ユーザービリティーとは何か
ユーザビリティとは成員やサービスの『使いやすさ』を意味しますが、ここではWEBサイトに絞ってお伝えします。私たちがWEBサイトに訪れた際、単純にそのサイトが使いやすいかどうか、その判断指標となるのがユーザビリティです。
使いやすいサイトはいつ訪れても気持ち良く、ストレスを感じることなく利用できるのに対し、使いにくいサイトは一瞬で離脱してしまいます。サイトの設計や使い勝手がユーザビリティを満たしてることは、そのWEBサイトの最低限の生命線だとも言えます。
一般的な使いやすさとは少し異なる
ユーザビリティとは『使いやすさ』を意味すると説明しましたが、これは一般的な使いやすさとは若干ニュアンスが異なります。Webサイトに訪れる人には、サイトごとに様々な目的があります。訪れる人ごとに使いやすさは多少異なってくるのです。
ユーザーそれぞれがサイトで自分の目的を達成しやすいかどうか、ここがWEBサイトのユーザビリティに直接関係してくるのです。
ユーザービリティーが高い、低いとは
ユーザビリティが高い、低いと表現することがあります。ユーザビリティが高いとは、そのWEBサイトが『使いやすい』ことであり、実際に使用して使い勝手がいいことを意味します。
一方でユーザビリティが低いとは、WEBサイトが『使いにくい』ことであり、使い勝手がよくないことを意味します。その製品やサービスがユーザー目線で作られていることが、ユーザビリティを満たす判断基準の一つだと言えます。
アクセシビリティーと何が違うのか
ユーザビリティは、アクセシビリティと区別する必要があります。アクセシビリティとは、訪れた人がその場所やサイトにアクセスしやすいかどうか、言い換えればゴールにたどり着きやすいかどうかの判断基準を意味します。
どんな人がどのような環境にあっても、平等にアクセスが可能でありサービスを利用できやすい状態を『アクセシビリティが高い』と表現するのです。
2つの代表的な定義
ユーザビリティには様々な解釈がありますが、大きく分類すると、2つの定義に集約されています。以下それぞれの定義を紹介します。
国際規格 ISO9241-11
1998年に定められた国際規格ISO9241-11では、ユーザーの満足度や行動によるユーザビリティの規定や評価について説明がなされています。
ここでは、ユーザビリティとは
『特定の利用状況において、特定のユーザーによって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、ユーザーの満足度の度合い』
と定義されています。
利用状況やユーザーを特定し、サービスの有効さや効率、ユーザーの満足度(顧客満足度)という3つの要素を基準にすることで、ユーザビリティを定義しているのです。
ヤコブ・ニールセン博士による定義
他方ユーザビリティに関する第一人者である、デンマーク人のヤコブ・ニールセン博士によれば、ユーザビリティは5つの構成要素によって成り立っていると言います。
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学習しやすさ システムは、ユーザーがそれを使って作業をすぐ始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない。
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効率性 システムは、一度ユーザーがそれについて学習すれば、後は高い生産性を上げられるよう、効率的な使用を可能にすべきである。
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記憶しやすさ ユーザーがしばらくつかわなくても、また使うときにすぐ使えるよう覚えやすくしなければならない。
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エラー発生率 システムはエラー発生率を低くし、ユーザーがシステム試用中にエラーを起こしにくく、もしエラーが発生しても簡単に回復できるようにしなければならない。また、致命的なエラーが起こってはいけない。
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主観的満足度 システムは、ユーザーが個人的に満足できるよう、また好きになるよう、楽しく利用できるようにしなければならない。
ヤコブ・ニールセン博士は、ユーザビリティを満たす要素を5つあげることで、ユーザビリティをより厳しく定義しています。国際規格ISO9241-11と比較すると、より一層絞り込みがなされておりユーザーの立場に立った定義付けになっています。
いずれにも共通しているポイントは『満足度』です。利用者がそのサービスを利用して過不足なく満足することは、ユーザビリティに欠かせない要素だと言えます。
ユーザービリティの評価方法
そのサービスがユーザビリティを満たしているのかを判定する方法として、『ユーザビリティテスト』があります。これは、サービスのどの箇所にどんな問題があるのか、その原因を探るために実施される評価テストです。
サービスに対する評価は、制作者側の主観に偏ってしまう場合があります。具体的な評価基準を定め、あくまで客観的な視点で必要な要素を満たしているのか判断します。その結果ユーザビリティの有無を判定するのが、ユーザビリティテストなのです。
ユーザービリティテストの内容
該当サービスのユーザビリティに関する問題点を具体的に把握するために、ユーザーに商品を実際に使用してもらうことでその課題や問題となる原因を探っていきます。
ユーザーがサービスと対峙する中で発するする言葉や行動、反応を観察しながら、製品が持つ問題点を抽出していきます。
ゲイズプロット、ヒートマップでの分析
ユーザビリティテストでは、ユーザーの製品に対する視線の動きを追跡することで、ユーザーが見ている箇所や見いていない箇所を分析する『アイトラッキング調査』があります。
その調査の中でも、視線の順序や注視時間をウェブ画面上に表示する『ゲイズプロット』と、視線の注視時間を赤・黄・緑と色別にサーモグラフ化して、視覚的に分かりやすく計測する『ヒートマップ』が活用されています。
いずれの調査手法も、サービスが有する問題点をビジュアル的に把握できることから、ユーザビリティテストで頻繁に活用されています。
ウェブユーザビリティ評価スケール
ユーザーアンケートの結果からユーザビリティの有無を判定する『ウェブユーザビリティ評価スケール』も、ユーザビリティテストに利用されます。
この評価法は、『好感度』『お役立ち感』『信頼性』『操作の分かりやすさ』『構成の分かりやすさ』『見やすさ』『反応の良さ』この7つの因子から構成されています。
日本語WEBサイトの評価データを元に制作されたものなので、日本人に適した評価法だと言えます。
ユーザビリティを高めるには
ユーザーにサービスを積極的に利用してもらうためには、ユーザビリティを高める必要があります。顧客目線に立ち、改善を繰り返しサービスの使い勝手を良くしていくことが、ユーザビリティの向上につながります。
しかし一概に使い勝手を良くすると言っても、明確な作業指針がなければユーザビリティを高めることができず、課題解決には至りません。
一体どうすればユーザビリティを高めることができるのでしょうか?以下、その指針となる具体的な方法について解説します。
シンプルを心掛ける
使い勝手の良さは、言い方を変えると『シンプルさ』でもあります。WEBサイトがシンプルであることによってそのサイトが提供するサービスが分かりやすくなり、ユーザーにとってストレスなくサイトを利用できるのです。
ユーザビリティを高めるためには、シンプルを心がけると良いでしょう。複雑さは必要とされていないのです。ウェブユーザビリティ評価スケールの7つの因子全てに当てはまる基本的な要素が、シンプルさなのです。
ペルソナの設定
ユーザビリティは、利用状況やユーザーを特定し利用者の満足度を図っています。さらにユーザビリティを高めるためには、具体的なターゲットユーザー像(ペルソナ)を設定し、制作者側がその人に感情移入しながら行動や背景を探っていくことが重要です。
徹底的にペルソナ像を絞り込み行動分析していくことによって、ユーザーが何を考え何を求めているのかが浮き彫りにされるのです。徹底してユーザー目線に立ち開発を進めることが、ユーザビリティあふれたプロダクトを開発することにつながるのです。
行動シナリオの設定
ペルソナを絞り込んで具体的にイメージした後は、ペルソナの行動シナリオを設定します。
実際にペルソナがサービスを利用するシーンだけでなく、いつどこで、どんなタイミングでそのサービスに出会ったのか、またはそのサービスを介して、具体的にどのようなアクションを起こしたのか具体的に見えてきます。
ペルソナの行動シナリオを具体的に設定することにより、ユーザーが求めているものを明確化することができ、ユーザビリティの高い製品開発が実現するのです。
ユーザビリティの高いメニュー作成
目的を持ってWEBサイトに訪れてくれたユーザーが、ストレスなくスムーズに求める場所へたどり着くようにするためには、ユーザーの意思や行動に配慮したナビゲーションが必要になります。
ユーザビリティを満たすナビゲーションを実現するためには、WEBサイトの中の主要なページにたどり着くためのメニュー作りが必要不可欠です。
ユーザビリティの高いナビゲーションメニュー制作のポイントについてお伝えします。
目的を見つけやすいグローバルナビ
グローバルナビゲーションの実効性を高めるためには、とにかく分かりやすいことが重要です。メニュー項目は多く作りすぎず最高で9つまでにおさえて、記憶にとどめやすい項目設定にしましょう。
メニューの構成も重要です。メニューを具体的なユーザー層ごとに分類することで、それぞれの目的に沿ったナビゲーションを実現できるようになります。その結果、幅広い層の利用者のユーザビリティを高めることが可能になるのです。
固定メニューの高さに注意
スクロールに対して追いかけるように表示される固定メニュー(グローバルナビゲーション)を設置する場合、WEBサイト内における高さの設定は大切です。
WEBサイトはパソコンやスマートフォン、タブレットなど様々な端末の画面で見られることから、サイト情報をシンプルにまとめて、どの端末でも見やすくなる高さを意識して設定する必要があるのです。
ユーザビリティの高いWebフォーム
WEBフォームの設計は、ユーザビリティと深い関わりがあります。エントリーフォームを最適化するために、制作者側が押さえるべきポイントがいくつもあるのです。ここではその中でも大切なポイントに絞って解説していきます。
label要素を正しく使おう
エントリーフォームを最適化するにあたって、labelを正しく使うことが大切です。
labelとは、フォームの中の項目を書くためのHTMLコードです。このlabelが正しく設定されていなければ、文字部分のクリックに対してサイトが反応せず、ユーザーは何度も入力する負担を強いられます。その結果、ユーザビリティに欠けるフォームになるのです。
使い勝手の良いフォームには必ずlabelが正しく設定されています。最適なフォームはサイト全体のユーザビリティに関わるので、labelを忘れずに設定してサイトを使いやすくしましょう。
placeholder属性を安易に使用しない
placeholder(入力フォーム内に表示される説明)を頻繁に利用すると、逆に利用者を戸惑わせてしまい、ユーザビリティが低下してしまうことがあります。placeholderは短時間で消えてしまうので、ユーザーに対するストレスになるのです。
また、入力ミスによるエラーが表示されても、次にどう行動すればいいのか伝えることがなく、その結果ユーザーに混乱を与えてしまうケースも頻繁に見受けられます。
どんなに高度な技術を使ったサービスでも、顧客の気持ちを無視して作られた物に人は集まりません。徹底的に利用者目線に立ったプロダクト設計が、ユーザビリティの向上につながるのです。
確認画面は誤解されない表記をする
せっかくフォーム画面を入力し最終ページまで誘導できたユーザーが、確認画面で離脱してしまうケースが多々あります。入力がすでに完了したと誤解してしまい、途中でページを閉じてしまうのです。
まだ入力が完了してないことをユーザーにはっきり認識させるためには、いくつかの施策が必要です。
冒頭で確認ページであることを大きく表示することも大切です。ユーザーの現在地を示す全体の地図を表示して、まだゴールに達してないことが理解できる細やかな工夫が必要になるのです。
スマホ向けのデザイン
今や日本国内における国民のスマートフォン普及率は、80%を超えるという統計結果が出ています。
ネット上にあるサイトの多くがスマホで閲覧されていることから、プロダクトのユーザビリティを高めるためには、スマホ向けのデザイン設計はもはや必須だと言えます。
優先順位を決めてコンテンツを配置
スマートフォンの画面では、一度に表示される情報量に限りがあります。従ってコンテンツをどの順番で表示させるのか、その優先順位は綿密に計算して決定する必要があります。
WEBサイトを訪れたユーザーが一番見たいものはどんなコンテンツなのか。どこにどんな情報が配置してあり、どのように行動すればそこにたどり着けるのかを事前に把握すると良いでしょう。
スマホサイトでは、一目でユーザーに分かるような細やかな配慮が求められています。
タップしやすい要素のサイズ
スマホは画面の大きさがパソコンに比べて狭いことから、文字コンテンツが読みにくくユーザーがストレスを感じてしまうことがあります。
スマホでは画面上をタップして先に進むことから、文字サイズはユーザーがタップしやすく見やすい大きさを意識して制作するようにしましょう。分量もPCサイトと比較して少なくすることが大切です。複雑すぎるサイトでなく、あくまでもシンプルに作るよう心がけましょう。
参考になる書籍
ユーザビリティの向上は尽きることがありません。明確な正解がないユーザビリティだからこそ、一見すると難解に思えてしまい迷路にはまる危険すらあります。
ここでは、ユーザビリティについて分かりやすく解説している参考書籍を紹介します。
ユーザービリティーエンジニアリング
ユーザビリティ工学を専門とする、日本の第一人者である樽本徹也氏が書いた著書で、初版から累計1万部を超える代表的なユーザビリティの教科書です。
現場でも実践できる内容が豊富に掲載されており、必要とされる基礎知識や実際の作業の進め方など、実践的な内容が豊富に詰まった一冊となります。
ほんとに使える ユーザビリティ
豊富な事例をもとにして、ユーザビリティが抱える課題や問題点を的確に取り出し、解決に至るまでのプロセスを分かりやすく解説した実践書です。
巻末には、著者のエリック・ライス氏が実際の現場で直面した問題をもとにした課題が用意されており、ワークショップや勉強会でも活用することができる重宝する一冊です。
まとめ
ユーザビリティは、製品の使い勝手をよりよくし、ユーザー満足度を高めるために欠かせない要素です。しかし、ユーザビリティに絶対的な解答はなく、プロダクトやユーザーによっては求めるものが大きく変わる場合もあります。
ユーザビリティの向上を目指すためには、時代の変化やコンテンツの潮流を素早く感じ取り、環境に合わせて製品開発に取り組むことが大切になるのです。