キャラクターデザインってどんな仕事?
キャラクターデザインとは、文字どおり『キャラクター』全般をデザインする仕事です。キャラクターは漫画やアニメ、ゲームや本などに登場するものだけでなく、近年は企業オリジナルのキャラクターをデザインする仕事も増加しています。
様々なキャラクターのデザインを手がける、キャラクターデザイナーの詳細を紹介します。
キャラクターを生み出しビジュアル化
キャラクターデザインとは、原作やクライアントのイメージを損なわずにキャラクターをビジュアル化する仕事です。デザイナー自身のセンスや想像力がキャラクターの印象を決めるため、イメージを具現化できる高い作画スキルが求められます。そして、クライアントの意向に沿いつつも魅力的なデザインに仕上げるには、キャラクターを深く理解し、独自の解釈を加える想像力も不可欠です。
また、キャラクターは詳細に描くほどさまざまな特徴を付加できますが、作り込みすぎてはイメージがぼやけてしまいます。一目でインパクトを与えるキャラクターを生み出すには、媒体にあったキャラクターパーツやポージングを選択し、最適な構図を設定することも必要です。
ゼロから生み出す場合
原作等が無くゼロからキャラクターを生み出す場合は、クライアントの指示書を元にキャラクターを作成します。
ただし、指示書ではキャラクターのイメージだけが漠然と指示されているケースが多いため、キャラクターに個性を付けるのはキャラクターデザイナーの仕事です。
例えば『クール系』という指示が来た場合は、キャラクターの普段の性格や行動まで考えて、構図やラフ画を描きます。
この時キャラクターの作り込みが不足していれば、どこかで見たようなインパクトの無いキャラクターになるため、細部までキャラクター設定を作っておく必要があるでしょう。
原作がありキャラクター化する
キャラクターに原作がある場合は、原作の設定や世界観を壊さないようにビジュアル化します。原作内でキャラクターの持ち物や服装、髪型等について触れている場合は、すべての要素を含めたうえでデザインしなければなりません。
設定等を考える必要がない反面しばりが多く、原作を再現しつついかに魅力的なキャラクターにまとめるかが、重要な課題となるでしょう。
キャラクターデザインの具体例
キャラクターが必要なシチュエーションや目的が異なれば、キャラクターデザインのポイントや作成手順も異なります。キャラクターデザインのなかでも特に需要の高い『アプリ』『アニメ』『マスコット』でのデザインの具体例を見てみましょう。
アプリ、ブラウザゲームのキャラクター
キャラクターデザインの仕事のなかでも、近年特に需要が高まっているのがゲームキャラクターのデザインです。キャラクターの魅力がゲームの出来を左右するケースも多いため、ゲームの世界設定やシーン展開にマッチする外見やアイテムが求められます。
また、近年のゲームのほとんどは、3Dグラフィックが使用されています。そのため、キャラクターは平面で考えるのではなく『3Dになった場合どうなるか』を見越して作成する必要があるでしょう。
アニメのキャラクター
原作つきのアニメキャラクターは、キャラクターが存在する世界観や設定に従ってデザインされます。原作が広く知られている場合は、原作の作画者とアニメの作画者が違うため、些細なデザインがとても大切になります。
一方、原作がなく完全オリジナルアニメの場合、世界設定やキャラクター設定は脚本家や監督、アートディレクターなどが決めるケースがほとんどです。原作つきのアニメほど厳密なしばりはありませんが、ディレクターや監督とのすりあわせは頻繁に行い、確認しながらデザインする必要があります。
企業や自治体のマスコット
キャラクターデザイナーの仕事には、企業や自治体のマスコットデザインも含まれます。
近年はキャラクターを使った『キャラクターマーケティング』に取り組む企業が増えており、魅力的なキャラクターは有益な販促ツールとして高い需要があります。
キャラクターデザインの善し悪しによって企業や自治体のイメージが変わるため、キャラクターデザインはクライアントの要望を確実に反映させねばなりません。企業や自治体の特色や印象を具現化したような、オリジナリティのあるデザインが求められるでしょう。
また、企業や自治体のキャラクターは、多くの販促に使われることを想定しなければなりません。複雑な線で仕上げるのではなく、単純な形状で、商品化しやすいデザインが最適です。
キャラクターデザインの流れ
キャラクターデザインで重要なのは、いかにクライアントの意向に沿ったデザインに仕上げるかです。そのため、コンセプトの理解やクライアントの狙いは的確に把握する必要があるでしょう。
実際のキャラクターデザインの流れを紹介します。
依頼内容の理解とイラスト化
実際のデザインに取りかかる前に、求められるキャラクター像についてのミーティングを行います。
アニメやゲームのキャラクターなら、原作者やアートディレクター、監督等に世界観や人物設定を確認します。一方、商業デザインの場合はクライアントの狙い、キャラクターに付加したい役割などを適切に把握することが重要です。
キャラクターの概要が理解できたら、簡単なスケッチでイラスト化します。事前に確認した設定に沿うデザインになるよう、髪型から服装、ポーズまで雰囲気を合わせねばなりません。
すり合わせと修正
ラフ画が完成したら、キャラクターがクライアントや監督の意向に沿っているかどうか、チェックしてもらいます。ラフ画は複数枚作成してイメージに近いものを選んでもらうのが一般的ですが、要望通りに出来ていないものについては、修正や描き直しを要求されるでしょう。
仕上げ
キャラクターデザインにOKが出れば、仕上げに取りかかります。基本的な流れは下絵、線画、色つけ、画像ソフトを使った仕上げと続きますが、いずれの段階でもアートディレクターやクライアントへの確認は必須です。
どの段階でも、修正を求められれば都度修正し、またデザインの確認をします。キャラクターをアートディレクターやクライアントのイメージにできる限り沿わせるため、小さな箇所の修正でも相手の意向を確認する必要があるのです。
キャラクターデザインの学び方
キャラクターデザインの学び方は専門学校、独学などがあります。それぞれのケースの特色や注意点を見てみましょう。
専門学校で学ぶ
初心者からでも効率的にキャラクターデザインを学べるのがゲームやアニメの専門学校です。実績のある専門学校なら卒業後の就職が有利になるケースも多く、将来的にも大きなメリットがあります。
専門学校に通えば、キャラクターデザインに不可欠なデッサン・色彩理論を効率的に学べるほか、PhotoshopやIllustratorなど、現場で必須のデジタルツールの習得も可能です。
加えて第一線で活躍している現役デザイナーを講師としている学校も多いため、個人では知り得ないような業界情報も得られるでしょう。
ただし、通学期間や授業料、カリキュラムの内容は学校によって様々です。自身のライフスタイルや目的、予算等を考慮して学校を選択し、途中でモチベーションやお金が途切れることのないよう注意しなければなりません。
独学も可能
自分に合った教本やウェブサイトが見つかれば、独学も可能です。学校に通う資金でペンタブレットやソフトウェアの購入もできるため、すぐに実践にとりかかりたい人には有益でしょう。
ただし独学の場合、セルフコントロールやスケジュール管理に長けた人でなければ効率的な学習を継続するのは困難です。学習につまづいてもアドバイスをくれる人はいないため、途中で行き詰まる可能性もあります。
また、CGによる着色や色彩の配色といった、実践的なスキルを教本のみで習得するのは困難です。絵やCGの技術を一から学ぶという初心者は、お手本を身近に見られる専門学校や短期講座からスタートすることをおすすめします。
キャラクターデザイナーに必要なスキル
キャラクターデザイナーとして活躍するには、絵の実践的なスキルのほか、仕事を円滑に進めるコミュニケーション能力も重要です。
キャラクターデザイナーに必要なスキルについて考察します。
基本的なデザイン力
キャラクターを魅力的に描くには、基本的なデザイン力や画力は必須です。デッサンやパースがおかしければ、プロが描くキャラクターとして成立しません。
また、キャラクターは動物・人物・空想上の生き物など、様々なパターンがあります。どんなキャラクターを要求されても応えられるよう、プロとして不得手なジャンルを作らないことも重要です。
ソフトやツールを使える
キャラクターデザインでは、デッサンやパースといったアナログ技術のほか、描画ソフトやペンタブなどのツールを扱う『デジタルスキル』も必要です。
近年描かれるイラストのほとんどは、『Illustrator』『Photoshop』といったソフトが使われています。キャラクターデザインを仕事とするからには、最低でも両ソフトを使いこなせるようにしておく必要があるでしょう。
加えて、ゲームキャラクターのデザインなどで2Dを3Dに起こす必要がある場合は、『Maya』等の3Dデザインソフトの知識も不可欠です。
コミュニケーション力も重要
複数の工程で一つのものを作り上げていくアニメやゲームの現場、あるいは商業デザインでは、コミュニケーションが作業を円滑にします。コミュニケーションが取れている現場は、雰囲気も良好です。ざっくばらんに意見を言いやすく、ストレスフリーな環境で作業できるでしょう。
また、デザイナーは自身のデザインの経緯を説明する機会が多いものです。社内メンバーとの打ち合わせやクライアント先でのプレゼンテーション、デザイナー同士の意見交換などでは、デザインの概要をわかりやすい言葉で伝えることが求められます。
こうしたコミュニケーション能力は一朝一夕で身につくものではないため、普段から意識してクオリティの高い日本語に触れなければなりません。毎日新聞に目を通すなどして、日常に使えるボキャブラリーを増やしましょう。
依頼内容を理解し具体化する
クライアントやアートディレクターの意図を理解しデザインに活かすには、聞く力が重要です。
依頼者とデザイナーに認識のずれがあれば、希望通りのキャラクターを生み出すのは困難になります。分からないことはどんな小さなことでも確認する、特に大切なことは念を入れて確認するなどし、双方の認識を一致させることが重要です。
適切なコミュニケーションによってクライアントやアートディレクターの要求を正しく理解できれば、修正や描き直しの回数は減少します。結果的に仕事はスムーズに進み、デザイナーとしての信頼度もアップするでしょう。
キャラクターデザインができる職場とは?
実際にキャラクターデザイナーとして活躍する人は、グラフィックデザイナーやイラストレーターとしての経験を積んだ後、実力を認められて抜擢されるというケースがほとんどです。
キャラクターデザイナーとして活躍するには、どのようなキャリアを選択すればよいのでしょうか。
ゲーム会社
ゲーム関連会社に勤めれば、ゲームキャラクターのデザインを手がけるチャンスがあります。ただし、前述の通りいきなりキャラクターデザインを任されることはなく、まずはCGデザイン等で経験や実績を積むのが一般的です。
また、ゲームキャラクターのデザインでは、3DCGのスキルを持っていると優遇されます。スキルを認められれば、キャラクターを3D化する『モデラー』の仕事と兼務しながら、デザインに携われるケースもあるでしょう。
アニメ制作会社
アニメキャラクターのデザインをしたいなら、アニメ制作会社に入社するのが一番です。ただし、よほど突出した才能が無い限り、入社後すぐにキャラクターデザインを任されることはありません。キャラクターデザインに携わるには、線画や彩色の実績を積み、実力を認めてもらう必要があります。
デザイン会社
デザイン会社の中では、マスコットキャラクターや商品のイメージキャラクターといった商業デザインを手がけている会社を選べば、キャラクターデザインの現場に触れることになります。入社後は『グラフィックデザイナー』としてデザインに携わることになるでしょう。
フリーランスが仕事獲得する方法
フリーランスとは、企業や団体に所属せず、個人で仕事を請け負う新しい労働スタイルです。個人のスキルがものをいうデザイナーの中にはフリーランスで働く人も多く、自身の実力で仕事を獲得しています。
フリーランスを選択した場合、どのように仕事を得ればよいのでしょうか。
クラウドソーシングで受注
キャラクターデザイナーとしての実績を積み上げやすいのが、クラウドソーシングで案件を受注するというパターンです。クラウドソーシングでは企業が不特定多数の人に案件を開放しているため、双方の条件さえ合えば未経験でも案件受注のチャンスはあります。
ただし、不特定多数の人に開放されているぶん、好条件・高単価の案件には応募が殺到し、受注は困難です。なかなか受注できない人は低単価案件にも目を向け、数をこなすことをおすすめします。低単価案件を増やして実績を作れば、やがては条件のよい案件も受注できるようになるでしょう。
自治体や企業の募集に応募
自治体や企業が募集するイメージキャラクターに応募するのも、フリーランスとしては有益です。賞金が魅力的なことはもちろんですが、キャラクターデザイナーとしての箔がつき、次の仕事にも繋がりやすくなるでしょう。
ただし、著名なコンペティションには多数の応募があります。厳しい審査にパスするためには、『主催者側の意図を的確に把握する』『傾向や嗜好を見極める』などし、自治体や企業の狙いに沿ったキャラクターの提案が必須です。
まとめ
キャラクターデザイナーの仕事の範囲は、キャラクターが登場する場所すべてです。ゲームやアニメ、企業広告等、活躍の場は幅広いでしょう。
ただし、着実に仕事を得るには、確かな絵画力やデジタルスキルに加えて、コミュニケーションスキルも求められます。クライアントやアートディレクターの意図を確実にデザインに反映できるよう、密なやりとりに辛抱強く対応することが重要です。
また、キャラクターデザイナーは、フリーランスという働き方にも向いています。個人のスキルが十分にあれば単価の高い案件の受注もでき、安定した収入を得られるでしょう。