食品卸業者と店舗の受発注管理システムで急成長中の『タノム』
- はじめに、御社のサービス概要を教えてください。
福岡氏:当社は食品卸業者さんと飲食店さんの受発注管理システム『タノム』を運営するスタートアップ企業です。
『タノム』は、野菜や鮮魚、乾物などの業務用食品を取り扱う卸業者さんが、スマホで簡単に販売サイトを作成でき、飲食店さんからの注文をチームで管理することが可能なサービスです。卸業者さんから月額利用料をいただいており、注文する飲食店さんは無料というビジネスモデルで提供しています。
当社は元々ミールキットの事業で立ち上げた会社でしたが、1年でその事業から撤退し、現在に至ります。撤退の背景や『タノム』の構想は、弊社代表の川野のnoteにまとまっておりますので、ぜひこちらもご覧いただければと思います。
- 『タノム』は順調に成長しているようですね!
福岡氏:UIやUXなど細部まで徹底的にこだわり、おかげさまで卸業者さんと飲食店さんの導入社数は現時点で数千社ぐらいの規模感です。
実は、まだプロモーション活動はあまりしていないのですが、「便利だから、ぜひ使ってほしい」と飲食店さんから卸業者さんに紹介いただいたり、逆に卸業者さんから飲食店さんをご紹介いただいたりなど、口コミで広まっています。
- 今後の展開はどのように見据えていらっしゃいますか?
福岡氏:受発注だけなら他にも近しいサービスがありますが、『タノム』ではチラシやカタログのような形で商品を紹介することができます。卸業者さんにはそちらを活用していただき、効率的にビジネスを成長させていく支援ができたらいいですね。飲食店さんに対しては、食肉、鮮魚、野菜、乾物食品と横展開できるような形を目指して、ゆくゆくは『タノム』ひとつで受発注できる状態にしていきたいと考えています。
- 可能性がいろいろあるんですね。
福岡氏:そうですね。幸いなことに著名な投資家の方に出資をしていただけたので、より機能を充実させつつ、知名度を上げていきたいと思っているところです。
わずか4日間で、優秀な副業エンジニアを採用
- 御社では副業クリエイターを積極的に採用されていると思いますが、そもそも副業クリエイターを採用しようと思った背景について教えてください。
福岡氏:これは僕の過去の経験談にもなるのですが、新規サービスを立ち上げる際、昔は自分だけでいろいろ回そうとしていた時代がありました。
それで、立ち上げのスピードが遅くなったり、MVPを作るまでに時間がかかってしまったり、かなり動きが重い状態だったんです。このことを反省して、タノムではエンジニアを採用し始めたという経緯があります。
- なるほど。ちなみに御社では社員と副業は何人いらっしゃるんですか?
福岡氏:社員は創業メンバーの数名で、副業の方はエンジニアとデザイナーがそれぞれ2名ずつです。
- いろいろある副業マッチングサービスの中で『Offers』をご利用していただいたかと思いますが、優秀なエンジニアを4日で採用できたそうですね。
福岡氏:そうなんです! 正直、驚きました(笑)
なぜ『Offers』さんでこんなに早く優秀な人材が採用できたのかというと、テクノロジーに対して感度が高い人の登録が多かったというのが率直な感想です。本業では有名な企業に勤めているエンジニアも多く、技術レベルが高いと感じました。
- 候補者の方にはどのようなメッセージオファーを送っていたのでしょうか?
福岡氏:僕らの事業内容を説明して、興味があるかどうかというところからですね。「もし、良かったら一緒にやろう」というノリというか。会話していくなかでフィーリングが合って、お願いできそうなこともあるので話を進めていったという感じです。
とりあえず試しに依頼してみて、ダメだったらまた新しい人にお願いしようと割り切ってもいました。
- 最初に何を伝えるのかが難しい所だと思います。単純に事業内容の紹介では、相手に興味を持ってもらいにくいのではないでしょうか?
福岡氏:そうかもしれませんね。
僕の場合、若い時に先輩から「技術とはツールである」という言葉を教わり、今もこの言葉を大事にしています。そのため、候補の方へはじめにメッセージを送る際には、僕らがプロダクト開発をするうえで大切にしている思想をお伝えするようにしています。
特に当社のような知名度の低いスタートアップの場合、自分たちが何を成し遂げていきたいかというミッションが、一番のアピールポイントにもなると思います。テクノロジーをどんどん突き詰めていくのもいいですが、それを使ったうえで何を実現し、社会にどう貢献していきたいのかということを大事にしているんです。
- 今回の候補者にも、まずそういうお話からしていったんですか?
福岡氏:そうですね。僕らがどんな思いで、どんな世界を実現させようとしているのか。まずはそれをお伝えした上で「どうですか?」みたいな話になっていきました。
- 働く側も、企業のカルチャーというか、思想は気になるところかもしれません。
福岡氏:やはり思想の相性は大事だと思います。そうしないと価値観も何も共有できませんし、そんな中でお仕事を依頼させていただいても、互いにやりにくさが出てくると思います。
スタートアップが副業人材を入れるメリット
副業エンジニアの技術的アドバイスが企業の強みになる
- 採用されたエンジニアの方について教えてください。
福岡氏:吉田さんという方で、大手自動車メーカー系の企業でソフトウェアエンジニアをされています。非常に経験豊富なエンジニアで、今とても助かっています。
- 吉田さんにはどのような業務を依頼しているのでしょうか? オンボーディングで気をつけた点なども教えてください。
福岡氏:今回僕らは、技術アドバイザーという形で吉田さんに依頼させてもらっています。まずは僕らの悪いところを全てお見せし、「それに対してどう思いますか?」という相談事から始まっています。
フランクにコミュニケーションを交わしながら徐々に問題点を洗い出していって、吉田さんから『これは、僕ができそうなのでやらせてください』と、そこで初めて仕事がタスク化されるような感じです。
- スキルが高いエンジニアだからこそ、最初にフラットに全体を見渡して新しい視点を入れてもらっていると?
福岡氏:そうですね。吉田さんがこれまで得てこられたさまざまな知見を、僕らの事業に取り入れてもらっています。僕らは数人で開発していますが、そこに大規模な会社の開発チームで培ってきたノウハウを活用できるというのは大きな強みになりますね。
- 吉田さんの技術力と、御社の求めるものがうまくマッチングしたところもありますか?
福岡氏:そうですね。大まかに言うと、ソリューションの部分ですね。CTOをやっているなかで、社内の仕事もやりながら、最新技術のトレンドをキャッチアップし続けていくことはなかなかハードルが高いものです。そのような状況で、第一線で活躍するハイスキルなエンジニア方にアドバイスをいただけるのは心強いですね。
- ちなみに業務上のコミュニケーションでは、どのようなツールを使っているのでしょうか?
福岡氏:主にSlackとappear.inです。基本的に細かいことはSlackでやりとりして、何かあったらappear.inで会話しながらメモ書きしていく感じですね。とくにコミュニケーションで問題になる事はありませんよ。
定期的なミーティングなども設けず、進捗があったタイミングでお互い柔軟に対応しています。あちらもプロ意識がとても強い方ですので、非常にやりやすいです。
- いつまでにどんなことをやる、という認識をそろえておけば問題ないのですね。2019年4月から稼働されているとのことですが、吉田さんについて感想をお願いします。
福岡氏:柔軟な姿勢でフランクに口添えしていただけて、僕らとしては嬉しい限りです。吉田さんとは今後も継続的に関係を続けられたらいいなと思っています。
- 始める前は「もしダメだったら……」みたいな話もありましたが。
福岡氏:世の中には経歴が立派な人が本当にたくさんいますが、実際にその人を採用すると「あれ?何か思っていたのと違う」ということは珍しくないと思います。これは逆の立場でも起こり得ると思うんですが。
そうすると企業サイドはそれをリスクと捉えて、採用活動が鈍化してしまうんですよね。「コミュニケーションのほうが大変だ。こんな思いをするなら、自分たちで頑張ったほうがいいや」という感じで。でもそれって勿体無いことだと思うんです。
そういう意味で、まずはお試しで発注できる「副業」という仕組みは、僕らにとっても吉田さんにとってもメリットばっかりではないでしょうか。
- 就職の面接は、よくお見合いに例えられえますよね。
福岡氏:そうですね。転職になると、面接は結婚を前提としたお見合いの場みたいな感じかもしれません。でも、「まずはフランクに付き合って人となりを知ろうよ。そこからじゃない?」というのは、正直に言うとあります。友達付き合いから結婚した方が、相性がちゃんとわかりますからね(笑)
技術トレンドのキャッチアップやスタートアップ体験など、成長を加速させるエンジニアの副業
- 今、副業というキーワードがトレンドになっていますが、この潮流についてどう思われますか?
福岡氏:とてもいいことだと思います。むしろ遅いくらいです。当社のようなスタートアップにとって、他社の経験豊富なエンジニアの方に、まずはお試しでお仕事を依頼できるということは、先程もお伝えしたようにさまざまなメリットがあります。
エンジニアにとっても、大きなメリットがあると思います。長い間、同じ職場にいると、技術のスタックが凝り固まってしまうことがあります。もちろん、実務レベルの経験を深く掘っていくのはいいことだと思いますが、同時に新しい技術を取り入れていく必要があります。
それに、プロダクトの開発現場で「0→1」とか「1→100」を作っていく段階に、気軽に参加できるというのは、すごくいい経験になると思います。
そういった意味で、副業というのは実践を通じて成長できるいい機会ですね。技術は勉強会でも学べますが、サービスは作ってみないと、実際に使えるかどうかまでは突き詰められないんですよね。
- エンジニアのキャリアは、これから副業をどう活用するのかがポイントになってくるかもしれませんね。
福岡氏:そうですね。エンジニアだからこそ、というのはありますよね。
web技術の発展は著しく、今通用するスキルが数年後に通用する保証はどこにもありません。技術トレンドは日々変わっているので、本当にいろいろなことを経験しておいた方がいいと思います。僕ももう少し若ければ、積極的に副業をやっていたかもしれません(笑)
- 今日はお忙しいところ、ありがとうございました!