デジタル庁CTO 藤本氏に聞く、行政DXの面白さや開発組織の展望。複業を決めた理由とは?

エンジニアやデザイナー、PMの複業には、さまざまなストーリーが存在します。本企画『複業百景』では、実際に複業をしている方の複業事情を、複業のモチベーションや今後の展望、組織体制など多様な切り口からご紹介します。

記念すべき第一弾は昨年9月にデジタル庁 CTOへの就任を発表し話題を集めた、グリーCTOの藤本真樹さん(@masaki_fujimoto)です。立ち上げ期にあるデジタル庁では、実際にどのような業務をされているのでしょうか?

参画から数ヶ月経過しての率直な感想や官公庁と民間の違い、デジタル庁における今後の展望について、藤本さんに伺いました。

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参画の理由は「公共性の高さ」と「行政の面白さ」

藤本様はグリーのCTOを長く務められています。民間でのスカウトも多かったのではないかと思いますが、なぜデジタル庁を選ばれたのでしょうか?

藤本氏:うーん、多分ですが、デジタル庁でなければ参画していなかったと思います。デジタル庁に参画した理由は大きく2つあります。

まずは、キャリアを重ねる中で「公共性」が高いことに取り組みたいと考えるようになったことですね。国としての生産性を上げていくことは、結果的に企業にもフィードバックされる。大きな視点で捉えた時、行政に関わることでこれまでより一段多くの人々や企業に役立つのではないかと考えました。

あとは、単純に機会としてとても面白いと感じました。行政はやってみないとわからないことがとても多い分野だと思います。例えば、行政の様々な手続きの裏側や不自然だと感じる部分がなぜそうなっているのか、どうしたら変えられるのかを考えていくことはとても興味深いですね。

業務自体はとても大変ですが、面白いこともたくさんあります。

行政と民間でプロダクト開発はどう異なるのか?

参画から3ヶ月経過しての率直な感想をお聞かせください。

藤本氏:できることは本当にたくさんありますね。行政と民間の違いも実感しています。

行政と民間で大きく違う点は、まず「売上」という概念がない点ですね。会社であれば事業のミッション、そして成長という基本的な基準がある。しかし、行政府の場合、目指すのは国家の成長や「国民の生活が良くなる」という目標で、それぞれの組織に売上や利益があるわけではないので単一の指標では測れません。

また、当たり前のことなのですが、お金の使い方や施策について「国民への説明」が常に求められる点も大きく異なると感じています。当然といえば当然なのですが、意思決定をきちんと説明できるかどうかが、常にシビアに見られている気がしています。

デジタル庁自体は、9月に数百人からの組織としていきなりのスタート、という形だったので、まだまだ、現状がベストだとは思っていません。どのように改善していくかはまだ検討している段階です。感覚としては、ようやくスタート地点が見えてきたくらいでしょうか。

行政組織は、藤本様が関わられてきたプロダクト開発組織とは大きく異なっていると思います。実際、これまでの知見はどの程度再現できるのでしょうか?

藤本氏:これまでの知見は有用だと感じていますが、価値を出せるかどうか判断できるのはまだ先ですね。

少なくとも今までは、行政府の主目的はプロダクトを作るということではなかったので、これを前向きに捉えるなら、0からのスタートですしなのでこれまでの開発経験は何にでも役に立つと言えます。

一方で、プロダクトを作るという概念が無い、あるいは希薄だった分、結果を出すのは時間と労力がかかるという側面があります。いずれにせよ、再現性という視点で結果を出せるかどうか判断するにはまだまだ時間がかかりそうですね。

なるほど、特にデジタル庁のミッションの一つでもある行政組織のDXという視点でも民間と政府では大きく異なりそうですね。

藤本氏:行政は調達というプロセスで民間の力で進めていく方法が主になります。企業だと内製化することをまず考えることが多いと思いますが、行政の場合、お金をどこにどう使うかという視点になることが多いですね。

そのため、官公庁の中ではほとんど完結しないため、システム的なDXは企業に比べてとてもチャレンジングです。数百単位の外部ベンダーや地方自治体との共存を考えながら、進めていく必要があります。

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デジタル庁におけるCTOのミッションと課題

デジタル庁におけるCTOのミッションや課題をお聞かせください。

藤本氏:CTOとしてやるべきことは、グリーで行っていることと大きく変化はありません。デジタル庁のミッションに対して技術面・組織面に足りないところを補っていくことが役割です。

行政の意思決定では、政治的な視点も必要なため、常に技術的に一番良い選択肢を取れるとは限りません。

それでも意思決定の際に技術について、しっかりと理解しておくということは大切です。例えば、技術的な負債を抱えるときにも、その影響範囲を把握した上で実行するのと、そうでないのとでは大きく異なります。

組織面については、開発体制全体の質を底上げするということですね。まだ検討段階ですが、ソースコードの管理方法を変更したり、テストコードを書く習慣を作ったりです。一つ一つ、生産性を改善するためにできることをやっています。

現在の開発体制は "スタートアップの立ち上がり" に似ている

大臣・副大臣・政務官とはどのような関わり方になるのでしょうか?

藤本氏:想像よりもかなりの時間をデジタル庁内部の業務にもコミットしてくださっています。デジタル庁のエンジニアメンバーとの懇親会にも顔を出してくれるくらい、カジュアルに接してくれますね。

他のCxOの方々とはどのように関わっているのでしょうか?

藤本氏:それぞれの管掌がちょうど良く分かれているので、デジタル庁のミッションのためにできることを各々考えて実行しています。管掌範囲はかっちりと決めているわけではなく、柔軟に対応していますが、他の4人の方も本当に話しやすくて連携しやすいです。厳密に決めるのではなく柔軟性が重視されている点は、スタートアップの立ち上がりによく似ていますね

 ▲デジタル庁の組織図

国と民間の連携を深めてデジタル化を強くする

デジタル庁の職員には、どのような人材になることを求めているのでしょうか?

藤本氏:行政官のみなさまはプロダクトのスペシャリストになることは必要ないと思います。例えば、デジタル庁が扱う開発プロジェクトでは外部ベンダーに発注することも多いです。そういった外部発注の場合でも、上手くディレクションできる人材が求められています

また、デジタル庁には民間からの職員も多くいますが、その方たちには、行政の仕組みを理解して企業に戻っていただきたいです。行政の仕組みを理解した人が民間にも増えていくことで今後連携が取りやすくなるからです。

例えば、コロナのような緊急事態が起きた時に2週間ほどさっと手伝ってくれる人が増えれば、今後仕事を進めやすくなると思います。そういう世界になったら面白そうですよね。

開発組織における副業人材の展望

外部からの人材確保はどのように進められていますか。

藤本氏:民間からリクルーター担当にも参画して頂いて進めています。

まだまだやりきれていない部分は多いですが、深くて狭い業務範囲のほうが副業ではパフォーマンスを出しやすいと思うので、ジョブ型/タスク型で採用していく方針です。

行政における人材の考え方に「リボルビングドア」というものがあります。これは、民間の方が行政に参画してまた民間に戻っていく、そうしてお互いのパフォーマンスを上げていくことができる、という考え方です。

人材が行政と民間を行ったり来たりして、どちらのパフォーマンスも上げていけるような流れを作りたいと考えています。

副業人材の受け入れについて障壁は無かったのでしょうか?

藤本氏:今は外注先としての業務委託ではなく、非常勤の国家公務員として採用しています。国家公務員という身分の制約は生まれるのですが、非常勤である分、柔軟に業務を進められています。

コミットする量や内容を厳密に決めず、スピード感を持って対応している状態です。

▼(参考)デジタル庁の求人一覧

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デジタル化に向けた今後の展望

 ▲デジタル化の基本戦略

掲げている政策のうち、どれも最優先課題だとは思いますが、どのような取り組みがまず見えてくるのでしょうか?

藤本氏:どの取り組みが、と明言するのは難しいですね。開発のサイクルもありますが、半年〜1年も経てば、徐々に、少しずつですが皆さまに成果を実感をしていただけるようになるかなと思います。

今はいくつものプロジェクトが並行して進んでいますが、僕としてはフォーカス範囲を絞って成果を挙げられれば、という思いです。

やるべきこと、やりたいことは本当にたくさんありまして、なので一通りやるのに10年、世界で勝ちにいくのには20年くらいはかかるかなと。

そのくらい時間はかかっても、やりきる覚悟でやっていくことが必要です。

行政組織のDXを進めていく上で参考にしている国はありますか?

藤本氏:英国は規模も近かったりするので、よく見ていますね。シンガポールやエストニアもよく名前が上がりますが、国家の規模が違いすぎるため、参考になるところもあれば、そのままでは当てはまらない、ということもあります。

いずれにせよ、そういった目標に対しては、現在は実行していくパワーが圧倒的に不足しています。壮大なビジョンに対して、長期的なマイルストーンをどこに置いて、どう進めていくのか、具体化して進めていく人材が求められています。

日本でもIT化の取り組みは実は長い間行われていて、それらを踏まえた上で、やり方を改善しつつ、適切な人材を確保し、根気強く取り組んでいきます。

今後もデジタル庁の動きに注目したいと思います。ありがとうございました。
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