関連が薄かった産業でも活用できる
農業や漁業といった、これまでITと関わりが薄かった産業でも、すでにIoTの技術は広く活用されています。
例えば、農業分野において言えば、これまで人の手を介して農作物に水や肥料を与えていたのが、IoTの技術によって自動化され、機械が効率的に作業を実施するようになりました。
漁業分野においても、これまでは実際に人が行かなければ分からなかった、養殖魚の様子や養殖魚を育てている海水の濃度を、IoTの技術を利用することでスマホから確認できるようになっています。
生活がより便利になる
IoTの技術の発展により、自宅にある家電をスマホで遠隔操作できるようになったり、交通機関のリアルタイムの状況を即座にスマホやパソコンで把握できたりするのです。
私たちの生活に密接に関係するさまざまな物やサービスに対して、IoTの技術が活用されることで、生活は今より格段に便利になるでしょう。
産業別にIoTの活用事例を紹介
世の中のあらゆる仕事や産業は、必ずといっていいほど何らかの課題を抱えています。
これまでは、そうした多くの課題に対する解決策を見いだすことが難しかったのですが、IoTの技術が発展することでその状況が一変したのです。
IoTの技術を駆使した多くのIoT機器が誕生し、それらが現場で活用することによって、各産業での課題が解決されるようになりました。ここでは、具体的なIoTの活用事例を産業別に紹介します。
農業での活用事例
農業分野におけるIoTの代用的な活用事例として、ドローンの導入があげられます。ドローンをうまく活用すれば、育てている農作物の成長度合いや土壌の状態などをリアルタイムで確認できます。
その結果、害虫などによる被害を最小限に抑えることが可能になり、極力農薬に頼らない農業を実現します。
医療分野での活用事例
医療分野でのIoT活用の一例として、アメリカの大手医療機器メーカーが、通信機能を搭載した心臓ペースメーカーを開発し、そこから患者の身体データを収集して医療機関に送信するサービスを開発しています。
医療機関は、この機器を導入することで患者の日常的な身体データを取得でき、より精度の高い診療を実現できるのです。
また、スマホを活用した遠隔診療システムが徐々に普及しており、わざわざ病院に訪れることなく、スマホを介して医師とやり取りできるようにもなっています。
家庭にも広がるIoT製品
IoT技術の進歩により、家電製品の分野においてもさまざまなIoT製品が開発されています。
家電製品は私たちの生活に密接したものなので、IoT家電の登場により、私たちの生活自体が大きく変化していくことが予想されます。ここでは、IoT家電の具体的な事例について解説します。
スマート家電の普及
インターネットを通じて遠隔操作が可能な家電製品を『スマート家電』と言います。それぞれ専用のアプリがあり、スマホやタブレットと連携することで、リモコンを使うことなく家電製品を操作できるという特徴があります。
スマホと連動することで遠隔での操作が可能になり、利便性が高くなることから注目が集まっているのです。最近では、大手家電メーカーはこぞってスマート家電の開発に力を注いでおり、さまざまなデバイスを生み出しています。
見守りサービス
遠方に住んでいる一人暮らし高齢者などの状況に合わせてサポートできる『見守りサービス』の開発が行われています。
例えば、無線通信機を内蔵した電気ポットを使い、遠方の家族の安否確認ができる見守りサービスや、トイレと冷蔵庫のセンサーから、遠方の家族の生活リズムを確認するシステムなどです。
家庭の中にIoT技術を取り込み、最先端の技術を活用して家族の見守りサービスを行なっています。
スマートロック
スマートロックとは、スマホが鍵の代わりになり、自宅のドアの開け閉めができるシステムです。専用のアプリをインストールしたスマホをドアに近づけることで、簡単に鍵を開けることができます。
鍵が不要なのでセキュリティ面に優れているという特徴があり、仮にスマホを紛失してしまったとしても、IDとパスワードがあれば、他の端末でも利用が可能です。
IoTの今後の展開は?
テクノロジーの発達により、すでにさまざまな産業でIoTの技術が活用されています。これまでITとは関わりのなかった産業でのニーズも高まりを見せ、さらに成長は加速するでしょう。
また、今の段階ではIoTの技術を取り入れていない分野であっても、IoTの需要が拡大すると同時に必要な機器が開発され、幅広く活用されていくことが予想されます。
果たして、これからのIoTの展開はどうなっていくのでしょうか。
日本国内・海外ともに成長が続く見込み
IT専門調査会社であるIDC Japanの調査結果によると、日本国内におけるIoT市場の2018〜23年の年間平均成長率は13.3%で、23年にはIoTに関する支出額が11兆円以上に達すると試算しています。
さらに、IDC Japanによれば、世界のIoT市場規模は7450億ドルに達し、2022年には1兆ドルになるという予測です。これらの調査結果によれば、日本国内のみならず海外においてもIoTはさらに成長が続くことが予想されます。
業界によっては活用の度合いに差が出る?
成長が大いに期待されるIoTですが、活用の度合いは業界によって差が出てくることは確実です。そのような状況になるであろうと予想される産業としては、運輸や製造業があげられます。
特に、自動車業界は自動運転システムの登場により活用の幅も広がるでしょう。しかし、第一次産業である農業や水産業などは、IoTの需要はあるものの市場規模が小さく、成長率は低くなることが予想されます。
IoTの課題
確かに、IoTの技術の発展は、私たちの生活を今よりも便利で豊かなものにしてくれるでしょう。その一方で、IoTにはいくつかの課題が内在していることが指摘されています。
今後IoTが成長して、さまざまな分野で活躍するためには、早い段階でそれらの課題と向き合って、対策を立てることが大切です。ここでは、IoTの課題について解説します。
セキュリティやプライバシーの問題
インターネットとつながっているものは、常にセキュリティ問題に直面します。
特に、IoT機器は企業や病院、大手機関などが保有するデータとつながっていることから、セキュリティに関しては最大限配慮する必要があるでしょう。
さらに、IoTの普及により、私たち消費者のプライバシーが侵害される危険性があります。
ライフスタイルを監視され、個人情報に不正にアクセスされる危険性をはらんでいることから、プライバシーを守るために徹底した対策を講ずることが大切です。
人材不足
IoTの活用の幅は急速に広がっており、あらゆる産業においてIoT機器の需要が高まっている一方で、IoTを専門とする人材が不足している状態が続いています。
特に、IoT機器から収集したデータを解析できるスキルを持つエンジニアの数が足りておらず、どの業界も優秀な人材を確保することは困難です。
さまざまなIoTデバイスが誕生しているにもかかわらず、データを分析できる人材が不足していることから、IoTの成長にブレーキがかかるのではないかと懸念されています。
事業化のハードルが高い
IoTは、実際に製品を事業化するまでのハードルが高いです。
IoT関連の人材不足や設備不足の問題、データの収集方法や保管方法の確立など、企業が企画を立ち上げて製品をつくり、実際に運用を開始するまでにはいくつものハードルが存在するのです。
さらに、システムの規模によっては多額のコストがかかることから、それだけの予算をいかに確保するかといった課題もあります。
IoTに関する仕事例
IoTのシステムを導入する企業や産業が増加傾向にある中で、IoTに関連する新しい仕事も次々と誕生しています。IoTの分野自体に将来性があることから、IoTに関する仕事は今後もさらに増えていくことでしょう。
現在、どのようなIoTに関連する仕事があるのかを具体的に紹介します。
IoTエンジニア
IoTのシステムを構築するために、デバイスの制作やシステムの組み込み、セキュリティの保守などを行うIoTエンジニアの仕事があります。その場合は、接続するセンサーやデバイス操作に必要な知識やスキル、インターネットに接続するネットワークの知識も不可欠です。
さらに、IoTの開発は、多くのエンジニアとチームをつくって行いますので、IoTエンジニアには、他の人たちと協調しながら仕事を行える人間性も求められます。
IoTコンサルタント
IoTコンサルタントという仕事もあります。IoTコンサルタントは、IoTをビジネスに有効に活用しようと考えている企業に対し、IoTシステムの構築や保守運用の方法、さらに戦略やマネジメントの観点から、具体的な提言を行うのです。
IoTコンサルタントには、技術的なスキルや知識だけではなく、経営的な観点から提言できる幅広い経験と知識が求められます。
マーケティング
マーケティングの一環であるビジネスに必要な情報収集や情報分析も、IoTを活用して行われています。
これまでは、顧客調査や売り上げ分析、ユーザーアンケートの収集などに時間がかかっていました。しかし、IoTを導入することによって、膨大なデータを効率よく収集分析できるようになり、より効果の高いマーケティングを実現できることになります。
まとめ
これまで、ITと多くの物はそれぞれ独立した存在でした。しかし、IoT技術の進歩により、インターネットと物がつながることが当たり前になった結果、私たちの生活にも大きな変化が生じています。
今後、IoT活用の流れはさまざまな分野で広がりを見せることになりますが、同時にIoTに関する課題も生まれています。それらの課題にきちんと向き合い、解決策を探りながら、IoTのさらなる発展に注目していきましょう。