UXデザイナーとして、DMMサービス群を牽引
- まずは西部さんがDMMに入社してから、現在に至るまでの経緯を教えていただけますか?
西部 渉氏(以下、西部氏):DMMへは新卒(’15)で入社し、まずは全社横断部門である「UX チーム」に配属となりました。1年目はユーザーインタビューをメインに担当し、2年目からはカスタマージャーニーマップ作成やそれに伴うワークショップ運営など、少しずつ上流の部分に関わる機会が増えてきました。
そして3年目~4年目には、DMMが展開する各サービスのKPI 設計の他、ブランディング戦略の企画・立案などに携わるようになり、4年目の後半からは「DMM GAMES」に異動し、引き続きUXデザイナーとしてプラットフォームの拡大を目指し、活動しています。
- 現在は具体的にどのような業務を?
西部氏:「DMM GAMES」には"遊び放題”という月額定額制のサービスがあります。今はこのサービス運営( KPI設定や売上分析など)などに携わりつつ、新卒1~2年目のメンバーの育成なども行っています。
UXデザイナーという肩書ですが、サービス運営に関わる各種数値を俯瞰で捉えて、そこから改善に必要なアクションを導き出し、実行へと進めていくのが大きなミッションです。もしかしたら、「マーケティング」と言った方がイメージは近いかもしれません。
- UXを設計する上でのこだわりについて教えてください。
西部氏:「真実を追求すること」には徹底的にこわだっています。そのため、「ユーザーは何を求めているのか、ユーザーからのニーズはどの数値に現れているのか」には特に着目しています。
- 具体的にはどのように進めていくのでしょうか?
西部氏:データは嘘をつきませんので、データから仮説を導き出すことを重視しており、下記の一連のサイクルを素早く遂行することを大事にしています。
①定量/定性データを、さまざまな角度から考察する
②現状の「課題の仮説」を立てる
③誰も気がついていない改善策(=新真実)を発見する
④それをサービスに反映し、数字に好影響を及ぼすか検証する
また、UX 設計は年々注目を浴びていると思うのですが、UXはデザイナーだけの知見にしたくないと思っています。UX自体の考え方は経営者などの意思決定者と共有した上で、ディスカッションの道具として使っていくのが、今後のWeb業界全体の発展に繋がると考えています。
新卒5年目、その裏にある課題
- それでは本題なのですが、副業をはじめたきっかけを教えていただけますか?
西部氏:私がふとnoteに「副業をしてみたいなぁ」と投稿したところ、知り合いに声を掛けていただいたのがきっかけです。2019年2月から副業を開始したので、もう半年以上が経っています。
- キッカケはnoteなんですね!もう少し詳しく教えてください。
西部氏:私が副業しているのは、「チームアップ株式会社」というスタートアップ企業なのですが、そこのデザイナー兼プロダクトオーナーの方に、Twitter経由でお声を掛けていただいたんです。
その方とは、ある外部イベントで知り合ったのですが、私がnoteのごく一部に「副業をしてみたいなぁ」と書いたのを見てくださったんです。
- そもそもなぜ副業を?
西部氏:主な目的は、「再現性の確認」です。どうしても1社だけの経験ですと、「このやり方は、他社でも通用するのか?」など自分の中でも課題があり、DMMとは違った環境で試してみたくなったんです。このあたりは私のnoteにも書いてありますので、そちらもご覧いただければと思います。
副業始めました。|すけきよ|note
https://note.mu/sukekiyo918/n/n90472c32ccde
- なるほど!それもあって、外部イベントにも積極的に参加されているんですね。
西部氏:そうです。社内だけで仕事をしていると、思考が固まってしまうこともあるので、できるだけ社外の人の意見も聞くようにしています。
- お誘いを受けたというのもあると思いますが、チームアップ株式会社で副業をすると決めた理由は他にあるのでしょうか?
西部氏:少人数のスタートアップ企業(当時、社員数は10名程度)であったこと。そして依頼内容が、リサーチや分析のコンサルティングなど、プロダクト開発/事業戦略の根幹に関わる重要な内容だということです。
先程、副業の理由として「再現性の確認」という話をしましたが、それを実現するには、DMMのような巨大組織ではなく、一人ひとりの声が経営にダイレクトに響くような少人数の環境でチャレンジしてみたいとも思っていました。
- 本業とは異なる環境で、自分の力を試してみたかったのですね。
西部氏:それと「自分は副業が初めての経験なので、副業の進め方が不慣れなんです......」と最初に正直にお伝えしたところ、「それでも構わない」と仰っていただけたのも、チームアップ株式会社に参画を決めた要因です。
本業の経験が、副業で活きた瞬間
- チームアップ株式会社はどのような事業を展開しており、西部さんはどのようなお仕事をしているのですか?
西部氏:「TeamUp」というサービスを運営しています。「TeamUp」とは、組織内における1on1ミーティングの運営・運用をスムーズにし、メンターがメンバーへフィードバックする文化を根付かせるためのサービスです。
私はまず「TeamUp」のマーケティング活動に関わるKPIの見直しを担当しました。同時に、出稿広告のクリエイティブに関するアイデア出しや、サイトへの訪問数・売上などの各種数値を調査しつつ、ペルソナの整理にもチャレンジしました。
- 副業はどのような形で進めているんですか?
西部氏:副業を開始した当初は、週1回程度オフィスに訪問してMTGをしていました。今はリファクタリング(※)のフェーズに入っているので、Slackなどを使ったリモートでのやりとりがメインになっています。
(※)プログラムの動作を変えずに、ソースコードを整理すること
- 副業に携わる時間はどのぐらいですか?
西部氏:アイディア出しや情報整理などは、土日の空いた時間などを有効活用しています。平日は本業がありますので、負担にならないように副業先と調整しながら進めていますよ。
- 実際に副業をやってみて、どのようなところで「本業の経験」が活きているなと感じますか?
西部氏:先程、「ペルソナの整理」にチャレンジしたとお話しましたが、その成果によって、今期の事業戦略の資料の中に「ペルソナ」という言葉が使われているのを見たときですね。
実はチームアップ株式会社の経営陣は、ペルソナ設定に対して半信半疑な面もあり、詳細なペルソナは設定されていませんでした。ペルソナはどの程度開発に利用するかが重要なので、その知見や手法が他社でうまく再利用(=「再現性の確認」)ができたことは良かったと思っています。
- それが以前にTwitterで仰られていた「ペルソナが経営レベルでできた」ということですか?
昨日の複業先のミーティングで自分が作ったペルソナが経営レベル開発レベルで役立っているという話を聞いて感動した。
やっぱり使われるように作るの大事だな。
— すけきよ (@sukekiyo918) August 21, 2019
西部氏:そうです! チームアップ株式会社の親会社はスローガンというベンチャー企業なのですが、親会社とのコミュニケーションでもその資料が使われていたので、経営レベルに浸透させることができたという大きな達成感がありました。
- なぜペルソナの整理にチャレンジしようと思ったのですか?
西部氏:きっかけは、私が顧客のヒアリングデータを見ていたときです。定量・定性的データを見る中で、ある必勝パターンが見えてきたので、「現在のままだと広告出稿も非効率です。詳細なペルソナを設計し、戦略的なプロモーションを進めていきましょう!」と定例MTGの中で提案させていただきました。
- 課題を発見し、それに対してアクションを提案していく流れは、本業と同じですね!
西部氏:たしかにそうですね。実はデザイナーの方も以前からペルソナの重要性は認識されていたので、その後の実行はスムーズに行うことができました。
- 具体的なアクションについて教えてください。
西部氏:デザイナーの方と一緒に、顧客へのインタビューや分析、ディスカッションを重ねてゼロベースからペルソナの仮説をたて、そのペルソナが収益に繋がるのかなどを検証をした上で、経営陣に提案していきました。この工程は1〜2ヶ月ほどかけて進めました。
- 仮説を立てるだけでなく、検証もセットで進めたのですね。
西部氏:もちろんです。たとえば1on1を実施している企業の中には、ただの雑談だけになっている、もしくはフィードバックになっていない課題があるので、そのような企業の顕在的/潜在的ニーズの仮説をたて、既存顧客などへのインタビューを通じ、それを実証していくSTEPを繰り返していきました。
- 顧客インタビューにも同席を?
西部氏:いえ、 私は全体のインタビュー設計を担当しました。質問項目も一部作成はしましたが、基本的には後日インタビューした動画を見せてもらって、デザイナーにレビューするという形をとっていました。このあたりも本業の経験が大いに活かせたと思います。
- 「ペルソナ設計をしたかったデザイナー」と「ペルソナに半信半疑だった経営陣」の間を、うまく橋渡しできたということでしょうか。
西部氏:そうですね。経営陣に検証データを渡ししたら「確かにその通りだ!」 と腹落ちして理解していただけました。
チームアップ株式会社の中川代表は、顧客へのヒアリングや面談は普段からされていて、肌感的にもカスタマーデータを豊富に持っていました。我々が用意したペルソナに対する納得感も強かったんだろうと思います。
- ちなみにペルソナはいくつぐらい作ったのですか?
西部氏:1on1を実施する現場からの距離感の差で、3つのペルソナを作りました。
比較的大きな会社に多いと思うのですが、1on1を実施する現場と「なんか1on1が流行ってるからうちにも導入しよう」という経営者にはかなりの距離感があるので、そこが意識できるように、ステークホルダーの関係図を作り、我々はどのようなコミュニケーションプランを描いていくのが最適なのかなどは、かなり調整を加えました。
自分の声が、経営方針を左右する醍醐味
- 副業先のプロダクトに関わるようになってから、売り上げや導入数などに変化はありましたか?
西部氏:売り上げや導入数に関する具体的な数値は言えないのですが、サービスの紹介ページの滞在時間などは伸びました。サービスに興味を持ってくれる来訪者が増えているのだと思います。
- 改めて聞いていると、参謀のような位置づけになっている気がしますね(笑)
西部氏:まさにそうなんです(笑)今の自分のポジションってなんだろうと思って調べていたら、参謀という言葉に行き着いたので、実は参謀についての本をいくつか読んだりもしました。
- 「再現性の確認」が実現できたとお話がありましたが、その他に副業をやって良かったと感じた点はありますすか?
西部氏:経営者と直接話しながら業務を進めることができたので、会社の方針決定に関与できるという面で、貴重な経験を得ることができました。副業をやろうと思った動機としても、経営の根幹に携わってみたいという想いがありましたので、それは叶いましたね。
ただ、経営者は私と関わることが全てではありませんので、優先度が下がったり、逆に急に上がったりということはありました。苦労というより楽しかった話ですが(笑)
- では、副業で苦労したことは?
西部氏:UI設計でしょうか。UIの経験がもともとなかったため、ペルソナを作ったあとに、既存のサービスページのデザインをアップデートしていく過程は苦労しました。
ワイヤーフレームを作成し、「ユーザー調査の結果を踏まえると、このようなUIになります」と提案を行ったのですが、代表やデザイナーから「この要素は絶対入れたい」という意見があり、そこをどのように落とし込んでいくかは良い経験になりました。本業では得られない経験ができることも、副業のメリットですね。
今後、副業をはじめようとする人へ
- 副業という働き方が注目を集めている中で、どのような人が副業に向いているのか、逆にどんな人はやめた方がいいなど感じていますか?
西部氏:「周囲で流行っているし、なんとなくやってみようかな......」というような無目的な状態で副業を始めるのは良くないと思っています。
本業と副業を同時に進めることは、自己管理能力が問われますし、常にクオリティの高いアウトプットも求められていくと思います。それを実行・実現するためには、本人の強い意思が必要となりますし、意思を保つためのモチベーションが重要です。
私も今回はじめての副業でしたが、冒頭でお話したよう明確な目的・意思がありましたので、ここまで出来たんだと思います。おかげ様でチームアップ株式会社からは、「次はこういうことをしてみたい」「ぜひ一緒に進めて欲しい」といった言葉をいただいているので、これからも気を引き締めて頑張っていきたいですね。
——なるほど! 貴重なお話をありがとうございました。