エンジニア採用手法の最適解は?DMMに聞く、採用の進め方とリファラルの位置づけ

優秀なエンジニアの採用難易度が上がる中、多くの企業で取り組まれている「リファラル採用」。合同会社DMM.com(以下、DMM)はリファラル採用に積極的に取り組んでいる内の1社です。2018年末に発表された、開発組織のHR戦略の指針となる『DMM Tech Vision』では、「採用チャネルにおけるリファラル採用の比率を50%にする」という目標が掲げられています。今回はDMMが注力しているリファラル採用やDMMの求めるエンジニア像について担当者に話を伺いました。

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最初の壁は「認知拡大」。新手法導入後3ヶ月ですべきこと

リファラル導入時の課題

DMMさんではエンジニアの採用戦略として、どのような採用チャネルを活用していらっしゃいますか?

DMM.com 大嶋悠也氏(以下、大嶋氏):リファラル採用とエージェント経由での採用がメインです。上期下期の平均でいくと、入社比率が35%ぐらいで、エージェントの入社比率が40%いかないぐらいですね。採用HPからのオーガニックの応募も徐々に増えており15%以上は採用HPからの応募による採用になっております。

その数値はどのように評価されていらっしゃいますか?

大嶋氏:リファラルの数値をもっと引き上げていきたいですね。2018年の12月に松本がCTOに就任し、『DMM Tech Vision』という戦略指標を標榜したのですが、その中のHR戦略として「リファラル50」が掲げられました。

これは「DMMのテックカルチャーに共感する人を増やすためには、リファラルによる採用が最も効果的なので、その採用割合を50%まで高めていこう」というものです。単月で50%達成した月もあるのですが、やはり平均50%を達成したいなと思っています。

一方で、エージェントにご協力いただいて採用した方が、転職市場に出ていないハイレイヤーの方々に幅広くリーチできるので、ある程度はエージェントやダイレクトリクルーティングも利用して、事業成長に必要な人材を必要なタイミングで必要な人数揃えられる環境を整えていこうと思っています。

導入初期に取り組んだのは社内周知の強化

単月50%を達成されるなど現在はリファラル採用が軌道に乗っていらっしゃいますが、導入時は様々な課題があったと思います。最初にぶつかった壁はどのようなものでしたか?

大嶋氏:リファラル採用の重要性がなかなか認知されなかったのが、導入時の課題でしたね。

確かに「リファラル50を目指そう!」と言っても、実際動くのは現場の社員なので、まずその意義を知ってもらう必要がありますよね。どういった工夫をされましたか?

大嶋氏:まず重要だと考えたのは、心理的ハードルを下げて紹介数を増やすことです。従業員の紹介の心理的ハードルを下げるために、紹介してもらったら人事または現場で必ず面談するようにしたり、進捗をフィードバックすることを約束しました。また、知人との接点づくりをしやすくするため、知人と飲みに行く費用を会社で負担する仕組みも導入していきました。

カジュアルに紹介してもらうため、雰囲気を伝えるためにポスターを社内に貼り告知したところ、「変なポスター貼ってあるぞ」とSlackで話題になりました。そこから知人と飲みに行く制度を活用する若手が増え、結果的に紹介数が増加していきました。飲みの場でどんな話をしていいのかわからないから付いてきて欲しいという相談を貰うこともあったので、僕も飲み会について行ったりして「DMMってこんな会社なんだよ」ということを代わりに話すこともありましたね。

▲リファラル促進のために制作したポスター 

また、採用したいターゲット層がテックリードやミドルマネジメント層だったため、社内のテックリード人材やミドルマネジメント層に声がけをしたり、彼らとの会議体を隔週で設定し、紹介できそうな人材の状況共有やリファラル会食の実績をしつこいくらいに聞き出すようにしたりしていました。

初速の3ヶ月を重視していたので、エンジニアの採用責任をもつGEM(GeneralEngineeringManager)同士に競い合ってもらったり、会食していないGEMに対してCTOから指摘してもらったりするなど、嫌われ役になっても仕方ないという気概で取り組み続けました。

初速で勢いが付かないと倒れてしまいますよね。ただ、今まさにリファラル採用を取り入れようとしている企業にとっては、コロナ渦で気軽に飲みにいけない分、ハードルが高くなってしまったのではないでしょうか。

大嶋氏:そうですね。弊社でもそれは課題だと感じています。オンラインのミートアップやイベントで話す機会を作ってはいるものの、やはり今までのように採用会食という形で一対一や二対一で気軽にご飯行くということ自体が難しくなりました。

やはり対面でコミュニケーションをとった方が次のステップへ進む見込みは増えるので、その機会が減ったのは厳しいですね。けれど、結局は泥臭く接点持ってやり続けるということが重要だと思ってますので、現状に文句を言わずにオンラインでの会食支援施策の検討など出来ることを着実に実施していきたいと考えています。

事業部間のコミュニケーションが活発に。リファラル採用の副次的効果

リファラル採用のメリットとして、「採用のミスマッチが防げるため、離職率が低い」という点が一般的には挙げられています。実際のところどうなのでしょうか?

DMM.com 本郷美歩氏(以下、本郷氏):以前一緒に働いたことがある人とまた働くと、コミュニケーションコストが下がり、仕事がスムーズに進むという話はよく現場から聞きます。

実際にプロダクトを作る時に、新規採用者と関係構築しながら開発を進めるより、勝手知ったる以前の仲間と開発する方が話も作業も早く進むので開発しやすいのは確かにありますよね。リリースが早めにできたという話も聞くので、現場側からしたらメリットが高い点なのかなと思いました。

▲公式HPの社員コラム。リファラル採用に一役買っている。 

大嶋氏:個人的にはオンボーディングの工数が少なくて済むという点や、紹介者と事業部間でコミュニケーションが生まれるという点もリファラル採用ならではの効果だと考えています。

オンボーディングの工数が少ないというのは、カルチャーマッチとスキルマッチがうまくいってるからこそなのだと思いますが、後者はどういった理由からなのでしょうか?

大嶋氏:あの事業部に合いそうな人がいるから話を聞いてみようかなという感じで、社内のコミュニケーションが活発になることもあったんですよ。普段関わりのなかった事業部同士が繋がることで、新たなシナジーも期待できるので、気軽な会話が増えていくと良いなと思っています。

なるほど。そういった効果が生まれるのは意外でした。

エージェントに本気を伝えて伴走してもらうポイントは情報を丁寧に伝え続けること

定例でMTGの場を設けて、社内変更・背景もこまめに伝える

エージェントからの推薦数が伸びずに苦戦されている企業も多いと思うのですが、採用要件のすり合わせをする際に意識していることはありますか?

本郷氏:継続的に依頼させていただいているエージェントさんとは、定例ミーティングを組んでコミュニケーションを取る場を頻度多く設けるようにしています。募集ポジション部署の組織編成や役割といった細かい会社の背景を伝えると、エージェントさんがうまく候補者を口説いてくれるので有り難いです。

エージェントさんには本部のメンバーにも会ってもらっているので、それぞれの部署に合う人や性格的にマッチする人を探してきてくれます。

極力内部の状況をオープンかつ鮮明に伝えるように心がけています。そうすることで、採用に対する本気度や緊急度が少しでも伝わって、弊社に素敵な候補者をご紹介いただくことに繋がると良いなと考えています。

組織は”なまもの”なので、日々戦略も状態も変わります。小さい変化でも丁寧に伝え続けることで、候補者との意識の差も少なく面接に臨めたりしますので、その点は今後も引き続き取り組み続けていきたいと思います!

採用水準を保つ取り組み

現場の面接力を鍛える

続いて面接についてお伺いしたいのですが、面接を行うにあたって大事にしていることはありますか?特にエンジニアさんですと、技術の水準をジャッジするのがすごく難しいというお話を各方面から聞くので、どのように工夫されているのかを教えてください。

大嶋氏:弊社の場合、面接はスクラム採用が結構進んでいるので、基本的には一次面接と二次面接ともに現場のエンジニアが行います。一次面接でスキルを見て、二次面接で人柄やマッチ度を見るパターンが多いですね。必要に応じてカジュアル面談や三次面接もすることもありますが、選考のリードタイムが長くなりすぎると他社へ気持ちが流れてしまう可能性もあります。そのため、出来るだけ少ない面接回数で選考を進められるよう面接内容にはこだわって現場と日々見直しを行っています

また、我々人事は面接官研修も定期的に行なっています。技術見極めのための質問の作り方や面接に臨むスタンス、面接の態度といった基本的な挙動に関することを、ワークを取り入れながら検証しています。

面接官を育てる観点で、同席しフィードバックを実施

大嶋氏:面接に慣れている現場担当もおりますが、まだまだ経験が少ない面接官もいるので、必要に応じて同席するようにしています。受け答えの内容がおかしかったら面接直後にフィードバックをしたり、面接終わりの目線のすり合わせや評価の書き方など細やかにアドバイスするよう心がけています。

現場のエンジニアがスキルを見極め、採用責任も持って自分たちと一緒に働く仲間を探すというのが基本スタンスだと考えていますので、そのために必要な支援や仕組みを人事として整えていきたいと思います。

DMM Tech Visionの浸透強化

本郷氏:正直たくさん事業部があり、それぞれが独立した会社のようになっているので、全社で採用基準を揃えるのはかなり難しいと思いますが、それぞれの事業部毎に最適化していきながら、DMMという器の中に収まるような選考プロセスを設計していければと考えています。

▲DMMの掲げる4つのTECH VALUE

DMM.com 渋谷篤史氏(以下、渋谷氏):僕が意識しているのは、松本の掲げているTech Visionをしっかりと面接官に伝えることです。特にTECH VALUEの4項目はエンジニアの根幹になってくるので、そこがマッチしているかどうかという最低限の部分を担保できるようにコミュニュケーションを促しています。

トレンドの活用方法と直近で注力している手法

トレンドのサービスもちゃんと使う。ただし、既存手法も着実に運用。

今後の採用方針として、リファラルを強化するとのことでしたが、それ以外に取り入れてみたい施策はありますか?

大嶋氏:エンジニア採用に関して言うと、割とエンジニアの皆さんってトレンド好きというか、新しいサービスを試しに使ってみよう!という印象があるんですよ。そのため、そういうトレンドの潮目の見極めは人事としては重要だなと思っています。

渋谷氏:そうですね。エンジニアに限らず、採用のツールは常日頃から新しいものがリリースされたり、良さが再認識されたものが結構あったりするので、常に情報感度を高めておくことが必要だなと感じていますね。

大嶋氏:例えば、ちょっと前まではTwitterで気軽なコミュニケーションをしていたのに、今は違うプラットフォームにちょっとずつ移行してきているんですよね。そういう細かい変化に気づいて、ブルーオーシャンの時に拾いに行けるように定期的に採用チャネルは見直していきたいなと思ってます。

とは言え、トレンドのサービスからの流入は実際10%ぐらいしか期待していません。今やっているプロセスを当たり前に回し、リファラル採用とエージェント採用で必要な人材を必要なタイミングで確実に採用していくことが大切だと考えています。コストをかけずに採用したいという想いももちろんありますが、コストをかけてでも事業スピードを優先して最短で採用したいフェーズもあるので、事業ごとの状態に合わせて最適な採用手法を選択できるようにしておきたいですね。

グループ会社の採用支援などもすることがあるのですが、事業スピードに合わせてプロダクト開発に必要な人材を短期的に確保したいといった需要はあるので、副業人材なども選択肢に入れながら、間口を広く柔軟に対応していこうと考えています。

露出を用いた母集団形成

大嶋氏:直近1年ぐらいで力を入れているのは、採用広報周りのミートアップや、メディアを使った露出を増やすことです。DMMの認知や興味・関心の母集団形成をしっかりしていくことに力を注いでいます。

▲積極的にミートアップを開催中 

渋谷氏:ミートアップを担当していて感じるのは、DMMのテックカンパニー化がまだまだ知られてないなということ。引き続きしっかり露出して行くのと、DMMがテックカンパニー化をして今年で三年目になるので、未来のエンジニア組織のあり方については、認識を新たに発信していきたいなと思っています。

これからのDMMを担うのは"事業開発を行うエンジニア"

今後採用活動をするにあたって、貴社が求めているエンジニア像を教えていただきたいです。

大嶋氏:DMMの今のフェーズでは、事業家をM&Aなどで引っ張ってきたり、事業グロースを再現性高く実現できる人材を中途採用したりしているのですが、エンジニアが中から事業を作っていくということがこの5年、10年でもっと増えていかないといけないなと思っています。

そのため、エンジニアリングのスキルに加え、事業づくりの意識を持って、DMMのリソース使って何かやってやろうという思いのある人が増えていくといいですね

渋谷氏:DMMって、実はこれまで社外からの買収や投資によってグループ会社が増えていくというケースが結構多かったんですね。一方で、社内からも事業を作っていかねばいけないという想いもあって、事業づくりに積極的に挑戦していきましょうという事業家育成講座のようなプロジェクトも社内で立ち上がっています。

こうした背景もあって、これまでのDMMよりもさらに事業のスピード感は増していくのではないかと考えています。そうなると、事業を見つつ開発をし、プロダクトに責任を持っていくというビジネスマインドを持ったエンジニアというのが、今後のDMMでは必要になってくると思っています。

本郷氏:私の理想としているエンジニア像は2つあって、1つ目は大嶋が言っている通り、事業にコミットする意識を持つエンジニアを求めています。ご自身の技術力を高めることはもちろん大事ですが、そこを目的にするのではなく、技術をツールとして利用して、「ちゃんと稼ぐ」という点に目的を持てる方とぜひ一緒に働きたいなと思っています。

2つ目は、松本のTech Visionを明確に体現し続けられる人を求めています。Tech Visionを意識することで、ご自身のみならず一緒に働く周りのメンバーもポジティブに巻き込むことが可能です。楽しみながらTech Visionを体現し続け、DMMをもっともっと盛り上げていただきたいです!

実際にそれを体現しているエンジニアさんはいらっしゃいますか?

大嶋氏:そうですね、まだまだ母数は少ないかもしれませんが、そういう取り組みが少しずつ出てきています。例えば、情報システム部と人事が連携しながら社内で組織管理ツールを作っていて、それがうまくいったら外に販売していくぞ!という動きが起きていたりします。

また、エンジニア新卒3、4年目ぐらいの層から事業部長が出てくるようになってきました。エンジニアが新しいプロダクトを考えて、事業推進していくということも機運としては起きているので、アジリティ高く社内の成長サイクルが素早く回っていくことを期待しています。

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