情報処理安全確保支援士資格のメリット。今後の需要についても解説

近年の企業においては、セキュリティリスクへの警戒感から、情報安全確保支援士資格に注目が集まっています。情報処理安全確保支援士とはどのような資格なのか、また資格を取得することでどのようなメリットがあるのかを解説します。

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そもそも情報処理安全確保支援士とは

情報処理安全確保支援士は、経済産業大臣から合格証が交付される国家資格です。インターネットが普及した現代では、情報セキュリティに関する資格として注目を集めています。まずはどのような資格なのか、試験の概要などを具体的に見ていきましょう。

IT系初の登録制士業

士業とは、建築士・税理士・弁護士といったその分野において高い専門知識と実務能力を持つエキスパートです。情報処理安全確保支援士は、IT系で初の登録制士業となります。

『情報処理の促進に関する法律』に基づく国家資格であり、『登録セキスペ』(登録情報セキュリティスペシャリスト)と呼ばれることもあります。情報セキュリティにおける第一人者であることが、情報処理安全確保支援士資格の取得によって証明されるのです。

情報処理安全確保支援士は、サイバーセキュリティを対象とした調査・評価・分析を行い、その結果に基づいて企業などにアドバイスをすることが求められています。場合によってはセキュリティ教育を任されることもあります。

試験概要

情報処理安全確保支援士の試験概要について解説します。情報処理推進機構によると、試験の『対象者像』は以下のとおりです。

サイバーセキュリティに関する専門的な知識・技能を活用して企業や組織における安全な情報システムの企画・設計・開発・運用を支援し,また,サイバーセキュリティ対策の調査・分析・評価を行い,その結果に基づき必要な指導・助言を行う者

出典:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構|制度の概要|情報処理安全確保支援士試験

試験内容はこれらの能力があるかどうかを問うものです。情報セキュリティの知識、セキュリティシステムのシステム構築、企業への支援をするための能力を問う問題が、午前I・午前II・午後I・午後IIの4回にわけて、マークシートと筆記式でそれぞれ実施されます。

4つの試験でそれぞれ100点中60点が合格のボーダーラインです。合格率はおよそ15%となっており、取得難易度は高いと言えるでしょう。

情報処理安全確保支援士試験『試験要項』

登録方法

情報処理安全確保支援士を名乗るには、情報処理安全確保支援士資格試験に合格した後に、『情報処理推進機構』に登録をする必要があります。

登録方法については、情報処理推進機構が公表している『登録の手引き』を参照してください。登録申請書・現状調査票の取得や、必要書類等についての詳細が記載されています。

なお、登録日は4月1日と10月1日の年2回しかありませんので、登録の手続きは計画的に行いましょう。

情報処理安全確保支援士 登録の手引き

情報処理安全確保支援士資格、取得のメリット

情報処理安全確保支援士の資格を取得することは、資格取得者にとってさまざまなメリットがあります。

最新情報、横のつながりが持てる

情報処理安全確保支援士は1年ごとのオンライン講習と、3年ごとの集合講習を受講する義務があります。この講習によってセキュリティリスクについて学び、最新のセキュリティトレンドについて知ることが可能です。

また、これらの講習には同じ資格を持つ人が集まるため、資格者同士のつながりが持てるというメリットがあります。最新技術やニュースについての専門的なネットワークが広がるため、より高度な情報獲得につながることが期待できるでしょう。

高度な知識の証明になる

情報処理安全確保支援士はITエンジニアのスキル標準である『ITSS』のレベル4に該当し、ペーパー試験で認定される中では最高レベルの資格です。この区分に該当する資格は『システム監視技術者』『ITストラテジスト』などが挙げられ、資格保有者はいずれもIT業界における高い能力が証明できます。

IT企業の第一線で活躍できるという知識と実務能力があるということを、就職先や他の企業に対してアピールできるでしょう。

様々な職種の選考条件を満たせる

セキュリティ技術を必要とする職種では、情報処理安全確保支援士資格を持っていることが選考条件となっている場合もあり、自衛隊の技術曹や、サイバー犯罪捜査官などの職業がこの選考条件を設けています。

セキュリティサービスやクラウドサービスを提供する事業者においても、高度な情報セキュリティ対策を提供できる情報処理安全確保支援士の価値が高まっており、募集要項に設けている傾向が見受けられます。

他の資格試験の科目免除がある

情報処理安全確保支援士資格を持っていると『中小企業診断士』や『弁理士』、ITコーディネータ協会の『ITコーディネータ』などの試験を受ける際に、科目免除を申請することが可能です。

また日本セキュリティ監査協会は、情報処理安全確保支援士を対象として、1日の研修を受けることで『情報セキュリティ監査人補』になる試験を免除する特例を用意しています。

科目や試験自体が免除されるため、他の科目の学習に集中することができるのも、情報処理安全確保支援士資格者のメリットと言えるでしょう。

情報処理安全確保支援士資格、企業のメリット

情報処理安全確保支援士を雇用すると、情報セキュリティの強化以外にもさまざまなメリットがあります。ここからは情報処理安全確保支援士を雇用する企業にとって、セキュリティ以外の面でどのようなメリットがあるかを解説していきます。

入札の要件を満たせる

内閣官房情報通信技術総合戦略室と総務省行政管理局が定めている『政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン実務手引書』の開発・管理・運営に携わる人材として、情報処理安全確保支援士が指定されています。

今後、システム開発等の政府案件に、情報処理安全確保支援士の配備が入札条件となるケースが増えていくことが予想されるでしょう。情報処理安全確保支援士を雇用していることは、企業にとって公共事業の受注などにつながっていく可能性があるのです。

税制優遇を受けられることがある

政府が2018年に新たに施行した『IoT税制』というものがあります。これは、企業が生産性を向上させる取り組みの中で、AIやビッグデータを用いるための設備投資を行う場合に、税金控除の措置が受けられるという制度です。

このIoT制度の税制優遇条件の一つに、『一定のサイバーセキュリティ対策が講じられていること』が挙げられています。新たに企業が設備投資をするにあたって、情報処理安全確保支援士を雇用していることで税制優遇を受けられる可能性があるのです。

情報処理安全確保支援士資格のデメリット

情報処理安全確保支援士資格を保有していることはさまざまなメリットがあり、デメリットは少ないように思えます。その中で、あえてデメリットを挙げるとすれば次のようなものが想定されるので、参考までに覚えておきましょう。

登録、維持に費用がかかる

登録するにあたっては『登録手数料1万700円』と『登録免許税の収入印紙9000円』の費用が必要になります。

また、資格を維持するには定期的に開催される講習を受けなければなりません。年1回のオンライン講習に2万円、3年ごとの集合講習に8万円が別途にかかることも覚えておきましょう。

集合講習が開催される場所は指定されるため、交通費や食費についても自分で用意する必要があります。

講習を受ける時間がかかる

講習を受ける時間も考慮しなければなりません。オンライン講習は1年に1度、6時間のスケジュールで行われます。集合講習は3年に1度ですが、期間は1日で開催場所も指定されているので、受講にはほぼ丸1日かかってしまうことになるでしょう。

集合講習は全国主要8カ所で開催されますが、時間は午前中からの開始となり、住む場所によっては前日に会場近隣に宿泊が必要になります。また、講習に備えてある程度の予習を考えるのであれば、その分の時間も生活の中から捻出しなければなりません。

今後の需要について

情報処理安全確保支援士の今後の社会における必要性や、将来的な需要について解説します。

需要の発展が期待できる

インターネットの急速な普及やIT技術の進化によって、クラウドサービスの市場は世界的に見ても、今後さらに拡大していくことが予想されます。

そのような市況の中において、サイバーセキュリティの重要性もますます高まっていくと考えられます。そのため情報処理安全確保支援士を必要とする企業や案件が今後増加していくことが期待されます。

また現状においても、国家資格保有者に対して、合格祝い金や資格手当を支給している企業も見受けられます。情報処理安全確保支援士資格は国家資格のため、雇用先から優遇される可能性は高いと言えるでしょう。

これらの社会的背景を理由に、情報処理安全確保支援士を目指す人も増えていくのではないでしょうか。

政府の後押しもある

内閣サイバーセキュリティセンターが公表している『サイバーセキュリティ人材育成総合強化方針』によれば、政府は「2020年までに3万人の情報処理安全確保支援士の有資格者の確保を目指す」との方針を掲げています。

それに向けて大学のカリキュラムの導入支援や、企業で行っている演習の活用を推進するという方針を明確に打ち出しているため、先述のIoT税制をはじめ、政府によって今後さらに優遇される可能性は大いにあるでしょう。

結果として情報処理安全確保支援士が増加すると共に、情報処理安全確保支援士の需要が市場の中で高まっていくことが予想されます。

サイバーセキュリティ人材育成総合強化方針

まとめ

情報処理安全確保支援士とは、企業に対しセキュリティ対策を提示できるだけのサイバーセキュリティの専門的知識を有することを証明する国家資格です。

現状でも、他の試験資格の免除や職種の選考条件を満たせるといったメリットがあり、政府の支援や市場の動きを受けて今後ますます需要が高まっていくことが予想されます。

試験合格率は15%程度とかなりの難関と言えますが、それに見合うだけの恩恵は十分に得られるでしょう。IT企業におけるさらなる活躍を考えている人は、情報処理安全確保支援士になることを、選択肢の一つとしてみてはいかがでしょうか。


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