バナーデザインの基本知識
Webサイト上にある、リンク付きの画像や文字が『バナー』です。直訳すると『旗、のぼり』という意味になりますが、Webサイト上に配置されたバナーは、どんな役割を果たしているのでしょうか。
バナーの概要やデザインの特徴について考察します。
バナーの役割
Webサイト上のバナーには、大きく分けて『広告用』『サイト用』という二つの目的があります。
まず、広告用バナーとは、企業が製品やサービスを宣伝するためのツールの一つです。ユーザーにバナーをクリックさせて自社サイトに誘導するのが目的のため、ユーザーを惹きつける見やすさや強いインパクトが必要でしょう。
一方、サイト用バナーについては、次の項で詳述します。
別ページの誘導に使われることが多い
Webサイト上に設置して、ページの誘導に使われるのがサイト用バナーです。クリックで見たいページや情報へダイレクトにアクセスできるため、サイト上の道しるべ的存在といえます。
バナーを見たユーザーが迷わずクリックできるよう、バナーデザインには、見やすさに加え、必要十分な情報の提示が必要です。
絵だけ、文字だけのものもある
Web上に配置されたバナーには、文字だけ、絵だけというシンプルなデザインも見受けられます。こうしたバナーはゴテゴテしていないぶんスタイリッシュな雰囲気があり、おしゃれなサイトに設置しても、雰囲気を壊しません。
ただしシンプルな分、魅力的なデザインに仕上げるのは難しいので注意しましょう。使用するフォントやカラーの選択、文字のカーニングや絵のバランスなど、十分な考察が必要です。
効果的なバナーはクリックされるもの
バナーは、設置するだけでは意味がありません。実際にユーザーがバナーをクリックし、別ページや別サイトに移動してこそ配置した意味があるのです。
そのため、バナーをデザインする際は見栄えの美しさばかりを重視するのではなく、ユーザーに「クリックしてみたい」と思わせるデザインを考えねばなりません。
見た人が思わずクリックしたくなるバナーとは、どのようなものなのでしょうか。
ページの中で目立つ
バナーは目を惹くものの方が、ユーザーの心を捉えます。
サイトを訪れたユーザーがバナーに目をやる時間はわずか1秒程度といわれており、印象の薄いバナーでは目に留めてももらえません。バナー効果を高めるには、アニメーションを使ったり目立つ文字を並べたりなどして、『視線を向けてもらう』ことが大切です。
ただし、バナーを目立たせることばかりに注力すると、デザイン性や広告性が失われることもあります。伝えたいことは簡潔な文字で表し、バナーの目的や意図が端的に伝わるよう、シンプルながらもインパクトのあるデザインが必要です。
興味を引く
ユーザーにバナーをクリックさせるには、現在のページからほかのページへと興味を引かせる必要があります。そのためには興味をかき立てるテキストを掲載する必要があるでしょう。
例えば『3000円クーポン配布中』『サイトから申し込めば半額』などの記述があれば、ユーザーの期待値は高くなります。「もっと見たい」「知りたい」と感じたユーザーは、そのままバナーをクリックするでしょう。
デザインの良し悪しだけでは決まらない
バナーデザインでは、デザインとしての良し悪しよりも、情報が一目で伝わる視認性や、広告内容の伝わりやすさを意識することが重要です。
ユーザーの多くは、デザインが美しいからという理由ではなく、なんらかのメリットがあると感じてバナーをクリックします。ターゲットとなるユーザーを誘導するには、ユーザーの求める情報をいかに適切に提供できるかがカギとなるでしょう。
バナーデザインの学び方
小さなバナースペースに必要な情報を載せ、なおかつインパクトのある広告に仕上げるには、それなりのデザインスキルが必須です。
魅力的なバナーを制作するために、バナーデザインの学び方について考察します。
デザインの基礎は必須
Web上でバナーに注目を集めるには、基礎的なデザイン力が必須です。
デザインの基礎である『平面構成の手法』『配色や書体の基礎知識』など、Web紙媒体問わずに汎用性の高い知識は、習得しておくべきでしょう。
グラフィックデザインの一環
グラフィックデザインは、紙媒体の広告や雑誌をデザインする仕事です。Web上のバナーをデザインする仕事とは畑違いにも見えますが、グラフィックデザインのスキルはバナーデザインのクオリティを高めます。
バナーデザインにも応用できると思われるスキルについては次を確認しましょう。
- レイアウトスキル
- 文字を組むスキル
バナーデザインでは、限られた小さなスペースに、必要な情報や文言を適切に盛り込みます。ただし、詰め込みすぎては見る人に違和感や煩わしさを与えるため、適切なレイアウトをするバランス感覚が必要でしょう。
また、視認性の高いデザインでは、適切なフォントの選択や、文字のサイズや字間の設定が必須です。加えて、グラフィックデザインの基礎である配色理論やデザイン理論についても、習得しておく必要があります。
求められるデザインスキル
バナーはデジタル広告のため、デザイン作成にはデジタルスキルが必須です。さらに、クリック率を上げるには、サイズやスペースに合わせたデザインも求められます。
バナーをデザインする際は、どのようなスキルを所持していることが望ましいのでしょうか。
グラフィックツールを使いこなせる
バナーデザインでは、最低でも『Photoshop』『Illustrator』は使いこなせるようにしておきましょう。
PhotoshopとはAdobe社のグラフィックソフトで、画像加工を得意とします。一方、同じくAdobe社のIllustratorは、図形描画に優れたソフトです。製図や正確なレイアウトを得意とし、Illustratorを使いこなすことで、頭に描くデザインをそのまま画面に写し取れます。
デザインそのものの作成はIllustrator主体で進め、細かな修正や補修はPhotoshop、というのがバナーデザインの一パターンです。
多様な形、サイズに対応できる
一口にバナーといっても、形状やサイズは様々です。一般的な形状やサイズについては、以下を確認しましょう。
形状 | サイズ(px:ピクセル) |
レクタングル | 300×250、 336×280 |
スクエア | 200×200、300×300 |
スカイクレイパー | 120×600、160×600 |
バナー | 468×60、728×90 |
モバイル | 320×50、320×100 |
バナーの形状やサイズは、対象がスマホユーザーなのかPCユーザーなのかで選択肢が異なります。バナーデザイナーとして活躍するには、形状やサイズに見合った、最適なバナーを作成しましょう。
限られたスペースで表現できる
バナーデザインでは、限られたスペース内に効果的な文言や画像を入れることが求められます。文言や画像の選択、配置についてはデザイナーのセンスの問題となるため、トータル的なデザイン力が必要です。具体的には、文字や画像を適切に配置するバランス感覚や、印象的な文言を入れるコピーなどの表現力が必要となるでしょう。
デザイン力以外のスキルも重要
バナーデザインを請け負う上で重要なのは、デザイン力だけではありません。クライアントの意向を反映したバナーをデザインするには、基本的なコミュニケーション能力も重要です。
デザイン工程を円滑に進めるには、どのようなスキルが求められるのでしょうか。
情報をまとめる力
実際のデザインにかかる前には、クライアントの意向を確認することが重要です。ただし、バナーのスペースは限られているため、情報を羅列しただけでは魅力あるデザインとはなりません。
バナーデザインでは、クライアントから得た情報を咀嚼し、インパクトのある言葉や画像におきかえる表現力が求められます。
コミュニケーション力
要望通りのバナーをデザインするには、クライアントの希望や期待を適切に把握しておく必要があります。そのためには打ち合わせやミーティングで積極的に意見を交わす必要がありますが、これはコミュニケーション力なしには成り立ちません。
また、適切なコミュニケーションによってクライアントや周囲の同僚と良い関係を築ければ、制作現場は円滑になります。雰囲気のよい現場ではお互いに意見を言い出しやすく、建設的なアイディアやアドバイスの交換も可能です。
作成するバナーデザインについて意見のやりとりがスムーズにできるのは、デザインのクオリティを高める上でも有益でしょう。
改善案を考える発想力
バナーデザイナーとしての信頼を得るには、必要に合わせて適切な改善を加えられる、発想力も重要です。
クライアントはバナーを設置することにより、商業的な効果を期待しています。その期待に応えるには、デザイナーが現状の問題を割り出し、改善を提案する必要があります。
具体的には、制作したバナーを測定し、結果の分析を行うことです。結果測定の段階で問題が見つかった場合は、ユーザー心理に合わせたバナー改変が必要となります。
クライアントに建設的な改善案が提示できれば、デザイナーとしての実用性をアピールできるでしょう。
スキルアップのコツ
よりよいバナーデザインを作成するには、スキルアップが不可欠です。バナーデザインのクオリティを上げるには、どのようにスキルを磨けばよいのでしょうか。
様々なバナーを試し、効果検証する
集客効果の高いバナーデザインを作るには、『A/Bテスト』を行い、『クリック率(CTR)』を出してみるとよいでしょう。
A/Bテストとは、異なる2パターンのサイトを用意し、実際のユーザーの動きを比較するテストのことです。バナーでテストする場合は、テキストやカラー違いのパターンでクリック率を比較します。
さまざまなパターンを比較していくことで、より効果的なバナーデザインの選択が可能です。
ただし、バナーのクオリティを高めていくためには、テストは複数回行わねばなりません。修正点が見つかれば都度修正し、細かい改善を繰り返しながら、継続的にテストすることが重要です。
良い参考例をたくさん見る
どのようなバナーデザインが良いか迷ったら、デザインをまねてみるのも効果的です。
さまざまなサイトを巡って見れば、目を惹かれるバナーが見つかるはずです。気になるバナーが見つかったらじっくりと観察し、『どこに惹きつけられたのか』を検証します。
バナーを検証する際のポイントは画像の加工法やレイアウト、字間、カラーです。
バナーデザインの細部までを注意深く観察することで、バナーに施されている工夫点が見えてきます。良いと思ったポイントについては、自身のバナーデザインにもどんどん取り入れていきましょう。
バナーデザイナーの職場
現在はデジタル広告が一般化しており、魅力的なバナーを作成できるデザイナーは、高い需要があります。仕事としてバナーのデザインを手がけるには、どのような会社を選べばよいのでしょうか。
すぐに効果検証できる環境がオススメ
バナーデザイナーとしてスキルを高めたりノウハウを得たりするには、バナー設置による実際の効果を検証できる環境が望ましいでしょう。
すでに前述しましたが、バナーに必要なのはデザイン性だけではありません。有益なバナーには高い集客効果が必要なため、『バナーによってどれほどの宣伝効果が合ったのか』が確認できる環境は重要です。
集客効果の高いデザインとはどのようなものなのかを知るためにも、『請けて終わり』ではなく、効果を測れる環境を選びましょう。
企業の制作部門、宣伝部門
一般企業でもWebサイトを持っているなら、制作部門や宣伝部門でバナーデザイナーの需要があります。待遇面がよい会社なら応募者は多く、競争率はかなり高くなるでしょう。
企業での仕事は自社サイトに関わることがほとんどとなるため、デザイン事務所などと比較してゆったり働くことが可能です。
ただし、自社企業の仕事のみで内容に幅がないため、バナーデザイナーとしての仕事の幅はないかもしれません。
広告会社、PR会社
広告会社やPR会社では、クライアントからの依頼でバナーデザインを作成します。企業専属のデザイナーとは異なり、様々なタイプのサイトを手がけるため、デザイナーとしてのスキルアップが期待出来るでしょう。
こうした会社にはさまざまな案件が集中するため、バナーデザイナーとしての専門性を高めたい人には、ベターな就職先です。ただし、仕事にはクライアントの都合や意向が大きく影響するのが一般的で、スケジュールはかなりタイトになることもあります。
クラウドソーシングの利用もアリ
クラウドソーシングとは、企業がインターネットを活用して不特定多数の人に案件を募集する、新しい外注の形です。案件によっては経験不問なものも多く、駆け出しのバナーデザイナーや未経験者でも利用しやすいでしょう。
クラウドソーシングサイトを利用してバナーデザインを受注した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
短時間でも対応できる案件が多い
クラウドソーシングでは、様々な難易度・単価・条件の案件が揃っています。『サイズは通所のバナーサイズで』『1枚のみ』『雰囲気はお任せ』といった気軽な案件も多く、一定のスキルがあるデザイナーなら、短時間でこなせるでしょう。
ただし、条件のよい案件については、応募が殺到します。自分の実績とマッチした案件を選択しなければ、受注に至るのは困難かもしれません。
様々なパターンを経験できる
クラウドソーシングを利用すれば、さまざまな案件やクライアントと出会えます。
まず、クラウドソーシングに提示されている案件は広告バナーからサイトバナーまでと幅広く、バリエーションが豊富です。「今日はECサイトバナー」「明日は店舗紹介バナー」と好きなように選択できるため、色々なバナーパターンを経験できます。
加えて、クライアントによって仕事の進め方や納品形式等は異なるため、仕事の形式についても経験を深めていけるでしょう。
実績を積みやすい
クラウドソーシングは、未経験者やスキル不足のデザイナーでも実績を積みやすいというメリットがあります。
通常、高単価・好条件の案件では、実績の多い人ほど有利です。未経験者の場合は選考時点ではじかれるケースが多く、仕事の獲得は困難でしょう。
しかし、案件の幅が広いクラウドソーシングでは、スキルのあるデザイナーが避ける『低単価案件』があります。低単価案件は報酬は少ないものの、未経験者でも受注しやすいのが魅力です。
どんな案件でも積み重ねれば立派な実績としてカウントされるため、将来的には好条件の案件にも応募しやすくなるでしょう。
まとめ
バナーデザインは、Web上の有益は販促ツールの一つです。ユーザーにバナーをクリックさせることが主目的のため、デザインでは必要な情報を適切にまとめあげるスキルのほか、ユーザーを惹きつけるインパクトも求められます。
限られたスペースに効率よく文字や画像を配置するには、グラフィックデザインの知識も必要です。
また、バナーデザインのクオリティを高めるには、実際の効果を検証し、良いデザインを分析することが有益です。IT業界は流行の移り変わりが早いため、今の流行もすぐに古くさくなります。常に効果の高いバナーを設置できるよう、あらゆるバナーに注目し、センスやスキルを磨きましょう。