エンジニアの転職に適した年齢は?
転職には適した年齢や回数が存在しています。転職があまりに多い人材は定着率が悪いという印象を持たれ、年齢にも限度があります。年齢に応じた転職の2事例を紹介します。
一般的に転職しやすいのは20代後半まで
大手転職サイトの2017~18年度調査によると、転職成功者の年齢の割合は25〜29歳が最も大きく、約4割を占めています。
30代を超え始めると割合は減り、30代前半で2割強、30代後半と40代以上はいずれも1割強と下がります。
同調査で、あくまで転職の割合が高いのは20代後半までですが、転職成功者の平均年齢はおよそ31歳でした。しかも成功者の平均年齢はリーマンショックの2007年以降、上昇が続いており、40代の転職も可能性がゼロではなくなってきています。
年齢関係なく転職が難しいケース
転職を難しくしてしまう理由として『転職のサイクルが速すぎる』と『好条件を選びすぎる』といったケースもよくみられます。
転職のサイクルが速すぎると、企業は「うちの会社に就職してもすぐ転職するのではないか」という不信感を抱きます。企業側としては自社の戦力として長く働いてもらうことを想定して求人をしているため、転職サイクルの速い人材は敬遠してしまう恐れがあります。
また、好条件で働くことを希望するのは自然な思いではありますが、待遇や条件の良い求人案件はそれだけ優秀な人材が集まりやすく競争率が高くなるために条件を選びすぎると、転職成功のハードルは高くなってしまうでしょう。
エンジニアの転職は若いときが有利な理由
上記で見てきたように若い方が有利とされる転職ですが、これには大きく3点の理由があるとされます。企業側の視点も踏まえながら順番に見ていきましょう。
体力があるから
エンジニアは採用企業の態勢にもよりますが、多くのケースで体力が問われる激務であるといえます。納期が迫ってきたりや設計ミスが発覚したりした場合には、残業や休日出勤で対応するこもある職種です。
突発事態への体力が問われる現場であると同時に、座り仕事であるために体力の低下が進むことも懸念される職種でもあります。
30代を超えてくると体力面は低下が始まり、40代ともなると体力面や健康面でも不安が出てくるため、企業は転職において、より健康リスクの低い若い人材を選ぶといえます。
頑固さがなく柔軟な考え方ができるから
年齢を重ねるごとに経験を積むことは大きなメリットではありますが、そのメリットが凝り固まってしまうと柔軟性のない人材となってしまいます。新しい知識を取り入れないタイプの人材などは柔軟性がない、頑固だと判断されることがあります。
企業には特色があり「前の職場ではこの方法が適していた」「長年この手法でやっている」というのは他企業では通用しません。前職や自己流に固執してしまうことは柔軟性を失っているといえます。
企業からすると、柔軟性の低い人材があと20年企業にいるよりも、まだ頑固さのない若い人材が40年いる方が良いと判断することもあると意識しておきましょう。
企業側はコストを抑えて採用できるから
企業は求人に対してコストを払っています。仕事ができる人材には見合った給与を出さねばならないからです。例えば新卒の伸び代のある人材はまだスキルもないため低いコストで雇うことができます。
しかし人材の年齢が上昇していくにつれ、支払うべきコストも上がってしまいます。また、仕事が本当にできるかどうか、求めている人材かどうかというリスクも受け入れる必要があります。
企業は一つ一つの採用が適切であるか、コストに見合っているかということをシビアに判断し、採用するかを判断しているといえるでしょう。
40代でもエンジニアとして転職できる可能性はある
若い人材の方が伸び代やコスト面から採用の可能性があるというのは事実としても、40代で転職ができないわけではありません。その理由も3点解説していきます。
IT人材は不足している
経済産業省が2016年にまとめた「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、日本国内で今後不足するIT人材は約59万人といわれています。
急速に発展するIT化を支える人材が、今後減少することや老化することが見込まれているためです。その影響を受けてIT人材は不足し続けることが分かっています。
人材が不足しているということは現在のIT業界は売り手市場であり、転職する場合に入り込む余地があるということです。そのため40代でも、まだ転職できる余地が残されているといえるでしょう。
出典:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果|経済産業省
企業は条件を緩和せざるを得ない
人材不足の影響によって、企業のエンジニア採用の年齢上限を引き上げる動きが見られています。企業の求めるスキルや経歴がある人材であれば、40代のベテランエンジニアの転職受け入れを検討する企業が増えているということです。
課題としては想定していたスキルが不足していたり、上司が年下であったりすることです。ほかにも、新しい言語に対する学習コストが高いことなどが挙げられており、これらをクリアすることで40代でも十分活躍が期待できるでしょう。
企業は今までのように若い人材を取りたいという意思はありつつも、採用基準を変化させているのが現状であるといえるのです。
注目の分野では40代も採用される可能性
需要と供給の関係に従って、エンジニアの職種によってはAIやクラウドサービスの台頭で需要が減る職種が存在するでしょう。
例えばサーバーを扱うインフラエンジニアはクラウド化の影響を受けてオンプレミスしかできない人材は減少していきます。クラウドに対しての知識がないというのは今後のエンジニア業界では致命的です。
逆にデータサイエンティストやIoT、機械学習などに強いエンジニアは需要が高まるため、エンジニアの中でも注目される分野を学習することで採用の可能性が上がるといえます。
常にどのような分野が人気になっているのか、今後伸びてくる需要のある職種に対してアンテナを張っておくことも大切です。
40代を採用したい企業もある
40代のベテランエンジニアに価値を見いだす企業も増えています。スキルの内容は企業ごとに違いはありますが、あえて40代を採用したい理由について解説します。
即戦力を求めているから
柔軟性のある若い人材が学習スピードや吸収力が高い存在であるとすれば、40代のベテランエンジニアはさまざまなプロジェクトに携わってきた即戦力の人材です。
多くの開発現場を経験している場合は、知識や経験が豊富であることだけではなく、チームリーダーとしてマネジメントの経験もあると考えられます。
固定業務が多かった人材では難しいといえる場合もありますが、人材不足によってベテランの価値基準が変化してきているのは事実です。
主にマネージャーとして活躍してもらいたい
30代を超えたあたりから、エンジニアは管理職へキャリアを変更する時期でもあります。そのため企業も役職のないエンジニアに高いコストを払うのならば、マネージャーとしての活躍を期待したいという意思があります。
そのため、40代の経験豊富なエンジニアをマネージャーとして雇用したいという企業は増えており、コーディングをするエンジニアからマネジメントをするエンジニアへのキャリアチェンジを期待しての採用が考えられます。
年収や現在の仕事に不満がある場合などは、この機会にキャリアチェンジを考えてみるのも一つの手段といえるのです。
転職しやすいエンジニアの特長
転職をするためには転職に成功しているエンジニアの特長をつかむことも重要です。何が成否を分ける差になっているのか、どういった特長を持っているのかを理解することで、より転職に有利になるでしょう。
人気のプログラミング言語を扱える
大切なのは、他の人材と比較して自分自身をどう差別化するかです。
習得しているプログラミング言語であれば、基礎的な言語だけではなく、人気のプログラミング言語を習得している人材は貴重です。例えばデータ分析や機械学習ができることで差が生まれます。人気のプログラミング言語や分野は人材が少ない面と取り合いが生まれるからです。
そのため、人気のプログラミング言語を習得することで、企業からスカウトが来るほど必要な人材として判断されるといえます。
実績がある
実績というのは現場でなにをしてきたか、だけではありません。『ポートフォリオ』の制作も実績の一つです。
作成しているプログラムのテーマを決めて、githubにソースコードを公開することで企業にとって実績を積んでいる人材かどうかがわかります。
『コーディングが整っている』『可読性が高いコードが書ける』『高速に処理する方法を理解している』など、ソースコードだけでも実績を表現することができるのです。
リーダーの経験がある
リーダー経験の有無はエンジニアにとって、差の一つになり得ます。工程管理をはじめとして、上長や顧客との折衝をしてきたかどうかの経験はリーダーでなければ得難い実績です。
受け身ではないこともリーダーの利点です。先を見越して考えチームを動かすことだけではなく、期限を考えて余裕を持って管理する能力があることも必要です。
リーダーの経験があるということで、それらを証明することができるでしょう。
エンジニアとして売り手市場の職種へ
転職を考えている人材が目指すべき、売り手市場の職種を紹介します。大きく三つのエンジニアがあり、この職種の市場は今後需要が高まってくるため、技術的に近いエンジニアか、興味があるエンジニアの学習を行うことをおすすめします。
セキュリティエンジニア
巧妙になってくるサイバー攻撃に対しても、セキュリティエンジニアの知識が必要であり、新しいサイバー攻撃に対するセキュリティ情報は日夜共有されています。
セキュリティエンジニアはそれらの知見を取り込み、設計などの上流工程などにもかかわる必要があります。上流工程に関わるということは、年収面も変化することがいえるでしょう。
また、セキュリティはサイバー攻撃に対して日々進化しているため、それを能動的に取り込み、対応できる人材であることが要求されています。学習意欲を高め、行動するように心がけましょう。
クラウドエンジニア
クラウドエンジニアはクラウドサービスに関わる業務を担当するエンジニアです。例えばAWSやAzureなど、クラウドサーバーなどを管理しているのもクラウドエンジニアの仕事の一つです。
他にもクラウド上に導入するシステムの選定や運用管理など、クラウドエンジニアの仕事は多く存在しています。可用性を高めるための設計、そしてクラウドサービスが安心して利用できるセキュリティなどの知識を必要としています。
インフラエンジニアを経験している人材であれば、クラウドエンジニアを目指しやすいため、将来性などを加味して選択してみましょう。
AIエンジニア
需要が高く、売り手市場の中でも将来性があるとされている人材がAIエンジニアです。AIエンジニアはAIを利用して情報を分析するタイプと、AIを作成するタイプに分かれます。
IPAの調査によるとAIエンジニアは需要が高く、必要とされている人材であり、人材不足も目立っているといわれています。機械学習やディープラーニングなど、技術は進んできているものの人材は少ないのが現状です。
また、諸外国に比べるとAIエンジニア市場の発展状況は遅いことからも、早いうちにAIについて学習し、AIエンジニアとなることで安定した需要のあるエンジニアとして活躍できるでしょう。
会社員にこだわらない働き方
独立するエンジニアや副業エンジニアは、現在非常に多くなってきています。会社という枠にこだわらず働き方に対して柔軟であるというワークライフバランスの考え方が広まってきたことで、フリーランスや副業が浸透してきているのです。
フリーランスでは40代でも活躍できる
フリーランスエンジニアとして活躍することは40代でも可能です。40代を超えても活躍しているフリーランスの人材が出てきていることからも、今後も長年活躍できる可能性がある職種といえます。
このような人材は、学習意欲が高いことやコミュニケーション能力が高いなどをはじめ、新しいものごとへの考え方が柔軟であることが特徴です。
会社の枠にこだわらない働き方が増えていくことで、今後もフリーランスの働き方をする人材は増加していくでしょう。0からはじめる場合は早い段階から計画的に取り掛かることをおすすめします。
副業、パラレルキャリアも考える
副業は聞いたことがある人が多いと考えられますが、パラレルキャリアというのは初めてという方が多いでしょう。
パラレルキャリアと副業は『目的の違い』にあります。副業が報酬を目的にして仕事を行うことを指すとすれば、パラレルキャリアは本業とは違うキャリアを築くための仕事といえるのです。
会社員にこだわらない働きかたとして、副業を行っていくことであくまで本業は別の仕事、副業でエンジニアなどの仕事に就くことも考えられます。あるいは、エンジニアを本業として、全く別の職種を選択することも新しい働き方の一つであるといえるでしょう。
まとめ
40代の転職と、IT業界の人材不足、転職を成功させる人材について解説してきました。
必ずしも40代で転職ができないわけではない、ということが理解できたでしょう。しかし、それもスキルや実績あってのことであり、能力不足と捉えられてしまうと転職は難しいでしょう。
そのため、新しい知識に対しての興味を持つことは当然のことながら、会社に属するという考え方をとらないということも選択肢の一つとして行動することをおすすめします。
また、実力によっては若手よりも40代の方が必要であるという企業がないわけではありません。最後の転職であると考えて、慎重になりつつも、しっかりとしたプランを立てて転職や独立に臨みましょう。