リモートワーク化、オンライン面談化で工夫していること
- リモートワークが普及して半年以上となり、各社オンライン中心に切り替えて面談を実施されているかと存じますが、オンラインとオフラインで選考内容や意思決定プロセスに変化はありますか?
ファンタムスティック 菅 栄伸氏(以下、菅氏):ほとんど違いはありません。
TRUSTDOCK 菊池 梓氏(以下、菊池氏):人間性のところ以外はあんまり変わらない気がします。
- 人間性とは、どういった部分を指していますか?
菊池氏:お互いの為に人間性を見させていただきたいので、最終面談だけはご来社いただいて、直接面談しています。それ以外はオンラインでも特に違いはありません。
- オフラインでないと判断できないのは、どういった要素ですか?
菊池氏:社内の課題に対して、見て見ぬふりをするのではなく、気になることを、素直に言ってくれる人が良いなと思っていて、そこを「人間性」と言っています。そこは会ってみないとなかなか判断できない場合が多いです。このポイントについては代表が判断しています。
- 菅さんはいかがですか?
菅氏:弊社は色んなタイプの人を受け入れていますが、ネガティブすぎないかどうかは見ます。というのも、デザインスプリント的にプロジェクトを進めている関係で、作りたいものは決まっていて、デザインやUXをもとに仕様が決まっていくケースが多いんです。
エンジニアの立場だと、すぐに仕様が変わるというのは結構辛い話ではあったりしますが、そのあたりをネガティブに捉えられてしまうと、企画側はやりづらくなってしまいます。
開発の次のステップまで見据えて、エンジニア側で変えて良い部分と変えられない部分をしっかり管理してプロジェクトを進められる人かどうか、という点を重視しています。
- リモート前提で業務を進める上でのオンライン面談での見極めポイントについて、飯田さんはいかがですか?
リブ・コンサルティング 飯田 宜央氏(以下、飯田氏):対面での面談だと、一緒に笑って一緒に共感するポイントを空気で感じられると思うのですが、オンラインではコミュニケーションのやり方として難しいと感じます。皆さんもオンラインの会議とかしてると発言被って「あ、どうぞ」みたいなことってあると思うんですよね。なので、同時に話し出さないように気をつけたり、こちらの話に対して共感をできるだけ得られるような質問の仕方をしたり工夫をしています。
- ありがとうございます。チャットに「選考でオープンネスを判断したいがなかなか難しい」というコメントが来ています。菊池さんの回答に関する話ですね。確かに、自己開示せず変に取り繕われてしまうと、リモート前提のチームだと特に様子が察しにくいため、非常に大事なところになりますね。菊池さん、そういった面はどうやって見極めていらっしゃいますか?
飯田氏:おお、知りたいです!
菊池氏:何を聞いても鉄板の回答が返ってくる人、全部が人工的な印象を受ける人は、営業担当のような、初対面の印象が何よりも大事なポジションとしては適任ですが、エンジニアとして社内で一緒にやっていけるかは判断が難しいです。見極めのために、尖った質問や少し意地悪な質問をしてしまうかもしれません。
- どんなことを質問するんですか?
菊池氏:例えば、転職理由に「上司と仲が良くなかったので」と書かれていたとしたら、本当に環境が悪いのか、本人が投げ出してしまったのかを聞くために、「他の会社でも可能性があるだと思うんですけど、なぜ次の環境ではそれが解消されると思うんですか?」といった質問をすることもあります。これはあくまでも、判断に迷う場合だけですが。
飯田氏: TRUSTDOCKさんに受かる気がしないです。
菅氏:僕も(笑)
菊池氏:なにを聞いても鉄板の回答をする人には、ですよ!(笑)
菅氏:そういったプロファイリングに関して言うと、以前、臨床心理学をやっている人に、候補者のプロファイリングをお願いしたことがありました。今はやっていないですが。
大体4年ぐらい前ですが、まだ体制が整っていなかった時に、僕が1人で好きに人事を回してた時ですね。
- すごい。
菅氏:ちゃんと要素ごとに数値化されたものがグラフに落とし込まれていて、こういう結果なのでこういったタイプの方ですよといった分析を行なっていただいたことがあります。
菊池氏:それは当たっていましたか?
菅氏:当たってました。それで採用した人は今でも在籍していますが、本当にあの時のプロファイリングのままですね。
菊池氏:バッチリ当たってるんですね。
菅氏:そうですね。もしかしたらそういう心理学者のような人を面談に入れてみるなんてのも面白いかもしれません。
飯田氏:そういうアセスメントをします、というのは候補者の方には伝えるのですか?
菅氏:しません。基本的に補佐役です、という体で行ないます。面接時の質疑応答はその彼にやってもらう、みたいな感じです。
飯田氏:なんか怖い。
菅氏:結構人によっては怖い質問するなっていうのはありました。見ている僕も結構ヒヤヒヤする内容で。
飯田氏:シンプルにいうと、裸にされるんですか?
菅氏:そうです。ただ、いかにもあなたを心理テストしてますよといった質問の仕方は絶対にやめて欲しいと伝えました。ちゃんとよくある面談の質問の項目の範囲で実施するようにしていました。
- このテーマについて詳しく深堀りたくなるくらい、気になりますね。
菅氏:そうですね。
飯田氏:セミナーやっていただきたい。
菅氏:今でもそのプロファイリングのアーカイブ残してるので、たまに見返したりするんですけど。
飯田氏:質問の中には、菅さん自身の面談でもするような質問項目はありますか?
- 確かに、そういったものがあれば活かしたいですね。
飯田氏:あるんだとしたら、質問の内容が大事なんじゃなくて、答えを受けてプロファイリングする能力の方が大事になるかなと思ってて。そうであれば若手の面接担当者に「こういう質問をしましょう」と言っても伝わらない気がしています。
菅氏:僕も同意見です。結局はプロファイリングするにも技術がいる話で、誰でも実践できるような内容ではないです。
面談後の社内で候補者の評価やネクストクションの共有方法
- 面談後に候補者に対しての評価やネクストアクションを社内で共有されると思います。皆さんがどういった形で実施されているか、お伺いしたいです。
菊池氏: 弊社ではHubSpot Salesを使っています。営業がHubSpot Salesを使ってるので、もう1つ別のアカウントを作って、面談議事録、次のタスクとフェーズ管理を行っています。
HubSpotが良いのは、いつも使っているGmailの記録を、誰が送っても全部取り込んでくれるところです。それがとても便利ですね。
菅氏:弊社ではドキュメンテーションツールのSliteというサービスを使っています。面談した人の要点やポイントを記録して、印象と自分自身の通過/お見送りの判断をチームメンバーに共有しています。
- 飯田さんは、人事側の方に引き継ぐ時はどういったポイントを抑えてご報告されていますか?
飯田氏:キャリア採用にはHRMOSを使っています。HubSpotに興味が湧いてきましたが(笑)
菊池氏:いやいや(笑)
飯田氏:最初に候補者にご了解いただいた上で、面談を録画しています。録画データの共有とあわせてテキストで簡単に報告を行ない、人事側がジャッジするという流れです。この辺りのやり方はスピード重視で、私の判断で進めていました。
副業転職を見据えた交渉やアトラクト方法
- ありがとうございます。実際に面談された方をぜひ採用したいとなった時の交渉やアトラクトについて、工夫されていることをお伺いできますか?
飯田氏:結局、私達は現状ベンダーに開発していただく立場なので、こちらの要件はあまり実現できない感じなんですよね。というような実情を赤裸々にお話しさせていただいて、そういう仕事をしたいと思うか、候補者の方の希望のキャリアにつながりそうかというお話をお伺いします。
そして、大丈夫なのであれば、一緒に働きたいですというよりも、助けて欲しいですっていう話し方をします。あなたのスキルの高さを見てオファーしていますので、基本的には、弊社はこんな状況で困ってます、助けてもらいたいです、という感じです。
いわゆる条件交渉はしていません。Offersさんの候補者プロフィールに希望条件が書かれていて、それがベースになりますから。なので、どちらかというと週1からでも良いのでお願いできますか、というスタンスです。
アトラクトについては、この仕事面白いなと思ってもらってからが勝負です。まず少しでも良いから仕事をしてもらえるように、相手のニーズにこちらが寄り添えるか、合わせられるかを探す作業に近いかなって気がしています。
- 一緒に仕事をしてみて相性が良い方の稼働時間が増えていくと、よりコアメンバーに近いかたちで働いていただきやすいと思います。そのような前提で採用交渉をする場合の、ポイントがあればお伺いしたいです。
飯田さんは、将来的にコミットを増やしていただけそうな方を口説くときに、どのようなことをお話しされていますか。
飯田氏:いわゆるリファラルと同じ捉え方だと思っています。一緒に働いたことがある方については、正社員に向けた転職活動というよりは人間関係構築だと思っていて、コミットを増やすには長い時間がかかる前提でお話をしていく意識です。
「そろそろ転職しませんか?うちに」のような冗談っぽい会話は、普段一緒に働きながらサブリミナル効果のように投げかけていますけど。
転職を考えるようなフェーズが来た時に「あの会社の話聞いてみようかな」と思っていただくことが重要だと思うので、会社を辞めてうちに来てくださいというアプローチは好きではありません。交渉というよりは、転職するまでのプロセスを関係構築に費やす感じですね。
- サブリミナル的に「転職どう?」と気軽に話すことで、いざご本人の意向が固まってきた時に話しやすくなるというのは、本当にその通りですね。菊池さんは、Offers経由で最初から正社員として入社された方もいたり、一方でフリーランスや副業として働かれるメンバーも採用されていると思いますが、徐々に精神的・時間的コミットを増やしていただくために、どのようなことを工夫してお話しされていますか?
菊池氏:弊社の場合は副業・フリーランス枠の人にお願いするお仕事の内容と、正社員・転職希望の人にお願いする内容が違うので、面談の時に最初から話しています。副業のみの方には副業の仕事の内容しか説明しないし、転職も考えている話になれば正社員であればこういう仕事を、とどんどん転職の方向の話をしていきます。
- 最後に菅さん。ファンタムスティックさんでは、最初週2で採用された方が、コミットを徐々に増やし週4稼働となった事例がありましたが、選考の時のアトラクト方法や、稼働を増やした際のコミュニケーションについてお伺いできればと思います。
菅氏:基本的に「助けて欲しい」というスタンスは飯田さんと同じで、ぜひお力添えをという雰囲気です。コミットを増やすことに対してプレッシャーがかかるようなコミュニケーションの取り方は避けていますね。一度ジョインいただいてからは弊社も評価される側になるので、そこからが本当の勝負だと思っています。
なので、面談は稼働条件についてはなるべく候補者の意向に沿うようにしますし、質疑応答にも全部お答えします。1時間ほどの面談のうち、後半の30分はほとんど雑談にしてるんですけど、それを経た後に「どうですか?、1ヶ月だけでも良いんだけど弊社で働いてみませんか?」って聞きますね。そこで「ちょっとやってみます」という返事があって、僕がぜひやって欲しいと確信を持っている時は、その場でクラウドサインで契約取っちゃいます。
- もうサインしてもらって一緒に働きましょう、という感じで。
菅氏:はい、じゃあ来週からよろしくお願いします、みたいな流れに持っていきます。
飯田氏:菅さん、昔営業やられていたのか?という感じの雰囲気が出てますけど(笑)
菅氏:いや、ずっとエンジニアだけをやってるんですよ、営業だけはやりたくなくて(笑)
飯田氏:分かります。
菅氏:でも、営業も採用も同じだと思います。鉄は熱いうちに打つ感じが。
飯田氏:スピード感がありますね。
菅氏:やっぱり、面談後時間が経ってしまうと人の心って冷めちゃうじゃないですか。熱いうちに(契約書)書けるものは書いとけ、みたいな。
- 鉄は熱いうちに打つ、まさにクロージングですね!これにてパネルディスカッションは終了とさせていただきます。改めて、皆さんどうもありがとうございました。