UI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザー体験)を設計するUI/UXデザイナーの将来性は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める企業がデザイナーの不足をどれだけ感じているかと、AIの広がりで求人の条件がどう変わったかの2つから判断できます。画面を仕上げる作業はツールの進化で速くなりつつある一方、ユーザーの調査から仕様を決めるまでの判断を任せたい企業は少なくありません。IPA(情報処理推進機構)の企業調査と Offers に公開された正社員求人の本文を並べ、経験者のUI/UXデザイナーが次に伸ばしたい経験をまとめました。
UI/UXデザイナーの将来性は企業の人材不足から明るい
UI/UXデザイナーの将来性は、需要の面から見て明るいと言えます。IPAの企業調査では、DXに取り組む日本企業のうち、デザイナーが「大幅に不足している」と答えた企業が42.5%、「やや不足している」が18.5%で、合わせて61.0%にのぼりました(IPA『DX動向2025(データ集)』・2024年度調査・日本 n=1,186・合計は編集部の計算)。IPA が数えるデザイナーは、ビジネスとユーザーの視点から製品・サービスのあり方をデザインする人材で、UX/UI・サービス・グラフィックの3種類を含みます。
回答した企業の国 | 大幅に不足している | やや不足している | 不足の合計 |
|---|---|---|---|
日本(n=1,186) | 42.5% | 18.5% | 61.0% |
米国(n=391) | 10.0% | 22.3% | 32.3% |
ドイツ(n=366) | 19.1% | 25.4% | 44.5% |
出所: IPA『DX動向2025(データ集)』人材類型別の「量」の確保状況(国別)・2024年度調査・不足の合計は編集部の計算。
日本の不足の合計61.0%は、米国の32.3%やドイツの44.5%を上回ります。IPA は同じ資料で、日本では人材が全体的に不足しているなかでも、とくにビジネスアーキテクト・デザイナー・データサイエンティストが足りないと整理しました。
一方で、デザイナーを「自社には必要ない」と答えた日本企業も19.2%ありました(IPA『DX動向2025(データ集)』・2024年度調査・日本 n=1,186)。デザイナーを社内に置くかどうかは企業によって分かれており、デザイナーの不足を感じている企業が経験者の転職先の中心になると読むのが実態に近いでしょう。
Offers のデザイナー求人の約7割はUI/UX・プロダクト職
Offers に載るデザイナー職の求人では、募集の中心がUI/UX・プロダクトデザイナーです。IT プロダクト職の転職サービス Offers に公開された正社員のデザイナー職の求人のうち、タイトルにUI・UX・プロダクトデザイナーを含む求人は69.4%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・デザイナー職の正社員求人 n=134・2022年11月〜2026年9月公開・終了した求人を含む・2026年10月集計)。
残りはWebデザイナーやグラフィック・ブランドのデザイナーなどの求人です。画面とユーザー体験の設計を担う経験があれば、Offers に載るデザイナー求人の多くが応募の対象に入り、募集中の正社員求人は Offers で確かめられます。グラフィックやWebサイト制作のデザイナーとの違いを詳しく扱ったのが「UI/UXデザイナーとは?仕事内容や学習方法、他のデザイン職との違い」です。
AIの広がりで求人本文が生成AIに触れる割合は上昇
AIの広がりで、正社員求人の本文が生成AIに触れる割合は年々上がっています。Offers に公開された正社員求人全体では、生成AI(LLM・ChatGPT を含む)の語が本文に出る求人の割合が2023年の0.9%から2024年6.0%、2025年16.9%と上がり、2026年は9月30日までの公開分で34.4%になりました(Offers(株式会社overflow)調べ・各年に公開された正社員求人 n=681/1,424/658/508・2026年10月集計)。語が出るかどうかで数えたもので、会社の事業や製品が生成AIである求人も含む数字です。
求人の公開年 | 生成AIに触れる求人の割合 |
|---|---|
2023年 | 0.9% |
2024年 | 6.0% |
2025年 | 16.9% |
2026年(9月30日まで) | 34.4% |
出所: Offers(株式会社overflow)調べ・各年に公開された正社員求人の本文を語句で照合・2026年は途中集計・2026年10月集計。
UI/UX・プロダクトデザイナー職の求人93件に絞ると、AI製品の開発や事業の説明での言及も含めて、本文にAIの語がある求人は20件、生成AIの語がある求人は8件でした(Offers(株式会社overflow)調べ・正社員求人 n=93・2022年11月〜2026年7月公開)。2022年から積み上げた累計のため、生成AIが広がる前の求人も含まれています。求人全体では生成AIに触れる割合が2024年から増え始め、2025年以降に大きく伸びたため、UI/UX求人でもAIに触れる求人は今後増えると考えられます(求人全体の推移からの編集部の推測です)。
AIで速くなる作業と、デザイナーの判断が残る作業
AIの活用で速くなるのは、案を広げる作業と記録をまとめる作業です。ワイヤーフレームや画面の文言の叩き台をいくつも出す、ユーザーインタビューの書き起こしを要約するといった作業は、生成AIの支援で手を動かす時間を短くできます。ただし出力には誤りや既存の画面との食い違いが混ざるため、確かめて直す手間は残ります。
どのユーザーのどの課題を解くか、調査で何を確かめるか、出てきた案のどれを仕様に残すかは、事業とユーザーの両方を知る人が決める仕事です。既存のデザインシステムとの整合を取り、エンジニアやPdM(プロダクトマネージャー)と合意を作る仕事も、AIの出力だけでは片づきません。AIを使った経験を応募先に示すときは、ツールの名前よりも、どの作業に使い、どこからを自分で判断したかを説明できると伝わりやすくなります。
UI/UX求人のスキル上位はFigmaとユーザーリサーチ
Offers に公開された正社員のUI/UX・プロダクトデザイナー求人93件の本文では、Figma の記載がある求人が72件で最も多く、ユーザーリサーチ39件、デザインシステム36件、コーディング32件が続きました(Offers(株式会社overflow)調べ・正社員求人 n=93・2022年11月〜2026年7月公開・2026年10月集計)。画面を作るツールの経験は多くの求人で前提になっており、その先の調査・仕組みづくり・実装の経験で求人が分かれます。
求人本文に載るスキル・ツール | 記載のある求人の件数(93件中) |
|---|---|
Figma | 72件 |
ユーザーリサーチ(インタビュー・ユーザビリティテストを含む) | 39件 |
デザインシステム | 36件 |
コーディング(HTML・CSS・React・Vue・TypeScript・JavaScript) | 32件 |
AI(生成AIを含む) | 20件 |
定量の指標(定量・KPI・A/Bテスト) | 18件 |
生成AI(LLM・ChatGPT を含む) | 8件 |
出所: Offers(株式会社overflow)調べ・UI/UX・プロダクトデザイナー職の正社員求人93件の本文を語句で照合・2022年11月〜2026年7月公開・2026年10月集計。
件数は求人本文にその語が出てくるかで数えたもので、必須条件・歓迎条件・業務内容の説明を区別せず、本文中のURLは照合から除いています。AIと定量の指標は、会社の事業内容の説明に出てくる語も数えました。Figma に加えて、93件中32〜39件の求人が挙げるリサーチ・デザインシステム・実装のうち、どれを自分の強みとして説明できるかを決めておくと、応募先を絞り込みやすくなります。
リサーチから仕様決めまでを担った経験
ユーザーリサーチを自分で設計し、結果から仕様の優先順位を決めた経験は、AIで案を出す作業が速くなった後もデザイナーに残る判断の部分にあたります。ユーザーリサーチの記載がある求人は93件中39件でした(Offers(株式会社overflow)調べ・正社員求人 n=93)。インタビューやユーザビリティテストの設計から、結果を仕様に落とすところまでを1つの事例として語れるようにしておけば、面接でそのまま使える材料になります。
担当した機能の利用率や継続率を追い、デザインの変更と数字の変化を結び付けて説明できるようにしておくことも、評価の場面で役立ちます。定量の指標(KPI・A/Bテスト)に触れた求人は93件中18件と、まだ多くはありません(Offers(株式会社overflow)調べ・正社員求人 n=93)。
デザインシステムの整備とエンジニアとの協働
デザインシステムの整備や実装の理解は、デザインと開発の間の受け渡しを減らす経験として求人に載ります。デザインシステムの記載は93件中36件、コーディングの記載は32件でした(Offers(株式会社overflow)調べ・正社員求人 n=93)。コンポーネントの設計をエンジニアと合意して運用のルールまで決めた経験や、HTML(HyperText Markup Language)・CSS(Cascading Style Sheets)・Reactで実装の制約を理解した経験は、記載のある求人に応募するときの材料になります。
スキルの語の有無と提示年収の関係を見るなら「UI/UXデザイナー・UXエンジニアの年収と求人のスキル」、デザインと実装の両方を担う道を考えるなら「UXエンジニアの転職事情」が手がかりです。
AIを使った仕事の進め方を説明できる経験
AIを使った仕事の進め方は、デザイン業務での生成AIの活用を書く求人が出始めた段階の経験で、記載のある求人ではほかの応募者との違いを示す材料になり得ます。UI/UX・プロダクトデザイナー求人93件のうち、AI製品の開発や事業の説明での言及も含めて本文にAIの語がある求人は20件、生成AIの語がある求人は8件でした(Offers(株式会社overflow)調べ・正社員求人 n=93・2022年11月〜2026年7月公開)。生成AIの語がある求人には、生成AIツールをデザインのワークフローに組み込んだ実績を歓迎条件に挙げるものがある一方、自社の生成AI製品や事業の説明として触れているものも含まれます。AIを組み込んだ機能の画面や体験を設計した経験と、自分の作業にAIを使った経験は別のものなので、応募書類では分けて書くのが読み手に親切です。
自分の作業に使った経験は、どの工程に使い、出力をどう確かめ、結果として何が変わったかを1つの事例にまとめておくと、面接で質問されても順を追って話せます。作業時間が短くなったことだけでなく、浮いた時間で調査や検証を増やせたかまで書けると、デザイナーとしての判断の経験として読まれます。
UI/UXデザイナーの年収は求人の年収帯で確かめる
UI/UXデザイナーの年収は、同じ役割を募集する求人の年収帯で確かめるのが実態に近い方法です。Offers に公開された正社員のUI/UX・プロダクトデザイナー求人では、提示年収の下限の中央値が500万円、上限の中央値が800万円で、93件のうち上限が800万円以上の求人は53件でした(Offers(株式会社overflow)調べ・年収記載のある正社員求人 n=93・2022年11月〜2026年7月公開・終了した求人を含む・2026年10月集計)。
下限は経験が浅くても応募できる入口、上限は経験と役割が合えば出せる額を示します。自分の経験で届く年収帯を知るには、実際の求人の下限と上限を見比べるのが確実です。Offers では、UI/UXデザイナーやプロダクトデザイナーの正社員求人を、仕事内容と提示年収まで含めて確認できます。
デザイナー全般の公的統計や企業規模別の年収は「デザイナーの年収相場とUX・プロダクト職の年収帯」にまとめました。
UIデザイナーとUXデザイナーの担当範囲の違い
UIデザイナーは画面のレイアウト・色・文字・操作の反応といった、ユーザーが直接触れる部分を設計します。UXデザイナーはユーザーリサーチやカスタマージャーニー、情報設計、ユーザビリティテストを通じて、サービス全体の体験を設計する役割です。
UI/UXデザイナーの仕事は、おおむね次の5つの工程で進みます。
- ユーザーインタビューや行動データの確認で、解くべき課題を見つける
- 情報設計とワイヤーフレームで、画面の構成と導線を決める
- ビジュアルデザインとプロトタイプで、見た目と操作の感触を詰める
- ユーザビリティテストで、使いにくい箇所を洗い出す
- エンジニアと実装を詰め、リリース後の数字を見て改善を重ねる
UIデザイナーは2と3、UXデザイナーは1と2と4に比重を置くことが多く、5にはどちらも関わります。両方を担う人ほど担当範囲が広くなります。
求人では、両方を1人で担う「UI/UXデザイナー」や「プロダクトデザイナー」として募集される場合も少なくありません。職種ごとの年収は「UIデザイナーの年収」と「UXデザイナーの年収」で扱っています。
UI/UXデザイナーのキャリアパスは3方向に分かれる
UI/UXデザイナーの経験を積んだ先の道は、デザインの専門性を深めるリードデザイナーやUXリサーチャー、チームの採用と育成を担うデザインマネージャー、プロダクトの方針を決めるプロダクトマネージャーの3方向に分かれます。どの道でも土台になるのは、担当範囲を画面から事業の成果へ広げてきた経験です。
リードやマネージャーは、メンバーとは別の求人として募集される場合があります。リサーチと事業の指標まで担ってきた人にとっては、PdMへ進む道も選択肢に入るでしょう。PdMへの移行なら「プロダクトマネージャーのキャリアパス」、転職時の成果の見せ方なら「デザイナー転職のポートフォリオ」が詳しい記事です。
将来性のある求人を見分ける4つの観点
将来も経験を積み上げられる求人かどうかは、求人本文の業務内容・デザインチームの体制・成果の測り方・年収の上限の4点で見分けられます。
観点 | 求人本文で確かめること |
|---|---|
業務内容 | 画面の制作だけでなく、ユーザーリサーチや仕様の策定まで書かれているか |
チームの体制 | デザイナーが何人いて、デザインマネージャーやPdMの誰と仕事を進めるか |
成果の測り方 | 担当する機能の利用率や継続率など、デザインの成果を何で見るかが書かれているか |
年収の上限 | 上限が今の年収と希望を上回り、役割が広がったときに上がる余地があるか |
4点のうち書かれていない項目は、カジュアル面談や一次面接で質問すると確かめられます。とくに業務内容と成果の測り方は、入社後に担当範囲を広げられるかに直結する項目です。
UI/UXデザイナーの将来性の要点
UI/UXデザイナーの将来性を支えるのは、DXに取り組む日本企業の61.0%がデザイナーの不足を感じているという需要の大きさです(IPA『DX動向2025(データ集)』・2024年度調査・日本 n=1,186・合計は編集部の計算)。AIの広がりで求人本文が生成AIに触れる割合は年々上がっている一方、どのユーザーの何の課題を解くかを決める仕事は、AIの出力だけでは片づかない部分です。
経験者が次に伸ばしたいのは、リサーチから仕様決めまでを担った経験、デザインシステムの整備とエンジニアとの協働、AIを使った仕事の進め方を説明できることの3つです。まずは自分の経験に合う求人の条件と年収帯を確かめ、今の担当範囲との差を知るところから始めてください。








