組み込みシステムとは何か
組み込みシステムとは、生活家電やスマホなどの独立した機器の中に組み込まれた制御システムのことです。特定の機能を果たすことを目的に製造された機器の制御システムの総称とも言えます。
特化型のシステム
組み込みシステムは特化型のシステムです。例えば、炊飯器や洗濯機、冷蔵庫などのように特定の用途をもつ機器を制御するのが、組み込みシステムです。
一方パソコンは、インターネットの検索や文章作成、スケジュール管理など、さまざまな用途を想定して作られている汎用性の高い機器ですので、パソコンを制御するOSやソフトウェアは組み込みシステムとは呼びません。
組み込み系エンジニアの仕事内容
組み込みシステムの開発を専門とするエンジニアのことを、『組み込み系エンジニア』と言います。
組み込みシステムの多くは比較的シンプルな技術を用いて作られていますが、決して組み込み系エンジニアの仕事自体がシンプルというわけではありません。ここでは、組み込み系エンジニアの具体的な仕事内容について解説します。
組み込み機器のシステム開発
組み込み機器自体は小さく単純な仕様のように見えますが、開発にあたっては、機器の制御に必要となるあらゆるプログラムを小さなコンピューターに収める必要があります。
組み込み系エンジニアには、組み込み機器のシステム開発に特化した専門的なスキルが必要とされるのです。
ソフト以外はハードウェアエンジニアが開発
組み込み機器において、ソフトウェア以外の部分は『組み込みハードウェア』と呼ばれており、開発するのはハードウェア専門のエンジニアです。
ハードウェアの開発はそれぞれの工程ごとに担当がつき、基板の設計や製造などを行います。大型案件では、数百人から数千人が関わることもある仕事です。その後、開発が済んだハードウェアにソフトウェアが組み込まれます。
そして、接続確認や動作確認を行い、機器が完成となるのです。
組み込み系エンジニアの仕事の特徴
限定した機能を果たすことを目的につくられた組み込みシステムは、パソコンなどと比べると単純なプログラムであることが多いです。
機器の制御をする機能しか有していない単純なものではありますが、組み込みシステムを製造するためには、特有のスキルや知識が必要となります。ここでは、組み込み系エンジニアの仕事の特徴についてみていきましょう。
安定性と信頼性が重要
組み込みシステムを搭載した機器は、シンプルな操作で動作するからこそ、さまざまな場面を想定したシステム設計を行わなければなりません。
また、一度組み込んだシステムの修正が難しい機器も多いので、エラーなどの不具合が起きない信頼性も必要とされます。いかなる場面でも機器が有効に機能するよう、安定性と信頼性を踏まえた仕事をすることが重要となります。
コンパクトで低コストに仕上げる必要がある
組み込みシステムは、比較的小さな場所に搭載されることが多いです。組み込み系エンジニアは、その機器の中に必要十分なプログラムをコンパクトに収めるスキルが必要となります。
さらに、メーカーが組み込み機器を大量生産する場合、できる限り製造コストを抑えて効率化を図ろうとします。高性能な組み込みシステムをできるだけ低コストで仕上げるスキルが、組み込み系エンジニアに求められているのです。
開発環境と動作環境が異なる
組み込みシステムは、一般的なソフトウェアの開発と同じく、『Visual C++』や『Visual Studio.NET』といった統合型の開発環境を利用します。
しかし組み込みシステムでは、開発環境と動作環境が異なるという特徴があるのです。
ソフトウェア開発においては、Windows上で動作させたいプログラムを開発し、デバックまでの一連の作業がWindows上で完結します。一方、組み込みシステムにおいては、開発はWindows上で行いますが、その後は機器にシステムを組み込んでプログラムを実行し、その結果をWindowsのパソコンで読み込んで表示するという流れになります。
組み込み系エンジニアの需要は高い
デジタル時計やテレビ、冷蔵庫など、朝起きて夜眠るまで、私たちの日常生活のさまざまな場面で作動しているのが組み込みシステムです。
さらに、自動車の自動運転技術に代表されるAIの活用に際しても、組み込み系エンジニアのスキルが求められており、組み込み系エンジニアの需要が高い状態が、今後も続くと思われます。以下、具体的に解説します。
若手を中心とする人手不足
組み込み系エンジニアの需要が高い理由として、若手を中心とする人手不足があげられます。あまり認知度が高くなく、Webアプリの開発などと比較すると地味な仕事なため、なりたがる人が少ないのです。
組み込み系エンジニアの仕事はたくさんある一方で、仕事に対する魅力を感じる若者の数はそれほど多くありません。その結果、組み込み系エンジニアの人手不足の状況が生じているのです。
IoT機器増加による需要拡大
テレビやデジカメ、エアコンや各種センサーなど、インターネットに接続するIoT機器の活用場面は増加傾向にあります。これらIoT機器の開発現場においても、組み込みシステムの技術が積極的に使われています。
例えば、無線LANを採用するシステムや、センサーからデータを収集するシステムなどの開発場面において、組み込み系のスキルが求められており、組み込み系エンジニアの需要は拡大しているのです。
求められるスキルと知識
今後も、組み込み系エンジニアの需要が拡大し続けることが予想される中、これから組み込み系エンジニアを目指すためには、一体どのようなスキルや知識を身につける必要があるのでしょうか。
ここでは、組み込み系エンジニアに求められる具体的なスキルや知識について解説します。
C言語系およびアセンブリ言語
組み込み系エンジニアが身につけなければならないスキルは、C言語系およびアセンブリ言語といった開発言語です。これらの言語は多くの場面で活用されており、特にアセンブリ言語の知識は必須です。
C言語系はやや難易度が高い言語ですが、一度身につければ汎用性が高く、キャリアアップにつながります。組み込み系エンジニアとしてさらなる高みを目指すために、アセンブリ言語に加えてC言語系のスキルを身につけるとよいでしょう。
ハードウェアへの理解
組み込み系エンジニアは、ソフトウェアだけでなくハードウェアへの理解も不可欠です。組み込み機器自体がソフトウェアとハードウェアを組み合わせてつくられていることから、ハードウェアの知識を持った組み込み系エンジニアは貴重な存在になりえます。
組み込み系エンジニアとしてのキャリア形成の一環として、ハードウェアの理解を深めることをおすすめします。
キャリアアップのコツ
組み込み系エンジニアがキャリアアップするためには、自らのスキルを向上させながら経験を積む必要があります。キャリアアップのために、具体的にどのようなスキルを身につける必要があるのでしょうか。
ここでは、組み込み系エンジニアのキャリアアップのコツを紹介します。
使える言語を増やす
組み込み系エンジニアがキャリアアップするコツとしては、使える言語を増やすことがあげられます。
組み込み系エンジニアには、アセンブリ言語に加えてC言語系のスキルが必要だとお伝えしました。一般的に、アセンブリ言語だけしか使えないエンジニアに比べて、C言語系のスキルを身につけているエンジニアは100万円ほど年収が高いと言われています。
さらに、Javaを習得すると生産性の向上を図ることができるようになり、評価も上がるでしょう。
常にトレンドのキャッチアップをおこなう
私たちの生活のあらゆる場面で組み込みシステムが存在し、今後もその広がりは加速していくと予想されます。
AIやIoTシステムなどのトレンド産業においても組み込みシステムが導入されていることから、常にIT業界のトレンドをキャッチアップして仕事を行うことおすすめします。
IoT関連のスキルを付ける
キャリアアップのためにはIoT関連のスキルを身につけるとよいでしょう。今後、日常生活で使われているものの多くがインターネットで操作できるようになると言われています。
IoT技術において、センサーの機能が多くの場面で活用されています。センサー機能には組み込みシステムが使われていることから、IoT関連のスキルを持った組み込み系エンジニアの需要が高まることが予想されているのです。
資格を取得する
組み込み系エンジニアのキャリアアップのために、転職の際にアピールになるような資格を取得するのもよいでしょう。
たとえば『ETEC』という、一般社団法人組込みシステム技術協会が主催する組み込み技術者試験制度があります。
ETECの結果は点数で評価され、組み込み系エンジニアとしての知識をどれだけ習得しているのかを判断する材料となり、キャリア形成の指標にもなるでしょう。組み込み系エンジニアのキャリアアップの一環として受験することをおすすめします。
まとめ
家電メーカーや自動車メーカーなど、あらゆる業界で組み込みシステムが利用されており、その市場はますます拡大傾向にあります。組み込み系エンジニアも不足しており、未経験者であっても努力次第で十分活躍できるでしょう。
今後は、自動運転技術やAIなどの新しい分野でも組み込みシステムが必要とされることから、大きなやりがいを得ることができます。この記事をきっかけにして、組み込みシステムについて学んでみてはいかがでしょうか。