システム監査技術者試験を受けるメリット
システム監査技術者試験は情報処理技能者試験の一つであり、情報システムを監査するための知識が必要です。試験を受けることでどのようなメリットがあるのかを解説します。
エンジニアのスキルアップに
システム監査技術者試験に合格すると、エンジニアのスキルアップとして有効です。企業内の監査部門においてシステム監査業務に就くことも可能になります。
監査法人で企業システムを外部からチェックする立場で働くこともできるでしょう。
また、システム監査技術者試験は経営的な知識も問われるため、マネジメントの仕事をしたい場合もステップアップとして有効であると言えます。
転職、案件獲得に有利
エンジニアのスキルアップ以外にも、システム監査技術者試験に合格すれば転職や案件獲得にも有利になります。
今やどのような業界でも必要とされるコンピュータ技術ですが、システムの故障やトラブルの発生により社内業務が滞るケースも少なくありません。業務が滞れば、企業の信用にも関わってしまいます。
そのような時こそ、コンピュータシステムの知識に長けた、システム監査技術者試験の合格者が重宝されるのです。今後も継続的な需要が見込めるため、転職する場合でも有利にはたらくと言えます。
フリーランスとして活動する場合も、試験合格者は優れた知識があると判断されるため、案件の獲得にも有利にはたらき、収入アップにつながるでしょう。
どんな人が受ける試験なのか
継続的な需要の見込めるシステム監査技術者について、具体的にどのような人が受ける試験なのかを解説します。
IT関連業務
システム監査技術者はIT関連の業務に従事している人が受験する試験です。その中でも、システム監査の専門家として能力が求められます。
システム系の業務にはプログラムの開発や機材関係の構築、運用と保守、企画や戦略などが含まれており、システム監査技術者はそれら全てを監視する役割です。
システム系の業務では、社内の重要なデータを扱うことが多く、改ざんや盗難を防ぐ役割を担っています。有資格者が正しく監査することで、企業の社会的な信用にもつながるのです。
実務経験なしでもOK
システム監査技術者になるには実務経験は関係ありません。監査手順も流れが決まっており、試験内容は知識中心となりますので、暗記での対策が可能です。
システム系とは全く異なる業界の人が挑戦するには難易度はかなり高いと言えますが、ITやシステム系経験者なら実務経験がなくても合格できる内容になります。
システム監査技術者試験の難易度
システム系の全てを監査する役割を担うシステム監査技術者は、試験難易度も高くなっています。試験難易度と合格率や合格点を把握しておきましょう。
難易度はトップクラス
システム監査技術者の試験難易度は、情報処理技術者試験でも難易度の高い『高度試験』に含まれています。合格者の平均年齢は40歳を超えるなど、ITストラテジスト試験やプロジェクトマネージャ試験と並ぶ難易度の高さです。
数ある情報処理技術者試験の中でもトップクラスの難易度となっており、1〜4のスキルレベルで示される難易度も、最難関のスキルレベル4に相当します。
合格率と合格点
システム監査技術者試験は午前I、午前II、午後I、午後IIの4つに分かれています。合格基準が設けられており、午前Iの得点が60%に満たない場合はそれ以降の採点は行われず、不合格です。
午前II以降の試験も同様で、得点が60%満たない場合は次の試験採点さえしてもらえなくなります。試験ごとに基準を満たさないと足切りされる、厳しいシステムです。
平成30年の合格率は、応募者4253名に対して14.4%と難易度の高さがわかる数値になっています。
合格のために必要な期間
システム監査技術者試験は情報処理技術者試験でもトップクラスの難易度ですから、試験に向けた勉強も相応の時間が必要です。ここからは、合格するためにはどれくらいの時間が必要なのかを解説します。
通信講座の場合
試験対策に通信講座を活用するのも選択肢の1つです。資格試験対策を行う予備校や専門学校では、システム監査技術者試験対策コースを設けていることがあります。
メリットは試験までのスケジュールを踏まえた対策ができることです。4つの試験内容について体系的に学び、試験日程が近づいたら模擬試験での力試しもできます。
教材も過去問などを研究して作られたものですから、参考書や問題集選びで悩むことはないでしょう。わからない分野について、担当者に質問できる制度があることも魅力のひとつです。一般的には受講期間は5カ月程度、費用は5〜6万円程度が相場になります。
システム監査技術者試験の勉強法
システム監査技術者には4つの試験科目があり、それぞれの試験内容を踏まえた対策が必要です。ここからは、システム監査技術者試験の勉強法を解説します。
試験時間や出題形式は以下のとおりです。
午前I | 午前II | |
試験時間 | 9:30〜10:20(50分) | 10:50〜11:30(40分) |
出題形式 | 多肢選択式 | 多肢選択式 |
出題数 | 30問 | 25問 |
午後I | 午後II | |
試験時間 | 12:30〜14:00(90分) | 14:30〜16:30(120分) |
出題形式 | 記述式 | 記述式 |
出題数 | 3問(2問を選択して解答) | 2問(1問を選択して解答) |
午前I問題への対策
システム監査技術者の午前I問題は、他の高度情報処理技術者試験と共通です。初めて受験する場合は、午前I問題が鬼門になるでしょう。
基礎知識が中心となるため、繰り返し学習することが必要です。問題集は最低でも3回は繰り返して学習し、過去問などに取り組みましょう。
本番の試験での合格基準は正答率60%ですので、試験対策では余裕を持って80%以上の正解を目標として設定してください。
また、過去問の学習ができるアプリなどを使用することで、通勤時間などのスキマ時間を有効に活用することができます。
午前II問題への対策
午前II問題は午前I問題よりも難易度は低いため、午前Iの対策が十分にできていればカバーできる内容です。用語の暗記も少なく、一般常識で解答できる問題が多くなっています。
午前Iと同様に、繰り返し過去問に取り組んで十分な対策をすることが重要です。
午後I問題への対策
午後I問題は、出題される3問のうち2問を選択して解答します。1問につき5つの問題文が設定されており、それぞれに50字前後で記述する形式です。
基礎知識がないと問題を解くのは難しいため、午前I問題対策がしっかり行えるようになってから取り組んでください。実務経験がないと対応が難しい問題も含まれているため、解答できない問題をすばやく取捨選択する判断力も必要です。
問題文を読むことに25分、解答に15分、採点と模範解答の研究に30分程度を目安にして学習しましょう。時間配分の練習を常に行うことで、記述速度の向上にもつながります。
問題集や過去問は2〜3回は繰り返すようにしてください。また、記述を終えた後には模範解答を確認し、自身の答案と照らし合わせて解答時のポイントをおさえることが大切です。
午後II問題への対策
午後II問題も記述式です。ただし、午後I問題のように簡潔に記述するのではなく、より長文での解答形式となります。700〜1400字で記述するため、長文での解答になれることが大切です。
文章は順序立ててわかりやすく書くのがポイントとなります。実際に問題文を読んで文章を書き、見直しを完了するまで、最初のうちは2〜3時間ほどかかるでしょう。
最初はわかりやすい文章を書くことを意識して記述し、慣れてきたらタイマーを設置して徐々にスピードを意識するなど、順を追って取り組むことが望ましいです。
いずれにせよ最も時間のかかる設問となりますので、午後II問題の対策は十分な時間の確保ができるときに行いましょう。
午前Iの免除制度もある
システム監査技術者試験は4つの試験科目がありますが、午前I試験には免除制度があります。免除条件は3つあり、いずれかを満たすことで午前I試験の免除が可能です。
- 応用情報技術者試験(AP)に合格
- 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援試験のいずれかに合格
- 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前I試験で基準点以上の成績をとる
出典:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験:高度試験等の一部(午前I試験)免除制度
午前I試験の免除は、非常に便利なシステムですので積極的に活用しましょう。1科目だけでも免除されることで体力的にも精神的にも負担が減り、他の部分の試験対策により多くの時間を費やすことができます。
免除制度を利用するには申請が必要です。免除される期間は申請後の2年間となっています。
論文問題は慣れが必要
午後の問題は記述式ですので、知識の暗記だけでは対応できません。特に午後II問題は長文の作成が求められますので、より試験時間を意識した対策が必要です。
過去問にできるだけ多く取り組み、パターンに応じた自分なりの定型分を用意するなど、長文問題への慣れが有効な対策となります。別途に費用が発生しますが、場合によっては添削サービスを利用するのも有効です。
自分で勉強するときは、タイマーで時間を計って時間内に書く練習も行いましょう。午後II問題は120分で2000文字以上の文章を書くことになりますので、常に本番を想定した練習も必要となります。
公式HPの過去問を活用
情報処理推進機構(IPA)の公式サイトでは、システム監査技術者試験の過去問が無料でダウンロードできます。何度でも印刷できますので、繰り返しの学習に役立てましょう。
問題冊子、配点割合、解答例、採点講評のダウンロードが可能で、内容は随時更新されています。市販の参考書ではカバーできていない過去の問題も掲載されていますので、ダウンロードして勉強に活用してみましょう。
おすすめの参考書
試験対策のための参考書や問題集は数多く販売されています。その中からおすすめの参考書を4つ紹介します。
情報処理教科書 システム監査技術者
システム監査技術者試験の定番参考書と言えるのが『情報処理教科書 システム監査技術者』です。参考書と問題集が1冊にまとめられており、この1冊だけで十分な学習が可能になっています。
学習を始める前に『出題傾向と対策』のページを読むことで試験の概要を掴めるため、試験勉強に効果的です。
午後I問題と午後II問題は、過去問とサンプル論文のダウンロードが利用できます。電子書籍版で購入すれば、スマホなどを利用してスキマ時間に勉強できるでしょう。
- タイトル:情報処理教科書 システム監査技術者 2019~2020年版
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「専門知識+午後問題」の重点対策
午後II問題の対策として、想定問題とサンプル論文が用意されていることが特徴です。過去問を解き終えた後の腕試しに使用してみましょう。
また、午前I問題の対策パートは、問題のカテゴリごとに分類されているため勉強しやすい内容になっています。
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徹底解説 システム監査技術者 本試験問題
上記の『「専門知識+午後問題」の重点対策』と同じ出版社から販売されている『徹底解説 システム監査技術者 本試験問題』もおすすめです。
『「専門知識+午後問題」の重点対策』で練習したことをもとに、ステップアップとして取り組む問題集として適しています。過去問3年分が収録されていますので、試験対策の総まとめとして使ってみましょう。
解説内容はボリュームがあり、間違いの選択肢についても詳細に解説されています。解答用紙のほか、書籍に収録できていない問題と解説のダウンロードサービスも利用可能です。
- タイトル:2019 徹底解説 システム監査技術者 本試験問題
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システム監査技術者合格論文の書き方事例集
午後Ⅱ問題の論文対策をするなら、『システム監査技術者合格論文の書き方事例集』がおすすめです。論文例が30本収録されているため、論文の書き方を徹底的に学べます。
論文の書き方についても基本から丁寧にレクチャーされているため、文書を書くのが苦手な受験者でも取り組みやすい内容です。
論文の書き方だけではなく、対策に取り組む受験生が直面する悩みや不安についてもQ&Aで取り上げています。『システム監査技術者合格論文の書き方事例集』は論文対策の決定版とも言える参考書です。
- タイトル:システム監査技術者合格論文の書き方事例集 第5版
- 価格:3240円(税込)
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受験の詳細
システム監査技術者の試験は年1回(春期)の実施で、他の情報処理技術者試験と同時期の実施となります。
試験日は毎年4月の第3日曜日ですが、申し込みは例年1月中旬から2月中旬までとなっているため注意が必要です。試験後の合格発表は6月中旬から下旬にかけて行われます。
システム監査技術者試験の受験を予定しているならば、年明けには申し込みの準備を進める必要がありますので、期日に余裕を持って行動しましょう。
申し込み方法と費用
システム監査技術者試験の申し込み方法は、郵送もしくはインターネットです。
郵送の場合は公式サイトから案内書と受験ガイドをダウンロードし、記入しましょう。その後、郵便局の窓口で受験手数料5700円を払込み、簡易書留にて願書を郵送します。
受付期限最終日の消印でも有効になりますが、余裕をもって郵送しましょう。
インターネットで申込む場合の申込み期限は、郵送での申込みよりも長めに設定されています。画面の指示に従って、必要事項を漏れなく入力していきましょう。
受験手数料の支払い方法は、クレジットカード、ペイジー、コンビニ支払いから選択できます。受験手数料は5700円で変わりありません。
まとめ
システム監査技術者は、コンピュータを使ったシステムを監査する専門家です。試験難易度は情報処理技術者試験の中でもトップクラスになります。
実務経験がなくても受験することは可能で、合格するとスキルアップや転職などに有利になるでしょう。試験科目は4つあり、午前問題は基礎知識の反復学習、午後問題は論文問題の反復が必要です。
試験は年1回、4月の第3日曜日に実施されます。年明けから受付がはじまるので、余裕を持って行動しましょう。申し込みは郵送かインターネットです。
難しい試験ではありますが、しっかりと対策を行ってシステム監査技術者試験に臨みましょう。