派遣社員におけるリモートワークの実態
リモートワークへの移行で派遣社員はどのような影響を受けているのでしょうか? 現場の声や法律の問題について解説します。
リモートワークで悩まされる派遣社員の実際の声
現在、コロナウイルスの影響で準備が十分でないにも関わらず、リモートワークをせざるを得ない企業が増えています。三菱商事やJTといった大企業も、派遣社員やパート社員を含む多くの従業員を、原則自宅勤務としました。
こうした中、リモートワークを前提としていない派遣社員も多いため、無給での自宅待機を命じられたケースもあります。通常、休業手当があり、本来もらうはずの給料の6割が支給されますが、非正規社員を対象外としている企業もあるのが現状です。
出典:賃金の支払い(第24条) 休業手当(第26条) 労働時間(第32条)
制度面の問題とは?
リモートワークに派遣社員がスムーズに移行できない背景には、制度面の問題があります。企業は派遣社員を受け入れる際、労働者派遣法に基づき、派遣会社と派遣契約を結びます。この契約では、派遣社員の就業場所や業務内容、就業時間など細かく取り決めを行います。
そのため、派遣社員を在宅勤務とする場合、再契約をする必要があります。つまり、派遣社員をリモートワークに移行するには、派遣会社に要請をして派遣社員が働ける環境か確認し、再契約するという手順を踏まなければいけないのです。
派遣社員をリモートに移行するには?
派遣社員をリモートワークに移行する際、企業はどのようなことに気を付ければいいのでしょうか? リモートワーク導入時の注意点とやるべき施策について解説します。
派遣社員をリモートに移行する際の注意点とは?
リモートワークに移行する際の注意点には、以下のようなものがあります。
- チームの一体感を損なわないようにする
- 情報格差をなくす
- 生産性を落とさない
リモートワークでは、従業員同士の関わりが減ってしまうため、一体感が損なわれてしまう恐れがあります。さらに、円滑なコミュニケーションが出来なければ作業効率は低下し、さらに情報共有が難しくなります。
また、従業員一人一人のワークスペースの環境が整っていない状態は、生産性の低下を招く可能性があります。
派遣社員をリモートに移行する際にやるべきこと
以上のような注意点を踏まえ、リモートワーク移行時にやるべきこととして、以下のようなものが挙げられます。
- チャットツールを導入する
- ファイル共有ツールを導入する
- 派遣社員のワークスペース環境を整える
従業員同士のコミュニケーションを円滑に行うために、チャットツールの導入は欠かせません。できるだけ会話のやり取りに近づけられるように、即時性のあるレスポンスや短文の内容を徹底するようにしましょう。
また、情報格差を生まないために、ファイル共有ツールの導入が必要です。その際、正規・非正規社員間で差を作らないように、全社員にデータを公開することをおすすめします。
一人一人の生産性を上げるために、ワークスペースの環境整備に取り組むべきです。インターネット環境やデスク周りの備品を買うための資金を一定額支給しているケースが多くみられます。
リモートの導入についてはこちらの『リモート組織2.0』に詳しくまとめていますので、ぜひご確認ください。
派遣社員のリモート教育
リモートワークにおいて、派遣社員の教育はどのように行えばよいのでしょうか? 注意点や必要な施策について紹介します。
教育訓練義務とは?
2015年の派遣法改正で、派遣元に教育義務が課されました。派遣元は、雇用する全ての派遣社員に対し、段階的な教育を実施しなければなりません。特に入社から3年間は、フルタイム勤務の派遣社員一人につき8時間以上の教育訓練計画を実施しなければなりません。
教育訓練は、集合研修やeラーニングの活用で派遣先での就業に支障がないように工夫されていますが、派遣就業時間と重なることもあり、派遣先には協力するように努力義務が課されています。
リモート教育での注意点
リモートワークでは、対面に比べて円滑なコミュケーションを取ることが難しいため、ついていけなくなる人が出てくる可能性が高いです。対面では、分からないことがあれば、アシスタントや近くの仲間に聞くことができますが、リモートでは一人での作業となり、解決できなくなってしまうのです。
このような状態を避けるために、派遣社員一人一人により配慮する必要があります。教育担当者が反応をこまめに確認できるようなシステムの構築が欠かせません。
リモート教育を成功させるには?
リモート教育での注意点を踏まえて、成功のために必要なことには以下のようなものがあります。
- 受講者同士の関わりを増やす
- オンデマンド方式にする
受講者同士の関係を構築することにより、互いに助け合える環境を作ることが重要です。チャットツールの導入や交流会の開催などにより、関係構築を促しましょう。
先述した通り、派遣先の企業は、派遣元に協力する努力義務が課せられています。そこで、オンデマンド方式にすることで、派遣元での教育訓練と両立しやすくなります。
まとめ
今回は、派遣社員をリモートワークに移行するために押さえておくべきことや教育方法を紹介しました。
現在、派遣社員はリモートワーク移行において厳しい現状に置かれています。これは、リモートワークを想定していないことが原因です。派遣社員でもリモートワークすることが当たり前となり、このような問題が解決されることが期待されます。