ITパスポート試験の難易度
ITパスポート試験は、情報処理技術者試験の一つで、かつてはパソコンの入門資格だった『初級シスアド』(初級システムアドミニストレータ試験)が改訂されて生まれた資格です。難易度も初級シスアドを引き継いで、初級レベルの試験に位置づけられています。
IT系試験の入門編
情報処理技術者試験は12のレベルに分かれており、ITパスポート試験はその入門編で、最も優しい『レベル1』の資格です。レベル2以降の資格は、システム開発系の知識が必要となるためITパスポート試験と比較すると難易度は一気に高くなります。
手始めにITパスポート試験に合格して、段階的に高度なIT試験へとステップアップし、最終的には確立したITの専門知識を身につけることを目指すのが情報処理技術者試験です。学生でも合格は可能ですが、社会人の合格率が比較的高めになっています。
試験概要
試験時間は120分で、四択式の問題を100問解答します。採点方式は、単純に正答数ではなく項目応答理論という運や難易度のゆがみを排除された形で総合的に判定する仕組みです。
内容は初級シスアド試験の一部がそのまま引き継がれています。試験は全国で随時開催されており、試験日時は会場ごとに別々で指定されています。
CBT方式とは
ITパスポート試験は、パソコン上に表示された試験問題を解答するCBT方式が採用されています。CBT方式では試験が終了した後、パソコンの画面上にすぐに結果が表示される便利な仕組みになっていますが、正式な合否は後日の発表です。
ITパスポート試験の公式サイトでは、CBT方式の試験を体験できるソフトウェアが公開されています。実際に過去のITパスポート試験で使われた問題が使われているため、パソコンでCBTを体験して、試験のイメージをつかみましょう。
他の試験と比較した難易度
IT系資格の中には、ITパスポート試験と同じ内容が含まれる資格があります。また、就職活動をする人が取得する資格として、簿記の難易度も比較の対象になることがありますので比較してみましょう。
IT系資格
同じIT系の入門資格として、マイクロソフトオフィスのスキルを証明する『MOS』があります。出題範囲がオフィスのみということで、普段からエクセルやワードに触れている人であれば、ITパスポート試験より難易度は低くなるでしょう。
『ドットコムマスター』のシングルスター、『J検』の情報活用試験と情報デザイン試験、『パソコン検定』2級、『マルチメディア検定』3級が、ITパスポート試験と同程度の難易度で、共通する内容が含まれるため、仕事や分野に合わせたダブル取得もおすすめです。
簿記
勉強する分野が異なるため内容で比較することは難しいですが、勉強時間と合格率で比較すると簿記の『3級』とITパスポート試験が同じ程度の難易度になります。それぞれ、ITと経済の基礎が身につき、就職活動でも有利な資格です。
簿記3級の勉強期間の目安は3カ月程度で、ITパスポート試験と同じぐらいの勉強期間になります。簿記を活用する仕事には経理などがあげられますが、会計ソフトやデータベースなど、ITパスポート試験で勉強する分野は、経理でも必要とされる知識です。
ITパスポート試験 出題内容
ITパスポート試験の内容は、ストラテジ、マネジメント、テクノロジの3分野から出題されます。出題範囲が幅広いため、よく出題される問題のポイントをおさえて勉強するようにしましょう。
テクノロジ系
ハードウェアとソフトウェア両方に関する問題が出題されます。ITの基礎理論である二進数などの数学知識や、アルゴリズム、コンピュータの構成、ネットワーク、セキュリティ、データベースまで幅広い知識が問われます。
特に頻出する分野は、情報セキュリティシステム、生体認証、表計算ソフト、関係データベースです。関係データベースの演算や用語、オープンソフトウェア、暗号技術の共通鍵方式・公開鍵方式いずれかの出題率も高めですので、理解しておくようにしましょう。
ストラテジ系
経営視点での問題が幅広く出題されます。企業活動を始め、経営戦略マネジメント・マーケティング、技術戦略マネジメント、システム戦略、システム企画分野の他、法務分野でも用語を中心とした知識が問われますので漏れなく押さえておきましょう。
特に頻出するのは、個人情報保護、著作権、不正アクセス行為の禁止に関する法律などです。また、経営情報の分析手法であるSWOT分析、プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)分析などの用語も頻出です。
マネジメント系
システム開発・ソフトウェア開発プロジェクトのマネジメントについて出題されます。プロジェクトの進め方や管理方法、システム開発手法や技術、システム監査の内容や流れが問われますので、概念や関連用語は覚えておきましょう。
特に出題されるのは、ソフトウェアライフサイクルのプロセスの流れ、システム監査、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメントのWBS、アローダイアグラム(PERT図)などに関連する問題です。
ITパスポート試験の合格に必要な勉強
ITパスポート試験に合格するためには、参考書によるインプットと、演習問題によるアウトプットが両方必要になります。インターネットサイトやスマホ、アプリ、動画での勉強も効果的です。
勉強時間
勉強時間の目安は、パソコンに慣れているかどうかで異なりますが、短期集中で効率的に進めれば30時間程度、じっくり取り組んで100時間程度です。ただ、6割正答すれば合格となる試験なので、完璧を目指す必要はありません。
短期集中の勉強方法は、苦手な分野に時間を取りすぎないようにして、期限を定めて過去問を多くこなすことがポイントです。
参考書で概要を把握
参考書は、イラストや図が多く使われていて、全体を体系的に理解しやすい書籍を選びましょう。テキストや参考書が苦手な人は、一部有料のものもありますがオンライン講座サイトも活用できます。演習問題をたくさん解くことで理解度を測りましょう。
参考書では、一通り読んで概要の大枠を把握した後、分からない点を重点的に繰り返し勉強していきます。演習問題での正答率が安定してくるまで、参考書で弱点減らし、演習問題を繰り返すことが大切です。
出題傾向をつかむ
参考書を読み込んで試験全体の概要を把握した後は、特にどの部分が問題に出やすいのか、出題傾向をつかむことで効率的な勉強ができます。
テクノロジ系・ストラテジ系・マネジメント系の各分野で、頻出問題や、よく出るキーワードを把握し、それらを重点的に勉強するようにしましょう。
多くの参考書で、出題傾向についても解説しているので活用してください。出題傾向をわかりやすく解説してくれている参考書を選ぶことも重要です。
過去問を解く
全体の概要を把握し、出題傾向を理解したら、あとは練習あるのみです。過去問をひたすら解いて、本番に備えましょう。過去問で分からない用語があったら必ず調査して理解し、再度、過去問で復習することが大切です。
過去問の数をこなすのが点数アップの近道です。苦手な分野の理解に時間を取られ過ぎて、勉強が進まなくなるよりは、問題を解くことに専念するほうが効率的といえるでしょう。用語は暗記が必要ですが、用語を使った事例・問題と組み合わせると覚えやすくなるはずです。
おすすめ問題集とサイト
ITパスポート試験に関する情報は、電子書籍を含めた参考書や、過去問のほか、インターネットを使って収集可能です。効率的に情報を収集するために、情報量と質、使いやすさに優れたおすすめの問題集とサイトを3つご紹介します。
対策テキスト&過去問題集
ITパスポート試験の教科書と過去問の両方を兼ね備えた一冊です。図解が数多く盛り込まれており、体系的にわかりやすい教科書となっています。各章に予想問題が100問収録されていて、分野別に対策を立てることにも役立つ問題集です。
過去問題が1800問収録されたCD-ROMが添付されていて、パソコンを使ったCBT試験を再現したプログラムになっており、ITパスポート試験本番に近い環境で過去問を練習することができます。
- 商品名:2019年度版 ITパスポート試験 対策テキスト&過去問題集
- 価格:2376円
- Amazon:商品ページ
かんたん合格 ITパスポート過去問題集
解説が充実した電子書籍対応の問題集です。問題文と解説内容が左右の見開きで構成されており、理解するまで繰り返し読み返せる作りになっています。計算問題対策や実力診断テスト、必須用語一覧のプログラムも収録されており、勉強の総仕上げ向けの一冊です。
丁寧で細かく分かりやすい内容で解説されているので、解答の意味を理解して覚えることができ、勉強の確実性が高まることで試験への自信にもつながります。過去5回分の過去問と頻出問題が274問収録されています。
- 商品名:かんたん合格 ITパスポート過去問題集 2019年度 春期
- 価格:1180円
- Amazon:商品ページ
ITパスポート試験ドットコム
ITパスポート試験ドットコムは、試験の概要、試験の出題範囲、申し込み方法、ITパスポート試験の難易度や勉強方法、資格取得後の仕事まで、ITパスポート試験の情報を網羅したサイトです。
用語をクイズ形式で覚えるコーナーもあります。用語の暗記に苦戦しているなら、ITパスポート試験ドットコムの活用がおすすめです。
『ITパスポート過去問道場』では、ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系の3分野の過去問から、出題範囲を選択して勉強することができますので、分野別に集中して傾向を理解することに役立ちます。
過去問からの出題は60%程度です。過去問を取りこぼさないよう繰り返し取り組んで、正答率を上げていきましょう。分からない点は解説が詳しく載っていますので、正解を丸暗記するのではなく、しっかりと理解しながら勉強できるツールです。
IPA公式サイト
ITパスポート試験の公式サイトでは、過去門と解答例をダウンロードすることができ、受験案内、全国の試験日程、開催場所、受験の申し込み、CBTの操作説明、受験者データの統計情報まで、主催者独自のくわしい情報が掲載されています。
ITパスポート試験についてのデータや活用事例が詳しく載っていますので、どのような目的でITパスポート試験を受けるのか、合格したら何に活用できるのかイメージできていないならチェックしましょう。ITパスポート試験の合格者の声も参考になります。
ITパスポート試験の注意点
ITパスポート試験対策の情報は数多く手に入れることができ、受験する機会もたくさんあることから、独学でも気軽に勉強を始めることが可能です。独学でやると決めた人へ、受験までのスケジュールと勉強方法に関する注意点をまとめました。
機会の多さを甘えにしない
ITパスポート試験は短いスパンで定期的に試験が行われるため、受験の機会が多く、何度でも受けることもできますが、準備が後回しになり、「次の機会でいいか」と妥協してしまわないためにも、受験までの期限を決めて勉強するようにしましょう。
試験日程は、IPA公式サイトで3カ月先までの日時が発表されていますので、3カ月後に受験することを目標にスケジュールを組んで、受験の申し込みまで済ませておくのがおすすめです。これにより、短期集中で勉強するモチベーションにもつながります。
多すぎる参考書はかえって邪魔になる
ITパスポート試験の勉強に気合を入れて、参考書を買いあさってしまうことがありますが、たくさんの参考書はかえって邪魔になります。必要以上に参考書を読むのは非効率な上、情報量の多さから途中で勉強するのを諦めてしまう恐れもあるからです。
参考書は多くても2冊までとし、繰り返し覚えることに注力するようにします。参考書に不満を感じたら他の本と交換し、数を増やさないようにしましょう。
また、参考書以外にもオンライン講座を使ったり、スクールに通ったりなどの選択肢もあります。勉強時間の配分やポイントを絞った学習ノウハウも学ぶことができるので、参考書と併用するのもおすすめです。
ITパスポート試験の次に狙いたい資格
ITパスポート試験に合格したら、もう一歩上のランクの資格にチャレンジしてみましょう。ITパスポート試験は難易度も低く、ITパスポート試験で得た知識を活かすことで、さらに取得できる試験の選択肢も広がります。中でもおすすめの試験を二つ紹介します。
基本情報技術者試験
『基本情報技術者試験』は、情報処理技術者試験の一つで、ITパスポート試験よりレベルが一つ上の上位資格です。入門編のITパスポート試験と比較すると難易度は高めの試験ですが、出題範囲や分野はITパスポート試験とほぼ同様ですので、一から学ぶよりは短期間での習得が可能となっています。
試験内容は、システムの設計や開発・運用に関する技術的な用語や知識が中心となっており、ITに特化した実践的な内容となっています。将来、プログラマ・システムエンジニアなどを目指している人は、ぜひ取得しておきたい資格です。
ITコーディネータ試験
『ITコーディネータ試験』は、経営とITを組み合わせた試験で、実践的な知識を身につけることを目標としています。ITの知識を向上させて経営に活かしたい経営者や公認会計士、税理士、中小企業診断士として働く場合などに適した資格です。
あるいは経営の知識を向上させ、IT戦略や経営に活かしたいITコンサルタントやプロジェクトマネージャー、システムエンジニア、システム監査などのシステム担当者にも向いています。ITパスポート試験で750点以上を取得した人は一部の試験が免除されるという制度もあります。
まとめ
ITパスポート試験の難易度は高くありません。ただし、勉強方法を間違えると、必要以上に勉強時間がかかってしまい、受験に失敗することもあります。出題範囲とポイントを押さえ、スケジュールを立てて効率よく勉強することが大切です。
勉強方法は参考書や過去問、動画、講座などがありますが、参考書は図解されて読みやすい書籍で体系的に学び、過去問はパソコンやスマホのアプリを使って実践に近い形で勉強しましょう。動画や講座も参考書や過去問と組み合わせると効果的です。
ITパスポート試験は適切に勉強すれば、短期間での取得も可能な試験です。合格して終わりではもったいないので、情報処理技術者試験のさらなる上級試験を目指したり、他の資格も組み合わせて取得したりなど、知識の幅を広げましょう。