シャッタースピードを理解するメリット
デジタルカメラの普及により、初心者でもシャッタースピードを簡単に変えられる時代になりました。シャッタースピードを変えるということは、カメラ内部に取り込まれる光の量が変わるということです。
シャッタースピードが速いと光は少なくなり、シャッタースピードが遅いと光は多くなります。このことを理解しておけば、シャッタースピードがいかに重要かが分かるはずです。
では、シャッタースピードを理解することは、具体的にどのようなメリットがるのでしょうか。
失敗を減らすことができる
シャッタースピードを理解することは、写真技術の向上に大きく寄与します。写真を撮影するにあたり、ブレは天敵ですが、どのくらいのシャッタースピードで撮影すればブレが起きないのか、逆にあえて動きを出すのかなどの計算ができるようになります。
また、シャッタースピードはカメラ内部への光の量を調節するものですので、写真を撮ってみて明るすぎて真っ白になってしまったときや、暗すぎて真っ黒になってしまったときなどに、シャッタースピードを調節して適量の光で撮影できるようになります。
映る時間の流れをコントロールできる
シャッタースピードをコントロールできれば、動きのあるものをストップさせて撮影することや、動きのある迫力のある写真も思いのままになります。
いうなれば、『シャッタースピードを理解することは、写真に写る世界の時間の流れをコントロールすること』なのです。
絞りやISO感度を同時に理解できる
シャッタースピードと深く関わりのあるものといえば、『絞り(絞り値・F値)』と『ISO感度』です。これら二つとシャッタースピードを合わせて『写真撮影の三大要素』と呼ばれることがあるくらい重要で密接に絡み合っているものです。
シャッタースピードを理解することで、絞りとISO感度も同時に理解することになります。背景のボケを調節するためには絞りを理解する必要がありますし、ノイズを減らすためにはISO感度を理解する必要があります。
これら三つが相関関係をもって、最終的な作品として完成形になるのが写真の世界です。
シャッタースピードとは?
シャッタースピードとは、文字通りシャッターが開いてから閉じるまでの時間の長さです。シャッタースピードについてより深く掘り下げていきましょう。
光を取り込む時間
シャッタースピードによって、カメラの中に取り込む光の量が変わります。
シャッタースピードが遅いということは、シャッターが開いている時間が長いので、光を多く取り込めます。逆に、シャッタースピードが速いとシャッターが開いている時間が短いので、光の量が少なくなります。
明るい場所でシャッタースピードが遅い状態で撮影すると、光が多すぎて真っ白な写真になってしまいます。もちろん、暗い場所でシャッタースピードが速すぎると、真っ黒な写真になってしまうのです。
シャッタースピードの単位
シャッタースピードの単位は、秒で表記されます。『1/2000』というように表記されているシャッタースピードは『2000分の1秒』という意味です。1秒未満のシャッタースピードは分数で表現しますので、分母が大きくなればなるほど速いシャッタースピードということになります。
シャッタースピードを変えることで起こる効果
子どもの運動会やスポーツの撮影、動物の撮影などを行うときには、シャッタースピードを速くします。シャッタースピードを速くすることで、『動きのある被写体の一瞬を切り取るため』です。
逆に、シャッタースピードを遅くすると、シャッターが開いている間に被写体が動くことになりますので、写真としてはブレた状態で仕上がります。このブレを狙って躍動感を出すのもテクニックの一つです。
写真の明るさが変わる
シャッターが開くと、レンズを通って光がカメラの内部に入ってきます。その光が撮像素子に当たることで光の像を記録していきます。そして、シャッターが閉じ光が届かなくなると、この像の記録が終了……撮影が終わるということです。
先述の通り、1秒以下のシャッタースピードは分数で表記されます。目安として、昼間の明るい場所では『1/1000』のシャッタースピードを使うことが多くなります。人間の感覚では正確に測れないレベルの、ほんのわずかな一瞬ということになります。
一方、夜景の撮影など暗い場所では、数秒単位の遅いシャッタースピードを使うこともあります。シャッタースピードを変えることで写真の明るさを変えられるので、シャッタースピードは撮影場所の明るさによって変える必要があるのです。
写真のブレが変わる
スマートフォンの撮影でも、被写体がぶれて写ってしまう被写体ブレはよく起こります。これは、撮影中に被写体が動いてしまったために起こる現象ですが、デジタルカメラでも同様の現象は起こります。
シャッタースピードが遅いと、動いている被写体のいろいろな像が記録されてしまうので、流れたような写真になってしまうのです。
また、カメラを撮影している人の手が動いてしまう手ブレという現象もあります。特に、遠くのものや暗い場所で撮影する場合は、手ブレが起こりやすくなります。
これらを解消するためには、シャッタースピードを調節し、ブレが出ないようにする必要があります。簡単にいうと、シャッタースピードを速くすると被写体ブレが起こりにくく、シャッタースピードを遅くすると手ブレが起こりにくくなります。
シャッタースピードと絞りの関係
『写真撮影の三大要素』であるシャッタースピード・絞り・ISO感度。その中でも、特に重要といわれているのがシャッタースピードと絞りの関係性です。
絞りとは?
シャッターの絞りとは、光が通る穴の大きさのことを指しています。絞りが開いていると、光の通り道が大きくなるので光を取り込む量が多くなります。逆に、絞りを絞っていると、光の通り道が狭くなるので光を取り込む量が少なくなります。
絞りの値は『F1』『F2』というようにFをつけて表記します。この値が大きくなればなるほど、絞りが絞られた状態になるので、取り込む光の量が少なくなっていきます。この絞りとシャッタースピードをバランスよく設定できると、写真の明るさが適正な状態になります。
また、この絞りには写真のピントを合わせるという大切な役割があります。絞りを開いた状態ではピントの合う範囲である『被写体深度』が浅くなり、ピントが合っている範囲が狭くなります。
逆に、絞りを絞った状態では、広い範囲にピントが合うことから全面的にシャープな仕上がりとなります。
同じく光の量を取り込める
シャッタースピードも絞りも光の量の調節をしているため、『シャッタースピードが遅い=絞りを開く=光の量が多い』『シャッタースピードが速い=絞りを絞る=光の量が少ない』ということになります。
シャッタースピードを優先して撮影する場合は、適切な絞りを設定しておかなければ写真の明るさが適正にならないので注意が必要です。最悪の場合、カメラ側が自動で判断してシャッターが切れなくなるということもあります。
そのため、シャッタースピードを優先して撮影するときには、絞りやISO感度をオートモードにしておく方が安全ともいえます。すべての数値をマニュアルで設定するには、かなりの練習が必要になります。
ISO感度を調整する方法も
ISO感度とは、カメラの光に対する敏感さを数値化したものです。
非常に暗い場所で撮影する際にISO感度を高くすると、センサーはできるだけ多くの光を吸収できる状態になっているので、フラッシュがなくてもよい雰囲気の写真が撮影できます。逆に、明るい場所ではISO感度を低くしておいても問題がありません。
実はこのISO感度を高くしすぎると、写真にノイズが乗ってしまいざらざらした印象になってしまいます。そのため、できる限りISO感度を低く設定した状態で撮影したほうが、クオリティの高い写真撮影が可能になります。
シャッタースピードを変えるには
シャッタースピードを変えるのは、それほど難しい作業ではありません。いつも使っているデジタルカメラとレンズがあれば、簡単に変えられます。
シャッタースピード優先モードにする
まずカメラの電源を入れて、シャッターが切れることを確認します。その後、カメラのモードダイヤルを『シャッタースピード優先』に合わせてみましょう。
こうすると、シャッタースピードは自分で決められますが、絞りとISO感度はカメラが自動で決めてくれます。
機種によっては『S』や『Tv』と表記されていることもあります。
マニュアルモードを利用する
シャッタースピードだけでなく、絞りもISO感度もすべて自分で決めるのがマニュアルモードです。このマニュアルモードで撮影を行うためには、シャッタースピードと絞りとISO感度の相関関係を理解しておく必要があります。
このマニュアルモードでいろいろな設定を試してみると、同じ場所でも設定によって仕上がりが大きく変わることがわかります。
シャッタースピードを遅くしたり、絞りを開いたりすると明るい写真になりますし、その逆に設定すると暗い写真になります。
スポーツモードを使うという手も
カメラの中には『スポーツモード』という機能がデフォルトで設定されているものもあります。これは、被写体が常に動き回っているスポーツの撮影向きに設定されているモードで、自動的にシャッタースピードが速い状態で設定されます。
バルブ撮影とは?
バルブ撮影という言葉を聞いたことはあるでしょうか。この撮影方法は、夜景や天体撮影時など長時間に渡ってシャッターを開いておく必要がある場合に使用します。
シャッタースピードをバルブ『B』に合わせると、シャッターボタンを押している時間ずっと光をカメラの中に取り込み続けます。
この撮影方法では手ブレが起こりやすいので、三脚とリモートスイッチを使ってシャッターを切ります。夜景や天体撮影以外にも、夜の観光船の出港風景など、光の軌跡を美しく追いたいときにも向いている撮影方法です。
シャッターを長時間開ける撮影方法
数十秒を超えるような『スローシャッター』で撮影する場合は、三脚は必須です。数十秒、手ブレを起こさずカメラを持ち続けるのはかなり難しいものです。
そのため、カメラを三脚にしっかり固定し、リモートシャッターでカメラに触れることなく撮影を行います。
バルブ撮影のやり方
シャッターボタンを全押しし続けると、ずっと光を取り込んだ状態が続くことになります。シャッターボタンを離すと撮影が終わります。
バルブ撮影をする上での注意点
バルブ撮影を行うにあたって注意すべきことは、ファインダーから入った光が画像に影響を与えないようにすることです。
つまり、ノイズが乗りやすい撮影方法なので、シャッターボタンを押す前に『長秒時ノイズ低減』のようなメニューを必ず『する』に設定しておきましょう。
被写体ごとのシャッタースピードの目安
シャッタースピードは、シャッタースピード優先では簡単に変えられるものですが、被写体ごとの目安とはどれくらいなのでしょうか。
動くものを撮るときは1/500秒
シャッタースピードを『1/500秒』に設定すると、動いているものはほぼ停止させた状態で撮影することができるようになります。
より速い『1/2000秒』『1/40001秒』といったシャッタースピードもありますが、カメラの感度が上がりすぎて画質が落ちる恐れがあります。
流し撮りをするなら1/30秒
人間の目がものの動きを捉えるのは1/60秒ほどだといわれているので、このシャッタースピードで撮影する写真が、人間に目で見て自然な状態を表現しているといえます。
被写体が動いているときの流し撮りをするにはこの1/60が好ましいのですが、ちょっと難易度が高いので、最初は1/30秒からスタートするのがよいでしょう。
幻想的な写真を撮るなら1/8から1秒
滝の水が、まるで線のように表現されていたり、夜の真っ暗闇の中で光線が流れていたりするような写真は、幻想的な仕上がりでいつかは撮影してみたいと思わせるものです。このような幻想的な動きのある写真は、スローシャッターで撮影することになります。
このスローシャッターを活用すると、工夫次第でこれまでにない表現ができる無限大の可能性を持っているものです。しかし、手ブレが起こりやすいことから、三脚にカメラを固定して撮影を行いましょう。
また、三脚に固定していてもわずかな動きで台無しになってしまうことがあるので、セルフタイマーやリモートシャッターで撮影することをおすすめします。
星をきれいに撮るなら8〜30秒
最後に、満天の星空の写真撮影の方法について触れておきましょう。デジタル一眼レフカメラがあれば、意外にも簡単に星空の写真を撮影できます。
星というものは、肉眼で見ている以上に暗いので、シャッタースピードをできる限り長くすることでカメラの内部に多くの光を取り込んで撮影しなければなりません。
とはいえ、地球は自転していることから、長くシャッターを開けておくと星の動いた様子がそのまま写真となって表現されます。
フィルムの時代はこの現象を利用して一晩中シャッターを開けっぱなしにして星の軌跡を撮影していましたが、デジタルカメラの世界では、星が点として映っている写真を画像編集で重ね合わせることで、星の軌跡を描くことが多くなってきました。
そのため、星空写真のスタンダードも『星を点として写すこと』にシフトしてきました。星の動きが少ない8〜30秒の設定がちょうどよいでしょう。
まとめ
このように、シャッタースピードは奥が深く、知れば知るほど引き込まれていくことでしょう。
このシャッタースピードをより理解するためには、とにかく『シャッター優先モード』か『マニュアルモード』で練習をたくさんすることです。同じ条件でいろいろな設定を試してみることで、撮影のための引き出しがどんどん増えていきます。
また、デジタルカメラは高性能のものが多く販売されていますが、万能というわけではありません。さすがに、真っ暗な状態の中で動き回る被写体を明るくくっきりと撮影することは、プロのカメラマンでも難しいものです。
しかしながら、引き出しが増えればできる限りイメージに近い撮影にはたどり着けます。シャッタースピードへの理解を深めて、よりクオリティの高い写真撮影を実現しましょう。