労働基準法上の注意点
テレワークを導入する際は、以下の労働関係令が適用されます。
労働条件の明示
企業は、従業員に対して『就業の場所及び従事すべき業務に関する事項』を明示する必要があります。(同法15条1項、施行規則第5条1項1の3号)
つまり、在宅に変更する際は『就業場所』に従業員の自宅を明示しなければなりません。
また、在宅勤務への変更にともなって業務内容を変更する場合は、その変更後の業務内容も明示することをオススメします。労働時間の把握
労働法には、従業員が『事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」と規定しています。これを『事業場外労働のみなし労働時間制』といいます。(38条の2)
テレワークを導入すると、従業員の労働時間の把握が困難になるケースがあるため、以下の条件を満たした場合は、この制度を利用することができます。
- 業務が私生活を営む自宅で行われること
- 情報通信機器が使用者の指示により、常時通信可能な状態におくこととされていないこと。
- 業務が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
労働安全衛生法上の注意点
企業は、テレワークをする従業員に対しても、通常の従業員と同様に健康状態を把握する必要があります。
定期的な健康診断を行うとともに、必要な安全衛生教育を行いましょう。
労働者災害補償保険上の注意点
自宅で作業をする場合でも、業務によって生じた災害は、労災の対象となります。
一方で、業務と関係のないプライベートな行為が原因となる事故などは、対象にはならないので注意が必要です。
就業規則の変更って必要?
テレワークを導入する際は、通常の就業規則とは別に、在宅勤務制度に関する従業規則を作成する必要があります。ここでは、就業規則の変更が必要なケースについて、詳しく解説していきます。
労働時間を変更する場合
テレワークによって、始業時間や就業時間が前後する場合は、就業規則の変更が必要です。
テレワークは通勤時間が削減されるため、始業時間と就業時間を繰り上げるケースが多く見られます。また、従業員が一定時間業務から離れる場合は、休憩時間として扱い、必要に応じて始業時間や就業時間の変更が行われることもあります。
このように、労働時間に変更が生じた際は、必ず就業規則の変更を行いましょう。
賃金制度を変更する場合
テレワークをする従業員に対して、通常の従業員と異なる賃金を設定する場合は、就業規則を変更する必要があります。
テレワークによって電話対応といった作業が免除され、給与水準を下げたり、出来高で賃金を支給する場合があります。
その場合は、賃金の計算方法が異なるため、必ず就業規則の変更を行いましょう。
就業規則の変更ってどうやるの?
就業規則の変更が必要なケースについて、ご紹介しましたが、実際就業規則の変更はどのように行うのでしょうか? ポイントとともに、解説していきます。
就業規則の変更プロセス
就業規則を変更する際は、就業規則そのものを変更するか、テレワークのルールを定めた『テレワーク勤務規定』を別で作成し、届出を行なっても構いません。
後者の場合であっても、労働基準法上は就業規則の一部としてえ扱われるため、意見聴取や労基署への届出、就業員への周知が必要になります。
また、従業員が10人未満で就業規則の作成義務がない場合は、労働条件通知書で個別に通知を行えば問題ありません。
就業規則を変更する際のポイント
就業規則は変えず、テレワーク勤務規定を作成している企業も少なくありません。
また、週1〜2程度の在宅勤務であれば、勤務制度を大きく変更する必要はなく、モバイルワークの場合は、外出規定をそのまま適用するケースも多く見られます。
また、厚生労働省が『テレワークモデル就業規則』を公開しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回は、テレワークを導入する際に注意が必要な、法律事情について解説していきました。従業規則の変更が必要な場合は、ぜひこちらの手順に基づいてしっかりと対応していきましょう。