PdMの副業のモチベーションは「プロダクトと向き合う時間」
副業から離れていた時期があった
- 副業はいつから、どのような経緯で始められたんですか?
佐伯氏:副業歴はかなり長くて、24歳のごろからやっています。
今でこそプロダクトマネージャー(PdM)をやってますが、元々エンジニアだったので最初は開発の副業でした。本業はWebのエンジニアだったので、副業ではアプリ開発をしてました。当時は新しいスキルを身につけたい、というモチベーションが多かったですね。
あとはやっぱりお金。新卒の頃なんて特に魅力的に感じていました。大きくはその二つですね。そんな調子で本業をやりつつ、いくつも副業案件を並行していました。
ただ、副業を全部1回やめていた時期があるんですよね。
- それはいつ?
佐伯氏:エンジニアからPMに転向したタイミングです。やっぱり、時間を取ってPMとしてちゃんと学ばないとだめだな、と。
プロダクト作りの面白さに惹かれて副業を再開
佐伯氏:PM転向後、2年ぐらいしてから、副業を再度開始したんですけど。その時のモチベーションは、プロダクトを作るのが単純に好きだったからですね。
本業でもプロダクトを作っていますが、チーム、事業のことを考える時間がどうしても増えてしまい、「プロダクトだけ見てます!」という時間って意外と少なかったりして。
僕が副業の面白さだなと思うところは、単純に自分も作りたいと思えるプロダクトに対して純度高く集中できるところだと思っています。
- 「純度の高さ」はキーワードになりそうですね。これは具体的にはどういう意味ですか?
佐伯氏:「純度」という言葉は具体的にユーザーの顔を浮かべてユースケースを考えて仕様作成やワイヤー作成、それを実装してリリースしていくフローのイメージですね。
組織づくりとかマネジメント周りではなく、PdMとしての業務を求めていると言ったほうがイメージが湧きやすいかも知れません。
現在は、本業のメルカリではマネジメント業務や対外折衝がメインの業務になっています。もちろん、自分がパフォーマンスを一番出せて、会社に貢献できる業務だと思っているので満足しているのですが、単純にものづくりしたいという欲求もあり、副業でバランスをとってますね。
副業と本業のPdMの面白さの違い
- なるほど、本業で求められることと、自分が発揮できるバリューと副業でやりたいことって別だったりとかしますし、そこら辺のバランスを着地させるのに副業が良かったっていう感じですね。PdM業務の面白さは本業と副業での違いはありますか?
佐伯氏:本業のメルカリは、会社規模が大きいので緊張感や責任感があり、インパクトを出せることが面白さだと思います。
副業の場合はフェーズの違いが大きいですね。副業で携わるような会社ってこれから事業・サービスを作っていくところが多くて、0から一緒にプロダクトを作っていくというのは別の楽しさがあるなと思っています。
どっちが楽しいというよりはどちらも楽しいなと思いながらやってますね。
副業案件の獲得経路
- Offers経由で決まった事例について聞いていきたいと思います。wevnalさまはどういう経緯で受けることになったんですか?
佐伯氏:僕はもともと、購入体験や理想の購入についてとても興味があったんですよね。本業のメルカリも結構近いじゃないですか、CtoCですけど。
wevnalさんは「BOTCHAN」というチャットコマースのサービスをやっているのですが、うまく興味と合致しました。
▲ wevnal社が提供するチャットボットプラットフォーム「BOTCHAN」
- ちなみにOffers以外だとなんかありますか?
佐伯氏:エンジニア時代はクラウドソーシングサービスを使っていましたが、今は紹介が主ですね。
例えば、今はメルカリの元同僚の紹介で「Campify」という気軽にキャンプをするためのサービスでPdMとして副業をしています。もともとキャンプ関連のサービスを自分で立ち上げようとしていたくらいキャンプは好きだったので、紹介を受けてすぐにお話させていただきました。
▲ お洒落手ぶらキャンプのパッケージ予約サービス「Campify」
こちらは参画してからすでに1年以上経っているので結構長いですね。
副業でもPdMが機能するために気をつけるべきこと
業務内容は新規事業周りが多い
- 業務内容はやっぱり新規事業周りが多いですか?
佐伯氏:はい、新規のサービスが多いですね。正直、こだわりはないですが、マッチする案件がたまたま新規が多い気がしますね。
- なるほど。新規事業を任せたい企業は、副業の人にお願いするのは心配だという企業と、やっぱり経験ある人にお願いしたいという企業に分かれる気がしています。新規事業をお願いする企業の方々のマインドにはどういうものがありますか?
佐伯氏:そうですね、若干脱線するかもしれないですけど、副業PMが完全にまるっと全てやっていくというのは僕も無理だと思っている派です。
PdMってスキルセットの幅がかなり広いじゃないですか。サービスグロースや社内の調整など幅広いものがある中で、ステークホルダーの把握・調整なども含めて副業の人がやっていくって、難易度が高いと思っているんですよ。
だから、副業として企業の面接を受けるとき、「全部やりますよ」というよりは、例えばグロース・分析や開発ディレクションなど自分の強みと企業の課題感がマッチするかどうかのすり合わせは絶対しますね。
課題とスキルがマッチする範囲を見極める
- 確かにoverflowでも、副業PdM/PMについては役割ごとに担当が分かれていますね。
佐伯氏:ですね。Twitterで流れてくるような「副業でPdM無理じゃない?」という意見は、クライアントに「全部やる」と思われていたり、副業する側のPdMもおそらくそう思ってる場合かなと思います。
全部やるとなると、たしかに副業PdMは難しいので、役割のすり合わせが大事だと思っています。すり合わせをしっかりやれば、副業でもPdMは機能すると思ってます。
- PMに求める役割・定義を作って、スキルシートをもとに、役割と期待値のすり合わせを行い、バリュー発揮できる部分を確認することで役割をすり合わせることができるというイメージですよね?
佐伯氏:そう思いますね。
副業PdMの業務内容
新規事業での業務
- ちなみに新規事業では副業としてどのような業務をされていますか?
佐伯氏:wevnalさんでは、現在、自分はサブPMという役割で入ってます。
副業で事業を引っ張っていくのは難しいため、サブPMとして入れていただいています。今は、要件に起こす前の上流段階での業務がメインです。
例えば、新規事業の際にビジネスモデルキャンバスを作ると思うんですけど、その整合性や抜け漏れのチェックなども行います。
あとは、ワイヤーを書いたりですね。企画のアイディアが抽象度高いまま止まってしまうことを避けるため、ワイヤーを書いて議論を活性化させる目的で作成します。
Campifyさんの方は、もう少し先のフェーズでMVP検証が終わりグロースしていくタイミングで参画しました。当時は、Webサイトは1ページのみの簡素な構成で、CRMはLINEの公式アカウントで、いくつかのキャンプ場と提携しているような状態でした。
後にマーケティング担当の方も入られて、主にグロースと言うよりは新規機能の追加の面でお手伝いさせていただいています。
選考の進み方
- 特にwevnalさんの方ではかなり上流から入られているんですね。選考自体はどのように進められて、どういうところを評価されて参画されたんですか?
佐伯氏:僕は期待値をずれた状態で入るのがすごく嫌なので、選考時点での期待値のすり合わせはちゃんとやるようにしています。
経験やスキルセットを話した上で、企業の課題をクリアにすることも大事だと思ってます。例えば、新規事業の経験が豊富じゃない企業や担当者の場合、「PMが入ってくれればなんとかしてくれる」という期待値を持たれてしまうと難しいと思っています。
PdM自身のスキルセットも大切ですが、企業の課題はどこかをクリアにする必要があります。例えば未着手案件が溜まってしまっているのは、開発を進行できる人がいないからなのか、分析が弱いからなのか、などですね。
そうした課題とPdM側のスキルがマッチすれば絶対バリューが出せると思っています。
それこそwevnalさんに関しては、今まで既存事業は上手くいってるので、これから新しい事業にチャレンジしてどんどん会社を大きくしていきたいという状況でした。ただ、社内で新規事業を作った経験が多くないので、企画を考えるための入り方からまず知りたいという背景がありました。
あと、開発についてもモダンな開発のスタイルについての知見が強くないということだったので、僕はサブのPMとして、企画提案、開発ディレクション、分析といった部分で貢献できますよ、となって入ることになりました。
面接で企業課題を整理するところからPMは始まっている
企業とのすり合わせ
- 企業の中で自社の課題が整理されているパターンは結構ありそうですね。課題として認識されていないケースです。
佐伯氏:ちょっと抽象度高かったりとかは全然あると思います、本当に。
- 企業としては、こういう自社の課題の整理をしてそれを持った上で、できるだけそのPMの人に課題を話してすり合わせる。これ自体も、もはやPMですね。
佐伯氏:そこを打ち合わせの中でやるのも、またある意味PM。そこをちゃんと引き出して整理して話してあげると、その中で信頼とかもしてもらえるので。打ち合わせでは大事にしてますね。
- 期待値をすり合わせるって言い方をしてくれる人は、漏れなくめっちゃちゃんとしてるなって思います。
佐伯氏:そうですよね、たしかに。
「自己開示」をしてくれる企業は進めやすい
- やっぱりなんとなくでやると、期待されてたアウトプットと違うみたいなことはよくありますよね。企業がPMと面談する時に意識したほうがいいことは何ですか?
佐伯氏:企業側がですか。やっぱり課題感のすり合わせが大事ですよね。
PMは何かをなんとかする人みたいにざっくり言われることはよくあると思うのですが、それは結構、正しいと思ってるんですよ。
ただ一方で、何とかしてくれる人が欲しいという解像度で依頼されても、入ってからミスマッチが絶対に起きてしまうので、ちゃんと調整するというのはとても大切だと思います。
自己開示してくれるかどうかも大事なのかもしれませんね。
副業と本業をこなしつつ、休日はスローライフ系YouTuber
- いきなりプライベートな話題ですが、佐伯さんのTwitterはサーフィンとか家のDIYとか畑のこととか、スローライフ系の話題が多いですよね。
佐伯氏:キッチン作ってますね。今、リノベしてますね。
- 結構見てます。
佐伯氏:ありがとうございます。
- 副業って土日でやっているんですか?
佐伯氏:平日のほうが多いですね。あんまり土日はやらないです。土日はもう遊んでます。
サーフィンしたくて、千葉に引っ越したんですけど、今は優先順位の一番上がサーフィンですね。
- サーフィンを始めるというかスローライフ的なことに関心が向くようになったのってどんなきっかけなんですか?
佐伯氏:小さいころから家族旅行が自然豊かな場所が多かったので、自然とキャンプや登山に興味が向いていったと思います。
- そこから、もうサーフィンを突き詰めよう、スローライフやろうとなって、今千葉に行って、YouTuberとして生きていくということで、YouTubeを始めたと思うんですが。
佐伯氏:こちら私のチャンネルになってます。ちょっとグロースに伸び悩んでるんですけど。
- キャンプ競合多いですよね。
佐伯氏:そうですね。一応、サーフィンがメインテーマなんですけど、サーフィンだけだとやっぱり広がりが無いので、暮らしにサーフィンを足して、衣食住と波(サーフィン)を大事にしています、というコンセプトです。
- 動画すごいしっかりしてますよね。
佐伯氏:そうなんです。クオリティ自体は高いはずです。Vlog形式になりすぎちゃってるのが多分伸び悩みの原因ですかね。
今後のキャリアや生き方は「自分の好きな領域で価値を出していきたい」なっていうのがすごいあるんですよね。
車が来たから、遠くへサーフィンしに行こう。
- これはめちゃくちゃ分かります。プロダクト作りですよね、YouTubeって。
佐伯氏:まさに。感覚としてはその延長線ですね。副業もやりつつ、延長線上でYouTubeもやっていきます。
- 今後はYouTuberとしても頑張ってください!ありがとうございました!