デザイン制作会社、インハウス、フリーランスでの求められるスキルの違い
はじめまして、ホリウチショウゴ(@syo_design)と申します。
Webデザイナーとして働き始めて10年目、フリーランスとしては3年目です。普段は次のような仕事をメインで行なっています。
- デザイン(Web/グラフィック)
- コーディング
- Webディレクション
- Webマーケティング(サイト運用、SNS運用、広告代行など)
今回は、自分のキャリア形成に大きく影響を与えた、デザイン制作会社、インハウスで得た経験から思う「これからのデザイナーに必要だと思うこと」についてお話できればと思います。
▲過去案件① Elecom ECLEAR warm様 特設サイト
▲過去案件② さんらく苑様 採用サイト
まずは、コンサル会社でWebデザイナーとしてのキャリアをスタートさせて4年。会社の倒産をきっかけに、知人の紹介でデザイン制作会社に入社しました。
デザイナーとして4年ほどの経験があり、前職ではサイトのデザインだけでなくコーディングも一人で任されていました。そのため、ちょっとだけ自信を持って入社したのですが、1週間も働くとレべルの違いを思い知りました。
バナーのデザイン修正が5回目でやっとOKなレベルの高い環境:デザイン制作会社
入社後はまずサイトの下層ページデザインやバナー制作、デザインの微修正など、軽作業を任されていたのですが、先輩のチェックがなかなか通らない......。
前の職場より任されている作業のレベルは軽いはずなのに、それが通らない......。
- 写真のトリミング位置が微妙
- レイアウトが気持ち悪い
- 文字のジャンプ率が低い
など、周りに非デザイナーしかいなかった前職のコンサル会社時代と比べ、ロジカルと感覚が鋭いフィードバックが飛んできました。
入社2日目に任されたバナーデザインの仕事は修正を繰り返し、作業を終えたのが夜11時すぎ。
「これは、自分がいない方が絶対仕事早く回せるよな。。。」という申し訳なさと、「ここで働けたら、絶対に自分の身になりそう」という期待感を日々感じながら過ごしていました。
30歳からのキャリア形成に悩みと焦り
デザイン制作会社での仕事はハードな面が多いですが、質の高いアウトプットを追うプロジェクトに参加できるのは楽しいです。しかし、働き始めて3年ほど経った頃、自分の年齢も30代に突入し今後のことを考えるようになりました。
基本的に、僕は社内に籠もって朝から夜まで制作業務を担当しており、このまま外のことを知らずに40代、50代になっていく恐怖や、センスのある若手がどんどん台頭してくる焦りも感じ始めます。
具体的な打開策を見出せないまま「この状況、なんとかしなきゃ・・・」という見えない重圧に押しつぶされるかのように、退職を決意しました。
デザイン制作会社のメリット:
- とにかく制作スキルが身に付き、アウトプットへのこだわりの深さを経験することができる。
- 最新のツールなどの情報が、共有してもらえる。
- 自分の知っているメーカーや有名人を使ったサイト制作に携われる。
デザイン制作会社のデメリット:
- 残業は当たり前なので、プライベートを重視したい人にはあまり向かないかもしれません。
※あくまで、僕がいた会社でのメリットデメリットなので参考程度に。
数字で検証してみないとわからないデザインの世界:インハウス
デザイン会社を退職後、別のデザイン会社に短期間だけ働かせていただいたり、個人で仕事を受けたりもしてみましたが、思っていた打開策にはなりませんでした。
そんな時に「写真スタジオのインハウスWebデザイナー」の求人を見つけ、写真が好きだったという単純な動機で応募してみる事に。
デザインの目的は数字を上げること
インハウスで働き始めて一番心に残ったのはなんと言っても、数字への意識の高さ。
「デザインは見た目や格好良さじゃない」とは、スクールなどで教えられる事が多く、おそらくデザイナーなら聞き慣れた言葉ではないでしょうか。
自分もそれを充分に理解しているつもりでしたが、インハウスで働きだすと、自分の成果への意識はまだまだ浅いと思い知りました。
インハウスでのデザインは、目の前の数字と直結する物が多く、例えば、キャンペーン告知用にランディングページを作成すると「ランディングページのクオリティの良し悪し」で評価されることが多いデザイン制作会社に比べ、僕が居たインハウスではページを公開した後、「何人がキャンペーンに参加してくれたか」で評価されました。
制作した後に周りのメンバーからどれだけ評判が良かろうが、最終的には、どれだけ集客できたかのコンバージョンで評価される世界。
一見、ごく当たり前のような話ですが、アウトプットの品質を追求する世界では見落とされがちな視点でもあり、品質と数字はいつもセットで考えなければならないと経験から身に染みました。
臨機応変さが求めれる環境
また、インハウスではデザイナーより非デザイナーの方が圧倒的に多く、より一般ユーザーに近いフィードバックを貰えるのも特徴です。
デザイン的に、これでまとまった! と思いきや、「このアイコンが目立たないから赤色にして」「全体的にフォントサイズが小さいからもっと大きくして」のように、率直でナチュラルな意見を遠慮なく言ってくれるので、たまに「素人のくせに。。。」なんて思いつつも、的を得ていることが多く良い経験になりました。
あとは、職域が制作会社に比べてとても広いです。
完全分業だった制作会社とは違い、デザイン周りの作業は何でも任されます。
- Webデザイン
- コーディング
- フライヤー
- ポスターなどの紙媒体のデザイン
- サイト運用
- サイト解析
- 企画
- 撮影ディレクション
職人気質のように1つの制作にこだわりを持てる環境とは違い、短時間で最低限の品質をクリアしていれば良しとされる事が多い環境なので、分業に慣れすぎていると苦労することも多いです。
インハウスのメリット:
- 経営、数字への意識が高まる
- 非デザイナーからのフィードバックを貰える
- 制作会社に比べると、労働環境が安定している
インハウスのデメリット:
- 1つの制作物に、じっくりと時間をかけづらい
- なんでも屋が求められる
※あくまで、僕がいた会社でのメリットデメリットなので参考程度に。
自ら能動的に動いていく必要がある「フリーランス」
フリーランスを始めてまだ約2年ですが、現状実感する会社員との1番大きな違いは、成長のレールを自分で引かなければならないことで、何か失敗した時に注意してくれる先輩もいなければ、自分の成長プランを考えて課題を与えてくれる上司もいない。
会社員時代より収入が増えても、確固たる物をつかめなかったり仕事の質や裁量が変わらず歳を重ねていくだけだと10年後を考えた時にフリーランスを続けるリスクの方が大きいかなと個人的に考えています。
▲過去案件③ Elecom ICE COORDE様 特設サイト
フリーランスとして働いていて意識していること
1.定期的な「一人作戦会議」で、現状と目標の確認
月に1回度程、カフェにノートとペンだけを持って
- 直近の仕事の振り返りと反省
- 5年後、10年後どうなっていたいか書き出す
- そのために習慣にすることをまとめる
ということをやっています。
2.デザインのトレンドを積極的に収集
会社員時代は、同僚や先輩経由で、何もしていなくても情報が入ってきていました。しかし、一人で作業をしていると自ら情報収集をしないと本当に何も情報は入ってこないため、必須かなと思います。
主に、SNSやキュレーションサイトでの収集が多いです。
3.自ら情報を発信する
フリーランスになってから、Twitterとブログを始めました。運営し始めて、ちょうど1年半ほどで感じるメリットは
- 自分のデザイン関連のツイートに反応してくれる人が居て「そんな考えもあったのか」と知識の積み上げができる
- 物事を言語化することが習慣になり、言語化力が上がる
- 業界内でのポジショニングや見せ方を考えるようになる
- それまでスルーしてた他人のつぶやきも無意識にピックするようになる
- 自分の事を認知してくれる人が増えた
書き出すとまだまだあるのですが、SNSは「他人」の存在を感じさせてくれます。
完全に「個」として働くことが多いフリーランスにとってはメリットが多いのかなと思います。
カロリーメイトの広告
めちゃくちゃ上手いなーと思ったのが
「捕色の使い方」
紺色ブレザーの集団中に
捕色に近い黄色の箱を置くと
それだけでとにかく目立つので
小さいのに存在感が半端ない。
黄色を立たせるために
あえて学生達を地味な色にしてるのかなと勝手に想像。#世界が嫉妬するデザイン pic.twitter.com/B3aK7Wo68R
— ホリウチ ショウゴ (@syo_design) April 22, 2019
小倉記念病院さんの公開講座用のポスターが
めちゃくちゃ良い。
誰にでもありがちな、身近に起こる問題を
グラフィックとコピーに落とし込んでいて
そら、講座参加したくなる。
そして、一番すごいなと思ったのが
講座ごとに作られるレパートリーの多さ。
ただただ、圧巻。#世界が嫉妬するデザイン pic.twitter.com/q4T6dRhYn5
— ホリウチ ショウゴ (@syo_design) October 22, 2019
これから必要とされる最強のデザイナー像
デザインの目的には、
- お問い合わせ数を増やす
- 認知度を上げる
- ブランドイメージを向上させる
など、様々なゴールがあります。
ただ、最終的には「クライアント企業の売り上げを上げる」ことに集約されることが多いです。
そのため、1デザイナーの視点より少し俯瞰し
- 「この会社の売り上げを上げるにはどうしたら良いのか」
- 「外に向けてだけではなく、内側のスタッフを巻き込んだ施策はできないか」
- 「Webサイトを作って欲しいと依頼されたが、クライアントが抱えている問題はそれで解決できるのか」
のような経営的な視点を持つことが重要だと思います。
その上で良い物を良いと思えるクリエイティブな視点も必要だと思います。
論理の上では成功を確約されたようなデザインでも、実際にクリエイティブに落とし込んでみたら、どこか垢抜けない残念なデザインが仕上がることもあって想いが伝わらない事が多い。
中には「デザインは見た目や格好良さじゃない」という人もいて、そこを軽視する人も見かけます。しかし、見た目がいいデザインや良いクリエイティブは、それだけで人を惹きつけたり。心を動かしたり、場合によってはコンバージョンにつながることもあり、経営視点と同じぐらいクリエイティブな視点も必要なのではないでしょうか。
極論ですが、Appleの製品が機能的に優れていても、見た目が残念だったらあそこまでヒット製品にはなっていないはず。
僕自身もデザイナーとして働く中で、「いつか、周りを圧倒できる様なイケてるアウトプットを作ってやりたい」という願望があって、デザインへのこだわりは失いたくありません。
「経営とクリエイティブの目線をバランス良く兼ね備えたデザイナー」がこれから必要とされる最強のデザイナーだと思います。