Pythonの基礎をおさらい
まずはPythonとは何か、基本的なところを理解しておきましょう。
1991年に開発されたプログラミング言語
Python(パイソン)とは、もともと分散型オペレーティングシステムの管理のために1991年に開発されたプログラミング言語です。
開発者はオランダ人のグイド・ヴァン・ヴァンロッサム(Guido van Rossum)氏で、オープンソースで誰でも利用できます。シンプルな構文でプログラムが書けるのが特徴で、さまざまなライブラリも利用できるので、初めてプログラミング言語を学ぶ人にも向いている言語です。
世界的に注目度が高く期待が大きい
Pythonは世界的に注目度が高く、日本でも多くの人が学び始めています。有名なソフトウェア開発プラットフォームであるGitHub上でも、JavaScriptに次いで2番目に人気の言語です。
特に、AI(人工知能)を活用したソフトウェアの開発はほぼPythonの独壇場となっており、これから習得したいプログラミング言語として、さまざまなエンジニアがPythonを挙げています。
Pythonの将来性が高い3つの理由
それでは、なぜPythonは日本国内でも人気が高く、将来性のある言語とされているのでしょうか?主な理由として、以下の3点が挙げられます。
AIや機械学習に強い言語である
上記のように、PythonはAIや機械学習の分野で広く用いられている言語です。AI技術はビジネス分野だけでなく、日常生活にも積極的に導入され始めており、世界的にAIを使ったさまざまなソフトウェアの開発が流行しています。
AIを用いたソフトウェアは基本的にPythonで開発されるため、AIの進化により、今後ますます開発言語としての需要が増すと予想されているわけです。
多くの有名企業が採用している
世界的に有名な企業の多くがPythonを採用していることも、将来性のある言語と考えられている理由です。海外では日本以上にPythonが普及しており、GoogleやYouTubeなど、世界中の人々が利用しているサービスでも活用されています。
他にもさまざまなWebアプリやWebサービスの開発に使用されている言語で、そのネームバリューから日本でも数多くの企業がPythonを使ったソフトウェアの開発に乗り出している状況です。
Pythonが使われている主なサービス
では、Pythonが開発に使われている代表的なサービスを紹介しておきます。いずれも知らない人がいないほどの有名なサービスで、Pythonが世界的に普及していることが納得できるはずです。
YouTube
YouTubeは今や知らない人がいないほど有名な動画共有サイトです。2005年2月にサービスを開始し、2006年11月にはGoogleが買収しています。2020年11月の時点において全世界で20億人以上が利用しており、100カ国以上で動画が視聴されています。
毎分60時間分の動画が世界中でアップロードされており、大量の動画の再生や検索、アカウントの管理などにPythonが利用されています。
Dropbox
Dropboxは世界中で5億人のユーザーを抱えるオンラインストレージサービスです。Dropboxの93万にも及ぶ大規模なソースコードは全てPythonで記述されており、OSに依存せず高速な動作が可能になっています。
Pythonは学ぶのが比較的容易な言語であり、スピーディーなソフトウェア開発が可能です。Dropboxのようなスタートアップ企業が、新たなWebサービスを開発するのにも向いている言語です。
10億人以上のユーザーを誇るInstagramも、Pythonを活用して構築されたアプリケーションとして有名です。
現在はFacebookの傘下にありますが、もともとはAmazonのクラウド上で「Django」と呼ばれるPythonのフレームワークを用いて開発された経緯があります。さまざまなフレームワークを利用することで、短期間で高度なWebアプリケーションを構築できるのもPythonの強みです。
Pythonエンジニアの転職状況について
ここまでPythonの概要と人気の理由を説明してきましたが、Pythonを使いこなすエンジニアの転職状況はどうなっているのでしょうか?転職市場でのPythonエンジニアの状況と平均年収を確認してみましょう。
転職市場での人気も高まっている
ここ数年、Pythonエンジニアの求人数は増えており、転職市場でも人気が高まっている状況です。日本ではPythonエンジニアという名称自体がまだ主流にはなっていないため、JavaやC言語を使うエンジニアと比べると求人数は多くはありませんが、それでも正規雇用の求人やフリーランスの業務案件が増え続けています。
今後、AIのビジネスシーンへの導入が増えるに連れて、Pythonエンジニアの求人もさらに増えることが予想されます。特に、即戦力となる経験とスキルを持っている人材は、就職・転職先に困ることはないでしょう。現状はかなりの売り手市場といえそうです。
出典:Pythonエンジニアの転職市場状況とは?|レバテックキャリア
年収も比較的高い
テクノロジー系のコミュニティサービス「TECH Stree」による『2020年プログラミング言語別年収ランキング』によると、Pythonエンジニアの平均年収は20代で403万円、30代で546万円、そして40代では634万円です。
最も人気の高いR言語のエンジニアと比べても遜色なく、数あるプログラミング言語の中でも比較的高い年収となっています。
さらに経験・スキルを活かしてフリーランスとして活動しているPythonエンジニアの中には、年収1,000万円を超えている人もおり、即戦力となるスキルを持っていれば、エンジニア全体の中でもトップレベルの報酬を得られる可能性があります。
出典:2020年プログラミング言語別年収ランキング | TECH Street
Pythonエンジニアとしてのキャリアパスは
次に、Pythonエンジニアとして、理想のキャリアを歩んでいくためのポイントを解説します。エンジニアのキャリアパスとしては、専門のプログラミングを極めたり、それまで培った知識・スキルを活かせる職種に転職したりする道が考えられます。
フリーランスとして活躍していきたい人もいるでしょう。さまざまな道が考えられるので、自分の性格や強み分野を活かせるキャリアを歩むことが大事です。
Pythonエンジニアの道を極める
Pythonエンジニアとしての道を徹底的に極めるのもキャリアパスの一つです。30~40代になると、それまでの経験を活かしてエンジニアから別の職種に移る人も少なくありませんが、そのまま高い技能を持つプロフェッショナルとして、活躍し続けるのも良いでしょう。
事実、生涯エンジニアとして活躍している人も多くいます。実務経験の多さは信頼性に直結するので、独立して多くの企業から高報酬の案件を受ける道も考えられます。
データサイエンティストへステップアップ
機械学習やデータ分析に関する知識・スキルを深めて、データサイエンティストにステップアップする道もあります。
ビッグデータを活用して企業に有益な提案やアドバイスをするのが主な役割で、Pythonを用いて膨大なデータの分析を行ったり、分析に必要な環境を構築したりするスペシャリストです。そのためPythonエンジニアと親和性が高く、さまざまな業界の企業から求められているため、年収も高い職業として注目されています。将来性のあるキャリアパスの一つとなります。
培ったスキルや人脈を武器にコンサルを目指す
これまで培ってきたPythonエンジニアのスキルに加えて、さらにコンサルティングの技能を身に付けることにより、企業のコンサルタントとして活躍する道もあります。高度な分析技術を活かして、データに基づいた実践的な課題解決案を提案できれば、高額なコンサル報酬を得られるでしょう。
また、ビジネス上の課題をデータ分析の観点から解決するために、AIを活用したソフトウェアを開発したり、企業のデータアナリストのためのデータ分析環境を構築したりなど、さまざまな活躍が可能です。エンジニアとして積極的にビジネス課題を解決したい人にとっては、魅力的なキャリアパスの一つといえるでしょう。
未経験でPythonエンジニアに転職はできる?
このようにPythonエンジニアの需要は高く、さまざまなキャリアパスも考えられますが、未経験からPythonエンジニアに転職は可能なのでしょうか?エンジニア未経験の転職希望者の実情を確認してみましょう。
実務経験がないとかなり厳しい
結論を言えば、相応の実務経験がなければ、Pythonエンジニアに転職するのはなかなかハードルが高いです。なぜならば、Pythonエンジニアを募集している企業の多くは即戦力を求めており、入社後すぐに活躍してほしいと考えているからです。
実務経験のある人材と比べると、未経験者はどうしても採用段階でふるいにか掛けられてしまう可能性が高いでしょう。ただし、Pythonエンジニアの需要は急激に伸びており、企業によっては実務経験がなくても、相応の知識があれば採用を検討してくれる場合もあります。
自社で必要なエンジニアを育てる動きも出てきているので、数学や統計学など、Pythonエンジニアの素養となる知識を持っている人材は未経験でも採用されるチャンスはあります。それでも、求人全体からすると、全くの未経験者がPythonエンジニアになる道は厳しいのが実態です。
他言語が使えるなら可能性はある
Pythonを用いた開発経験はなくても、C言語やRuby、PHPなど、他の言語での開発経験がある人はPythonエンジニアとして転職できる可能性があります。
他の言語での開発経験があれば、エンジニアとしての素養を客観的にアピールできるのに加えて、さらにPythonがよく用いられるWebサービスの開発経験があれば採用されやすいでしょう。
特にRubyやPHPは、Webサービスの開発に使われることが多い言語です。これまでの開発経験に加えて、独学でPythonも習得していることをアピールできれば有利になります。
Pythonの独学は一定レベルまでなら可能
実務経験がなければ、なかなかPythonエンジニアとして転職するのは難しいのが現状ですが、それでも独学でPythonを習得してWebアプリの開発をしていれば、その実績をアピールできます。
Pythonは初心者でも比較的簡単に習得でき、一定のレベルまでならば独学でも可能なので、これからPythonエンジニアを目指す人は書籍や言語学習用のWebサイトなどを活用して勉強を始めるのも良いでしょう。プログラミングスクールなどでもPythonのコースが開講されています。
Pythonエンジニアの転職を成功させるポイント
続いて、Pythonエンジニアの転職を成功させるためのポイントを解説します。
他のプログラミング言語を習得しておく
Python以外のプログラミング言語も習得しておくと転職活動で有利になります。例えば、Python開発でよく使用されるJavaやRuby、PHP、R言語、C++などが挙げられます。
データベース管理システムを制御するSQLもおすすめです。実際、Pythonエンジニアは複数の言語を使いこなせる人が多いので、ライバルに負けないためにも他の言語の知識も深めておきましょう。
実際に開発を行いポートフォリオを作成する
実際にPythonを使って開発したWebアプリや、Webサービスのポートフォリオを作成しておきましょう。たとえ独学でも、魅力的なポートフォリオを作成できていれば、それが評価されて転職に結びつくことは珍しくありません。
特にエンジニアの転職では、客観的にスキルを証明することが重要であるため、エンジニアとしての素養が判断できるポートフォリオは強力な武器になります。
Python関連の資格を取得する
Python関連の資格を取得するのも有効です。例えば「Python3エンジニア認定基礎試験」や「Python3エンジニア認定データ分析試験」などは、比較的最近できた資格試験ではあるものの、Pythonの基礎的な知識やスキルを持っていることを客観的に証明できます。
特に、他のプログラミング言語の実務経験を持っている人がPython関連資格を取得しておけば、転職の際に即戦力として評価してもらえる可能性があります。
英語力を高める
Pythonエンジニアに限らず、英語力のあるエンジニアは転職活動で有利になるケースは少なくありません。特に海外にクライアントを持っている企業や、海外と日常的に取引している企業はエンジニアでも英語力が求められる場合があるでしょう。
また、英語力があれば最新のIT技術を海外から学べるので、他のエンジニアよりも最新技術を身に付けやすいというメリットもあります。ビジネスパーソンとしても優秀さをアピールできるでしょう。
ネットの転職エージェントを活用する
エンジニアとして自分に合った企業や働き方を見つけるには、転職エージェントの利用も有効です。一人で転職活動をすることも可能ですが、希望する条件や業務内容、自分のスキルにマッチした企業を見つけるにはどうしても時間と手間が掛かります。
転職活動の時間が限られている人も多いので、面談を通じてプロのアドバイザーが条件にマッチした企業を紹介してくれる転職エージェントを活用した方が、効率的に転職活動ができます。基本無料で相談できるので、積極的に利用しましょう。内定までしっかりサポートしてもらえます。
まとめ
Pythonエンジニアの将来性と転職事情、そして転職を成功させるポイントを解説しました。Pythonは世界的に人気が高く、将来性のある言語です。
日本も世界に少し遅れてはいるものの、多くの企業が注目し始めているので、新たなプログラミング言語を学びたいエンジニアにはおすすめです。未経験からの転職はハードルが高いものの、他の言語での開発実績があれば、Pythonエンジニアとして転職できるチャンスはあります。
独学でもある程度までは学べるので、これからPythonエンジニアを目指す人は、書籍やプログラミングスクールなどを利用して言語を習得し、実際にWebアプリなどを開発してみると良いでしょう。それをポートフォリオにまとめておけば、転職活動の際に評価してもらえる可能性があります。積極的に転職エージェントなどを利用しながら、自分に合った転職を目指しましょう。