会社員の副業は今後も広がる見込み
2018年、厚生労働省の『モデル就業規則』から、『副業禁止』の文言が削除されました。このように厚生労働省が副業容認の立場を見せたことから、社会全体が『副業容認』の流れに向かっており、会社員の副業は今後も増えていくことが見込まれます。
会社員の副業について、より詳しく見てみましょう。
労働力の不足もあり、政府も後押し
現在日本が直面する課題には、『少子高齢化』『長時間労働と過労死』『労働生産性の低さ』などがあります。政府は、『働き方改革』を進めることで、これらの問題解決に当たろうとしており、副業容認もその流れの一つです。
2018年の『副業兼業の促進に関するガイドライン』で、政府は労働者と企業の双方について、副業によるメリットがあることを挙げています。以下に抜粋して引用します。
労働者のメリット | 企業のメリット |
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さらに同ガイドラインでは、副業を禁止している企業に対し「労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討す
ることが求められる」と明言しています。
こうした強い政府の後押しがあるため、副業解禁の動きは今後ますます加速していくと予想できます。
意識調査の結果、正社員の副業意欲は高い
『エン・ジャパン株式会社』が、20~40代の正社員約5000名に対しておこなったアンケートによると、88%の人が副業に意欲的であることがわかりました。
その理由としては『収入のため』というものが最も高く83%、続く『スキルアップのため』という人は23%です。このように副業に興味を持つ正社員は多く、副業市場はさらに拡大すると考えられます。
出典:5000名以上の正社員に聞く「副業」実態調査―『エン転職』ユーザーアンケート調査結果発表
公務員や、会社規定で副業禁止のケースも多い
公務員については国家・地方ともに、それぞれの公務員法で副業が禁止されています。
一方企業については、前項で挙げたアンケートによると、会社で副業が認められていると答えた人はわずか19%に留まりました。こうした人々は副業をしたくても、環境的に不可能ということになります。
ただし、公務員については一部副業を認めるという動きも出ています。企業の副業解禁は、企業判断に任されますが、政府が副業を後押ししているということがポイントです。社会全体が副業を容認する流れになれば、多くの企業もそれに従うと期待されます。
会社に副業を申請する流れ
副業をする場合、事前に会社に申請しなければならないケースがあります。会社に副業を申請する際は、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
就業規則や副業ルールの確認
副業を検討する前に必ず確認しておきたいのが就業規則です。いくら政府が副業を容認しているとしても、自身の会社のルールがどうなっているかは、必ず確認しましょう。
副業の扱いについては、次の3つのパターンに分けられます。
- 完全許可
- 条件付き許可
- 完全禁止
就業規則に副業についての記載が無い場合は、概ね『完全許可』と考えられます。
また、条件付き許可の場合は、申請を出せばOKというような簡易な条件から、『厳密な審査が必須』という厳しい条件まで、さまざまです。条件付き、と記されている場合は詳細な条件を確認しておきましょう。
最後の完全禁止は、副業の禁止について明記されている場合です。この場合は、『会社のルールが変わるまで副業はお預け』ということになるでしょう。
上司や担当者へ相談
前述したとおり、就業規則に副業についての記載が無い場合は、原則として副業可能です。とはいえ、副業によって何らかのトラブルや不都合が発生した時のリスクを考えれば、事前に上司や担当者などに相談しておく方が無難でしょう。
また、会社で副業が禁止されている場合でも、事情を説明すれば認められるケースもあります。もちろんこの場合も、上司や担当者のもとに赴き、丁寧に理由を説明しなければなりません。副業をしたいという意欲がある以上は、副業可でも不可でも、まずは上司や担当者に相談してみるのがベターです。
副業理由の書き方と注意点
副業の申請書の提出が義務づけられている場合は、副業理由を明記しなければなりません。書き方一つで相手の心証が変わるため、理由についてはきちんと練っておく必要があるでしょう。
副業を申請する際は、どんなことに注意して記載すればよいのでしょうか。
ポジティブな面を強調する
まず大切なのは、副業によって会社に貢献できるというメリットを示すことです。「副業でスキルアップを図って、今の業務に活かしたい」「違う環境でスキルを積んで視野を広げたい」などの理由はポジティブで説得力があり、好印象を与えられるでしょう。
ただし、こうした記述に信憑性を持たせるには、日頃の態度も重要です。普段から周囲と適切にコミュニケーションを取るなどして、真面目に働く人間であることを印象づけておくとよいでしょう。
お金が必要な場合は具体的に理由を書く
収入を増やすために副業する場合は、お金が必要な理由を具体的に記載しましょう。
副業の目的としてお金を挙げることは、悪いことではありません。ただし「お金が欲しいから」とだけ記入したのでは、端的すぎてしまいます。この場合「浪費癖がある」「会社の給料に不満がある」など悪い印象を持たれてしまうこともあるでしょう。
「親の介護のためのリフォーム費用が必要」「子供の教育のため海外留学費用が必要」など、お金の使い道をきちんと示せば、「収入を増やすため」という理由にも、正当性を持たせられるのです。
本業に影響を与えないことを伝える
2018年に『リクルートキャリア』が実施した『兼業・副業に対する企業の意識調査』によると、企業が副業を禁止する理由として最も多かったのは、副業が「長時間労働・過重労働を助長するため」というものでした。
企業の多くは、社員が副業によって体力面・精神面が不安定になり、本業が疎かになるのではないかと考えています。そのため申請を出す場合は本業に支障がない旨を伝え、会社の懸念を払拭することが重要です。
まとめ
副業する際は、まず会社の就業規則を確認し、副業の可否を把握することが大切です。申請書の提出を求められた際は、自己研鑽やスキルアップにまで言及して、『単なるお金稼ぎ』ではないことをアピールしましょう。
加えて多くの企業では、副業が本業に及ぼす悪影響を懸念しています。副業を始める際は本業に影響のない範囲で行うことをきちんと伝えておくのがベターです。