ITサービスマネージャ試験とは
はじめに、ITサービスマネージャ試験について解説します。
情報処理系資格の一つ
ITサービスマネージャ試験は、経済産業省が認定する情報処理技術者試験の1つです。
情報処理技術者試験には様々な種類があり、各種試験に合格することでその分野の知識と技能が一定以上の水準であると認められます。
安全性や信頼性の高いサービスの提供を行う企業に務める人や、そのような企業への就職を目指す人が試験の対象です。
求められる技術水準も高い
ITサービスマネージャは顧客のニーズを把握し、高品質なITサービスを安定的に提供できるマネジメントのプロとして活躍します。
システムエンジニアの中でも、業務システムの運用について運用責任者となる重要な立場となるため、求められる技術水準も高いと言えるでしょう。
そのため試験ではリスク管理やコスト管理も重視されており、経営スキルやビジネススキルも必要になります。
ITILと呼ばれる、ITサービスマネジメントにおける成功事例集をまとめた書籍群からの出題が行われるなど、ITサービスマネージャ試験では現場でも通用する高度な知識や技能が求められるのです。
ITサービスは日々改善が必要になる分野のため、ITサービスマネージャの需要は今後もますます大きくなると言えるでしょう。
情報処理推進機構が主催
ITサービスマネージャ試験は独立行政法人『情報処理推進機構(IPA)』が主催しています。
ITサービスマネージャだけではなく、IT関連の入門的試験である『ITパスポート』や、IT系では初の士業となる『情報処理安全確保支援士』など、10以上の情報処理技術者試験を主催する機関です。
公式サイトはコンテンツも充実していますので、試験に関連した様々な情報が得られるでしょう。
ITサービスマネージャの難易度は?
ITサービスマネージャは求められる技術水準が高く、試験難易度も高いです。ITサービスマネージャ試験がどれほどの難易度なのか、詳しくみていきます。
スキルレベルは4
情報処理機構は情報処理技術者試験の難易度がわかるように『スキルレベル』を表記しています。レベル1から順に難易度が高くなり、レベル4が最上位です。
ITサービスマネージャ試験はスキルレベル4で、試験難易度はトップクラスです。試験のためには戦略的な対策のほか、多くの勉強時間を確保することも必要です。
試験では『プロジェクトマネジメント』や『サービスマネジメント』など、マネジメント系の出題もあり、経営に関する深い知識も必要とされます。
合格率と合格点
ITサービスマネージャ試験の合格率は、平成30年秋期では14.3%です。過去の合格率も12〜14%台ですので、合格の難しさは継続しています。
スキルレベル1のITパスポート試験の合格率は50%であり、合格率の比較からもITサービスマネージャ試験は簡単には合格できないことがわかるでしょう。
合格点は4つの試験科目でそれぞれ60%以上の正解が必要となります。ただし、4科目の合計で60%以上の正答率ではなく、すべての試験で合格ラインを達成する必要があるのです。
仮に午前Iの科目で不合格となれば、午前II以降の採点には進まず不合格となります。午前II以降の試験も全て、得点が60%に満たない場合は、午後の採点は行われず不合格になりますので、注意が必要です。
ITサービスマネージャのメリット
試験難易度の高いITサービスマネージャ試験ですが、試験に合格すると大きなメリットを得ることができます。メリットは次の2つです。
能力を客観的に証明できる
ITサービスマネージャ試験に合格すると、IT管理などについて高度な知識や技能を習得していることが証明できます。難関試験ですから、信頼性は高いと言えるでしょう。
ITサービスの事業範囲は今後も拡大していくことが考えられます。その中で、複雑なIT管理や運用について高度な技術を保持していることが証明できれば、就職や転職に非常に有効です。
試験に合格すれば様々な場面で自分の能力を証明できるため、活躍の場が広がるでしょう。
企業によっては資格手当があることも
ITサービスマネージャの資格を取得すると、企業によっては資格手当の支給が行われる場合もあります。営業担当やメンテナンス部門担当の『必須資格』としてITサービスマネージャの資格を設定している企業もあるほどです。
企業によっては営業窓口責任者やコールセンターのサポートリーダー職など、職種により有資格者の存在が重要になるケースは多く想定されます。
一部の企業間取引では、ITサービスマネージャが担当することが『契約条件』になるなど、様々な場面で必要となる存在なのです。
独学でも合格は可能?
ITサービスマネージャ試験は難易度が高いので、勉強時間を長く確保することが必要です。
通信講座を受けるのもアリ
ITサービスマネージャ試験の勉強を独学で行うのが厳しい場合は、通信講座を検討しましょう。過去問などをもとに、わかりやすい教材や学習システムが利用できます。
多くの受験者の課題となる、記述式の練習やサポートも万全ですので、効果的な勉強方法であると言えるでしょう。通信講座によってはWEB教材の利用や添削指導も受けられます。
また、通信講座では試験日程から逆算した勉強スケジュールの提案や、模擬試験もあるため、トータル的なサポートを希望するならば、通信講座はおすすめです。費用相場は5〜6万円になります。
ITサービスマネージャの勉強法
ITサービスマネージャ試験の勉強は難易度が高いため、対策は戦略的に行う必要があると言えるでしょう。ここから、各試験科目でどのような勉強法が適しているかを解説します。
午前Iの対策
午前I試験では情報処理技術者としての基礎知識が問われます。問題集を何度も繰り返して学習し、過去問にも取り組みましょう。
試験で問われる知識範囲は毎年同じです。さらに、過去問と同じ問題や類題が多く含まれますので、徹底して勉強することが得点率アップにつながるでしょう。
また、午前I試験は以下のいずれかを満たすと受験免除となります。
- 応用情報技術者試験(AP)に合格
- 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援試験のいずれかに合格
- 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前I試験で基準点以上の成績をとる
出典:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験:高度試験等の一部(午前I試験)免除制度
午前IIの対策
午前II試験は午前I試験と同様に、基礎知識の選択問題が出題されます。
午前IIではITサービスマネージャとしての基礎知識が問われますが、学習方法は午前Iと同じように、問題集や過去問をしっかりと解いて対策を行いましょう。
特に知識の定着が不安なときは、参考書を読み進めるのも効果的です。問題集の演習と並行することで、知識の定着が加速します。
基礎問題の学習は試験前日まで行い、知識を固めましょう。ただし、解説を読んでも理解できないものは飛ばして時間を有効に使うことも必要です。
午後IIの対策
午後I試験は10問程度の設問に対して、簡潔に答える記述式です。出題範囲を網羅し、幅広い分野の記述に対応する必要があります。
20〜50文字程度の文字数指定がありますので、簡潔に解答する練習をしましょう。
出題傾向をつかむためには、2週間程度継続して勉強時間を設けることが望ましいです。問題集や過去問を何回もこなしましょう。
また、回答パターンが掴みづらいときは、解答例や解説を読むだけでも効果的な勉強になります。スキマ時間などに解答例や解説を読み進めてみましょう。
午後IIの対策
午後II試験は、合計で2000〜3400文字の長文記述です。内容だけでなく時間にも追われる試験となりますので、対策をしっかりと行う必要があります。
文章を書くのが苦手であれば、文章の書き方から学びましょう。午後II対策の問題集では、論文の書き方をレクチャーしているものもあります。じっくりと学んでください。
論文の書き方が理解できたら、次はサンプル論文や過去の回答例を読み進めましょう。試験当日に求められるレベルが理解できるまで、しっかりと対策期間を設けることが望ましいです。
目指すべき論文のレベルがわかった段階で、いよいよ自分で書いてみます。
上手くかけない場合は、解答例やサンプル論文を書き写してみましょう。構成や文中の言葉遣いのコツが掴めるまで、しっかりと反復を行うことも大切なポイントです。
その後はカテゴリを絞って練習し、少しずつ書ける分野を増やしていきましょう。
出題形式を把握しておく
ITサービスマネージャ試験は午前と午後で出題形式が異なります。
午前は多肢選択式、午後は記述式となりますので、まずはそれぞれの出題形式を把握することが重要です。その後、出題形式や試験内容に応じた対策を進めていきましょう。
午前の試験は問題数が少なく感じますが、時間も限られていますので問題文を素早く把握して解答する必要があります。
スキマ時間なども有効活用し、一問一答形式でリズムよく解答できるようにしましょう。午後の問題は基礎知識を活用し、記述する問題です。試験対策では解答パターンや記述の方法をつかむ必要があります。
出題形式に応じた対策を行うためにも、ITサービスマネージャ試験の出題形式をしっかりと確認しましょう。
論文対策は早めに
午後II対策でも解説しましたが、論文対策には時間がかかります。
論文が苦手であれば、1カ月程度の勉強期間が必要な場合もありますので、試験前に慌てて論文対策を行うことにならないよう、早めに対策をとるのが望ましいです。
午後I試験も記述式ですが、勉強の順序として午後II試験の対策からスタートしてもいいでしょう。午後II試験の解答文を理解することで、午後I試験の問題文の理解にもつながるからです。
おすすめ参考書
ここからは、ITサービスマネージャ試験の勉強におすすめの参考書を4つ紹介します。
ITサービスマネージャ 合格論文の書き方・事例集
午後II試験の論文対策におすすめしたいのは『ITサービスマネージャ 合格論文の書き方・事例集』です。過去問やオリジナル問題から時間内に論文を組み立てる勉強ができます。
また巻末にはワークシートが用意されていますので、繰り返し使用することで、論文の苦手意識の解消につながるでしょう。
専門家の論文が35本も掲載されていますので、何度も読み込んで学習に生かしてください。
- 商品名:ITサービスマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第5版(情報処理技術者試験対策書)
- 価格:3240円
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ITサービスマネージャ試験 午前 試験問題集
基礎知識が問われる午前試験の対策には『ITサービスマネージャ試験 午前 試験問題集』を使ってみましょう。旧制度から最新の過去問まで、出題傾向に合わせた問題を収録しています。
午前I問題を300問、午前II問題を200問の合計500問が準備されています。基礎知識を徹底して練習するには十分な問題数でしょう。
ページの表面に問題を掲載し、裏面で解答解説を行うようになっていますので、勉強に使いやすい構成です。
- 商品名:ITサービスマネージャ試験 午前 試験問題集(合格精選500題)
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ITサービスマネージャ「専門知識+午後問題」の重点対策
試験内容を網羅的に勉強したい場合は『ITサービスマネージャ 「専門知識+午後問題」の重点対策』がおすすめです。午前I問題の掲載は省略されていますが、午前IIに必要な基礎知識はポイントを絞って掲載しています。
午後問題について丁寧な解説や解答テクニックが示され、使いやすい構成です。
特に午後II試験に向けた論文対策は充実しており、問題文ごとに詳細な解説を掲載していることが特徴で、勉強しやすい内容となっています。
- 商品名:2018 ITサービスマネージャ「専門知識+午後問題」の重点対策(専門分野シリーズ)
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情報処理教科書
『情報処理教科書』は試験傾向、勉強方法、解答ポイント、論文など幅広く解説している参考書です。午後試験対策に特化していて、午後Iと午後IIそれぞれの攻略方法が詳しく解説してあります。
午後I対策はポイント解説と過去問演習、午後II対策は論文作成テクニックや構成例、添削付きの解答例が盛り込まれていることが特徴です。
- 商品名:情報処理教科書 ITサービスマネージャ 2019~2020年版
- 価格:3996円
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受験の詳細
ITサービスマネージャ試験は年1回、10月の第3日曜日に実施されます。願書受付は7月中旬〜8月中旬です。試験の合格発表は12月下旬になっています。
試験当日までの流れを把握し、試験勉強と申し込みを行いましょう。
申し込み方法と費用
ITサービスマネージャ試験の申し込み方法は郵送かインターネットです。受験手数料として5700円が必要になります。郵送での申し込みは『案内書』や『受験ガイド』の入手から始めてください。
いずれの書類も情報処理機構の公式サイトからダウンロード可能です。案内書には願書と受験手数料を支払う払込用紙も含まれています。
案内書の内容に従い、願書を作成して郵送しましょう。郵送で願書を提出するときは、受験手数料を郵便局の窓口で支払います。
インターネットからの申込みの場合は、情報処理機構の公式サイトから、画面に従って必要事項を入力してください。受験手数料の支払いはクレジットカード、ペイジー、コンビニ支払いのいずれかが選択できます。
申し込みが完了すると返信メールに受付番号が記載されますので、念の為、控えておきましょう。
まとめ
ITサービスマネージャ試験は情報処理技術者試験の一つで、スキルレベル4の高難易度試験です。合格するには、試験内容に応じて戦略的な学習が必要となるでしょう。
難易度の高い試験ですが、合格すると能力の客観的な証明になります。手当を支給する企業もあるなど、企業の重要な立場で活躍することが可能です。試験勉強では論文対策を早めに取り組み、合格を目指しましょう。