F値の基礎知識
一眼レフカメラを購入すると、最初に悩む専門用語が『F値』という人も多いでしょう。レンズからカメラに入る光の量の調整によって、写真の仕上がりは大きく異なります。その調整をつかさどる機能の一つが『F値』です。
レンズは通常、複数の『羽根』と呼ばれる金属板が重なり合い、レンズに入る光の量を調節しています。その羽根が、中央の穴を大きくしたり小さくしたりする仕組みになっており、F値とはこの『穴の大きさ』を数値化したものです。
F値が実際にどのような効果をもたらすのか、みていきましょう。
光の入る量を調整する絞り
F値を学ぶ上で、さけて通れないのが『絞り』という言葉です。光の量の調整は、金属板の羽根が閉じたり開いたりする様子から『絞る』と呼ばれていました。
『絞り』はカメラへ取り入れる光を制限します。穴を大きいと、当然光をたくさん通すため、明度の高い写真になります。
つまり絞る幅(F値)を小さくするということは、『絞りを開ける=F値が小さい=穴を広げる=光が多く入る』という関係が成り立ちます。
最初のうちはこの言葉に慣れるまで時間がかかりますが、頻繁に使う用語なので、ぜひ覚えておきましょう。
段を変えるごとに光は2倍に
『F値』の数値の並びに注目してみましょう。F値は『F1.4・F2・F2.8・F4』と、規則性のない数値が難しいですよね。なぜ、このような数値の並び方なのでしょうか?
レンズを通してカメラに入る光の量は、絞り穴の『面積』でコントロールされます。F値はその穴の『有効口径』で、学生時代に習った円の面積の計算方法で求められます。
結果『F値×F値×3.14=光の量』という計算が成り立つため、F値の段(目盛り)を1段増やせば、穴の面積が2倍になるので、光の量も2倍に増やせるのです。
F値で変わる写真と比較
近代の一眼レフカメラは、F値をダイヤルで操作しますが、昔のカメラマンの写真などを見ると、リングを手で回す姿がよくみられますが、これは手の感覚で、金属板の『絞り(F値)』を変える作業です。
手の感覚で絞る作業は直感的でわかりやすかった反面、初心者にとっては非常に高いハードルでした。数値化されたことにより、だれでも気軽に一眼レフカメラの魅力に触れられるようになったのです。
F値を変えることで、写真にいろいろな変化をつけられるため、その方法を紹介していきます。
ぼける範囲が変わる
F値の最小値はカメラごと、レンズごとで違いますが、どのカメラも共通して『1番小さい設定値』を『開放F値』と呼びます。購入時の設定数値のまま撮影することも可能ですが、せっかくなので『ボケ写真』に挑戦してみましょう。
『F1.4~F2.8』は、写真にボケをわざと取り入れたいときのF値です。絞らないに等しい数値のため、カメラに取り込む光の量を最大限まで増量できます。結果、ボケの強い写真のほか、手持ちでの暗所撮影にも有効です。
明るさが変わる
写真の周辺部(主に四隅)の明度を落とす(暗くする)ことを『周辺減光』と呼びます。故意に行う場合もありますが、偶然なってしまう周辺減光を修正する場合にも、F値は手軽で便利な機能といえます。
F値をあげて、光を取り入れる量を減らすと周辺減光が改善されるので、明るさのバランスのよい写真になります。
解像度が変わる
小さなサイズの印刷や、オンラインでも小さければそれほど気になりませんが、ポスターのような大きさに拡大すると、解像度の違いは明らかです。
レンズのもっとも性能のよい部分は『レンズ中央』です。近年の高性能のレンズが多く発売されていますが、それでも中央と外側では、レンズの性能に違いが現れます。
F値を変え、レンズの外側を使わず中央部分だけを使って撮影することで、解像度の高い写真が手軽に撮影できるため、知っておくと便利な機能です。
被写体に合わせるおすすめのF値
カメラで撮影するには、当然『被写体』の存在があります。人物や風景をはじめ、無限の被写体に合わせてピントを瞬時に変えるのは、たとえプロであっても至難の技です。
被写体にピントが合う範囲は『被写界深度』と呼ばれます。ここからは、被写界深度や被写体による『おすすめのF値』を紹介していきます。
1つのものを撮りたいならF1.4~F2.8
光をたくさん取り入れることで、暗い場所で撮影する場合にも使える数値です。
光を取り入れる量を最大限に増やせるため、大きくボケを楽しみたい写真に最適なF値です。手ブレも少ないため、静物をアップで撮るときに試してみたい数値ではないでしょうか?
風景を撮るならF8
レンズの性能を最大限に引き出す値が『F8』といわれており、風景写真を撮るときに多くの人が使用する数値です。レンズの中央を平均的に使うため、解像度も高く、美しい写真を仕上げたい場合にも多用されます。
ただし、光を取り込む量が少なくなるため、手ブレを起こしやすいデメリットもあり、三脚を使用しての撮影をおすすめします。
夜景を撮るならF14~F22
レンズを限界まで絞ることによって、カメラに入る光を制限します。その結果、撮影できるのが『光芒』です。写真の専門用語ではありませんが、光が大きく放射線に伸びる状態を指し、夜景撮影の醍醐味ともいえます。
「写真の見た目を派手にしたい」「夜景の光芒を美しく撮影したい」場合には、大きなF値を試してみましょう。
まとめ
一眼レフカメラで理想通りの写真を撮るためには、シャッタースピードやISO感度など、さまざまな数値の組み合わせもありますが、『F値』の数値を変えるだけで、非常にバラエティに富んだ写真を撮影することが可能です。
被写体ごとに写真のボケを変えたり、解像度や明るさを変えたり、その変化は自由自在です。ぜひ自分にあったF値を知って、その効果を楽しみましょう。