タイポグラフィーの基礎知識
文字もデザインの一部であり、フォントひとつ違うだけでデザイン全体の印象が大きく変わるほどの影響力があります。タイポグラフィーとは、どういうものなのでしょうか?
文字の配置やデザイン要素とする手法
タイポグラフィーとは、テキスト(活字)をフォントや大きさ、文字の組み方や行間といったデザインの構成上のルールに従って、文字の見やすさや美しさを表現する手法です。
タイポグラフィーの構成によって、文章が読みやすいだけでなく、イメージや雰囲気を伝える情報を組み込むことができるようになります。
現在では文字をデザインとして扱い、それ自体がアートのような表現になっているものも多く見かけます。
もとは活版印刷術の一つ
活字を並べて版を作り、印刷をするのが活版印刷ですが、タイポグラフィーは元々この印刷術の一つでした。
紙に無駄なく文字を印刷するため、効率よく、見やすく読みやすくするにはどうしたらよいか考え、タイトルと見出し、本文で文字のサイズやフォントを変えたり、レイアウトをしたりして、印刷物をより読みやすく、美しくしたのです。
タイポグラフィーは活版技術からデザインとして進化し、今ではいろいろな分野で活用されています。
広告など様々なシーンで使われる
広告などのデザインは、ビジュアルで人の目を引き、注目を集めて商品購買につなげることが大切です。
そこで、文字によるメッセージ性と視認性を両立させたタイポグラフィーの手法でデザインをし、プロモーションとして成功している広告も多数あります。
すべてが文字であるのに一見すると絵のようなデザインは、近くで見ることでより面白いという特徴も持っています。
タイポグラフィーは、アイデア次第で優れたデザインになりますので、世界中の広告や、動画などにも使われているのです。
タイポグラフィーの種類と効果
タイポグラフィーは進化しながら、時代とともに、さまざまな場面で活用されています。タイポグラフィーにはどんな種類や効果があるのでしょうか。
タイポグラフィーの種類
印刷の場合、文字の太さ・拡大縮小・書体・色などの変化で文字を表現していますが、そこに『動き』を加えることで、タイポグラフィーは動画での表現も可能になりました。
これを『キネティックタイポグラフィー』と呼び、映画のタイトルやテレビCM、インターネットの動画などで用いられている表現方法です。
印刷物では表現できなかった動きが加わることで、タイポグラフィーはさらに進化し、スピードや振動、動きの変化などで、見る相手にさまざまなイメージを伝えることができるようになりました。
視覚的に強いメッセージを伝える
今やWebサイトは、企業や個人にとって、なくてはならない媒体です。
タイトルや一番伝えたい言葉は、文字で表現されます。文字をより視覚的に強く伝えるためには、タイポグラフィーを意識した上でデザインすると、より読み手に伝わり、印象づけることができるようになります。
ブログなどで、重要なポイントを赤字や太字にして強調したりしているのも、実はタイポグラフィーの手法です。しかし無意識に行うよりも、タイポグラフィーの手法を知った上でデザインをした方が、よりメッセージを伝えやすくなります。
タイポグラフィーの例
それでは、タイポグラフィーの具体的な例を見ていきましょう。二つの例を紹介しますので、デザインとしてのタイポグラフィーがどのように機能しているか、参考にしてください。
株式会社メタップス
株式会社メタップスの企業サイトにアクセスすると、まずキャッチコピーの英文字が浮かび上がってきて目を引きます。文字の白とバックの赤で文字を際立たせ、文字にかかる薄い幾何学的な球体と無数の点が動くことで注目させています。
書体はシンプルですが、しっかりキャッチコピーを読ませる意図が見え、余計な説明文がないことが特徴的です。ページをスクロールすると、その下に企業理念が表示され、先のキャッチコピーの言わんとしていることがよくわかる仕掛けになっています。
シンプルなだけに、タイポグラフィーの手法が活きる例であるといえるでしょう。
We Make Awesome Sh
黒バックに白抜きの手書き感あふれる文字が印象的なサイトです。手書きのタイポグラフィーとデジタルが融合しているデザインと言えます。
デジタルコードで構築されていながら、メインビジュアルの大きな文字と、各ページの見出しに手書き風のタイポグラフィーを用い、見る人の好奇心をそそるデザインです。白と黒の対比を活かして、遊び心のあるWebサイトに仕上がっています。
手書き風のタイポグラフィーを作ろうと考えているなら、参考にしてみてください。
タイポグラフィーの基本ポイント
では実際にタイポグラフィーを施す上で、必要不可欠な基本ポイントをご紹介しましょう。簡単なルールを押さえるだけで、見せ方がかなり違ってきます。
フォントや文字構造の理解
フォントとは、文字の形状を印刷したりパソコン上に表記したりするためのプログラムのことで、厳密には書体とは違うのですが、現在ではほぼ同義語として使われています。
同じ文章でもフォントが違えば、読みやすさや文面から受ける印象さえも変わってくるのです。タイポグラフィーで大切なことは、『揃える』ことですから、フォントの違いで揃え方も違ってきます。
これが『文字構造』と呼ばれるもので、明確なベースラインを持つ欧文に対して、文字によって上下左右にバラツキがある和文とは文字構造のバランスをよく見なければいけません。
図形や見え方についての理解
デザインの世界では、文字も図形として捉えることがあります。そこで問題なのが、人の目の錯覚です。○と□と△を並べると、□が一番大きく、△が一番小さいように見えます。
これをそのまま行揃えしてみると、文章がガタガタで読みにくいものになってしまうのです。さらに、和文の場合はひらがなと漢字では文字の密度が違うため、バランスよく揃えるのがより難しくなります。
書体デザイナーが文字の見え方や錯覚を考慮して緻密に設計したものがフォントであり、タイポグラフィーの原点ともいえる部分なのです。
配置の理解
タイポグラフィーで大切なのは『揃える』ことであると説明しましたが、これは人が整列したものを美しいと感じるからです。
文字も美しく配列・配置すれば読みやすく心地のよいものとなります。しかし日本語には横組み、縦組みがあるので、欧文のようにアプリケーションの行揃えだけではうまく配置できないことがあります。
アプリケーションにはガイドという便利機能もありますが、ガイドに沿ってきちんと配置したのに揃っていないように見えるのは、和文の持つ難点です。
文字の形によって揃えの微調整が必要になってきますので、遠くから見たり、他の角度から見たりして配置を考えていきましょう。
漢字やひらがな、アルファベットなどの考慮
日本語には、漢字・ひらがな・カタカナがあるだけでなく、縦書き・横書きという文化も存在します。実は縦書きは世界でも類を見ないほど珍しく、今や日本だけで使われている文字の組み方なのです。
漢字とひらがなが混在するだけでも大変ですが、縦組みの配慮までする必要があるため、和文のタイポグラフィーはより高度な調整が必要になります。特にひらがなは元来、縦書き文化の中から生まれたため、横組みにする時には注意してください。
タイポグラフィーは、文字によって組み方や見せ方のバランスを適切に選択することが必要なのです。
タイポグラフィーを用いたはんこも人気に
タイポグラフィーではんこと言われても、最初はピンとこないとは思いますが、名前をタイポグラフィーでデザインしたはんこが人気になっています。
タイポグラフィーはんことは
会社や銀行、役所など、印鑑は日本の社会生活に欠かせないものです。しかし、お洒落で人とは違う印鑑というのはなかなかありませんでした。
タイポグラフィーを用いたはんこは、名前をデザインして印鑑として表現したものです。デザインが個性的で美しいだけでなく、認印や銀行印としてもきちんと使えるはんこは、自分だけのシンボルとなります。
オリジナルデザインで押印しよう
自分だけの特別なはんこがあれば、ただの押印も楽しくなります。仕事で毎日使うなら、自分だけのオリジナルデザインではんこを作ってみましょう。
『OOiNN』では材質によって値段が異なりますが、1万円以内でグラフィックデザイナーが印面をデザインしてくれます。出来上がるまで自分の名前がどんなタイポグラフィーで表現されるのか、待っている間も待ち遠しい印鑑です。
まとめ
文字をデザインするタイポグラフィーは、知識があればデザインがより洗練されたものになります。基本は『揃える』ことですが、文字によって揃え方にも技術や手法があるので、アプリケーションの機能に頼らず、自分の目を育てていきましょう。
大人気のタイポグラフィーはんこも、毎日使うものにこだわりたい人におすすめです。名前をタイポグラフィーで表現することにより、自身の個性やイメージを手軽に表現できるでしょう。