デザイナーの特徴、年収
デザイナーとして年収アップを目指していくにはまずデザイナーの仕事に対する理解を深める必要があります。ここではデザイナーの仕事の概要と、その年収を紹介します。
クライアントのニーズを満たす設計を担う
クライアントのニーズを満たすデザインを企画・設計・構築するのがデザイナーの仕事です。
従来のデザイナーの仕事は、目に見えるもの・形あるものの設計でした。しかし昨今では、人間の特性に応じた使いやすいシステムをデザインする『人間中心設計』が注目を集めています。
人間中心設計の代表例がUXデザインです。UXデザイナーは目に見えるものではなく、商品やサービスを使用するユーザーの体験をデザインします。
どのような対象を設計するにしても、すべてのデザイナーに共通しているのは、クライアントの求めに応じたデザインを生み出すことです。クライアントの求める結果をデザインというアプローチで追求する、それがデザイナーの仕事です。
大企業勤務の男性は年収が高いと言われる
デザイナーにはグラフィックデザイナー・Webデザイナー・UI/UXデザイナーなどさまざまな職種があります。経済産業省の「デザイン政策ハンドブック2020」によれば、職種の違いを超えた広義のデザイナーの平均年収は約416万円です。
収入の水準は女性よりも男性の方が高く、男性デザイナーと女性デザイナーの年収差は95.6万円です。
勤める企業の規模によっても、デザイナーの収入は前後します。厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模1000人以上の大企業に勤めるデザイナーの方が、企業規模10~999人の企業に勤めるデザイナーよりも高収入です。その差は年収ベースで100万円以上と大きく開きがあります。
裁量労働制が適用される傾向
裁量労働制とは、労働時間を働く人の裁量で決められる労働契約です。デザイナーやディレクター、エンジニアなど労働時間と成果が比例しない、もしくは業務量の変動が激しい職種に採用されます。
給料の額を決めるのは、労働者と使用者の間であらかじめ契約した労働時間です。実際にどれほどの時間を働いたかは問題でなく、契約した労働時間だけ働いたとみなされます。
裁量労働制が適用されているデザイナーは、勤務時間の長さや出勤・退勤時間を自由に設定して働いています。
デザイナーはどのように評価されるのか
デザイナーとして年収をアップしたいなら、どのような基準で給料が決められているかも知っておくと良いでしょう。評価基準を知っておけば、どのような取り組みをすれば年収が上がるのか明確になります。
スピード感とクオリティ
スピード感とクオリティとは、納期までの限られた期間でどれほどクライアントのニーズに応えた設計を生み出せたかを示します。デザインは、時間を投資するほどクオリティが上昇するものではありません。
時間をかければ良いデザインが生み出せると考えているデザイナーは、納期のぎりぎりまで細部の調整に時間を使ってしまうでしょう。しかしクライアントは、納期が迫るほど「ちゃんと納品されるのだろうか」と不安に駆られてしまいます。
スピード感を持って求められる完成度を達成できたか、それこそがデザイナーの評価基準です。
デザインの技術と業績への貢献度
魅力的なデザインを生み出すデザインスキルを持っているかどうかも、デザイナーの評価基準になり得ます。デザインはユーザーの興味を惹き付けてこそ、クライアントが求める目的を達成できるからです。
例えばWebデザイナーには、ユーザーを惹き付けるサイトデザインを考えるため、配色や構成のスキルが欠かせません。加えて、Webサイトをユーザーが操作しやすいデザインに整えるスキルも求められます。
デザインスキルの高いデザイナーは、クライアントや自社の業績にも貢献できるため評価が上がります。Webデザイナーの例で言えば、見た目と操作性の良いWebデザインを作ると、ユーザーの直帰率や離脱率が低くなるため、コンバージョンや売り上げの上昇に寄与できるでしょう。
デザイナーの年収を上げる方法
評価を上げる以外にも、デザイナーとして年収をアップさせる方法は存在します。デザイナーとして年収を上げたい方は、これから紹介する方法に挑戦してみてください。
根拠、自信がある場合は給与交渉をする
自分のスキルや経験に見合った報酬をもらえていないと感じている方は、給与交渉にチャレンジすると良いでしょう。
給与交渉を優位に進めるポイントは、交渉に使える材料を準備しておくことです。これまで関わったプロジェクトでどのような成果を上げてきたか、デザインスキルの向上を目指してどのような取り組みをしてきたかを棚卸ししておきます。しっかり準備しておけば、高給に見合う働きをする人材であると効果的にアピールできるでしょう。
年収アップを狙って転職活動中なら、内定後の処遇面談で給与交渉をすると良いでしょう。他のシーンで話を持ち掛けるよりも、互いに気持ち良く給与交渉ができます。
デザインに関するサイドビジネスを始める
自分が生み出したデザインを自分の手で売れば、自分の力だけで年収アップを実現できます。
Webデザイナーならホームページやバナー、ランディングページの作成がサイドビジネスに適しているでしょう。またグラフィックデザイナーなら、企業や個人のロゴやショップカードのデザインがサイドビジネスになり得ます。
自身のSNSを窓口にサイドビジネスを行えば、デザインに関わる業界で活躍する人とのつながりも作れます。そのつながりから単価の高い仕事が舞い込むケースもあるでしょう。
Webデザイナーは比較的高収入
デザイナーとして年収を上げたいなら、Webデザイナーへの転身を考えてみると良いでしょう。ここでは高収入を目指すデザイナーにWebデザイナーへの転身がおすすめな理由と、Webデザイナーの年収や働き方を紹介します。
紙媒体のデザイナーはWebデザイナーへ
Webデザイナーへの転身が特におすすめなのが紙媒体を主戦場とするデザイナーです。紙媒体で活躍するデザイナーの年収は300万~400万円と、デザイナー全体の平均値と比べやや低い結果が出ています。
また新聞や雑誌など紙媒体で情報を入手する人よりも、Webサイトを利用して情報を手に入れる人が多くなった昨今、紙媒体に投じられる広告費が減少しています。
このような事情を背景に、実際に紙媒体のデザイナーがWebデザイナーに転身するケースが増えているのです。勢いのある業界で活躍した方が将来的な年収アップも期待できます。
出典:DTP デザイナーの年収、給料、給与は!? | 憧れクリエーターのお仕事図鑑
Webデザイナーの年収
Webデザイナーの年収の全国平均は460.9万円です。デザイナー全体の年収が415.7万円なのと比べ、45万円ほど高い結果となっています。Webデザイナーの年収が高水準なのは、労働市場において売り手有利の状況が続いているからです。
またWebデザイナーの年収には比較的幅があり、平均年収を優に超える高給取りも存在します。これは培ってきた経験やスキル、独自のセンスを買われ、年収アップに成功したWebデザイナーの例もあります。
出典:Webデザイナー - 職業詳細 | 職業情報提供サイト(日本版O-NET)
働きやすいのは制作会社か、事業会社か
Webデザイナーは制作会社と事業会社、どちらに所属するかで働き方が異なります。
制作会社で働くWebデザイナーの仕事は、クライアントから依頼を受けて行うWebサイトの企画・設計です。クライアントの要望に応えたり、クライアントが設定した締め切りを守ったりする必要があるため、事業会社と比べてどうしても残業が多くなります。
事業会社で働くWebデザイナーは、自社サイトの企画・設計を行います。要望や締め切りを自社でコントロールできるため、制作会社よりも残業は少なめです。
しかし事業会社は制作会社に比べ、デザインに使用するパソコンやソフトが整備されていない企業が多いです。そのため事業会社は、自身のクリエイティビティを発揮して仕事をしたい人には不向きの可能性があります。
Webデザインの仕事で年収を上げる方法
数多く存在するWebデザイナーの中から年収面で頭一つ抜け出したい方は、これから紹介する年収アップの方法を試してみてください。適性に合ったスキルを手に入れれば、新たなフィールドでその力を発揮できるでしょう。
需要の高いUXデザイナーを目指す
UXとは『User eXperience(ユーザーエクスペリエンス)』を表す言葉で、製品やサービスを利用したユーザーが抱く体験を指します。
UXデザイナーとはUIの改善やユーザーインタビューによるサービス改善などの施策を通して、ポジティブなユーザー体験を創出する仕事です。UXデザイナーとして活躍できる人材の需要は高く、それに伴い平均年収も高水準です。
またUXデザイナーは、WebデザイナーやUIデザイナーなどの職種とまとめて募集されるケースが多くあります。そのためUXデザインの知識を身に付けておけば、そうでないWebデザイナーよりも応募できる求人の幅が広がります。結果的に高収入の仕事に就ける可能性も高まるでしょう。
勢いがあり、デザインを重視する企業を目指す
Webデザイナーとして高収入を目指していくには、高い給料を払ってくれる企業に転職するのが近道です。勢いがありデザインの重要性を高く評価している企業に入社すれば、必然的に年収は高まります。
例えばフリマアプリを運営する株式会社メルカリで働くUI/UXデザイナーの年収は約727万円です。この値を見れば、いかにメルカリがUI/UXデザイナーを事業に貢献する職種として高評価しているかがうかがえます。
出典:日本での株式会社メルカリ-UI/UXデザイナーの給与 | Indeed (インディード)
クラウド人材マネジメントシステムを運営する株式会社カオナビは、CDO(最高デザイン責任者)と呼ばれる役職を新設しました。事業を成長させるには、経営や事業にデザインを組み込むことが重要であるとの考えからです。そのカオナビで働くUI/UXデザイナーの最大年収は約650万円です。
Webディレクターやアートディレクターに
Webディレクターとは、Webサイトを制作する現場で指揮を執る責任者を指します。クライアントとのヒアリングや制作に関わるスタッフの監督などを通し、Webサイトの制作が円滑に進むよう管理します。WebディレクターはWeb制作に関わる職種の中でも上流工程を担う仕事のため、その年収は高水準です。
アートディレクターとは、製品やサービスのデザイン制作チームをまとめる責任者です。アートディレクターの多くは、広告代理店や広告制作会社など給与水準が高い企業に勤めています。そのため他のデザインに関わる職種よりも高収入な傾向があります。
マネジメント、マーケティングスキルを磨く
Webディレクターやアートディレクターにステップアップするには、マネジメントスキルやマーケティングスキルを身に付けておくと良いでしょう。マネジメントスキルはディレクターの仕事の中でも、全体のスケジュールを組んだり、スタッフに仕事を振り分けたりするときに役立ちます。
またWebディレクターやアートディレクターには、生み出したデザインをいかにして多くの人に届けるか、という視点が求められます。そこで重要になってくるのがマーケティングスキルです。
マーケティングスキルを磨いたWebデザイナーは、ディレクターだけでなくWebマーケターへの道も開けます。WebマーケターとはWeb上での集客を目的とした施策を考える仕事です。広告宣伝や市場調査、販売戦略などの業務を担います。
まとめ
デザイナーとして年収アップを図るなら、デザイナーの評価基準を再確認し、それに見合った自己成長を目指すのが有効です。また持っているスキルを生かしたサイドビジネスを始めれば、自力で年収を上げることも可能です。
Webデザイナーとして給与水準を上げたいなら、高評価につながるプラスアルファのスキルを身に付けたり、上流職へのステップアップを目指したりすると良いでしょう。