看板デザインの仕事とは
看板は、常時または一定期間継続して表示される『屋外広告』の一つです。看板によって設置位置や形状はさまざまですが、概して人目を捉えやすく、視認性の高い広告媒体と言えるでしょう。
看板の見栄えやインパクトにかかわる、看板をデザインする仕事について考察します。
店舗の看板をデザインする
看板デザインとは、文字どおり看板をデザインする仕事です。デザインではデザイナーのセンスやスキルが求められるのはもちろん、看板設置の狙いやクライアントの意図に沿っているかということも重要になります。
- 視認性が高く、反復訴求効果が期待できる
- 特定のターゲットに絞った宣伝ができる
- リーズナブル
上記は、販促として看板を使うメリットの一部です。
実際のデザインに取りかかる前に、クライアントがどのメリットを重視し、看板設置によってどんな効果を期待しているのか、適切に把握しておきましょう。
タイプは様々
看板の種類は設置位置、形状、使用材料、照明方法、表示方法などによって分類され、その種類は様々です。
詳細な看板の種類と設置場所については、以下を確認しておきましょう。
看板の種類 | 設置する場所 |
壁面看板 | 店舗の壁面 |
野立看板 | 屋外 |
屋上看板 | 建物の屋上 |
浮き出し文字看板 | 建物の壁面など |
ネオンサイン | 夜間営業の店舗など |
スタンド看板 | 店舗の前など |
袖看板 | 建物の側面など |
ゲート看板 | 商店街入り口など |
看板の設置場所は、デザインを考える際に非常に重要な要素です。
たとえば、看板設置場所が開けた土地なのか、建物や人が多い密集地なのかで、選ぶべきデザインや素材は異なります。看板をデザインする際は、看板がどこに設置され、どんな形状で使われるのかは、必ず把握しましょう。
1点物の依頼も多い
看板デザインでは、独自性の高い一点物が求められるケースが珍しくありません。
クライアントの多くは、看板そのものを『店舗の顔』『広告塔』と認識し、販促ツールとして活かそうと試みます。そのため、看板には店舗の特徴や雰囲気を活かした、オリジナリティの高いデザインが好まれるのです。
また、看板を設置することには、競合店との差別化を図れるというメリットがあります。たとえば、クライアントが同業種の密集地に店舗を構えている場合、売上を伸ばすには店舗を目立たせねばなりません。クライアントが看板を依頼する際、「他店とはひと味違った、独自性の高いものを」と求めるのは、当然のことと言えるでしょう。
看板デザインの種類
看板の種類は多様ですが、なかでもよく目にするのが『壁面看板』や『立て看板』ではないでしょうか。デザイン案件も多いこれらの看板について、より詳しく見てみましょう。
ファサード、壁面看板
『ファサード』『壁面看板』とよばれるものは、文字どおり店舗の壁一面に設置される看板です。外壁と看板デザインを統合的に行うため、店舗のイメージやブランドのコンセプトを明確に表示できるというメリットがあります。
ただし、設置スペースが制限される場合は、レイアウトやデザインにも注意しましょう。必要な文字や写真が隠れたり見えづらくなったりしないよう、視認性や可読性を確認しながらのデザインが必要です。
立て看板
『自立看板』『野立看板』とも呼ばれる立て看板は、地面に基礎を作って立てられます。建物の形状、位置にとらわれず設置できるため、より広告効果が高い場所を選択したり、場所に見合った形状が可能です。遠距離から見られることも多いため、デザインではより高い視認性が求められるでしょう。
作成のコツ
看板は、多くの人の目に留まってこそ宣伝効果を得られます。そのため、看板デザイナーは、『看板を見る人の視点』に立つことが重要となるでしょう。
高い効果を上げられる看板を作成するには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
看板の目的を明確にする
看板デザインにとりかかる前に、看板の目的は明確にしておかねばなりません。
看板を設置する目的は、大別すると次の二つがあります。
- 店舗の存在・営業状況を周知する
- 具体的なサービス・商材・価格・イベントなどを知らせる
まず、店舗の存在や営業状況を周知するのが目的なら、『店名』『どんな店舗か』『営業時間』などは必須です。遠くからでも文字や写真を判別できるよう、見やすさにこだわったデザインが必要です。
一方、具体的なサービス・商材・価格・イベントなどを知らせるのが目的の場合は、伝えたい情報をわかりやすく配置する必要があります。
提供される情報の質によって顧客の次の行動が変わるため、わかりやすさや親しみやすさに重点を置いたデザインが求められるでしょう。
情報の取捨選択をおこなう
看板デザインでは、限られたスペースに多くの情報を詰め込むよりも、いかに情報を絞り込むかが重要です。
看板は一度設置すれば定位置に留まりますが、それを目にする人の多くは動いています。情報の多すぎる看板は読み飛ばされる可能性が高く、見た人の頭に残りません。
看板の設置効果を上げるには、短時間でインパクトを与えられるよう、スリム化した情報を効果的に配置する必要があるのです。
視認性、可読性にも注意
見やすいデザインを追求すると、看板は簡素になってしまいます。ところが、ここに店舗が提供するサービスや商材の写真やイラスト、キャッチコピーなどを添えておけば、デザイン性が高まり、実際のイメージが伝わりやすくなります。
また、看板デザインでは、サイズに適した『見やすい文字サイズ』を選択することが必要です。看板広告業界では、次の式で見やすいサイズを算出します。看板に文字を配置する際は、この式に当てはめてみるとよいでしょう。
可読性の高い文字サイズ目安=距離(m)÷200~250(漢字9文字程度の場合)
ただし、実際のデザインでは、この式が該当しないケースもあるので注意しましょう。たとえば、対象がお年寄りだったり特に注目をひきたい看板だったりする場合は、この目安より大きな文字サイズが求められます。文字はできるだけ大きくし、デザイン性よりも可読性が優先されます。
看板の用途や目的にあわせて、もっともバランスのよい文字サイズを選択しましょう。
看板デザインに必要なスキル
看板デザインの仕事の多くは、『グラフィックデザイナー』の仕事に分類されます。ただし、看板を魅力的なデザインに仕上げるには、グラフィックデザイナーとしてのスキルのほか、看板という媒体ならではの知識も必要です。
看板デザインを手がけるにはどのようなスキルが必要なのでしょうか。
基本的なデザイン力
看板を一目見ただけでイメージや内容が伝わるようにするには、基本的なデザイン力は必須です。具体的には、写真やフォント、レイアウトや配色に関する基礎知識は、一通り備えておく必要があります。
こうした知識があれば、看板にふさわしい写真やフォントの選択が容易になり、見る人の視線誘導を意識したレイアウトが可能です。与えられた情報が適切に配置された、伝わりやすい看板デザインとなるでしょう。
制作ソフトを使うスキル
看板デザインでは、PhotoshopとIllustratorを扱う基礎的な知識やスキルが必要です。実質的なデザイン作成にはIllustratorを使い、修正や加工でPhotoshopを使うというケースは多く、どちらも習得しておくことでよりよいデザインを生み出せるでしょう。
また、看板制作会社によって、デザイン入稿時に使用できるソフトやバージョンが異なります。求められるソフトやバージョンがある場合は、入稿するのに注意しましょう。
看板についての知識
依頼された看板の種類やサイズによって、デザインの方法や考え方は変わってきます。デザインでは材質や設置場所などにも左右されるため、事前に看板について十分な知識と理解を深めておくことは必須です。
たとえば、ファサード看板や壁面看板は『アルミ複合板』が使われるケースが多いため、この板材の規格を考慮したデザインの必要があります。
また、自立看板は、ステンレスやアルミといった素材が使われます。デザインでは、金属の質感を活かして高級感を持たせると、見栄え良く仕上がるでしょう。
このように、看板ごとの材質や特性を把握しておくと、見たときのイメージがちぐはぐになりません。看板デザインを手がけるなら、看板の種類ごとに材質や特徴を把握しておくことは有益なのです。
スキルアップの方法
看板デザイナーとして安定した仕事を得るには、高いスキルや知識は必須です。デザイナーとしてスキルを高めるにはどのような方法があるのでしょうか。
専門学校に通う
効率的にスキルをアップするなら、専門学校がベターです。学校では業界トップのデザイナーが講師を務めるケースが多く、実践的かつ最新の知識を習得できるでしょう。
ただし、専門学校は拘束時間が長く、費用負担も大きくなります。さらにカリキュラムは学校ごとに異なるため、クオリティにもばらつきが見られます。
一度通い始めれば簡単には辞められないため、『何を習得できるのか』『コストパフォーマンスは適正か』などをクリアにして、入学を検討しましょう。
良いデザインを見る
デザインスキルやセンスを磨きたい場合、他者の優れたデザインを見ることは有益です。よいデザインが見つかれば、自身のデザインと比較して、どんな点が優れていると感じたのか検証してみましょう。
「バランスがよい」「配色がよい」と感じれば、それは自身のデザインでも活かせます。よいデザインをたくさん見ることでデザイナーとしての引き出しが増え、看板デザインを手がけるうえでの選択肢が広がるのです。
色彩について学ぶなど新しい知識を得る
デザイナーのイメージを実現するには、看板の色使いも重要です。色が人に与える効果や印象や、効果的な配色について学んでおくことは、決して無駄ではないでしょう。
色の効果については、以下のようなものがあります。
- 赤: 目立つ、エネルギッシュ、ポジティブ・ネガティブ両方の意味がある
- オレンジ:健康的、親しみやすい
- 青: 精神を安定させる、集中しやすい
- 緑: 穏やかな気持ちになる、自然な素材を想像させる
色彩の意味を知っておけば、狙い通りの看板をデザインしやすくなります。ただし、色を決める際は看板単独で考えるのではなく、看板が飾られる壁面の色や周囲の景観との調和を取ることも重要です。
看板デザインの仕事をする場
看板デザインは、グラフィックデザイナーの仕事の一部です。具体的な働き方としては、会社や団体に属したり、個人で事業展開したりという方法があります。
看板デザイナーの働き方について考えてみましょう。
デザイン会社や印刷会社で働く
看板デザインの仕事は、デザイン会社や印刷会社が請け負います。そのため、まずはデザイン会社や印刷会社に就職するのが、看板デザインに携わる近道でしょう。
ただし、どちらに就職するにせよ、デザイナー自らが仕事を選ぶのは困難です。会社員として就職した場合は、会社や上司の意向にあわせて仕事をすることが求められます。やがて自身の望む看板の仕事に携われるよう、まずは実力や実績を積み上げ、評価されるデザイナーになりましょう。
ポートフォリオサイトで集客する
好きな仕事だけに注力したいなら、自分で立ち上げたサイトで案件を募る方法があります。この場合、企業や団体に属さない『フリーランス』という働き方になるため、自身の望む案件のみを手がけることが可能です。自身で立ち上げたサイトにこれまでの実績や作品を掲載しておけば、気に入ってくれた人から依頼が入ることもあるでしょう。
ただし、ポートフォリオサイトのみで集客するには、検索上位に上がるようコンテンツを充実させたりSNSなどを活用したりといった営業努力が必要です。
集客効果が高まるほど案件を受注しやすくなるため、サイト運営はにも注力する必要があります。
クラウドソーシングを活用
未経験者の場合、クラウドソーシングで仕事を探すのが有益です。
クラウドソーシングとは、クライアントが、Web上で不特定多数の人に案件を提示して応募を募るという外注方式です。クラウドソーシングを利用した場合、料金や条件はあらかじめ明示されており、納得したデザイナーが案件に応募します。
近年はクラウドソーシングを通じて応募をかけるクライアントが増加しているため、案件の数や種類は豊富です。中には経験不問の案件もあるため、未経験者でも応募しやすいでしょう。
ただし、クラウドソーシング案件は、一般相場よりも低単価な印象です。受注して収入を得ることを主目的とするよりは、『実績を積むのに有益』と考えて利用することをおすすめします。
デザイン費用の相場は?
看板デザインは、サイズや仕様によって費用相場が異なります。デザイン費用が決まる要素や費用内容について見てみましょう。
数千円〜数万円
看板デザインの料金は、求められる内容によって数千~数万円というのが相場です。
通常、料金相違はデザイナーがかかわる工程数に比例します。そのため、クライアント側がデザインの基を準備、資料を提供するなどでデザイナーの負担が軽減される場合、料金は低くなるでしょう。
サイズや複雑さにより変動する
デザイン費用に大きくかかわるのが看板サイズやデザインの複雑さです。
まず、サイズが大きいほどデザインする面積が広がるため、デザイン費用は高額になります。また、求められたデザインが文字のみの簡単なものなのか、写真やイラスト、キャッチコピーなどを含めた本格的なものなのかというのも、金額を決定するポイントです。
デザイナーに求められるのが文字の配置だけなら、さほど手間はかかりません。しかし、写真の加工やイラストの添付などが必要なら、デザイン工程が増えます。デザイナーにかかった負担分が料金に上乗せされ、デザイン料はより高額になるのです。
実際の看板製作や取り付けは別費用
看板制作や取り付けについては、別途費用がかかります。
通常、看板デザインに求められるのは、看板の元となるデータの作成・入稿までです。看板をデザインに起こしたり設置したりは専門業者に依頼する必要があるため、製作費用が発生します。
ただし、デザイナーが看板制作会社在籍の場合は、デザイン制作から設置まで一つの会社で行うことも可能です。この場合は、最初からトータルの料金が提示されるため、クライアント側としては決められた予算で看板制作できるというメリットがあります。
まとめ
看板デザインでは、設置場所や設置目的に合せたデザインが求められます。多くの人に見てもらえるよう、視認性や可読性の高いデザインは必須でしょう。
また、看板デザインを手がけるデザイナーは、グラフィックデザインの基礎やグラフィックソフトを扱うスキルが必須です。専門学校に通い、なるべく多くのデザイナー作品を見るなどして、スキルを高める努力をしましょう。