IT技術者不足の実態とは?労働環境の改善や人材の偏り解消が必要

IT技術者は、職種を問わず慢性的に人材が不足していると言われています。技術者の高齢化が進むと同時に少子化問題も深刻化しており、IT技術者不足の流れは今後も加速するでしょう。ここでは、IT技術者不足の実態やその改善方法について解説します。

IT技術者の需要が拡大中

今後は、人工知能やIoT、ビッグデータといった先端技術の開発がさらに進み、IT技術者の需要は拡大すると言われています。それぞれの分野ごとに必要とされる知識やスキルが異なることから、分野ごとの専門的なIT技術者の存在が不可欠なのです。

ここでは、IT技術者が求められる具体的な産業や自動化の流れについて解説します。

さまざまな産業でIT化が進む

将来の労働人口の減少を見据え、さまざまな産業で急速にIT化が進んでいます。

身近な例でいえば、TSUTAYAやユニクロでレジの無人化が進んでおり、レジに人を置くことなく会計処理を済ませることができます。自動車業界でも各メーカーはIT化に力を注いでおり、将来自動運転の自動車が台頭することで、ドライバーの仕事が減少することが予想されます。

今後はあらゆる産業でIT化が進んでいき、人々の生活に影響を与えることになるでしょう。

労働人口の減少で自動化が求められる

国立社会保障・人口問題研究所が発表した『日本の将来推計人口』によると、日本の生産年齢人口は2015年の7728万人から着実に減少し、2050年にはおよそ5000万人まで減少すると試算されています。

数値からも分かるように、日本の労働人口は今後確実に減少することから、企業も将来を見越して、可能な限り業務を自動化しなければならない状況に立たされているのです。

出典:国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口』

IT技術者不足への対策が急務

経済産業省は、平成28年に『IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果』というレポートを発表しました。

その内容によると、2019年をピークにIT技術者の人材供給は減少傾向に変わり、2020年には約30万人、2030年には約59万人の人材が不足すると予測されています。IT技術者不足への対策は緊急課題になっているのです。

出典:経済産業省『IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果』

2018年に経済産業省がDXレポートを発表

経済産業省が2018年に発表した『DXレポート』によれば、企業が本格的にDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組まなければ、2025年には最大で12兆円もの経済損失が発生する可能性があると言われています。

DXレポートでは、これまで構築してきた企業のITシステムが組織ごとに細分化されすぎていることから、新たなビジネスが生まれにくい状況になっているという問題点を指摘しています。

出典:経済産業省 DXレポート

2025年の崖の概要

DXレポートに記載されている『2025年の壁』とは、このままだと2025年にはIT人材不足が約43万人にまで拡大するという問題です。

さらにレポートでは、デジタルトランスフォーメーションを推進する必要があるにもかかわらず、昔からのITシステムが肥大化し、足かせの状態になっていると指摘しています。時代の変化に対応できるIT人材が育っていないことが、2025年の大きな問題だと考えられているのです。

先端IT、セキュリティ分野での不足が深刻

先端IT技術である人工知能や、IoT機器、さらにセキュリティの分野でも、IT技術者の不足が懸念されています。

いずれも高度なプログラミングの技術を求められる領域であり、今後も急速に進化し、市場が拡大していくことが予想されますから、人材の不足が深刻化する可能性があるのです。

IT技術者不足の原因

先述したとおり、経済産業省作成のレポートでは、2019年を境にIT技術者の不足問題が一気に加速することが予想されています。

しかし、レポートが出される以前から、いずれの業界でも慢性的なIT技術者の人材不足に悩まされていました。IT技術者が不足している原因は、一体どこにあるのでしょうか。以下、その原因について具体的に解説します。

ブラックなイメージによるIT業界離れ

IT業界で働くIT技術者に対して、昼夜を問わずパソコンに向かってひたすらプログラミング作業をし、常に仕事に追われているといった、ブラックなイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。

経済産業省が出した『IT人材に関する各国比較調査結果報告書』によると、IT技術者の平均年収は約600万円だと言われています。

激務であるにもかかわらず、多くのIT技術者がその仕事内容に見合った収入を得られていなことも、若者がIT業界から離れていく原因だと言えるでしょう。

出典:IT人材に関する各国比較調査結果報告書

技術者の高齢化、定年

これまで長年、企業の基幹システムの構築に関わってきた技術者が定年退職し、IT技術者が人材不足に陥っているという側面もあります。

少子化が加速していく中で、IT技術者のなり手が増加するとはなかなか考えにくいのが現状です。技術者の高齢化と少子化の二つの要素の影響により、今後、IT技術者の人材不足は続いていくものと思われます。

レガシーシステムへの人材の偏り

既存のレガシーステムを維持するために多くのIT技術者が投入されており、新しい技術の開発に人材が行き渡っていない状況が生まれています。レガシーシステムの存在自体が、デジタルトランスフォーメーションを阻む要因になっているという説もあるようです。

IT産業を支えるためにも、IT技術者を各領域に適正に分配する必要があるでしょう。

市場価値の高いIT技術者になる方法

今後、IT技術者が不足する状況が続くとはいえ、スキルが低いIT技術者を欲しがる企業はあまりないでしょう。これからもIT技術者として生き残るためには、自らの市場価値を高める必要があります。

IT技術者は、どのような努力をすれば、市場で求められる人材となれるのでしょうか。その具体的な方法について解説します。

新しい技術を学び続ける

テクノロジーが急速に発達し、次々と新しい技術が開発されていく状況下において、かつて身につけたスキルだけに頼って仕事をしていても、やがて市場から不要な人材だとみなされる可能性があります。

IT技術者は、常にIT業界の動向を見定めながら、新たな技術を学び続けることが大切です。常に新しい技術を身につけておくことで、IT技術者としての市場価値は確実に高まります。

マネジメント力をつける

IT技術者のキャリアを重ねることで、プロジェクトマネージャーなどのマネジメント職に就ける可能性が生まれます。

日本のIT業界において、大きなプロジェクトをしっかりと管理できる人材はまだ少ないことから、マネジメント力を持っている人材が常に求められているのです。IT技術者として経験を積んだ人がマネジメント力を身につけることができれば、市場価値が高まります。

開発経験を積み、スペシャリストを目指す

市場価値の高いIT技術者になるためには、IT技術者としての自分の適性を見極めながら、開発の経験を重ね、その分野に特化したスペシャリストを目指すことをおすすめします。

あらゆる分野のスキルを身につけることも大切ですが、自分が得意な一つの分野に絞ってとことん専門性を高めることで、ほかの人よりも秀でたスキルと経験を持つ、信頼できるIT技術者として評価されるようになるでしょう。

まとめ

テクノロジーの発展と同時に、IT業界を取り巻く環境は日々めまぐるしく変わっています。今後、あらゆる業界でIT化の波が押し寄せることが予測され、優秀なIT技術者の需要は高まるでしょう。

IT技術者の人材不足は想像以上に深刻であることから、企業には早急な対応が迫られています。

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