フリーランスエンジニアにデメリットはある?メリットや適性も

現在は自由な働き方や年収アップを求めて、独立するエンジニアも増えている時代です。しかしフリーランスという働き方には、デメリットもあります。独立する前にメリットとデメリットの両方を知って、今後の働き方を考えましょう。

フリーランスエンジニアの現状

エンジニアは業界全体で慢性的な人手不足といわれています。フリーランスとして活動するエンジニアの数は、どのような状況なのでしょうか?働き方のバリエーションについても知っておきましょう。

フリーランスのエンジニアは増えている

働き方改革の推進や在宅ワークの普及を背景として、フリーランスになるエンジニアが増加中です。

クラウドソーシングサービスを営む企業の調査によると、日本におけるフリーランスの数は、2018年から2021年にかけて500万人以上も増えたと推定されています。

特定の発注者から仕事を得て活動している自営業者(本業としてのフリーランスに近い人)は、1985年の128万人から2015年には164万人に増えたという政府のデータもあります。

複数の統計が示す通り、フリーランスの絶対数が増えているのは明らかです。フリーランスとして独立するエンジニアの数も確かに増えていると考えてよいでしょう。

出典:フリーランス実態調査 2021 |ランサーズ(Speaker Deck)

出典:政策課題分析シリーズ17 日本のフリーランスについて|内閣府政策統括官(経済財政分析担当)

複数の働き方がある

フリーランスエンジニアの働き方は、『常駐型』と『リモート型』の2種類に大別されます。前者は企業のオフィスに出向いて働くスタイル、後者は自宅をはじめ好きな場所で時間にも縛られず働くスタイルです。

リモート型の方が自由度は高くなります。一方、契約期間中はクライアント企業のオフィスで業務をこなす案件も少なくありません。

どちらの働き方を選ぶべきかは個人の適性によるところが大きいので、獲得できる案件の中にどちらもあれば好きな方を選ぶとよいでしょう。

ただ近年は社会情勢も相まって、ビジネスチャットをはじめとしたツールを活用し、リモートで働くエンジニアが増えたとされています。

フリーランスエンジニアになるメリット

エンジニアがフリーランスとして独立すると、どのようなメリットを得られるのでしょうか?企業に所属している状態では得にくい恩恵を三つ紹介します。

自由な働き方を実現できる

自らの裁量で勤務時間や勤務場所を決められるのが、フリーランスとして働く大きなメリットといえるでしょう。理想的なライフスタイルに沿った仕事の進め方を実現できます。

人によって集中できる時間帯や環境は違います。フリーランスになれば、自らの生産性を高められる環境で柔軟に仕事ができるでしょう。

子育てや介護をしなければならない・体調が優れないなど事情があって定時勤務が難しい人も、家族や自身の状況に合った働き方を選択できます。

仕事を自ら選べるようになる

好きな仕事を選んで請けられるようになるのも、会社員がフリーランスに転身する利点です。ただし、仕事を選択できるだけの経験やスキルを持っていることが前提になります。

経験が浅いうちは、実績を作るために好きではない仕事も請ける必要が出てくるでしょう。

ただしエンジニアの場合は、フリーランスになるまでに十分な経験を積んでいる人が多いはずです。売り手市場の業界なので案件数も多く、ある程度の技能があれば比較的自由に仕事を選べるといえます。

経験やスキルによっては収入アップが可能

1人でも案件をこなせるだけの経験やスキルがある人なら、フリーランスへの転身で会社員より高い収入を得ることも可能です。

事実、エンジニアがフリーランスを志す理由の一つは収入アップであり、年収が会社員時代の倍以上になっている人は少なくありません。

フリーランスとして独立すれば、どの程度の単価の仕事を選ぶかは自分で決められます。また、仕事のために必要な勉強や交際の費用を経費として計上できるので、うまく節税できれば会社員時代に比べて手取りが増えるケースもあるでしょう。

収入が増えると仕事のモチベーションが向上し、モチベーションが高まれば生産性が上がるという好循環も期待できます。

フリーランスになるデメリットも知っておこう

フリーランスになると多くのメリットを得られますが、逆に独立するデメリットも知っておかなければなりません。懸念点を理解しておくことで、事前に対策を練りやすくなります。

収入が安定しない可能性がある

フリーランスは会社員と違って『基本給』がないため、多くのフリーランスが収入を安定させるために試行錯誤しています。

特に、病気やけがなど不測のトラブルで働けなくなるのは、フリーランスにとって十分に対策しておきたい事態です。復帰するまで収入がなくなるため、しばらく仕事ができなくても生活できるように資金を確保しなければなりません。

継続して請けていた案件が、突然なくなってしまう可能性もあります。収入がゼロにならないように、常に複数の案件を抱える必要も出てくるでしょう。

収入が低いときや仕事の継続が危ぶまれるとき、不安にどう向き合いモチベーションを維持するかも重要です。会社員のときよりも厳格な自己管理が求められます。

自分で仕事を探さなければならない

フリーランスとして独立すれば、自ら仕事を探さなければいけません。もともと営業活動が得意であれば案件獲得に悩みにくいものの、エンジニアの多くは営業経験がなく、独立当初は苦労するでしょう。

エンジニア自身が積極的に営業できた方が、収入アップにつながりやすいのは事実です。しかし、どうしても営業が苦手な人には、フリーランスのエージェントやマッチングサービスを利用するという選択肢もあります。

景気や業界の動向に左右されやすい

フリーランスは景気や業界の動向に左右されやすい働き方といえます。不景気になって業界全体の仕事が減り始め、プロジェクトの縮小や打ち切りが発生すると、真っ先に外注の案件が減ってしまうためです

企業からの外注案件がフリーランスの主な収入源となるので、会社員よりも仕事が減ってしまうスピードが早いといわれています。業界全体の動向を把握し、不景気が続く場合は別の業界でも仕事ができるように準備しておくといった努力が必要です。

キャリアアップが難しいケースもある

自分の好きな仕事を選べるのも、フリーランスのメリットです。とはいえ請けられる仕事は自らの経験やスキルに基づいているため、人によっては仕事の幅が広がらないケースもあります。

案件の種類が限定されてしまうと同じような仕事にしか携われず、キャリアアップが難しくなるでしょう。

また、自分の得意分野の仕事ばかり請けるのも、キャリアアップが阻まれるケースです。その分野には強くなるものの、別分野の仕事のニーズが高まった際にうまく対応できなくなります。

得意分野のみでも、安定して仕事を得られるうちは問題ないでしょう。しかし案件が少なくなったとき、新たな分野で仕事を得るのが難しくなってしまう可能性があります。

最終的には全て自己責任になる

フリーランスは自ら仕事を獲得し、金銭面の管理やクライアントとの交渉・税金の支払いまで全て個人でこなさなければいけません。いわばビジネス活動の全てが自己責任になるということです。

問題やトラブルに巻き込まれた際に、自分の代わりに矢面に立ってくれる人はいません。過失によって賠償責任が生じたケースでも、全て自力で解決する必要があります。

フリーランスは自由度が高い反面、何かあった場合には責任をしっかり取る覚悟が求められる働き方です。

フリーランスエンジニアに向いている人

フリーランスのエンジニアに向いているのは、どのようなタイプなのでしょうか? 人によっては会社員として働いていた方が生産性を高められる場合もあります。フリーランスの適性から、自分が向いているのか確認してみましょう。

自己管理を徹底できる

フリーランスは仕事のスケジュール管理はもちろん、金銭的な管理も自らこなさなければいけません。自己管理を徹底できる人がフリーランスに向いているといえるでしょう。

また、エンジニアはフリーランスでもチームで仕事を進める場面は多くありますが、リモート型では1人で作業を進めることがほとんどです。

特に在宅だと周囲の目がないため、自ら仕事のモチベーションを維持しつつ、確実に作業を進められる人にしか務まらないといえます。

営業力や交渉力がある

フリーランスとして収入を伸ばしていくには、営業力や交渉力が必要です。案件自体の獲得はフリーランスエージェントやマッチングサイトを利用すれば問題はありませんが、高収入を得たいなら営業力は必須と考えましょう。

また、フリーランスのエンジニアとして業務を進めるにあたっては、クライアントと交渉が必要な場面も出てきます。ある程度の交渉力が高い人の方が、提案を聞き入れてもらいやすくなるでしょう。

必要なスキルを進んで身に付けられる

フリーランスエンジニアとして働いていると、専門的なスキルを新たに身に付けなければならないケースが出てきます。必要に応じてスキルを進んで身に付けられる人は、高単価の仕事の案件を請けやすくなるでしょう。

また、長くフリーランスの仕事を続けるためには、常にスキルアップをし続けなければいけません。独学だけでなくエンジニアの勉強会やセミナーにも参加しながら、自身をブラッシュアップできるタイプがフリーランスに向いています。

フリーランスとして案件を獲得する方法

自分で営業できるフリーランスエンジニアは、企業に積極的にアプローチすればよいでしょう。しかし、初めてフリーランスとして仕事を探す場合や、営業が苦手な人は別の方法も知っておいた方が安心です。

人脈を生かして案件を紹介してもらう

フリーランスになると決めたら、エンジニアの知人や友人・過去の就労先で関わった企業に独立する旨を知らせましょう。一緒に仕事をしたつながりから、仕事の紹介を受けられる可能性があります。

相手との信頼関係が築けていれば、こちらの経験やスキルにマッチした仕事を紹介してもらえる機会が増えるでしょう。報酬がいくらもらえるのかを予想しやすく、単価交渉が通る見込みも大きいはずです。

フリーランスエージェントを活用する

フリーランス向けのエージェントを利用して、仕事を探す方法も有効です。エンジニアとしての経験やスキルを伝えれば、専属のコーディネーターがスキルレベルや志向に合った案件を紹介してくれます。

報酬の交渉や法的な手続きも代行してもらえるエージェントを活用すれば、効率的に仕事を探せるのがメリットです。

ただしエージェントを介することで、クライアントと意思疎通をしづらくなったり、同じような案件しか紹介されなかったりというデメリットもあり得ます。

Offersのように直接交渉ができるマッチングサービスを併用したり、自力で案件を獲得する営業力を身に付けたりといった工夫も必要です。

Offers「オファーズ」 - エンジニア・デザイナーのための副業・複業・転職の採用サービス

フリーランスになる前に知っておくべきこと

フリーランスとして独立するなら、会社員時代は考えなくてもよかった手続きが必要になります。開業時や開業後に慌てないためにも、事前に事務処理や社会保険についての知識を備えておきましょう。

開業届の提出

エンジニアに限らず、個人で事業を営むには、自宅や事務所を管轄する税務署に開業届を提出する必要があります。開業届を出さずに事業を営んでいる人もいますが、届出は法的に義務化されている手続きです。

税制面で優遇される『青色申告』を選ぶためにも、開業届の提出は欠かせません。開業届と同時または提出後に、『青色申告承認申請書』も提出できるようになります。

また、開業届を出すことで、フリーランスでも『屋号』を持てるのがメリットです。自分の業種を『屋号』に明記すれば業務内容が分かりやすくなるだけでなく、屋号を前面に出して事業を営めます。

独立したら1カ月以内に、最寄りの税務署へ開業届を提出しましょう。開業届は税務署の窓口で受け取れるほか、国税庁のホームページからダウンロードもできます。

参考:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

参考:[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁

会計処理や保険について

フリーランスとして活動するなら、所得と納める税額を申告する『確定申告』が必要になります。せっかく開業届を出して青色申告を選ぶなら、特別控除の額は大きい方がよいでしょう。

簡易的な『単式簿記』でも申告はできますが、税制上のメリットが多い青色申告で最大限の特別控除を受けるには『複式簿記』での会計処理が欠かせません。複式簿記は『借方』『貸方』に分けて収支を記録する、複雑な記帳方法です。

とはいえ簿記の知識がない人でも、クラウドサービスの会計ソフトを使えば簡単に複式簿記での帳簿付けができます。知識不足で使える控除を逃すことがないよう、独立前に使い方を調べておきましょう。

また、フリーランスは基本的に国民健康保険に加入し、定期的に保険料を納付しなければいけません。会社員時代は給与から天引きされる社会保険料も、独立すると自分で納付しなければならない点に注意が必要です。

まとめ

フリーランスにはメリットが多くありますが、会社員に比べてデメリットに感じられる面もあります。特に、事業に関して全て自己責任となる点は、独立前から覚悟しておかなければいけません。

エンジニアがフリーランスとして仕事をしていくには、自己管理能力や営業力・交渉力を磨く必要があるでしょう。独立後にスムーズに案件を獲得できるように、求められる知識やスキルは身に付けておくことが大事です。

税金や社会保険に関する知識も備えて、フリーランスとして働く準備をしっかり進めましょう。

この記事をシェア

関連記事


副業・フリーランス

プログラミング

インタビュー

デザイン

お金

採用・組織

転職

イベントレポート