確定申告に必要な書類
副業を行っている人の場合、給与所得、退職所得を除く所得が20万円を超える場合には確定申告が必要です。1ヶ月平均1万7,000円ほど稼げている場合には確定申告が必要ということになるので確定申告までのハードルは非常に低いと言えるでしょう。
確定申告を始めて行うという人はどういった書類を用意すれば良いのかや、それらの書類をどこで入手したら良いのかわからないという人も多いでしょう。ここでは、確定申告に必要な書類とその入手方法について紹介します。
個人情報
個人情報などを記入する書類として「確定申告書」が必要となります。確定申告書にはAとBの2つの様式が存在しています。確定申告書Aはサラリーマンやパート勤務の人が使用するもので、確定申告書Bは個人事業主の人が使用するものです。したがって、副業をしている人で確定申告をするということであれば、基本的に確定申告書はAを使用するという形になります。
確定申告には青色申告と白色申告があり、青色申告は「事業所得」「不動産所得」「山林所得」なので、副業文脈では当てはまらないことが多いでしょう。確定申告書に関しては青色申告、白色申告どちらの場合でもAやBの選び方が変わるということはありません。副業の場合はAで基本的には問題ありませんが、不安な場合は税務署に問い合わせてみると安心です。
確定申告書は各地域の税務署でもらうことが出来ますが、税務署に行かなくても国税庁のHPからPDFファイルを印刷することが可能です。カラープリンターで出力した申告書等はそのまま使用することが可能なので、カラープリンターを所有しているのであればわざわざ税務署に書類を取りに行く必要はありません。
個人情報は確定申告書に記載しますが、マイナンバーカードも必要です。マイナンバーカードを持っていない場合には、通知カードやマイナンバーの記載のある住民票の写し等のうちいずれか1つに運転免許証などの身元確認書類が必要となります。
源泉徴収票
副業を行っている場合は本業で給料を受け取っているはずなので、給与所得の源泉徴収票というものが必要となります。この給与所得の源泉徴収票に関してはコピーなどはNGで原本が必要となります。
最近では源泉徴収票を電子交付している会社も多くなっていますが、この場合も書面で交付を受けたものと規定されていることから、電子交付されたものを印刷するのではなく会社に書面で発行依頼をしなければなりません。ただし、税務署によっては印刷でも構わないというケースもあるので、事前に問い合わせておいた方が確実です。
※編集部注 平成31年4月以降に提出する確定申告については源泉徴収票の添付が不要になりました。
榎本希
確定申告の際に必要な書類を箇条書きでまとめると下記のようになります。
- 確定申告書
- 収支内訳書(白色申告で事業所得と不動産所得がある場合)
- 青色申告決算書(青色申告で事業所得、不動産所得がある場合)
- 確定申告書B第三表、株式に係る譲渡所得等の計算明細書(株式投資がある場合)
- マイナンバーの分かる物
- 身分証明書(マイナンバーカードがない場合)
控除に関する書類
保険料に関係するもの
保険料控除に関する書類ですが、国民年金、国民年金基金の支払いで社会保険料控除を受ける場合には「国民年金保険料控除証明書」「社会保険料控除証明書」が必要となります。これらの書類は年金事務所、国民年金基金連合会で入手することが可能です。
生命保険に関しては、生命保険料控除証明書など支払額の証明書が必要なので、生命保険会社に請求しましょう。地震保険に関しても、地震保険料控除証明書など支払額の証明書が必要なので、損害保険会社に請求しましょう。
各種控除に必要なもの
保険料以外にも様々な控除がありますが、災害などによって生じた支出における雑損控除は領収書が必要です。また、ふるさと納税など様々な寄附を行った場合には寄付をした団体などから受け取った寄附金の受領書が必要となります。
医療費が10万円を超えたなど医療費控除に関しては、医療費控除の明細書や医療費通知の原本、セルフメディケーション税制の明細書などが必要です。控除を初めて受ける人は住宅借入金等特別控除額の計算明細書・住民票の写し・売買契約書の写し・登記事項証明書の原本・金融機関の住宅ローンの「残高証明書」が必要になります。
榎本希
控除に関する事項を箇条書きでまとめると下記の通りになります。
- 社会保険料控除(国民年金保険料など)
- 生命保険料控除(生命保険を支払っている場合)
- 小規模企業共済等掛金控除(個人型の確定拠出年金などの掛金を払っている場合)
- 医療費控除(年間に支払った医療費が10万円以上ある場合)
- セルフメディケーション税制(ドラッグストアなどで対象商品の購入額が1万2000円以上ある場合)
- 地震保険料控除(損害保険等の地震等損害部分の保険料を支払っている場合)
- 雑損控除(災害や盗難などに遭った場合)
- 寄付金控除(寄付を行った場合)
それぞれ領収書や証明書等を準備します。
確定申告の記入例
必要な書類を用意したら実際に確定申告書を記入していくことになりますが、具体的にどのように記入すれば良いのかわからないという人も多いでしょう。確定申告書ABの違いと第一表から第三表まで書類別の記入例を紹介します。
申告書AとB
確定申告書にはAとBの2種類があります。確定申告書Aは主にサラリーマンや年金所得者向けのもので、確定申告書Bは主に個人事業者や分離課税対象の所得がある人向けとなります。基本的にはこの2つですが、分離課税対象の所得がある人や所得金額が赤字になる人は分離課税用の第三表も必要です。
第一表の記入例
第一表の記入例ですが、源泉徴収票などを手元に用意します。副業がアルバイトであればその分の源泉徴収票も用意して、収入金額等の給与の欄に所得の合計を記入します。所得金額の項においても収入金額に応じて給与所得金額を計算し記入していきましょう。
所得から差し引かれる金額に関しては本業の源泉徴収票を元に、基礎控除の他社会保険料等の控除額や生命保険料控除額など控除があるものを記入していきます。最後に所得額に応じた税率などを使用し各種税額を計算して申告納税額を記入すれば完了です。
第二表の記入例
第二表の記入も住所氏名などを書いたら、本業の源泉徴収票を用意し転記していき、副業がアルバイトの場合であればアルバイト先の源泉徴収票を参照し転記していきます。副業の場合年末調整が行われないので、給与所得控除後の金額は記載されていません。
転記したら所得の内訳の欄にある所得税の合計額を計算して記入すればOKです。所得から差し引かれる金額に関する事項に関してですが、アルバイトの場合であれば「源泉徴収票の通り」と記入し合計額を記入します。
生命保険料控除は支払った金額を記入するだけで完了です。基本的にはほとんど第一表で記入した額を転記するだけですが、所得の種類については具体的な会社名と共に記載する必要があるということや保険料は控除額ではなく実際に支払った保険料なので間違えないようにしましょう。
第三表の記入例
分離課税申告書である第三表の記入例ですが、株や先物取引などにおける収入金額と所得金額を記入します。それぞれの分離課税の所得額にそれぞれの税率を課して税額を計算し税額を記入します。税率に関してはそれぞれの所得において変わるのでよく確認しましょう。
榎本希
複数の所得があり、記載の方法がよく分からないような場合や自分に所得区分や控除の区分等が分からない場合には税務署の無料相談で相談を行うか、税理士に相談をしましょう。
確定申告の期間中に必要書類を持参して税務署へ行くと、e-Taxを利用した申告をスタッフに聞きながら行う事が出来ます。
副業を隠したいときは
確定申告を行うことによって副業がばれてしまうのではないかと不安に思って確定申告を躊躇する人もいますが、脱税になりますしばれないように確定申告することも可能です。副業がばれたくない人は、なぜばれるのかや、ばれないような申告書の書き方を確認しておきましょう。
住民税からばれる
副業がばれる原因の代表的なものが住民税によるものです。副業をしていると本業と副業の2カ所で住民税も発生します。しかし、副業の住民税は本業の会社経由でまとめて支払うのが一般的なため、他の社員よりも住民税が多いことから副業がばれてしまうのです。
普通徴収に
住民税からの副業ばれを防ぐためには、確定申告書にある「住民税の徴収方法の選択」において「自分で納付」にチェックをします。これによって副業分の住民税は自宅に納付書が届き納める普通徴収という形になるので副業がばれにくくなるのです。
榎本希
副業をしていることが会社に知られる原因の1つが住民税です。
そのため、副業をしていることを知られたくない場合には確定申告の際に住民税の納付方法を「特別徴収」ではなく「普通徴収」を選択し、住民税を市区町村から送付される納付書で自分で納付するようにすると良いでしょう。
まとめ
副業をする上で年間20万円を超える収入がある場合には確定申告が必須となります。会社に副業をしていることがばれたくないという場合には、確定申告で住民税を普通徴収にすることと、会社の人間に副業のことを話したりしないようにすることが重要です。