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[インプリメンティクス 金田氏]評価制度のための評価はもうやめにしない?金田さんに学ぶ 開発組織の評価制度の正しい使い方 #評価制度

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開発組織の評価制度の正しい使い方

今回のタイトルに評価制度とありますが、実は人事制度の中の一部が評価制度です。

私は今スタートアップなどで人事に関する色々なテーマを扱っておりまして、大体50個ぐらいに分割するとこのような内容になります。

テーマを一覧で出していますが、本日は、等級制度・評価制度・報酬制度という3つの人事制度の内の評価制度に関して説明します。

評価制度がメインではありますが、評価制度のみを語っていくのは難しいので、人事制度全体を理解していただけるようにご紹介していきます。

スタートアップでは報酬を決定するために人事制度を運用する

「会社の人事制度は何のために運用されてますか?」と質問をされたら皆さんはどう答えますか?

私は人事制度の目的は大きく2つあると考えています。1つは報酬決定、もう1つは成長支援です。成長支援は、一般的にいえば「人材育成」を指しています。どちらが主になるのかというと、スタートアップでは報酬決定で、大企業は人材育成や成長支援が主となると考えています。

報酬を正しく決定して、モチベーション高く働けることで、パフォーマンスを最大化する。結果として、長く働いてもらうことを目的として制度をしっかり回していくのがスタートアップのやり方です。そのため、報酬を正しく決定するために評価制度があるのです。

このような評価の話をすると、「そもそも人を評価できるのか」や「評価とは何なのか」という話になってきます。ただ、私は正直そこに興味はありません。 納得できる報酬が決まるなら評価制度は無くても構わないと思っています。

あくまでもその人の正しい報酬を決めるためのツールが評価制度だと捉えた前提で私は制度を作っています。

等級判定と人事評価を混同させない

こちらが人事制度の全体構造です。

中段に評価制度がありまして、目標設定をしてから人事評価をしていく形になります。多分皆さんもイメージが湧くと思いますが、 基本的には等級制度と評価制度の運用があって最終的に個人の年収が決まる流れなので、評価制度だけで人事制度を作って報酬を決めるのは難しいです。

しっかりと整合性を持って等級制度や評価制度の設計を矢印に沿って行って、最終的に報酬制度に繋げていきます。

私が依頼されて作る制度は、社員が10〜20人で0から作るパターンと、社員が100人を超えていて元々ある制度を改善するパターンがあります。 その際に制度があまりうまくいってない会社でよくあるのは、等級制度がうまく機能していない状態です。

本来は等級制度の中で等級判定をするはずが、等級評価といった言葉を使って評価制度の中に等級制度が組み込まれていたりします。何がどうなっているのかが全く分からない状態で評価がうまくいっていないというお話をいただくことが多いです。

等級制度と評価制度を分けているからにはどちらにも意味があって異なる制度なのですが、この違いがあまり理解されずに制度が設計・運用されているケースが非常に多いです。

会社の人事に「うちの等級制度と評価制度は何が違うんですか」と質問をして、すぐに答えられるかどうかでその会社の人事制度がきちんと設計されているかどうかが分かります。

具体的に等級制度と評価制度の違いは、まず等級制度の等級判定は人材の水準を評価します。そして、人事評価ではその人のレベル感を見るのではなく、過去の結果やプロセスが評価の基準に照らしてできていたかを評価します。

両者は全く違う話で、 「あの人はどれくらいの人材水準なんだろう」という等級判定と「あの人はこのパフォーマンスが出たんだっけ」という人事評価は区別して人事制度は運用されるべきですが、ここを混在したまま運用されているケースがスタートアップで非常に多いです。

さらに細かくお伝えすると、実は等級では自己判定することはほとんどありませんが、自己判定をしている会社が結構あります。 しかし、これはかなり時間の無駄になってしまうので、こういったところを1個1個整備していく必要があります。

問題が評価制度自体にあるというより、そもそも制度の構造を理解できていないのが問題です。

評価者の能力の高さが評価の正しさや納得感に繋がる

プログラミングだとどこかが壊れていたら本来は動きませんが、人事制度はバグがあっても動いてしまいます。制度はおかしいところがあっても運用する人が手を加えれば運用できてしまうケースがあるので、問題が顕在化しません。

そのため、等級と評価の違いといったベースの部分を理解することが大事です。 ただ、正しい評価や納得感のある評価をしたいとなった時、当然のことながら制度よりも評価者の方が大事なんですよね。

どんなに優れた評価制度を作っても、 評価する人の経験が乏しかったり、能力が低かったら納得感のある評価は絶対できません。一方で、評価制度がそんなに良くなくても評価する人の能力がものすごい高くて人間性があると、評価に対する一定の納得感があって、評価される人のモチベーションを高く保てます。

制度が全く意味ないわけではないですが、評価する人とされる人との信頼関係がないと制度はうまく運用できません。 そして、信頼は基本的には能力と人間性だと思っています。

評価制度をうまく運用しているスタートアップ企業の事例

私が支援しているモノグサとNstockという2つの会社の事例をご紹介します。

モノグサさんは経営陣が人事制度に対してとても強いコミットメントを持っており、哲学もあります。その上でOKRと人事制度を併用して運用しています。制度自体は非常にシンプルで、評価者に優秀な人たちがたくさん揃っています。

社内で実施している直近の組織サーベイでも8割程度の社員が人事評価に納得しているという結果が出ており、うまく運用できていると言えるでしょうね。具体的にはパフォーマンス評価と価値観行動評価で評価制度は構成されています。

もう1社のNstockでは、まだ社員が少なく、個人単位でミッションを果たすのではなく、チームで柔軟にミッションを果たしていくフェーズと捉え、 個人の評価制度を敢えて導入していません。一方で、等級制度と報酬制度は導入し、個人を活躍や貢献を見極めています。

過去の成果やプロセスで個人を細かく評価することはせず、会社全体のミッション達成によって一律の昇給を行う制度となっています。

報酬水準は高めに設定しており、最近のスタートアップの傾向として参考になると思います。

こういった形で全社の昇給ターゲットを決めて、会社の業績に応じて報酬を決めていく形が最近スタートアップで目立ち始めたなと思っています。他にもUbie社やNOT A HOTEL社などがやっていて、今後はトレンドになっていくのではないかと考えています。

Nstockのように個人評価が適さないフェーズはあるので、無理に評価制度を組み上げてもしょうがないです。 500人の会社でも新規事業の立ち上げで開発を2〜3人でやっていこうという時は評価制度を適用する必要はありません。その人たちは評価を抜きにして仕事に集中してもらうことがよいでしょう。

報酬は、個別に額を決めていく形でも良いと思います。

運営が用意したテーマによるディスカッションへ

――ここからは運営の方で用意したテーマに沿って進めていきます。最初は「メンバー視点とマネージャー視点での評価制度の活用方法」についてです。まずメンバーとしての視点ですが、メンバーとして評価を受けるとなると評価されること自体に無頓着で、自分の成長に活用しようという意識が持てない場合が多いと思います。評価制度や人事評価という仕組みを自分の成長やキャリアにどう生かせますか。

金田:評価と言うと固い内容に聞こえますが、私は評価とは単純な振り返りだと思っています。3ヶ月や6ヶ月という決まった期間の中で自分が会社から期待された内容を遂行できたのかどうか、自分でやろうとしていたことができたのかどうかを振り返るという意味です。

普段から振り返りをやっている方であれば、 あえて評価にフォーカスする必要はないと思います。

そして、振り返りで1番大事なのがフィードバックですね。自己認識と評価者の認識がずれるポイントが出てきたりするので、なぜずれたのかを考えておくと正しい自己認識ができるようになります。

振り返りによる正しい自己認識こそ、評価の重要なポイントなので、自己認識がずれてないかを周りの人に見てもらうという使い方をするのが良いと思います。

――自己認識の結果は評価者にどういった形で伝えるべきなのでしょうか。

金田:評価制度という文脈だと、キャリアやビジョンといった長期的な目線ではなく、1週間や1ヶ月、3ヶ月という短期的な目線でどれくらい自分ができていたのか振り返っていくべきですね。

キャリアやビジョンは評価とはまた別の人材開発の文脈になると思うので、評価制度の中に組み込んでいってしまうと先ほどの等級の話と同じように混同してしまいます。

そもそも報酬を決めるためにやっているので、キャリアの話は違う文脈として分けて考えましょう。

――次にマネージャー視点で聞いていければと思います。メンバー視点にうまく立ってずれを吸収できるコミュニケーションを取れるのはどういう方で、どうしたら優秀な評価者になれますか。

金田:先ほどのモノグサさんの事例の中にもありましたが、 評価制度に対するコミットメントや意思が明確に違うんです。

強い興味を持って自分の意思として制度を作り込んでいきたい人だと、評価制度に対するコミットメントが非常に高くて強いです。

なぜなら、結局マネージメントは相手に物事をやってもらって、その結果として成果を出していくことだからです。基本的にマネジメントは、マネジメントの共通基準を作っているんです。その基準を現場の仕事の中で使うイメージを持っているか持ってないかで全然違います。

評価者でうまくいっている人は、評価の時期だけではなく毎日使うものだと思っています。一方で、評価者としてうまくいかない人は、日々のコミュニケーションの中で評価制度に書かれている基準やルールをメンバーの方に伝えていません。評価基準やルールを仕事の中で使う想像力をどれだけ働かせているのかという違いは大きいですね。

――具体的には、1on1の中やショートミーティングの中で評価制度や評価のための目標設定も含めて使っていくイメージでしょうか。

金田:そうですね。基本的には1on1を週次や隔週でやる時に評価シートの目標設定を見て話をするように決めているケースもあります。 その中で「この目標はこういう進捗でうまくいってるよね」とか、「ここは良くないよね」という感じで週次や隔週で必ず見ていきます。

あと、スタートアップだと先ほどのモノグサさんのバリューを使った価値観行動評価みたいなものをやるケースがありますが、バリューの「できている/できていない」を日々フィードバックするのは正に評価を日々フィードバックしていることになります。なので、バリューの浸透やバリューによる評価の実践度合いによって変わってくると思いますね。

――スタートアップでは期初に立てた目標が期中で変わることがよくあると思いますが、その場合の認識の擦り合わせは繰り返しやるのか、 それともあえてやらない方がいいのでしょうか。

金田:目標が変わることはスタートアップの特徴として私も制度を作る時によく考えています。立ち上げ期で社員が10人もいない時だと、そもそも目標が1日単位で変わるケースも珍しくありません。昨日と今日で言ってたことが違うということが起きる場合、制度として柔軟性の低い目標設定の仕組みは使いにくいので、そもそも目標設定の仕組みを導入しないことも選択肢の1つです。

一方、目標設定の仕組みを導入する場合、やり方は2つあります。1つ目は、目標は変わるという前提で目標設定すること。 1on1の中で目標の振り返りをするときに、目標を変える必要性がないのかを話し合ってほしいですね。自分が1月に立てた目標を2月に改めて見た時に、その内容で継続できるか検討します。変えたほうが良いなら中身をブラッシュアップしていって、最後に出たアウトプットや成果を評価していく形で柔軟にやっていきます。

2つ目は、タスクベースになりがちな目標をミッションとして、「この人に期待していることはこれ」という抽象度を高めた目標を定めて、そこからサブ目標で具体的な内容を決めていきます。ミッションは3ヶ月とかの短期では変わらず、日々の目標は変わるという形で常にミッションをベースにしたコミュニケーションをしていくとずれが起きにくくなります。

――ミッションベースの目標や落とし込みは具体的にどういうものがありますか。

金田:基本的にはOKRと似た考え方ですが、目標の上位概念に来るのがミッションです。つまり、目標に対する目的を言語化することです。

あなたにこれを期待しています→なぜならこういう成果が会社としてほしいから→なぜならこういう状態に持っていきたいからという形ですね。3ヶ月や6か月、1年といった期間に関わらず、期待される成果や欲しい結果は状況によって変わってくるんです。最終的なゴールの設計は変わらずに、その下の手段が変わっていくイメージで目標をどんどん抽出していくのがミッションベースの目標設定になります。

ただ、実際のところ、ミッション型の目標設定は、優秀な評価者でないと運用は苦労します。 「概念がよく分からない」と言われるのは僕の説明が悪いこともありますが、評価者の能力差が明確に反映されるので、そこを無視して進めてしまうとミッション型の目標設定が形骸化してしまう場合もあります。

評価に適した人が揃ってから評価制度を運用しないと、どうしてもうまくいかないのは悩みどころです。

視聴者からの質問に答える質問タイムへ

――ここからは視聴者からの質問に答えていきます。一つ目は、「評価制度に等級判定を交えるとおかしくなるというのは具体的にどういう状態なのでしょうか」とのことですが、いかがでしょうか。

金田:評価シートの一部に等級判定の項目がある状態ですね。等級判定では基本的に等級要件や等級定義があって、それに対して人材水準を測るのですが、 評価と言いながら等級を判定することがあります。人事評価をやりますと言って、その人の等級の昇格や降格を議論していたりします。

等級判定と人事評価が明確に分かれているケースでは、等級判定は4月、人事評価は1月にやる、と時期を分けてやっているケースもあるんです。6月や12月など、期が閉まるタイミングで 等級と評価を一緒にやると区別できなくなってしまうので。

あと、S評価を取ったら昇格にするといったルールが決まっているケースもありますね。等級を判定する文脈と、3か月間や6か月間の評価をする文脈を分けて運用できているかがポイントです。

――続いて、「メンバーとして重要なのは、認識のずれがどこにあったのかコミュニケーションを取っていくことだとありましたが、メンバーやマネージャーの間でどういうコミュニケーションのプロセスを辿っていくべきなのでしょうか」とのことですが、いかがでしょうか。

金田:基本的にはマネージャーとメンバーで話し合うしかないですね。マネージャーがこれをできている、メンバーがこれをできている、 もしくはできていないと判断基準を1つ1つその人の業務に当てはめて、等級要件を翻訳していく必要があります。

等級の基準は抽象的に作らざるを得ないところがあって、メンバーがそれを具体化できていない場合があります。なので、あなたの業務に照らし合わせて、どこまでのレベルが求められているのかを1個1個話しながら、どこにずれが生じているのかあぶり出してすり合わせていきます。

これは心理学的に言うと認知的不協和の話なんですが、 本人ができている、マネージャーはできてないというところに不協和が生じるので、その部分を全部出して時間をかけて認識を合わせていく必要があります。

こういった翻訳のスキルがマネージャーに求められるので、その人の能力が高くないとできないんですね。なので評価者の育成や配置も大事です。

――続いて、「マネジメントができてないと評価ができないとありましたが、自分の見ている範囲が広かったりしてやり方が変わる場合はどのように評価していくべきでしょうか」とのことですが、いかがでしょうか。

金田:私が支援しているスタートアップでは結構多いです。特に立ち上げから大規模な開発組織になるまでは、 CTOがプロダクトマネージャーからデザイナーまで評価しないといけない場合もあります。

本当に勢いのある会社ほど評価者が育たなかったり、採用できない中でどんどんプロダクトが大きくなってしまってCTO1人で20人を評価することもあります。その人たちは評価の時には寝る時間もありません。

とにかく評価に対して時間を捻出できないので睡眠を削るしかない。でも本当に大事だという意識でやっていただいていた方は非常に多かったですね。

ただ、睡眠を削って評価を行う分評価者が確認しきれていないことはたくさんあるので、必ずサブ評価者をつけるようにしていました。メインとなる直属のマネージャーには必ず最終評価を決める責任をつけますが、サブとして他の方から必要に応じてフィードバック的にコメントをもらえる仕組みを作って、評価のタイミングにヒアリングをします。

事前にサブ評価者をお願いしておかないと後で聞いてなかったと言われてしまうので、必ず期初のタイミングでサブ評価者を一覧で作っておくのが重要です。

このような細かい箇所まで期初のタイミングでやるかやらないかによって期末の評価も変わってきますし、事前にメンバーにもサブ評価者が誰か伝えておくと納得感も上がります。自分はちゃんと見てもらえているんだという気持ちになる形を制度として作っていきましょう。

――続いて、「評価制度がハックされることがあると思います。ハックされないように評価者の主観で修正すると制度の客観性が疑問視されてしまうと感じますが、どのように対応していますか」とのことですが、いかがでしょうか。

金田:基本的には大きく2つあります。1つはメンバーからのアンケートなどの調査をやることと、あとは四半期に1回行う中間評価の時に評価者の方で評価会議をやったり、評価のマネージャーさんに集まっていただく機会が必ずあります。 その時に必ず制度のKPTや振り返りをやって制度の問題点をあぶり出すようにしています。

作った制度が100点ということはないので、色々な状況に応じてハックされるところはあると思っていますが、その時はスピーディーにどんどん変えていきますね。 バグがあったら素直に謝って、こういう理由で変えていきますと。その次の6か月の制度に合わせて変えていくという形です。

評価制度はロジックの組み込みに関して色々な観点から話が飛んでくるので、見切り発車でやりすぎるとあまりにもハックされるところが多すぎて制度がうまく回らないケースはあり得ます。

なので、ロジックや整合性を最初にいかに作り込めるのかは、人事制度を作る方の能力次第でもありますし、レビュアーの方のフィードバックによる影響も大きいですね。

――続いて、「50人のスタートアップでEMとして資金調達しながら事業を回しているのですが、 評価制度において、自分の自己評価に10時間かけるよりも、自己評価は1時間で終わらせて9時間は会社をグロースさせる時間にした方が良いという暗黙の雰囲気があります。 この会社に評価制度を浸透させるにはどうすればよいでしょうか」とのことですが、いかがでしょうか。

金田:50人規模だったら一定評価制度はすぐできるところもありますし、開発のスタイルによって個人の目標設定が難しいのであれば、個人の評価制度は100人ぐらいのタイミングからやっていくのも1つのやり方です。

自己評価に10時間かけるというのは、自己評価を自分でするんだったら、1時間でできるサイズ感でやっていくのが良いということですね。ただ、それは評価する時期だけの話であって、日々の振り返りを考えると一定のコストはかかります。

時間をかけすぎるのはあまり良くないですが、1時間だったり一定の時間はかけてやっていくのが良いですし、9時間はグロースの方に充てるのを全く否定することはないとも思います。

――こちらの会社に評価制度を浸透させるには、具体的にEMである質問者がどういうアクションをしたらいいのか、 他の人にどう影響を与えていけば良いのでしょうか。

金田:評価では結局社員の人たちがきちっと見てもらえていると感じるかどうかがモチベーションに関わります。

人事制度などの人に関する話はどうしても主観や個人の価値観に寄ってしまうので、 まずは定量化するためにデータを取ってみるのが大事ですね。Googleフォームで作れるアンケートで構わないですから、定量的なデータを四半期や半期に1回ずつ取って、評価をしっかりやらないと自分たちの会社が良くならないということをデータで示していく活動を行うのが良いと思います。

過去に僕が見ていた会社さんでも、制度に対して経営陣が興味を持っていないケースは全然ありました。そういう時は、 経営陣に対してこちらに権限を渡すように交渉はした方が良いですね。

――続いて、「Nstockのような個人目標を持たない制度設計からフェーズの変化に伴って一般的な個人目標ありきの制度に寄せる可能性があるとして、そのタイミングの目安になる考え方はありますか」とのことですが、いかがでしょうか。

金田:Nstockでは、今の制度の賞味期限は大体2年だと言っています。事業がいくつかにまたがっていて、それぞれの事業サイズを考えた時に個人の目標を明確に持てる状態が、全体の組織サイズが100人ぐらいの時ではないかという仮説になりました。

ただ、特定の事業だけは個人の目標設定を持てない可能性があって、ここだけは別制度で運用するかもしれないといった議論をしています。

考え方としては、 個人のミッションが明確に役割分担できる状態がいつぐらいなのかを狙い打ちして決めていく感じです。

――続いて、「ミッションベースの制度設計の場合には、ミッションを固定するだけでは定量評価がしにくそうに感じた」とのことですが、いかがでしょうか。

金田:非常に鋭いご質問ですね。認識がもしずれていたら定量評価が難しいということだと思いますが、 まずはミッションを設定して、その下にサブとなる目標をたくさん設定していきます。 サブ目標に関しては期初に立てた目標がなくなったり、そのままやっていく目標もいっぱいあります。

実際にこの状態でどこを評価するのかといった時に、それぞれの目標を積み上げ式で評価したり、下の目標を目標Aは30%、目標Bは20%みたいなウェイトを付けて点数を配点していくと、ずれが大きくなりがちです。

ミッションベースの制度設計で大事なのは、 最終的なミッションに対してどれだけ貢献できたのか、ミッションに対してどれだけこの人が成果を出せたのかを評価することです。そのための情報はサブ目標の中に入っていますが、それを1個1個評価して積み上げるのではなく参考情報とした上で、この人の目標・ミッションに対する評価がどうなのかを5段階や6段階の基準を作って評価していきます。

これをやっている会社さんは全然ありますが、やっていこうとするとかなり抽象的でミッションの評価をするのが難しいんです。なので、目標やミッションを決めて6か月後にいきなりそこで評価するとなっても絶対認識がずれます。

必ず1on1の中ですり合わせたり、 3か月の中間のタイミングで中間評価をしてみたりと手間のかかることをやっていって、最終的に評価が自己評価と上長の評価で合うかを確認していくと良いですね。

――ミッションベースの目標は定量化して計測可能な目標にはしない方が良いですか。

金田:ミッションは基本的に定量化しません。ミッションの下のサブの目標に対しては定量化していくのはありです。定量化した数字が期中で変わる可能性は全然あるので、ミッションは定量化せずにサブ目標はどんどん変えていきながら、最終的にミッションに対してその人がどれくらいできたのかを定性的に評価していくのがスタートアップで大事ですね。

――続いて、「金田さんが立ち上げ期に評価やミッション設計をするときに何から始めることが多いですか」とのことですが、いかがでしょうか。

金田:人事制度の全体という考えだと基本的に初めに作るのは等級、 要するに会社の人材水準という大きい概念から作っていきます。等級制度を作ってから、そこに紐づく形でどれくらいの報酬水準で設計していくのかという報酬設計を作って、最後に評価制度です。

評価制度を作る上では、評価者概念をまず作ります。 評価制度を始めるときにそもそも評価できる人がいるのかを確認するんですよね。 先ほども話した通り、自分たちでこういう評価がしたいと思っても評価者がいなかったら絶対にできません。

なので、評価者の要件を作って、該当者がいないなら後にずらして、既にいたら目標設定の仕組みを作ったりと、バリューに基づいた行動評価の仕組みで評価の中身を作っていきます。

――最後の質問です。「評価制度においてエンジニアならではのポイントはありますか」とのことですが、いかがでしょうか。

金田:実は、僕が見ているケースではエンジニアだから評価をこうしようとやっている会社さんほど結構失敗しています。 エンジニアの方でもセールスの方でも、それぞれの仕事に特徴的な要素は必ずあります。

それは偉いとか偉くないとか、能力が高いとか低いというわけではなくて、それぞれの仕事の特色があると考えると、エンジニアにこだわりすぎていると失敗する可能性が高いです。

ただ、その中でもあえて言うならば、エンジニアはチームで計画的に仕事するところが特徴で、セールスなどの顧客が直接絡まない形で自分たちで開発するスタイルなのもあって自分たちのペースで仕事ができるという違いがあります。

チームで開発していくにあたってチームでやることを重視すると、個人で評価する内容が合わない場合があります。なので、先ほどの事例であった通り、エンジニアならではのポイントでチームとしての特色を出したいのであれば、無理に評価制度を入れない方が良いと思います。

一方で、等級判定は報酬を決めるためにやってほしいです。目標設定やバリューに対する行動評価はやらなくて良いですが、等級に対してこの人がどれくらいの人材水準なのかはマネージャーの方が評価で報酬を決められる状態を作れば、評価制度にこだわる必要はありません。

目標設定がやりにくいという声はエンジニアの方からたくさん聞くので、無理にやらなくても良いと考えています。

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