ポートフォリオの基礎知識
クリエイター業界における就職や転職の場において頻繁に登場するポートフォリオですが、業界によっては普段あまり触れる機会が少ないケースもあり。ポートフォリオという言葉に対し耳慣れない感覚を抱く人も多いです。
しかしポートフォリオには様々な種類があり、業界の垣根を超えて目にする場面が徐々に増えてきています。今後は業界を問わずその必要性が増してくるでしょう。
ここからは、ポートフォリオの内容やその種類について分かりやすく解説していきます。
ポートフォリオとは
ポートフォリオとは、『紙ばさみ』あるいは『書類入れ』という意味があります。いくつもの書類を運びやすくするためにまとめるコンパクトなケースをイメージするとよいでしょう。
クリエイター業界におけるポートフォリオとは、自分の作品や実績についてまとめたファイルやWebサイトのことを意味します。自分の能力について、分かりやすくクライアントや採用担当にアピールするために作られるものです。
クリエイター業界だけでなく、金融業界や教育業界でも『ポートフォリオ』という言葉は頻繁に使われています。業界ごとに言葉の内容や役割も異なることから、ある程度それぞれの違いを認識して正確に使い分けるように心がけましょう。
ポートフォリオの種類
ポートフォリオには、ファイルや製本、PDFといった、さまざまな種類があります。業界や会社ごとに提出すべきフォーマットは決まっていますが、内容は同じでも構わないので、全ての種類のポートフォリオを事前に作成しておくとよいでしょう。
ファイルや製本にする際は、その分量に注意しましょう。あまりに膨大な量のファイルや製本は読みづらくなり、読み手の印象が悪くなる可能性もあります。閲覧者の負担を下げ、適切な分量を心がけて用意することをおすすめします。
ポートフォリオの重要性
就職や転職、プロジェクトメンバー募集などの選考の場において、ポートフォリオの存在は重要です。具体的にポートフォリオはどのような役割を果たすのでしょうか。
また、相手が求めているポートフォリオは具体的にどのようなものなのでしょうか。ポートフォリオの役割や求められる内容について、具体的に解説します。
転職などで自身をアピールする武器
新しい環境を求めて転職活動をする際、ポートフォリオの存在は大きな武器になります。面接官はあなたの人間性はもちろん、あなたの能力を知りたいと考えていますが、ポートフォリオを示せばそれは一目瞭然です。
ポートフォリオに、これまであなたが手がけてきた作品やプロジェクトを掲載することで、あなたのスキルやこれまでの経験を相手にアピールできます。言葉だけでなく視覚からも自らの能力を示すことができ、あなたの強力な武器となるのです。
求められるポートフォリオとは
採用する側があなたのポートフォリオに求めるものは、掲載されている作品のテイストとクオリティです。
ポートフォリオの中に自社のテイストにあった質の高い作品が見つかれば、相手に対する評価が一気に高まります。転職したい会社があれば事前にリサーチして、その会社のサービスに沿ったクオリティの高い作品を用意するべきでしょう。
また複数の作品のレベルに差があると、相手はあなたの実力を低く評価するでしょう。作品レベルにムラがあれば相手は不安に感じます。提出する作品のクオリティはできるだけ揃えるようにしましょう。
紙ポートフォリオとWebポートフォリオ
ポートフォリオを提出する際、その形式は大きく分けて二つあります。『紙媒体のポートフォリオ』と、インターネット上で閲覧できる『Webポートフォリオ』です。インターネットを活用する業界ではWebポートフォリオのみ提出することも多いです。
しかし紙ポートフォリオにしかない特徴や利便性があるため、紙媒体のポートフォリオを求める企業もまだ多いのが実情です。ここからは紙ポートフォリオの強みやポイントについてお伝えします。
紙ポートフォリオの強み
紙ポートフォリオの強みは2点あります。一つ目は、全ての面接官に対して内容をわかりやすく会えられる点です。年齢の高い面接官の中にはWebのリテラシーが低い人もいます。そのような人に対し、Web媒体を持ち出すと印象が悪くなる可能性があるので気を配る必要があるのです。
紙ポートフォリオの強みの二つ目は、いつでもどこでも取り出せる利便性の高さにあります。Webポートフォリオはパソコンやタブレットなど、ポートフォリオを表示するデバイスが必要になります。仮にバッテリーが切れたら見せることができなくなる危険があるのです。
紙ポートフォリオであればその心配はありません。カバンから素早く取り出し、電源を入れる必要もなく、その場で相手に提示できる強みがあるのです。
紙ポートフォリオのポイント
Webポートフォリオでは好きな作品から手軽に見ることができるのに対し、紙ポートフォリオは紙媒体として綴られているので、面接官は一枚一枚めくりながらポートフォリオの中身に目を通す必要があります。
そこで紙ポートフォリオは、相手が見やすいような順番を意識して構成する必要があります。シンプルさを意識しながら、統一感のある構成を心がけると良いでしょう。
提示するポートフォリオの分量も大切なポイントです。多すぎると相手の負担になり評価が下がる可能性もあるのです。全体に目を通しやすいよう適切な分量を意識して、作成するようにしましょう。
ポートフォリオ作成の手順と基本内容
クオリティの高いポートフォリオを作成するためには、事前準備を含めて時間がかかります。これまでに手がけた作品にもう一度目を通し、どの作品をポートフォリオに掲載するのか吟味して、全体の構成を考える必要があるのです。
ここではポートフォリオ作成の具体的な手順や掲載するべき項目、作品の数やその順番について解説していきます。
作成の手順
ポートフォリオを作成するにあたり、以下の5つのステップを踏む必要があります。
- これまでの作品を整理
- ポートフォリオのテーマを決定
- 全体の構成を決定
- 作品の確認と追加
- ポートフォリオ作成開始
この作成手順の中で特に大切なポイントは、2と3の過程です。ポートフォリオの核心とも言えるテーマ作りと、そのテーマを表現するためにどの作品を選択して、いかに配置するのかが非常に重要になります。
載せるべき主な項目
ポートフォリオ作成にあたり、掲載するべき主な項目を紹介します。
まずは自分のプロフィールです。氏名や年齢、顔写真といった基本的な情報だけでなく、これまでの職歴や経験、持っているスキルも明確に記載するべきでしょう。プロジェクトの現場で自分がどういった立場として仕事をしてきたのか、具体的なエピソードを交えて作成すると相手に効果的に伝わりやすくなります。
次に具体的な作品と制作コンセプトを項目として載せましょう。掲載している作品のどの点を工夫したのか。その作品を作るにあたりどんなコンセプトで仕事を進めていったのか。ここが相手に伝わるとあなたの考え方や人柄に興味を持ってくれる可能性が高まるのです。
保有しているスキルを項目として提示することも大切です。どのようなソフトを何年くらい使っているのか、具体的なソフト名や習熟度合いなどを書いておくと相手の評価につながるでしょう。
作品数や順番
ポートフォリオに掲載する作品の数や提示する順番も大切な評価ポイントになります。これまで制作した作品を全て載せようとするとポートフォリオ自体が膨大な量になってしまいます。作品を吟味して相手が見やすいような、適正な量の作品を掲載しましょう。
また作品を掲載する順番も大切です。ポートフォリオにとって最初のインパクトは重要です。作品の最初には、あなたが最も自信がある渾身の作品を載せると、相手はあなたの作品に一気に引き込まれ、他の作品も興味を持続しながら読み進めてくれることが多いのです。
作成時によくある疑問
採用試験においてポートフォリオは重要な役割を持ちます。ポートフォリオの見せ方によって相手に与える印象が異なり、採用の成否に大きく影響するのです。
しかしこれまでポートフォリオを作成したことがなければ、誰もが疑問や壁に直面します。ここではポートフォリオ作成時に多くの人が感じる疑問と、その疑問に対する具体的な回答を紹介します。
位置と開きはどうする?
ポートフォリオの企画段階において、縦位置にするか横位置にするか悩む方もいますが、これは自分の作品に対しての考え方次第です。
市販のファイルやバインダーの多くは縦位置で使用されますが、横位置で使用しても問題ありません。あなたのポートフォリオの中身を一番魅力的に伝える形式であれば、縦位置でも横位置でもどちらでもよいのです。
右開きか左開きかという疑問もありますが、こちらも決まりはありませんので、自由に決められます。デザイン関連の作品を掲載するポートフォリオであれば、左開きが見やすいですが、あなたの作品の魅力を最大限引き出す方を選択してください。
サイズはどうする?
サイズを決める際は、相手がそのポートフォリオを見やすいかどうかを基準にして作成するとよいでしょう。あまりに大きすぎると、相手にとって負担になる場合があります。その一方で、小さすぎるポートフォリオはあなたの作品の魅力を十分に伝えることができません。
自分の都合ではなく、常に相手の目線に立って、あなたの作品の魅力が伝わる最適な大きさのポートフォリオを作成するようにしましょう。
表紙デザインも重要?
表紙デザインに関しては、もちろんそのデザインにインパクトがあれば相手の印象を良くすることは可能です。しかし表紙の出来と比較してその内容が薄ければ、逆にあなたの評価が下がる可能性もあるのです。
まずは中身を充実させ、さらに余力があれば表紙デザインに力を入れましょう。力を注ぐ配分を上手に調整しながら作成することが大切なのです。
内容やデザインのNG例を知ろう
ポートフォリオを作成するにあたり、気をつけなければならない点がいくつかあります。ここでは、作成の際に陥りやすい悪い例を示しながら、その対策について解説します。
プロフィールの見栄えや印象が悪い
プロフィールは大切な要素です。十分な情報が記載されてないと相手を不安にさせてしまいます。作品の出来に比べてプロフィールの見栄えや印象が悪ければ評価が下がることにつながります。見やすく伝わりやすいプロフィールを作るように心がけましょう。
画像だけでプロセスなどが伝わらない
ポートフォリオに掲載する作品は、画像だけなくストーリーも一緒に載せることを心がけましょう。相手はあなたがどのようなプロセスを経て、何を感じながら作品の制作に取り組んだのかを知りたいのです。ストーリーを掲載してプロセスを伝えることを意識しましょう。
誤字脱字など細部のチェックが甘い
誤字や脱字が頻繁にあるポートフォリオは、作品がどんなに素晴らしいものでも評価が低くなります。それだけでなく、注意力が欠けている雑な性格の持ち主だと判断される恐れもあるのです。
ポートフォリオを提出する際は、誤字脱字がないか隅から隅まできちんと確認してから提出するように心がけましょう。
著名なサイトデザインを参考例に
いざポートフォリオ作りに取り掛かろうとしても、これまで作ったことがなければイメージが湧かずに作業が進まないケースが多くあります。その際はお手本となるサイトデザインを参考にすると良いでしょう。
ここでは参考例として、二つのポートフォリオサイトを紹介します。
Webデザイナー
Webデザイナーのポートフォリオとして、Joyce Van Herc氏のポートフォリオサイトは非常に参考になります。Joyce Van Herc氏はロンドン在住のベルギー人Webデザイナーです。
トップページに簡単な自己紹介と、代表的な作品を掲載しているポートフォリオサイトです。作品をクリックすると実際のサイトに移動してさらに詳しく作品を見ることができるように、わかりやすく構成されています。
Frontend Developer and Cosplayer — Joyce Van Herck
グラフィックデザイナー
グラフィックデザイナーである西村沙羊子氏のポートフォリオサイトは、モノクロでシンプルなデザインでありながら、特徴的な配置と目を引く画像が印象的です。ブログも掲載しており、作品への思いやストーリーを上手に伝えているので参考にしてみてください。
ポートフォリオ作成ツールを活用しよう
現在はWeb上で様々な作成ツールが用意されています。これらのツールを上手に活用して、質の高いポートフォリオを完成させましょう。
テンプレート充実のStrikingly
バラエティあふれるテンプレートやアイコンが用意されているので、自分のイメージにあったサイトの作成ができるおすすめのツールです。世界中のデザイナーや起業家が利用しているので信頼できるツールとも言えます。
レスポンシブデザインに対応しており、全てのデバイスに対応したサイトを作れるので、安心して利用できるおすすめのツールです。
簡単に作成可能なMATCHBOX
簡単かつ手軽にポートフォリオを作成するのであれば、MATCHBOXがおすすめです。日本のマイナビが運営しているツールであり、無料で利用することができます。画像や動画を簡単に掲載できるので、専門的な知識がない人でも手軽に作れる操作性の高さが特徴です。
ポートフォリオに特化したPortfoliobox
Portfolioboxは、ポートフォリオ作成専門サイトとして、世界中のユーザーに利用されているツールです。有料版と無料版がありますが、無料でも50枚の画像を利用できます。ページ数も10ページ利用でき、十分ボリュームあるポートフォリオを作ることが可能です。
まとめ
ポートフォリオは、あなたと採用者側をつなぐコミュニケーションツールです。会話の代わりに自らの作品制作のスキルを伝える手段として、クリエイターやデザイナーにとってポートフォリオは重要な役割を果たすのです。
しかしポートフォリオはただ作品を掲載すればいいわけではありません。自らのスキルや経験、人柄や考え方などを総合的に相手に伝える内容にすることで、あなた自身が評価され、その結果として採用につながるのです。
この記事を参考にして、デザイン性あふれる魅力的なポートフォリオを作成して、積極的にアピールしてみてください。