健康診断の必要性とは
フリーランスは会社員と違い、毎年必ず健康診断を受けられるということがありません。しかし、フリーランスこそ健康診断を受ける必要性があると言えます。フリーランスにとっての健康診断の大切さについて解説します。
フリーランスに健診義務はない
会社員であれば、年に1回健康診断を受けることができます。従業員に健康診断を受けさせることは会社に課せられた義務であり、その費用も会社が負担します。
一方、フリーランスには健康診断が義務付けられていません。受けている仕事の合間を縫って健康診断を受ける時間を捻出しなくてはなりませんし、費用も自分で負担する必要があります。
それらの負担を煩わしく感じ、健康診断を受けないフリーランスも少なからず存在します。
フリーランスこそ健康管理が重要
万が一体調を崩してしまっても、会社員であれば有給休暇を使うことができます。休んでいる間の仕事も会社のメンバーがサポートしてくれるでしょう。
しかし、フリーランスが体調を崩してしまった場合はサポートしてくれるメンバーはいませんから、仕事を休むことは収入が減ることと同じです。納期に間に合わなければクライアントの信用も失ってしまうでしょう。収入の不安定なフリーランスにとって、病気で休むことは大きな痛手となりかねません。
したがって、フリーランスは会社員以上に健康管理に気を使わなくてはならないのです。
健康診断の種類
そもそも健康診断にはどのような種類があるのでしょうか。健康診断の種類について解説します。
法定健康診断
法定健康診断とは、企業に義務付けられた健康診断のことを指します。労働安全衛生法で定められており、会社員が1年に1回受ける定期健康診断も法定健康診断の一つです。
法定健康診断には以下のものがあります。
- 雇入時の健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- その他の健康診断(給食従業員の検便など)
『雇入時の健康診断』は、労働者を雇入れたときに行われる検診で11項目の検査を受けるものです。この検査項目は省略することができません。
『特定業務従事者の健康診断』は、放射線や有害物を扱う業務や、高熱・低温の環境での業務に従事する人向けの検診などです。
『海外派遣労働者の健康診断』は、6カ月以上の海外派遣を開始するとき、または6カ月以上の海外勤務から帰国して国内での勤務に戻るときに実施します。
特定健診
特定健診とは40歳から74歳の国民健康保険加入者や健康保険被扶養者を対象にした、生活習慣病の発見と生活習慣の改善を目的とした検診です。
いわゆるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目し、糖尿病や高血圧症のリスクを下げるため、生活習慣改善の保健指導を行います。これらの疾病は心筋梗塞や脳卒中の原因になるため、検診を受けることで早期発見することが望ましいとされています。
人間ドックや生活習慣病健診
『人間ドック』は、病気の早期発見や早期治療を目的とした精密検査のことです。航海を終えた船がドックに入って、次の航海に備えた点検や整備をすることに由来しています。
時間をかけて全身をくまなくチェックすることで、健康診断では発見できなかった異常を見つけることが可能です。
『生活習慣病検診』は生活習慣病予防検診とも呼ばれる検診です。特定健診と同じく、生活習慣病の発見や予防を目的としています。生活習慣病検診は35歳から74歳までの健康保険被保険者を対象としていることが特定健診との違いです。
フリーランスが健診を受けるには
フリーランスには会社で受けられる健康診断はありません。自分から積極的に健康診断を受ける必要があります。フリーランスが健康診断を受ける方法について解説します。
自治体の健診を受ける
フリーランスや自営業者など健康診断を受ける機会がない人を対象に、各自治体が健康診断を行っています。負担する費用は自治体によって異なりますが、中には無料で受けられる自治体もあります。
受診方法は、自治体から受診券が送られてくる場合もあれば、自治体のサイトから健康診断を行っている医療機関を確認し、自分で直接申し込む方法もあります。自分の住んでいる自治体の受診方法を確認しておきましょう。
特定健診を受ける
フリーランスも特定健診を受けることができます。対象は40歳から74歳の国民健康保険加入者です。
自己負担額は自治体によって異なりますが、多くの自治体では無料で受診することができます。特定健診は、自治体によって決められた特定医療機関で受診することが可能です。
病院や健診センターで受ける
近くの病院や検診センターでも健康診断を実施している場合があります。
国民健康保険未加入の場合や、年齢が自治体の健康診断対象者に該当しない場合は、こちらの健康診断を受けるという選択肢もあるでしょう。ただし、費用は数千円から1万円前後かかります。
人間ドックやがん検診の必要性について
健康診断よりも精密な検査を行う人間ドックや、がん検診には、高いもので10万円前後の費用がかかるため、フリーランスにとっては手痛い出費になることがあります。
しかし、人間ドックやがん検診は、健康診断では見つけられない異常を早期発見するために必要な検査です。健康を維持するために、できれば3年に1度は受診するのが望ましいでしょう。
自治体によっては健康診断のオプションにがん検診が入っており、少ない負担で受けることができます。また。人間ドック受診の助成金を出している自治体もあるので、まずはよく調べてみることが大切です。
健康診断の主な項目と結果の見方
健康診断の結果はさまざまな用語や数字が並んでいて、見方がよく分からないという人も多いのではないでしょうか。健康診断の受診項目や、結果の見方について解説します。
身体検査
身体検査では身長や体重、BMI値、腹囲などを計測します。
BMI値は身長に見合った体重かどうかを判断する基準となる値で、体重÷身長÷身長で算出し、以下のように分類されます。
- 18.4以下:低体重(要注意)
- 18.5~24.9:標準
- 25.0以上:肥満(要注意)
また、腹囲はメタボリックシンドロームの判定に使われ、以下のように分類されます。
- 男性:84.9cm以下(基準範囲)、85.0cm以上(異常)
- 女性:89.9cm以下(基準範囲)、90.0cm以上(異常)
肥満はさまざまな病気との関わりが深いため、これらの数値に異常が見られた場合は注意が必要です。
尿検査
尿検査は尿を採取し、尿に含まれている糖や蛋白、潜血を検査します。性別や検査時の体調によって異常が出やすいことがあるため、異常が発見されたら再度検査を行うことが必要です。
血液検査
血液検査は採取した血液を調べ、さまざまな異常を発見することができる検査です。主な検査項目と見方を紹介します。
- 総たんぱく:血液中の総たんぱく量を表し、数値が6.1以下、もしくは8.4以上の場合は要注意とされる
- γ-GTP:肝臓や胆道に異常があると数値が上昇し、101以上の場合は要注意とされる
- 尿酸:尿酸のバランスを表し、9.0以上の数値が続くと要注意とされる
- HDLコレステロール:善玉コレステロールの値を表し、29以下だと要注意とされる
- LDLコレステロール:悪玉コレステロールの値を表し、180以上だと要注意とされる
健康診断の予約方法
健康診断を受ける場合は予約をしましょう。健康診断の予約方法や注意点、予約から検査までの流れについて解説します。
電話もしくはネット
健康診断の予約は、電話やインターネットで行うことができます。
自治体が行っている健康診断を受ける場合は、自治体のWebサイトやパンフレットを参考に、健康診断を受け付けている医療機関を探します。自治体から受診票が送付されてくることがあるので、予約前に手元に用意しておきましょう。
なお、国民健康保険未加入の場合や、自治体の検診対象年齢に未達の場合は、個別に健康診断を行っている医療機関を探すことが必要です。この場合も電話やインターネットで健康診断の問い合わせを行います。
予約の必要性について
医療機関によっては予約を必要としない場合もあります。この場合は直接医療機関に足を運んで、受付で健康診断受診の旨を伝えます。
ただし、予約をしている場合に比べ、待ち時間が長くなることがあるため注意が必要です。短時間で済ませたい場合は予約をしておく方が無難でしょう。
また、より精密な検査(オプション検査)を希望する場合は、事前に予約をする必要があることがほとんどです。
予約から検査までの流れ
健康診断は以下の流れで進みます。フリーランスにとって時間のロスは仕事に直接影響しますから、事前に把握しておくことでスムーズに検診を済ませましょう。
- 予約:医療機関に電話やインターネットで予約し、検診内容や日程を決めます
- 資料受取:医療機関より問診票や必要書類、検査キットが送られてきます
- 受付:検査当日になったら医療機関で受付し、問診票などの書類を提出します
- 検査:スタッフの指示に従って順番に検査を受けます
- 会計:検査が終了したら会計をして帰ります
- 結果:検査結果は郵送のほか、直接医療機関に受け取りに行きます
健診前日の注意事項を知っておこう
健康診断は血液や尿などを採取して、その成分を分析するものが大半を占めます。したがって、健康診断を受ける前日から当日までの過ごし方が重要です。
特に注意事項として挙げられる食事や水分摂取、薬の服用、飲酒や喫煙の可否について解説します。
食事や水分摂取について
健康診断前の食事や水分摂取については、検査項目や検査の時間帯によって扱いが異なります。
午前中の検査であれば朝食をとることはできませんが、少量の水分(水や白湯)はとることができます。前日の夕食時間に制限が設けられる場合もあります。
午後の検査であれば、検査の10時間前から食事は禁止になります。水分に関しては午前中の検査と同様です。
薬の服用について
薬の服用は検査結果に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
定期的に飲んでいる薬の服用ができるかどうかについては、主治医に確認をする方が良いでしょう。問診票には薬を服用していることを記入する欄があるので、忘れずに記入しておきます。
また、サプリメントなどの栄養補助食品やビタミン剤、栄養ドリンクなどは、検査の数値に影響が出るため、食事と同じ扱いとなります。特にビタミン剤は尿検査に影響しやすいので、前日の摂取は控えた方が良いでしょう。
喫煙や飲酒について
喫煙は血管を収縮させるため、血圧に影響が出ることがあります。検査当日は喫煙することができませんが、できれば前日からタバコは控えておいた方が良いでしょう。
また、飲酒は前日から控える必要があります。血中アルコールの分解には数時間から半日かかるため、検査結果に影響を及ぼすことがあります。特に尿蛋白や尿糖の数値への影響が大きいため、注意が必要です。
健診当日の注意事項も知っておこう
健康診断を受診する際にはさまざまな注意事項があります。これらの注意事項は事前に送られてくる案内書に記載されていて、スタッフからの説明もありますが、事前に知っておけば慌てずに済みます。
検査のための準備
検査当日は予約時間を守って医療機関へ向かいます。基本的に健康診断は予約優先で行われるため、早く着いたからといって先に受けられるということはありません。
なお、検査項目によって以下のような注意事項があります。事前にチェックしておきましょう。
- 身体計測:重い服は脱ぐ、髪をアップにしない
- 検尿:検診直前に排尿しない
- 視力:普段使用しているコンタクトレンズ、メガネを用意する
- 胸部X線:アクセサリーを外す、ボタンやプリントのある服は脱ぐ
- 心電図:電極をつけるために金属類は外す、靴下などは脱ぐ
アレルギーなどは申し出る
健康診断の際、アレルギーがある場合や妊娠している場合は問診票に記載しておきます。
特に妊娠している場合は、子宮がん検診やマンモグラフィ、X線を使う検診は受けることができないので注意が必要です。
また、生理中の場合も検診時に申し出ましょう。出血量によっては子宮がんなどの健診が受けられない場合があります。また、検査結果に影響が出ることもあります。
経費計上や控除について知っておこう
収入が不安定なフリーランスにとって、健康診断による出費はそれなりに痛いものです。健康診断の費用は経費に計上できるのか、またどのような控除があるのかについて解説します。
経費には計上できない
フリーランス・個人事業主は、健康診断の費用を経費に計上することはできないのが現状です。
個人の健康診断は自分の健康状態を確認するためであり、また健康診断の受診は義務ではありません。経費はあくまで事業売上を上げるために使われるものであり、健康診断は直接売上に結びつくものではないからです。
健康診断にかかる費用が負担に感じるのであれば、安く受診できる自治体の健康診断をうまく活用するのも一つの方法でしょう。
セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制とは、2017年に始まった医療費控除の特例を指します。
従来の医療費控除は医療費が10万円を超えた分にのみ適用されていましたが、セルフメディケーション税制は、治療のために市販薬を購入した場合に適用される控除です。
市販薬の購入費が1万2000円を超えた場合に適用され、最大で8万8000円の控除を受けることができます。ただし、セルフメディケーション税制の対象となるためには、健康診断を受けている必要があります。申告の際に健康診断の結果通知を提出することが求められるのです。
なお、セルフメディケーション税制は医療費控除と併用することはできません。場合によっては医療費控除の方が控除額が大きくなることもあるため、どちらを使うかよく考える方が良いでしょう。なお、どちらの控除を使うにせよ、確定申告の際に申告する必要があります。
出典:セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について
まとめ
自分の体一つで仕事をしなければならないフリーランスにとって、健康は最も重要視すべきものです。健康を維持することができれば、それだけ多くの仕事をこなすことができ、結果として収入アップにつながります。
健康診断はあくまで体の異常を発見するきっかけにすぎません。日頃から食事や運動、睡眠に気をつけ、健康の維持に努めましょう。