組み込み系エンジニアとは
エンジニアには『システムエンジニア』や『プログラマー』など、数多くの種類があります。その中でも、今回は『組み込み系エンジニア』について解説します。まずは、仕事の概要や年収について見ていきましょう。
組み込みシステムの開発を行う
組み込み系のシステムとは、『独立した機械の中に組み込まれたコンピューターを制御するためのシステム』のことです。
例えば、電子レンジや洗濯機などをはじめとする家電の中には、「何分間温めるか」や「1分間に何回洗濯機の中のモーターを回転させるか」といったシステムが必要です。家電のほか、工場で使われるような機械や車などの乗り物にも、これらのシステムが使われています。
こうしたシステムを開発するエンジニアのことを、組み込み系エンジニアと定義しているのです。
ハードウェア開発を行うことも
組み込み系エンジニアの仕事はソフトウェアの開発が主ですが、ハードウェアの開発の案件に携わることもあります。
ハードウェアとソフトウェアを一連の流れとして開発した方が問題が発生しにくいので、ハード自体に組み込む場合はハードウェアの設計も行うことがあります。そのため、ハードウェアを開発する技術も必要です。
他のソフトウェアエンジニアとの違い
他のソフトウェアエンジニアと、組み込み系エンジニアとの違いについて解説します。組み込み系エンジニアに求められるスキルや開発ニーズを把握しておきましょう。
開発環境と動作環境が異なる
ソフトウェア開発は、パソコン上で行うのが一般的です。パソコン上で開発し、動作環境のチェックまで行いますので、すべての作業がパソコン上で完結します。
しかし、洗濯機や電子レンジの例を挙げたように、組み込み系のシステム開発の仕事には、パソコン以外のハードウェアが必要です。
開発にあたっては、掃除機や洗濯機などの組み込む対象となる製品についてのデータが必要ですし、実際に組み込んでみなければ動作確認はできません。
安全性と品質を重視
組み込み系エンジニアの仕事には、車につけるカーナビやドラレコなどのソフトウェア開発も含まれます。これらの精密機構は、ECU(エンジンコントロールユニット)として組み込まれることになります。
これらの機能は、エンジンなどをはじめとする車の制御機構と連動させる必要があり、車の安全面にも大きく関わってくるものです。そのため、他のパーツや本体の機能の進歩にあわせて、より精密で品質を重視するソフトウェアの開発が求められています。
システム開発の仕事においては、リリース後にパッチという形で不具合を修正するケースもありますが、組み込み系エンジニアの仕事において、不具合自体が許されないケースもあるのです。
小型で低コストを求められる
他のソフトウェアであれば、パッチによる修正やバージョンアップが行われて性能が更新されることもあります。
しかし、家電や乗り物のパーツが後々になってアップデートされるという前例はあまりありません。この点から、後々に変更の余地を残さない機能実装が、組み込み系には求められているのです。
また同時に、いかに小型で制作するかも組み込み系の課題と言えます。例えば、洗濯機の操作パネルは最低限のボタンしかつけられていませんが、多機能です。多くの機能をいかにコンパクトにまとめるかというのも、組み込み系エンジニアならではの仕事です。
組み込み系エンジニアに求められるスキル
組み込み系のエンジニアの仕事が他のエンジニアとは異なることは、これまでご説明したとおりです。そのため、仕事で使うスキルも他のエンジニアとは少々異なります。
どのようなスキルが必要なのかを確認していきましょう。
C言語系、アセンブラ言語の開発スキル
プログラミング言語としては、前述のとおり、C言語が必須スキルと言えます。
C言語の開発は40年以上前に遡り、近年のIT系のプログラマーにはあまり使われない言語です。しかし、他の高機能言語にあるような複雑な処理やファイルの肥大化といった心配がなく、シンプルで処理速度が速いという特徴があります。
組み込み系のソフトウェアではあまり容量を割くことができないので、シンプルなC言語は適しているのです。また、直接ハードウェアのリソースを操作できる『アセンブラ言語』も、組み込み系エンジニアにとっては必須の言語となっています。
ハードウェアに関する知識
当然ですが、組み込み系ソフトウェアを開発するのであれば、ハードウェアに対する知識は必要です。洗濯機のパネルを作るのであれば、そもそも洗濯機に対する知識がなければ開発はできません。
どのようなプログラミング言語が使えるのか、コンパイルの方法や必要な機能など、開発対象のハードウェアについて知り尽くしている必要があるのです。
組み込み系エンジニアの将来性
現状は、他のエンジニアと比較すると年収相場も高く、需要も高い組み込み系エンジニアですが、将来的にはどうなるのでしょうか。組み込み系エンジニアの将来性について解説します。
IoT機器の増加で需要拡大が予想される
IoT機器の分野が急速に成長を遂げていることを、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
IoT(モノのインターネット)とは、機械をインターネットにつなげることです。例えば、音声認識で家電を操作する『スマートスピーカー』がIoT機器の一例です。モノとシステムをつなぐ専門家である組み込み系エンジニアが、大いに活躍できる分野と言えます。
今後もIoT機器分野はさらに成長し、機器を開発する組み込み系エンジニアの需要も高まることが予想されているのです。
キャリアパス
組み込み系エンジニアは、ハードウェアとソフトウェア両方の知識と実務経験が問われる職業です。いきなり組み込み系エンジニアとして活動するのは、ハードルが高いかもしれません。
そこで一般的には、テスターやデバッカーから経験し、その後にプログラマー、上流工程を経験するシステムエンジニアを目指すという過程でスキルアップしていくのが王道でしょう。
その後は、プロジェクトリーダーやより専門性の高いエンジニアになるといったキャリアが考えられます。
未経験で組み込み系エンジニアになるには
組み込み系エンジニアを募集している企業の中には、「プログラミング言語が使えれば実務経験は問わない」といった比較的緩い応募条件で募集している企業もあります。
全ての工程に携わることは難しくても、システムの一部の開発を担当するといった募集要項であれば、未経験であっても応募することは可能です。
また、未経験者は、一般社団法人組込みシステム技術協会が主催しているETEC(組込み技術者試験制度)の資格取得を考えてみてもよいでしょう。直接組み込み系エンジニアとしての実務経験がなくても、他の案件での経験があれば、採用で有利に働く可能性もあります。
まとめ
IoT機器の需要拡大に伴い、組み込み系エンジニアのニーズも高まりつつあります。エンジニアの中でも年収相場が高くて将来性もあるので、目指す価値は十分にある職業です。
ただし、ハードウェアに関する知識やC言語・アセンブラ言語に関する知識を求められるなど、専門性の高い仕事も多いので、まずはテスターやデバッカーからキャリアを始めていくことや、ETECなどの資格取得をしてみるのも良いかもしれません。