最初は腰が重かった?「初めての副業」でサイバーエージェント伊藤恭平に起きた心境の変化

サイバーエージェントを代表するアプリエンジニアの1人・伊藤恭平氏(@KyoheiG3)。これまでの同社における数々の新規プロダクトの立ち上げを担い、エンジニア組織を牽引してきた。数々のメディア出演や講演の経験をもつ伊藤氏だか、副業の経験はこれまでなかったとのこと。今回はOffersを利用して得た副業の実経験や、今後の副業に対する考えなどを伺った。

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副業に興味はあったが、なかなか踏み出せずにいた

▲ iOSDC登壇時(提供元:iOSDC 2018

まずは伊藤さんが本業であるサイバーエージェントでどのようなお仕事をされているか教えてください。

サイバーエージェントに入社して今年で10年目を迎えるのですが、主にiOSエンジニアとして「ABEMA」や「WINTICKET」「CL」など、新規プロダクト開発の立ち上げをメインに携わってきました。現在はFlutterをメインに新規アプリの立ち上げを行っています。

まさに立ち上げのプロフェッショナルですね。そんな伊藤さんが初めて副業をされたのはいつでしょうか?

2020年に約1年ほどエキサイト株式会社で、技術顧問としてお世話になりました。実はこちらの記事で出ている「3人」のうちの1人は私のことです。

【エキサイトの副業活用術】業界トップクラスのエンジニア3名を採用した意外な目的とは?

そうだったんですね!そもそもOffersに登録したきっかけは何だったのでしょうか?

サイバーエージェントで社歴が10年ほどになり、少しづつ副業にチャレンジしたくなってきたところで、たまたまOffersを知ったのがきっかけです。これまでも副業に興味はあったのですが、仕事の探し方がわかりませんでした。

意外でした。知り合いから頼まれることもなかったと?

本業が忙しかったこともあると思うのですが、なかったですね。人づてだと私含めキャリアをある程度積んだエンジニアよりも、若手エンジニアの方が頼まれやすいという話は聞いたことあります。20代のエンジニアは副業している人のほうが多数派な印象があるくらいです。

どうしても経験を重ねていくと、「ちょっとだけソースコードを書いてほしい」と気軽に相談しにくくなるのではないでしょうか。

コードを書く仕事ですと、たしかに伊藤さんのようなシニアには気軽に相談しにくいのかもしれませんね。エキサイトで技術顧問を引き受けた背景を教えていただけますか?

当時のエキサイトのエンジニア組織は若手メンバーが中心で、アプリ開発の技術的なナレッジ向上に課題がありました。そこをエキサイトの人事責任者である斎藤さんから相談をいただいたんです。

今まで副業を経験したことがなかったので、依頼を受けるか悩みましたが、現場のエンジニアの皆さんとも事前に顔合わせをしたところ、「どんな形でもいいから一緒にやりたい」というお話も直接いただいただき、やってみようと意思決定しました。ただ「具体的に何をやるか」については、その後に決めていきました。

技術顧問として、10年の経験を若い組織に還元

技術顧問として、どんな仕事内容や働き方をされてきたのでしょうか?

コロナ前でしたので、月に1回はエキサイトのオフィスに伺い、課題となる問題点を提示し、その解決方法などを一緒に考えていくワークなど行っていきました。他にも、アプリの設計についてある程度の道標を作り、エンジニア全員がそれに向かって進められるように相談やレビューを行ってました。

いわゆる研修がメインだと?

そうですね、設計に関してはプルリクエストを作って差分を見て、こうやって変えていくんだよみたいな感じで進めていました。このような研修は本業でもきっちりやったことはなかったので、個人的には良い経験にもなったと思います。

ちなみに働き方としては、本業に支障をきたさない範囲での契約でしたので、月に10〜15時間ぐらいだったと思います。週に何時間というよりは、スポットでの対応ですね。

当時のことを振り返っていかがですか?

当時のエキサイトは開発リソースに課題ががあったり、技術的な相談をしたくても誰にも相談できない状況にあって、とにかく苦労しているというのをヒシヒシと感じました。そこを限られた時間ではありますが、私が技術顧問としてこれまでの経験を還元できたのは、私個人にとっても良い経験になったと思います。

メガベンチャーの経験が、若い会社に求められている

2021年にはOffersを通じて、LIPSを運営するAppBrewでも副業をされたんですよね?

そうですね、Offers以外の媒体でもアプローチいただいていたのですが、本業が忙しかったので、最初はそんなに乗り気じゃなかったんですね。でもメッセージ内容に興味もあって、ちょっとだけ話しを聞いてみようかなと思ったのがきっかけです。

面談ではどんなお話を?

私のこれまでの経験などをお伝えさせていただきつつ、今のAppBrewの中で私が「何ができるか」を考えていきました。そうしたところ、AppBrewから「現状のiOSのプロジェクトを、ヘルスチェックみたいな感じで見てほしい」という依頼を受けて、1ヶ月の契約をしました。

副業は自分のバリューやタスクが明確でないといけないと思っていましたが、そういうライトな形で入るのもありなんだなと思いました。

その1ヶ月間は具体的にどんなことを?

ビルドの方法や実際のソースコードなど、iOS開発の土台になるような箇所をチェックして、「こうしたら開発速度があがるのでは?」といった提案や共有をさせていただきました。コードをちょっとは動かすみたいなこともやったのですが、内容としてはアドバイスがメインでしたね。

先方からも私からお伝えした内容に満足いただいたと思うのですが、今回提示させていただいた課題と対策については優先順位が他の事案よりも高くないという判断から、そのまま契約終了となりました。

AppBrewでの副業を通じて、何か気付きはありましたか?

コストに関する考え方ですね。本業でも認識はしているのですが、アクセスはどれくらい増えたら、サーバーのコストはどれだけ増えるかなどの意識が高く、そこは私も「ちゃんとやんなきゃいけないな!」と再認識できた良いい機会でした。

外の世界でしか、気づけないこともある

伊藤さんの副業に対するモチベーションを教えてください。
  • 本業で経験できない技術に触れられること
  • 自分の経験を社会(本業以外)に還元できること

この2点かなと思います。

本業ではFlutterをやっているのですが、iOSのこともしっかりとキャッチアップしていかないと時代に乗り遅れそうな懸念もあります。SwiftUIなど本業で触っていないので、副業でそういったスキルの補完ができたらと思います。実は3社目の副業先が決まっていてこれから稼働予定なのですが、そういった領域にチャレンジできると思うので今から楽しみにしています。

そして、エキサイトでの経験がきっかけになったのですが、自分の経験を社会に還元していくことにも今後は注力していければと思います。私が10年以上サイバーエージェントで培ったアプリの立ち上げ経験を、スタートアップ企業などに還元していくことで、世の中全体の開発スピードを高められればと思いますし、今後はそういった相談窓口なども開いていきたいですね。

副業のメリットにはどのようなものがあると思いますか?

AppBrewの副業で特に感じたのですが、彼らのプロダクト開発における勢いとか、スピード感がすごいと思いました。本業以外でそういった刺激をもらえることも、エンジニアにとってはメリットだと思います。それに同じ会社に長く在籍していると、ひとつの文化や考え方に偏ってしまいがちですが、それが当たり前なのかも俯瞰して見ることができるのも良いですね。

あとは本業で経験した数年前の課題を、再び目にすることでしょうか。解決法などは把握しているので、そういった当時の経験を若い組織やエンジニアに還元できることも、副業ならではの面白みだと思います。

「自分なんて役に立たないよ」という人もいるんじゃないかと思いますが、そんなことなくて、どんな人でも役に立てると思います。最初のきっかけが難しいんですけど、肩の力を抜いて試しにでもいいんで、外の世界を積極的に見にいくことをおすすめします。

実は私も最初は腰が重かったですが、いざやってみたら本業とうまく両立もできました。経験あるシニア層のエンジニアなら、今後は顧問的な副業も増えていくのではないでしょうか

常に最適解を考えながら、もの作りに携わりたい

伊藤さんは今後どんなエンジニアを目指しているのでしょうか?また、それに向けて副業とどう向き合っていくのでしょうか?

私自身はプロダクト作りが好きなので、成功するプロダクトを作り続けていきたいですね。ただ、特定の技術に依存するつもりはありません。技術は何かを実現するための手段です。今業務でFlutterを使っているのは、プロダクトを作るうえでFlutterは利点はとてもあるためです。正直いうと、Flutterを使っていると腹が立つことが多いのであまり好きではありませんが(笑)。

副業については先程のモチベーションにつながりますが、本業で触れない技術に触ったりしながら、先回りして新しい領域にも積極的にチャレンジはしていきたいですね。今後も本業に支障が出ない範囲で、副業とは向き合っていければと思います。

一般的な話ですが、エンジニアは技術を突き詰めて一定の年齢のなると、マネジメント側にいく・エキスパートとしてスキルを磨き続けるのいずれかに分かれると思います。こちらについて伊藤さんはどのようにお考えでしょうか?

スキルの高い若手エンジニアと仕事をしていると、自分の強みを活かせるところは何なのか?を考えて行動するようになります。もちろんスキルガチンコで勝負していってもいいと思うのですが、スキルの高いエンジニアがもっと活躍できるようにサポートしてあげることのほうが全体最適化としては正しいと思います。

ですので、「今日からマネジメントやる!」と言ってマネジメント側に振っていくこともあるかもしれませんが、みんなのサポートをしていく範囲にマネジメントが含まれているだけだと個人的には思っています。そこでマネジメントの面白さに気づければそっちのスキルを磨くだろうし、私自身はまだそこに気づけてないので今は無理やりコードを書く路線を走ってます。

ありがとうございました。
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