フリーランスデザイナーに契約書は必要?その重要性を知ろう。

フリーランスデザイナーとして仕事を受注する際、契約書は交わすべきなのでしょうか。事前にきちんと契約書を交わしておくと、後のトラブルを回避することができます。どんな内容にて交わせばよいのかなどを見ていきましょう。

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契約書の重要性

フリーランスとして仕事をしていると、口約束や簡易的なメールのやり取りで仕事を受けてしまうことも少なくないのが実情です。ただし、手軽に仕事をスタートさせてしまうことで、支払いなどのリスクが起こりうる可能性もあります。そういったトラブルを予防するためには、契約書の中身をよく理解した上で、きちんと契約を交わすことが大切となります。

報酬や修正対応トラブルの回避になる

フリーランスの仕事でよくあるトラブルのひとつに、仕事が完了しても度重なる修正を依頼され、結局納品期日に間に合わないというケースがあります。その結果、納品期日遅れを理由に、報酬の減額や支払いそのものがないといったトラブルも起こりうるのです。

こういった事態を避けるためにも、修正を受け付ける際のルールをある程度明確にし、報酬についてもしっかりと明記された契約書を交わすべきでしょう。

双方の利益を守るためにも必須

フリーランスにとってクライアントと契約書を交わす必要性は先述の通りです。一方でクライアントにとってもきちんと契約を交わすことで、発注した業務がきちんと遂行されるという意味で、契約書はとても重要となります。

とはいえ、日本のビジネスシーンの風潮として、契約内容をはっきりさせなくともお互いの信頼関係があれば十分とする節があるのも実情です。フリーランスが自身の利益を守りクライアントと対等な立場で話を進めるのは、ごく普通のことです。

クライアントに失礼のないようにと追従するあまりに、契約書を交わす提案をするのをためらうのはよくありません。契約書はフリーランスだけでなくクライアントの利益を守るための大事な書類である、ということを改めて認識し、きちんと契約を交わすことでトラブルを避け、気持ちよく仕事をしましょう。

榎本希

デザイナーとして仕事を受ける場合の契約は請負契約になるため、依頼主は完成物が契約内容に適合していない場合には修正を依頼することができます。民法上では追完請求といいます。

追完請求に対し、請負人が補修を行わない場合には代金減額請求を行う事ができます。

依頼する側と依頼を受ける側で、完成物に対する品質等の認識のズレがないように契約段階でしっかり確認を行い、契約書にその旨を記載することでお互いにトラブルの回避に繋がります。

契約締結の流れ

クライアントとの話し合いでいざ契約を締結することになった場合、どのような流れとなるのかを見ていきましょう。

契約内容を取り決める

まずは、契約内容を話し合います。基本的な業務内容、報酬、業務期間はもちろん、進捗報告や情報管理といった、目に見えない稼働業務についても細かく提示しておくと、あとのトラブルに繋がりません。また、交通費など、稼働にあたりかかる経費の扱いについても、しっかりと確認しておきましょう。

契約書を作成

双方の合意ができた時点で、契約書を作成します。実際にはクライアント側から契約書を提示される場合が多いので、その場合はフリーランスとして不利な条項がないかどうか、内容をしっかりと読み込んでおきましょう。

チェックすべき項目は、『業務内容』『報酬』『支払サイト』『契約期間(更新の有無など)』『経費負担』『損害賠償』についてです。

契約書の内容に双方が合意できたら、双方が署名・捺印したものを2通作成し、1通ずつ保管します。仕事が完了しても、何かのトラブルがあったときのことを考えて、5年間は保管することが望ましいとされています。

クライアントが契約書を提示しない場合は、フリーランス自身が作成する必要があります。契約書というと内容のハードルが高そうですが、テンプレートを使えば簡単に作成することができます。

榎本希

仕事を行う上でトラブルになりやすい物は主に報酬関連、業務の内容(請負であれば品質や数量など)、納期です。

損害賠償という大きなトラブルを回避するためには、まずは損害賠償という事が起こらないようにするためにも、上記のようなトラブルになりやすい事項については契約を締結する前にしっかり確認を行い、双方で合意した内容を契約書という形で書面に残しておくことが大切です。

もし、どうしても契約書の作成を言い出しにくいなどの場合にも最低限メールでのやり取りであればメールを保存する、メモを残すなど、話し合った項目について記録を残しておくようにしましょう。

契約書で決めるべき事

フリーランスデザイナーが契約書を交わす際に、決めておくべき項目としては何があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

雇用形態は?

フリーランスの契約書でまずはっきりとさせておきたいのは、仕事の完成義務があるかどうか。民法上は「請負契約」と「委任契約」の2つに大別されます。

前者は、契約した仕事を完成させる義務があるもの。期待されているクオリティを満たしていなかったりすれば、仕事を完成したと認められない可能性があります。

一方で後者は、仕事の完成義務がありません。だからと言って、いい加減にやっていいということではありません。委任された業務について仕事を遂行し、義務に違反する場合は、何らかの責任を追及されることになります。

仕事の内容、納期は?

フリーランスのデザイナーの場合、納品物がクライアントが求めるレベルに達していない場合は、度重なる修正対応を求められることも少なくありません。一旦納品したにもかかわらず、何度も修正依頼が来ることで、他の業務に支障をきたす場合も。

そこで、修正の内容について「無料での修正対応は●回まで、それ以降は別途料金が発生する」など、規定を設けておくことをおすすめします。もちろんこの規定を設ける場合は、納品物のレベルが求めるレベルから大きく逸脱していないことが条件となります。がしかし、クライアントの無意味な修正指示を抑制する効果も多いにあるのです。

また、納品したにもかかわらず、クライアントの都合でしばらく連絡がこないという場合もあります。それを避けるため「速やかに内容確認を行うこと」や「納品後●日以内に連絡がないときは承認されたとみなす」など、規定を設けておきましょう。

報酬は?

言わずもがな、契約を交わすにあたり、報酬に関する部分は最重要ポイント。トラブルの元となる部分でもあるので、しっかりとした取り決めが必要です。

契約金が消費税込みの金額であるのか否か、経費は認められるのか、などは意外と見落とされがちなポイントだったりするので、しっかりと双方が確認をしておくことが必要です。

榎本希

フリーランスの場合、業務委託契約という名称で契約することが多いかと思いますが、契約書の名称に関わらず契約の内容により「請負契約」「委任契約(準委任契約)」もしくは両方の契約である混合契約という形で契約をする事になります。

仕事を行う中でもトラブルになりやすい「仕事の内容(請負契約であれば品質や数量など可能な限り詳細に決めるようにしましょう)」「報酬」「納期」については十分に話し合いをした上で双方が合意する内容を決め、契約書に記載するようにしましょう。

また、フリーランスで仕事をする場合にありがちなトラブルとしてクライエントと連絡が取れなくなるという事があります。

そのため、クライエントが個人であるならば屋号や住所などの連絡先、企業であるならば社名や連絡先などを契約前にしっかり確認しておくと良いでしょう。

契約を辞めたい場合はどうする?

契約期間が終了に近づき次の契約を延長したくない場合や、契約期間の途中でも仕事を辞めなくてはいけないことも、ときにはあります。その際は、どのように対応すればいいのでしょうか。

契約継続をしたくない場合

契約期間の終了に近づいてくると、次の契約の延長・更新の有無の確認が入ります。契約継続をしない場合は、遅くとも契約が終了する1ヶ月前には申し出ましょう。

契約期間中に辞退したい場合

当然ながら、基本的には、契約期間内の辞退は認められません。ただし、やむを得ない事情がある場合は、遅くとも1ヶ月前には申し出ましょう。その理由によっては、受け入れてもらえることもあります。お互いが協議した上で、トラブルなく辞められる場合があります。

榎本希

民法上の委任契約(準委任契約)の場合には、双方がいつでも契約の解除ができるとなっていますが、相手方にとって不利な時期の契約解除は損害賠償が発生する原因になります。

また、請負契約の場合には原則としては仕事の完成に対して報酬が支払われる契約になるため、途中で契約解除をする場合には報酬の請求ができない場合もあります(可分なものである場合、既に履行済みの部分については請求ができます)。

いずれにせよ、トラブルを回避するためには相手としっかり話し合いを行い、双方が合意した上で契約解除を行うようにしましょう。

契約解除にならないように気を付ける事

業務をきちんと遂行できていなければ、クライアントから契約解除を言い渡されることもあります。そうならないために、気をつけるべきことを見ていきましょう。

報・連・相はしっかり行おう

よく言われる「報告・連絡・相談」は、仕事をスムーズに行うにあたり、やはり重要なこと。問題が発生してからでは遅いのです。どんな些細なことでもきちんと報・連・相を行うことで、双方の勘違いなどによるトラブルが激減し、業務改善を図ることができます。フリーランス自身のリスクヘッジにもつながります。

公私混同はNG

フリーランスは会社で仕事をするのではなく自宅で仕事をすることも多いため、公私混同にも注意が必要です。自分はそうは思っていなくてもクライアントに「公私混同している」と思われないように、当たり前のことですが、業務の対応はオンモードで接するようにしましょう。

榎本希

会社員でも報告・連絡・相談は大切ですが、フリーランスの場合にはトラブル防止や、万が一トラブルになった際の証明としての役割も果たします。

例えば○月○日までに××を10点作成し、納品するという契約をした場合に、進捗報告を行っていた記録や、成果物について自分の思う品質で相違ないかの確認を途中で行いクライエントから問題ないとの承諾を得ていた証明や相談の記録、納品した日時と納品物の記録などが挙げられます。

万が一、クライエント側から受け取っていない・依頼した内容と違うなどと言われた場合にも、報告・連絡・相談の記録が残っていればそれが証明となります。

まとめ

会社に所属していないフリーランスだからこそ、自分の身は自分でしか守れません。クライアントの言いなりとなるばかりに結果的に理不尽な仕事となってしまったということのないように、仕事を始める前に双方が合意した契約書を交わし、トラブルなく互いに気持ちよく業務を遂行しましょう。

決めるべきは、報酬や修正対応、納期についてなど。クライアントが契約書を提示しない場合は、フリーランス自身が作成する必要があります。契約書というと内容のハードルが高そうですが、テンプレートを使えば簡単に作成することもできます。

仕事を始める前には、「契約書を交わす」ということを定例化したいものです。

榎本希 [監修]

医療機関・医大の研究室にて長年勤務をした後、行政書士試験を受験。医療系許認可をメインに扱う行政書士として、行政書士のぞみ事務所を開業。再生医療関係の許認可・診療所開設・医療広告ガイドラインに基づく医療広告のチェック等の他、任意後見・契約書作成・起業支援を扱う。


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