ポートフォリオサイトについて知ろう
アーティストやクリエイターが公開しているポートフォリオサイトには、どのような役割や目的があるのでしょうか。
ポートフォリオサイトとは
デザイナーやカメラマン、イラストレーターや芸術家、エンジニアなどが多くポートフォリオサイトを作成して公開しています。サイト上で自分の作品を公開することで、多くの人に見てもらい、最終的には仕事の依頼につなげることなどが目的です。
これらの職種は、フリーランスで働く人も多いため、自分の宣伝活動やクライアントへのプレゼンテーションのためにポートフォリオサイトを利用しています。
中には就職活動のためにポートフォリオサイトを作ってアピールすることもあり、在宅ワークをする場合もポートフォリオを求められることが多くなっています。
ポートフォリオの語源
英語の『portfolio』(ポートフォリオ)は、イタリア語で札入れ(財布)のことを意味する『portafoglio』(ポルタフォリオ)が語源であるとされています。『porta』は持ち運ぶ、『foglio』は紙や紙幣といった意味です。
ポートフォリオとは、そもそも『書類を持ち運ぶための入れ物』という意味があります。つまり、単にファイルされた書類やバインダーのようなものではなく、『綴じる前の書類を入れるケース』というような意味合いがあるのです。
ポートフォリオで伝えたいこと
ポートフォリオを作成する前に、ポートフォリオで何を伝えたいかを明確にする必要があります。伝えたいことをはっきりさせておけば、見た人に伝わりやすくなり、単なる作品集以上の訴求力を持たせることができます。
仕事のスピードや整理する力
ポートフォリオで伝えたいのは、『スキル』『才能』『個性』の3つが基本です。しかしビジネスにおいてポートフォリオを用いることで、仕事の早さや情報整理能力もアピールすることができます。
ポートフォリオで3つのポイントを伝えるには、掲載する作品の良し悪しだけでなく、作品の見せ方や順番、説明の仕方を工夫することが重要です。相手が一緒に仕事をしたいと思わせる仕事のスピードや、情報整理力もアピールできるものにしましょう。
論理的説明や伝達力
ポートフォリオを通じて、論理的な説明能力や伝達力をアピールすることもできます。そのためには、ポートフォリオの情報を分かりやすく整理し、どのように配置すれば伝わるかを考え、一つ一つのデザインに意味を持たせることが重要です。
実際の仕事では、さまざまな場面でプレゼンテーション能力が求められます。それに応えられるコミュニケーション能力や伝達力があるかどうかを見られるのが、ポートフォリオの1つの役割でもありますので、ただの作品の羅列にならないよう注意しましょう。
積極性や熱意
ポートフォリオと言えど、作った人の熱い思いは伝わるものです。見る人を特定のターゲットに絞り、ターゲットを想定した作品を入れ込むことで、積極性や熱意をくみ取ってもらえるでしょう。
就職活動などでは志望する会社の業務内容や業績を調べ、社風に合った作品を多くポートフォリオに入れることが、熱意を伝えるのに効果的だと言えます。
なぜポートフォリオサイトが重要か
ポートフォリオサイトは、自分の過去の作品やスキルをアピールするためのものです。なぜ重要なのか考えてみましょう。
自身を知ってもらう道具
ポートフォリオサイトは、自分のことを相手に伝えるための重要なツールです。特にデザインや写真、イラスト、Webサイトなどは、口頭では説明しづらく、見てもらうのが一番早く説得力もあります。
ただし、ただ作品を並べるだけではポートフォリオサイトとして適切ではありません。より見やすく、高いクオリティで、プレゼンテーション能力までアピールすることができるのがポートフォリオサイトなのです。
そのために、カテゴライズや論理的な説明ができる構成にして、作品を制作したプロセスやコンセプトまで明確に伝わるように、こだわりのあるものにしましょう。独りよがりにならず、第三者の視線で作ることも忘れてはなりません。
高評価のポートフォリオとは
見た人の心を掴むポートフォリオとはどのようなものでしょうか。それは、収録されている作品自体の魅力と、ポートフォリオサイト自体の魅力の2つのポイントがあります。
まずポートフォリオは作品の質が大切です。作品を見ることで、その人の才能や能力が分かるからです。サイト自体が素晴らしくても、中身の伴わないポートフォリオでは評価を上げることはできません。
そして、作品と自分の魅力を相手に伝えるために、ポートフォリオサイトの企画力、構成力が必要になります。良い作品群があったとしても、ただ羅列しただけで、コンセプトもなくバラつきがある状態では、プレゼンテーション能力がないように見えてしまいます。
収録作品自体の魅力と、サイト自体の構成の両方をしっかりと整えることで、評価の高いポートフォリオサイトになるのです。
ポートフォリオサイトの作り方
相手に伝わるポートフォリオサイトを作るためには、ある程度の時間をかけて作業しなければなりません。どこから始めたらよいのか、どの作品をピックアップすべきなのか、どのくらいの数を掲載すべきなのかを解説します。
作成フロー
ポートフォリオの基本的な作成フローは以下のとおりです。
- ポートフォリオのテーマを決める
- 掲載する作品を選ぶ
- 全体の構成を決める
まずテーマを決めたうえでポートフォリオを作ることが大切です。何のためのポートフォリオなのか、誰に向けて作るのかによって、選ぶ作品や構成が変わってきます。
掲載する作品を選ぶ段階も重要です。後から掲載したい作品や、追加で作りたいものが出てきた場合、すでに作りかけているポートフォリオに追加するのは大変な作業になるからです。
テーマに沿った作品をじっくり選び、とりこぼしのないよう進めていきましょう。
記載すべき項目
ポートフォリオには決まった体裁がないだけに、記載する項目は慎重に吟味していかなければなりません。
メインビジュアルになるものは、ポートフォリオ全体の顔ともいうべきものですから、自身の能力が一目で分かるものにしましょう。作品に記載すべき項目は、以下のとおりです。
- 作品名
- 作品のコンセプト
- 工夫した点
複数人で作品を作った場合は、自分がどの過程を担当したのかも明記しましょう。
作品の順番と作品数
ポートフォリオに掲載する作品数は多くとも20個程度に留め、説明を丁寧に入れましょう。作品数を多くするより、一つ一つの作品の魅力をじっくり伝える方が訴求力が高くなります。
ピックアップした作品を載せる順番ですが、まずはメインになるものを選び、選んだ作品をカテゴライズしましょう。見せ方によって相手の感じ方が変わります。
自分のテイストを見てもらうためにどのような順番で見せたらいいのか、プレゼンテーション能力を問われていると考えて慎重に練りましょう。
イラストレーターの場合のポイント
イラストレーターになりたい、イラストレーターとしてフリーランスで食べていきたいという人が作るポートフォリオは、どのようなものにしたらよいのでしょうか?デザインと盛り込みたいポイントを、参考例を見ながら解説します。
デザインのポイント
イラストレーターが仕事のために作るポートフォリオは、出版社や編集担当者に訴えるポートフォリオでなくてはなりません。
自分の好きなもの、自分の得意なものを並べただけの単なるイラスト集では、その出版社や雑誌に合わない可能性もあります。ポートフォリオは自分のスキルや才能を決められた枠の中で表現するものなので、その中で最大限のパフォーマンスになるような企画・構成の力が必要なのです。
見せる相手にマッチしたポートフォリオになるよう、デザインの吟味はしっかり行いましょう。
強みを盛り込む
多数のポートフォリオを見る担当者にアピールするには、掲載する作品が多すぎると逆効果です。多くても20点程度に絞りましょう。相手のテイストに合い、かつ自分の強みが出ている作品に厳選してください。
作品は2年以内のものにし、メインのイラストとは違うジャンルのものを数点ずつ選びます。『幅が広い』『こんなタッチの絵も描ける』というのはイラストレーターとして強みになりますので、同じようなイラストを並べるよりアピールできます。
一つの表現にこだわらず、ポートフォリオに多くの表現を盛り込みましょう。
ポートフォリオサイトの参考例
ポートフォリオは履歴書以上に重要なものです。どのようなポートフォリオサイトがよいのか、参考にできるものを紹介します。
イラストレーター兼アニメーターさらえみ氏のポートフォリオサイトは、ファーストビューで自身の魅力を伝える構成になっており、同時に実績やプロフィールも確認できるようになっています。
興味を持ったユーザーを詳細情報へ誘導するしくみのほか、ブログなどのコンテンツの配置も的確です。
カッピー18氏のポートフォリオサイトは、キャラクター、印刷物、ホームページ制作、広告漫画と幅の広いサービス提供が分かりやすく掲載されています。
特筆すべきは、トップページだけでどのような分野の受注ができるかが伝わることです。制作実績も見やすい仕掛けになっており、依頼したい内容の検索がしやすくなっています。サイト内に施された仕掛けにより、的確に受注につなげるポートフォリオサイトです。
エンジニアの場合のポイント
エンジニアの場合も、ポートフォリオサイトは大いに役立つツールです。自分の才能やスキルを売り込むために、どのようなポートフォリオ作りをしたらよいのでしょうか。
デザインのポイント
エンジニアがポートフォリオサイトを作るのは、自分の強みをアピールし、成果物を見せてスキルを示すことで、分かりやすく自分の価値を表現するためです。
他のエンジニアとの差別化を図るためにも、使える言語をアピールするだけでは不十分です。最終的な成果物を見せることで採用担当の目にとまるために、ポートフォリオサイトが利用されます。
ただし、情報更新の早い世界なので、常に更新するよう心がけましょう。情報が古いと担当者に熱意が伝わらず、またスキル自体も疑われかねません。
強みを盛り込む
成果物以外にも盛り込みたい内容は、プロフィールやスキルセット、過去の成果物へのリンク、問い合わせ先などです。しかし、自分の強みを盛り込みたいなら、このポートフォリオサイトを誰に見せるのかターゲットを明確にしましょう。
ターゲットが明確になれば強みをアピールしやすくなります。自分の得意なことや好きなことが、見た瞬間に分かるような成果物を盛り込んでおきましょう。
ポートフォリオサイトの参考例
それでは実際に、エンジニアのポートフォリオサイトの参考例を見てみましょう。
『WEB上で動くグラフィック』をコンセプトに作られたKeita Yamada氏のポートフォリオサイトでは、作品を順に公開するだけでなく、スクロールやオンマウス時に独特の表現を用いることで自身のセンスや技術を的確にアピールしています。
Webエンジニアとしての実力もさることながら、細部までこだわりを感じるコンテンツの内容が魅力的です。
Webデザイナーであり、マークアップエンジニアでもあるKUON YAGI氏のポートフォリオサイトも参考になります。コンテンツを移動するたびにタイトルが異なる出現をする仕掛けや、センスを活かした表現が特徴的です。
デザインとエンジニアリング、どちらも行うという強みを存分に表現しています。
無料で使えるおすすめの作成サービス
ポートフォリオサイトを作成するには、どのようなツールを使用すればよいのでしょうか。
Webエンジニアであれば自分で一から作ることが大切ですが、サイト制作の知識がない人は、無料で使えるポートフォリオサイト作成サービスを利用するという方法もあります。おすすめの無料サービスを紹介しますので参考にしてみてください。
簡単に作成できるsalon.io
『salon.io』は、ドラッグ&ドロップだけでポートフォリオサイトが作れるという初心者にも嬉しいサービスです。3ページまで無料で作れますが、それ以上の作成や、独自ドメインの取得は有料になりますので、料金をよく確認してください。
コードの知識はまったく必要ありませんが、HTMLとCSSでのカスタマイズも可能です。
テンプレートが豊富なStrikingly
直感的に使えて、シンプルでスピーディな無料サービスです。GoogleフォームやSound Cloudといったアプリが使え、スマホで見るための表示も自動でしてくれます。
テンプレートのカテゴリは6種類あり、自分を最大限にアピールするための選択肢が広いのも特徴です。慣れれば1時間程度で作成することもでき、ポートフォリオサイトを初めて作る人にも向いています。
シンプル操作のformat
海外サイトなので英語表記ですが、操作はシンプルで簡単なので初心者でもおすすめのサービスです。テンプレートが美しく、サイト制作の知識がなくても魅力的なポートフォリオサイトを作れます。
14日間の無料期間が利用できるので、まず無料で試作してみて、有料でも使用するかどうか確かめることができます。
ソーシャル機能充実のJAYPEG
自分のポートフォリオを作って投稿できるWebサービスです。自分だけでなく、投稿されている作品を見ることもできるので、クリエイター同士のソーシャルサービスとも言えます。
作品を投稿すると自分専用のポートフォリオページができるというスタイルなので、同時に多くのクリエイターたちの作品を見ることもできます。クリエイター同士の人脈を築きたい場合にも有効なツールです。
まとめ
ポートフォリオサイトは、自身の『才能』『スキル』『個性』をアピールするのに必要な、自分を売り込むためのツールです。単に作品を並べるだけではなく、企画力やプレゼンテーション力をもアピールできるので、クリエイターやエンジニアを目指すなら作ることをおすすめします。
ポートフォリオを見ただけで、自分がどのような人間であるかが相手に伝わるようなサイトが理想です。ポートフォリオサイトを作る時のコンセプトの参考にしてみてください。