収入印紙の基礎知識
収入印紙とはどのようなものなのか、基本的な知識を理解しましょう。
収入印紙とは
収入印紙は『印紙』とも呼ばれ、領収書や契約書などの課税文書に貼る義務があります。印紙を求められるケースは様々で、国税庁が発行する『印紙税額の一覧表』に、利用すべき状況や、契約金額と印紙額の関係が記載されています。
例えば、飲食店での飲食により5万円以上の領収書をもらう場合、領収書には200円の印紙が貼られます。コンビニで携帯電話料金を5万円以上支払った場合も同様です。以前は3万円以上の領収書に必要だった印紙が、法改正により現在では5万円以上に引き上げられています。
収入印紙は郵便局や法務局、コンビニで購入可能です。消費税法により、収入印紙に消費税は課されません。
No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
納税を意味する
収入印紙は、税金がかかる『課税文書』に貼る必要があります。課税文書とは、『税金を払う義務がある文書』です。収入印紙を課税文書に貼ることで、印紙代に相当する税金を払うことになります。
代表的な課税文書には領収書や契約書がありますが、文書が課税対象になるかどうかは『金銭を受け取ったことを実質的に証明している文書』かどうかで判断されます。
収入印紙の貼り忘れは脱税です。本来貼るべき印紙代に相当する金額と、その2倍の金額を合わせた金額が、罰則として課税されます。しかし、収入印紙が貼られていない場合でも、取引における文書が持つ効力は維持されます。
岩井和幸
収入印紙とは、印紙税に代表される租税・手数料その他の収納金の徴収のため、政府が発行する証票で、ある一定額以上の領収書や契約書を作成した際に印紙税を納税する義務を負います。収入印紙を貼らないとその文書の効力が失われるわけではないですが、脱税行為になってしまいますので注意しましょう。
発注書に収入印紙は必要か
発注書に収入印紙が必要かどうか考える場合、発注書が取引においてどのような役割をもった文書なのかを考える必要があります。
印紙税の解釈
印紙税の意義を理解するためには、印紙を貼る必要がある課税文書が『税金を納める文書』であるということに対して、理解を深める必要があるでしょう。
契約書や領収書などの課税文書が作成される場合は、その取引によって経済的な利益が生じると推定されます。経済的な利益が生じる取引は、『税金を納めるべき場面』とみなされるため、形式的に印紙を貼り、税が徴収されるという仕組みです。
発注書は契約時に発行される文書ですが、同時に発注を受けたことを証明する『発注請書』が発注先から発行されることがあり、通常は発注請書のみ印紙が貼られます。
しかし、発注請書が発行されない場合は、発注書に契約書としての効力を持たせるために印紙を貼る場合があり、発注請書の有無に関わらず発注書に印紙を貼らなければならないケースもあります。
請負契約に関する収入印紙の金額
請負契約における契約金額と、契約文書に貼るべき収入印紙の額は以下の通りです。
記載された契約金額 | 収入印紙の額 |
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 1,000円 |
300万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
参照元:印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
メールやFAXの場合は不要
印紙税は文書に課される税金です。発注書をPDFファイル等の形式でメール送信したり、FAXで送信したりした場合は、文書とみなされず印紙は不要です。
メールで送信した電子データのコピーやプリントアウトしたものも、原本ではないとみなされ印紙を貼る必要はありません。
取引の金額に比例して印紙代も高額になります。発注書を電子データで取り扱うことは、節税効果もあるといえます。
収入印紙への割印
収入印紙には、印紙の再使用を防ぐ理由で、割印をする必要があります。
割印は代表者をはじめ、代理人や従業員でも行えます。利用する印鑑も代表者印に限らず、通称や役職名のゴム印で割印できます。
割印は印鑑以外に署名でも有効です。ただし、単に『印』と書いたものや斜線を数本引いたようなものは認められません。
実際にペナルティを受けたケースもあるので、たかが割印と軽く考えず、ルールに従ってしっかりと行う必要があります。
岩井和幸
基本的に発注書には収入印紙を貼る必要はないですが、発注請書を発行しない場合には貼る必要がケースが出てきます。
ただし、請負金額が1万円未満だったり、電子書面で交付する場合は収入印紙を貼る必要はないです。
収入印紙を貼る際には割印が必要になりますが、必ずしも印鑑である必要はなく、代表者以外の署名などでもOKです。
発注書の印紙代はどちらが払う?
取引における印紙税の負担割合を確認しましょう。
印紙税法と民法の違い
印紙税法では、納税義務者は課税文書の作成者です。一方、民法では、契約に関する費用は当事者の折半で負担するとされています。
発注書と発注請書が発行された取引では、発注請書のみ印紙が貼られますが、両方の文書によって契約が成立したと解釈すれば、印紙代も折半負担ということになります。企業間の取引では、当事者双方の折半負担が主流です。
特約について
取引に特約を設け、一方の当事者だけに印紙の負担を求めることもできます。しかし、一方的に印紙税を負担させるような契約内容は、下請法や独占禁止法で問題となる可能性があります。
岩井和幸
発注書と発注請書が発行された取引では、一般的に発注請書のみ印紙が貼られます。両方の文書によって契約が成立したと解釈すると印紙代は当事者の折半となります。印紙代を節約する意味でも電子書面でなるべくやり取りをしましょう。
まとめ
発注書には基本的に収入印紙を貼る必要はありません。また、印紙代の負担は、当事者双方の折半です。メールやFAXで文書のやり取りをすると、発注書と発注請書の両方とも印紙が不要になり、取引における印紙税の節約になります。