フリーランスになる前に契約の知識を身につけよう。契約締結の注意点

フリーランスとして仕事をするには、発注者と契約を結ぶことになります。そのために必要な契約の知識を身につけておきましょう。契約の概要や段取り、注意点について解説しますので、スムーズな契約締結に役立ててください。

契約の基礎知識

会社員とは違い、フリーランスは業務に関する契約を自分で結ばなければなりません。そのため、契約に関する知識は必須です。

フリーランスとして活躍していくために、まずは契約の基礎知識から一つずつ確認していきましょう。

契約書なしでも成立する

コンビニやスーパーなどで買い物をする際には、商品と金銭を交換する『売買契約』を結んでいるわけですが、このときに契約書を書くことはありません。この例からもわかるとおり、契約は契約書がなくても、互いの同意があれば成立します。

これは、フリーランスで仕事を請け負う場合も同じです。互いの条件に合意すれば、契約書がなくても契約は成立しているとみなされます。契約の際に、契約書が必ずしも必要なわけではないと覚えておきましょう。

契約書作成はリスク回避のために重要

とはいえ、一般には業務契約を結ぶ場合には契約書を作成する企業が大半です。それはなぜでしょうか?

一つには、発注者と受注者間のトラブルを避けるためです。コンビニで買い物をする場合には、買う物には値札が貼られていますし、その場で金銭のやりとりが行われるため、トラブルになるケースは少ないでしょう。

しかし、業務契約を結ぶ場合、売買契約よりはるかに細かい内容の契約となることが多いです。口頭での契約では、業務内容や労働条件について契約者間の解釈が食い違うことがしばしばあります。書面に起こすことで、こうしたトラブルを未然に防ぐことができるのです。

また、相手が条件を破った場合にどのような措置をとるのかをあらかじめ契約書に定めておくことで、実際にことが起こったときに然るべき措置を取ることができ、場合によっては契約自体を破棄することもできます。

契約書の作成は、フリーランスがリスクを回避するための重要な手段ですので、業務の前には必ず作成するようにしましょう。

榎本希

日常で意識することは少ないですが、契約は誰でも行っています。

コンビニやスーパーなどで買い物をする場合には「売買契約」友人などに物を貸して使用させる場合には「使用貸借契約」物をあげる場合には「贈与契約」など口約束で普段何気なく行っているものも実は民法上の契約にあたります。

身近にある契約ではありますが、トラブルが起こりやすいのもまた契約によるものです。

フリーランスが仕事を行う場合には取り決める内容が多岐に渡る事が多い事や報酬が発生するなど特にトラブル防止をすることが大切になります。

契約自体は口約束でも成立しますが、その後にトラブルになった際に事実関係を証明するものがなければ解決が難しくなります。

そのため、契約書の作成はトラブルの防止や万が一の際の事実関係の証明としての役割を果たします。

契約書に記載すべき重要事項

契約書を作るにあたって、どんな内容を記載すべきなのでしょうか?ここでは、契約書に必ず盛り込んでおくべき重要事項について解説します。

業務内容

業務内容については、より具体的に書かなければなりません。そうしないと、後々になって「きちんと依頼を履行していない」「期限を過ぎているのに提出がない」といったクレームに繋がるからです。業務の範囲や期限、詳細な内容について、明確に記載しましょう。

なお、細かく記載するのが難しい業務や、一つ一つ書くことがためらわれる場合は『関連業務並びに付随業務の一切を含む』と追記するのが一般的な書き方です。

トラブルにならないように、業務内容について発注者と受注者の間でしっかりとした事前協議を行い、契約書に含めておきましょう。

報酬と支払いについて

報酬とその支払い方法についても、契約書に記載しておきましょう。

まず報酬についてですが、単に合計金額の記載ではなく、作業単価や工数、期間などの算出方法についてしっかりと明記しておくことが大切です。どのようにして算出するのかを、両者で確認できるようにしておきます。

着手金の有無や、分割か一括かの支払方法についても、契約書に記載しておきましょう。また、納品からいつまでに払ってもらえるのか、支払い期日を明記することも忘れてはいけません。

支払い期限については、『納品日から60日以内で、かつできるだけ短い期間内でなければならない』と下請法によって定められています。この点も含めた支払い期限の設定を行いましょう。

損害賠償の範囲

フリーランスがよく締結する『請負契約』では、成果物に対して作業者にも責任が発生します。

責任の範囲や責任を追うべき期間、そのために発生する作業や金額について上限を決めておかないと、無制限の賠償額を請求されたり、延々と修正作業を行わされたりするリスクが発生します。「どこまで損害賠償が発生するのか」は、あらかじめ決めておきましょう。

榎本希

仕事をする上で一番大きなトラブルは損害賠償にまで発展してしまうこと可と思います。

そのため、そのような大きなトラブルに発展しないように損害賠償に転化するような事項については詳細に取り決めを行い、合意の上で書面に残しておくことが大切です。

特に仕事の内容については漠然とした内容ではなく、可能な限り詳細に決めておいた上で契約書に記載するようにしましょう。

また、報酬面についても支払方法や支払期日、金額(単価であるのか月額であるのかなども含む)など詳細に記載しておきましょう。

損害賠償の範囲についてもクライエント側から契約書が交付された場合には自分にとって不利な内容になっていないか必ず確認するようにしましょう。

フリーランスの契約書 作成の流れ

最後に、フリーランスが契約書を作成する流れについて見ていきましょう。自分で作成する場合、以下の手順にしたがって作成してください。

契約形態は請負契約や準委任契約が一般的

一般的にフリーランスが結ぶのは、『請負契約』と『準委任契約』の二つです。それぞれの概要は以下のとおりです。

  • 請負契約…仕事の完成に対して報酬が支払われる契約
  • 準委任契約…仕事の完成に関わる業務の遂行によって支払われる契約

なお、請負契約は納品した成果物に対する責任が発生しますが、準委任契約には発生しません。その他、細かな違いがあるため、どちらの契約形態なのかを必ず最初に確認してください。

契約条件を反映した契約書を作成

案件の提案や見積もりを取り、契約条件に対して発注者・受注者双方の合意が得られた段階で、契約書を作成します。先述した作業内容や報酬、責任について間違いがないか、入念に確認しましょう。

クライアントから契約書を提示されるケースもあります。その際には、自分に不利な項目が盛り込まれていないかもしっかりチェックしてください。

必要な場合は収入印紙を貼付 双方で保管

業務委託契約書は、記載金額が1万円以上の場合に『課税文書』として扱われます。そのため、請負契約の場合は契約書に収入印紙を貼付しましょう。

収入印紙の金額については、下記の『国税庁』のホームページから確認してください。なお、電子契約書には収入印紙が不要のため、コスト削減のために電子契約書の利用も増えているようです。

『No.7102 請負に関する契約書』国税庁

榎本希

フリーランスが契約をする場面で使われることの多いものは「業務委託契約」ですが、民法上の契約は「請負契約」「委任契約(準委任契約)」となります。

契約書のタイトルではなく業務の内容により「請負契約」「委任契約」「準委任契約」となります。

契約書を作成するに当たっては、まず記載する内容についてクライエントとしっかり業務の内容の詳細や報酬などについてしっかり話し合いを行った上で合意した内容を契約書に盛り込みます。

契約書の内容によっては契約書は課税文書になるため、必要額の収入印紙を貼り、消印を行うのを忘れないようにしましょう。

まとめ

フリーランスとして仕事をするにあたって、契約書に関する知識は必須です。契約書の形態や具体的な内容について、自身で契約書作成が行えるレベルの知識を身につけておきましょう。

口約束での契約も可能ですが、後々に発注者と受注者間でトラブルにならないように、きちんと文書化しておくことが重要です。

榎本希 [監修]

医療機関・医大の研究室にて長年勤務をした後、行政書士試験を受験。医療系許認可をメインに扱う行政書士として、行政書士のぞみ事務所を開業。再生医療関係の許認可・診療所開設・医療広告ガイドラインに基づく医療広告のチェック等の他、任意後見・契約書作成・起業支援を扱う。

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