開業届のデメリットとは
個人事業主としての最初の一歩である開業届は、実はメリットばかりではありません。開業届を出すことでデメリットが発生する場合もあるのです。安易に提出するのではなく、開業届がどのようなものであるかを事前に知っておくことが大切です。
主婦の副業でも扶養から外れる可能性
会社員である配偶者の扶養に入っている場合は注意が必要です。自分が開業届を提出することにより、配偶者の扶養から外れてしまう可能性があります。扶養から外れると、収める税金の額が増えることがありますので注意が必要です。
実際には配偶者の加入している保険の規定ごとに取り扱いが異なります。規定を今一度確認し、対策を立てておきましょう。
失業手当の対象外になる
雇用保険に加入していた人が会社を辞めて失業者になると、失業手当を受給することができます。退職理由や加入期間など、条件を満たしていれば受け取ることができる手当です。
しかし開業届を出すことによって、失業状態ではないとみなされます。失業保険はあくまで次の仕事が見つかるまでの間の生活をサポートするための制度ですので、個人事業主として活動をはじめることで失業者ではなくなり、支給対象外となるのです。
確定申告のうっかり忘れに厳しくなる
会社員時代に副業で得た収入を確定申告する際は、つい提出を忘れるケースもあるのですが、個人事業主になると話は変わります。
税務署に開業届を出すと、確定申告の時期に税務署から通知がくるようになります。仮に申告しなかった場合、追徴課税などの対応を余儀なくされるケースがあるので、確定申告のうっかり忘れには十分注意しなくてはなりません。
開業届を出さないデメリット
開業届を出すことに不利益を感じて提出を迷っているのであれば、逆に開業届けを出さないことによるデメリットにも目を向けてみると良いでしょう。
青色申告ができない
確定申告には青色申告と白色申告の2種類がありますが、青色申告には税制優遇措置が設けられています。『青色申告特別控除』という制度で、所得金額から65万円が控除されるというメリットがあります。
しかし青色申告をするためには、事前に開業届を提出しておく必要があります。開業届を出さなければこの控除を受けられないというデメリットが発生するのです。
小規模企業共済に加入できない
個人事業主の強い味方とも言われている『小規模企業共済』は、退職時や廃業時に給付金をもらえる制度です。会社員と違い退職金がないフリーランスにとって、この制度は重要であり、多くの事業者が加入しています。
しかし、こちらも開業届を出さなければ個人事業主として認められず、小規模企業共済に加入することができなくなってしまいます。
開業届を出すタイミングとは
では、どのようなタイミングで開業届を提出すればいいのでしょうか。開業届を提出することでのデメリットについて解説しましたが、しばらくの間、提出しないことにしてもよいのでしょうか。
開業届を提出するタイミングと期限について解説します。
本来は開業日から1カ月以内
個人事業主として活動する最初の一歩でもある『開業届』ですが、法律的には、所得の有無に関わらず営利目的で事業を開始した場合、その事業を開始した1カ月以内に開業届を税務署に提出する必要があります。
居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があった日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。
しかし実際には、提出が遅れることによる罰則があるわけではありません。1カ月以内の規定があるということを言い換えれば、提出した日からさかのぼって1カ月前までのいずれかの日を、開業日に指定できるということです。
開業日以降から、開業届を提出することのメリットとデメリットが適用になります。この記事で既に解説したメリットとデメリットを比較検討して、後悔しないように、提出のタイミングを慎重に決定しましょう。
事業所得によって判断
事業所得の金額がどの程度かによって、開業届を提出するかどうかを判断することもできます。
特に副業として事業をしている場合で、赤字になるときには、開業届を提出したほうがよいでしょう。開業届を提出することで、副業の赤字が給与所得と損益通算されて、所得税の還付が受けられるからです。
まとめ
開業届を提出すると、これからは自分の力で仕事をするという自覚を持つことができ、モチベーションにもつながります。しかし場合によっては、開業届けを提出することでデメリットが発生することもあるのです。
開業届を提出するベストなタイミングは人それぞれです。これまでの解説を自分のケースに照らし合わせ、自分にとって最適なタイミングで提出することをおすすめします。