ユーザビリティテストとは
インターネットで、あるサイトにたどり着いたとき「見やすいな」と思うものとそうでないものがあるでしょう。これはUI(ユーザーインターフェース)や、UX(ユーザーエクスペリエンス)の質の良しあしに原因があります。
質の高いUIやUXをデザインするために必要な調査方法の一つが、『ユーザビリティテスト』なのです。
ユーザー心理と課題を見つける手法
サイトを訪れる人は、そのサイトが扱うテーマや商品に興味がある人たちです。つまり、どんな人にも使いやすいデザインを目指すのではなく、興味を持って集まるであろう特定の人たちに使いやすいデザインにするべきです。
ユーザビリティテストでは、その特定の人たちに実際にサイトを利用してもらい、使いやすさはどうか、問題点はどこにあるのかなどをチェックします。
サイトデザインにおける課題の発見には、アクセス解析なども有効です。そこで分かった問題点を「なぜそうなるのか?」といったユーザーの心理にまで掘り下げて調査できるのが、ユーザビリティテストを行うメリットです。
ユーザビリティテストが必要な理由
制作者が自分の作ったサイトをチェックしようと思っても、どうしてもデザイナー視点から見てしまうことになる場合が多いです。そのため、ユーザビリティテストは、客観的にサイトのユーザー満足度を調査するのに有効な手法といえます。
また、ユーザー視点から見た問題点が分かったとして、自分の意見のみでチームメンバーの理解を得るのは難しいでしょう。実際にターゲットとなる複数のユーザーからの意見があれば、改善すべき点を提案したときの説得力が増します。
ユーザビリティテストの種類
ユーザビリティテストは社内の人間で行ってもよいのですが、社内にそのサイトのターゲットになる条件を満たした人間がいないこともあります。その場合、外部のユーザーに依頼することになるでしょう。
ユーザビリティテストには三つの形態があります。次に、実際にどんな方法があるのか確認していきましょう。
直接ヒアリングを行う対面型
最も本格的で信頼性のあるデータが取れるのが『対面型』です。ユーザーには1:1で熟練のコンサルタントが付き、ユーザーの行動を観察し、細かな点までヒアリングしていきます。調査に必要なユーザーは3~5人が適当とされています。
対面型のテストでは、ユーザーがどこを見ているか視線を追う『アイトラッキング』と呼ばれる視線分析装置を用いることもあるでしょう。とても厳密で良質なデータが得られる手法です。
しかし、効果的なユーザビリティテストである反面、外注費用が高額になり、テスト期間が数カ月に及ぶこともあるといったデメリットが挙げられます。
自宅で行ってもらうオンライン型
対面型よりも気軽に行えるのが、『オンライン型』のテストです。ユーザーには操作する際に感じたことを口に出してもらい、その様子を録画します。または思ったことをメモしてもらう方法もあります。
実際に対面することはないため、対象となるユーザーは全国から募ることができることが特徴です。事前に設計したタスクに沿って調査してもらうため、直接ヒアリングはできませんが、それなりに有効なデータが取れます。
「実際のターゲットになりうるユーザーか」という絞り込みが粗いというデメリットはありますが、数万円の費用で実施でき、数日でテストができる点が魅力の手法でしょう。
身近な人に依頼する簡易型
最も気軽に行えるユーザビリティテストが『簡易型』と呼ばれる方法です。家族や友人、同僚などに依頼して調査を行います。調査設計などの事前準備はせず、家や職場でWebサイトを利用してもらいます。
三つの方法のなかで最も低コスト、または無料で行えるテストです。簡単な手法ではありますが、外部の人間に操作してもらうことで、意外にも多くの課題が発見できるものです。
ただし、ターゲットとしての条件がそろっていないので、得られたデータの信頼性はさほど高くないでしょう。
ユーザビリティテストの方法
ユーザビリティテストは、正しく行うことで有効なデータを得て、そのデータをもとにプロトタイプの改善していくために行います。この項ではテストの準備・実施・分析の流れを確認していきましょう。
準備を行う
テスト環境とテスト内容の事前準備を行います。テスト方法によって異なりますが、ターゲットとなるユーザー・場所・必要機材など環境の準備しましょう。また、サイトの使いやすさをチェックできるタスクと質問の準備をします。
まずは、ユーザーが「こういう操作をするだろう」「こう思うだろう」と仮説を立てておきましょう。実際にユーザーが仮説どおりに行動するかどうかで、設計側とユーザー側の認識のズレを確認できます。
また、ユーザーにどんな操作をしてもらうのか、タスクの設計をしておきましょう。『新規登録』や『ログイン』など、サイトを訪れた人に実行してもらいたいタスクをいくつか考えておきます。
最後に、タスクに対する質問を1~3個くらい用意しておきましょう。質問を作る際に重用なのは、『はい・いいえ』の単純回答ではなく『どう感じたか』という回答が得られるような質問にしておくことです。
テストを実施
いきなり本番のテストを行うとうまくいかないことがあります。本番前に、社内でパイロットテストを行うといいでしょう。パイロットテストで問題があれば、テスト方法の見直しや改善が必要です。
本番では、準備したタスクに沿ってユーザーに操作してもらいます。テスト中には、ユーザーの発言を記録し行動を観察しましょう。特定の操作中に「手が止まっていた」「迷っていた」などの様子を確認します。
質問役は、準備していた質問以外にも気になることがあればユーザーに尋ねるといいでしょう。また、新たに思いついた質問事項は、次回のテストで正式な質問にできるようメモを取っておきます。
結果を分析する
テストが終わったあとは、チーム全体で情報を共有し、結果を分析します。始めに準備したタスクをユーザーが達成できたかどうか確認しましょう。
たとえば新規登録がタスクにあれば、ユーザーのうち何人が新規登録できたのか、登録するまでにかかった時間はどのくらいかなど、サイトデザインの有効性や効率を出します。
また、ユーザーの回答から、サイトの満足度がどのくらいであったかを分析しましょう。これらの結果により、プロトタイプをどう改善していくか決定します。
まとめ
サイトを制作する側だけでユーザーの心理を想像するには限界があります。ユーザーの心理がわかればサイトの改善点も見えてくるはずです。
ユーザビリティテストには、対面型・オンライン型・簡易型の三つの方法があります。費用や期間を考え、適した方法でテストを行うことをおすすめします。ユーザー視点に立った使いやすいサイトを目指し、成功例に続きましょう。