業務委託の請負契約とは?準委任との違いや契約時のポイントを解説

事業が大きくなってくると、業務の種類も増加してきます。それに伴って、専門外のことを外部に委託しようと考えることもあるでしょう。そのときに締結する業務契約の中でも『請負契約』に的を絞って解説します。基本的な契約ですのでしっかり押さえましょう。

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業務委託形態のひとつ、請負契約とは

まず請負契約とはどのような契約形態なのか、基本を解説します。

期日内での仕事の完成を目的とする契約

請負契約とは、一言で言えば『仕事の完成を目的とする契約』のことです。例えば、何らかの建物の建設などのように、完成しないと意味がない業務を契約する際には、請負契約が締結されます。

これは、委託者の要望に沿って仕事が完成することで、初めて報酬を得られる契約となっています。そのため一度契約が成立すれば、受託した側からは契約を解除できない仕組みになっているのです。

仕事のスケジュールや進め方などは自由

請負契約の場合には、成果物が要求されるので厳しい契約という印象がありますが、仕事のスケジュールなどの段取りに関しては受託者に委ねられています。

請負契約は仕事の過程よりも、結果が重視されるものです。しかし、契約の際には1年間の瑕疵担保契約も同時に締結されます。

※編集部注 民法改正により2020年4月1日より請負契約による瑕疵担保責任は契約不適合責任に変わります。

これは成果物が完成した後でも、1年以内に成果物に何らかの不具合が見つかった場合には、その修理をしたり、損害を賠償したりする契約のことです。

契約不適合責任では、何らかの不具合が発生した場合には注文者から履行の完追の請求・報酬の減額請求・損害賠償の請求(債務者の帰責事由が要件)がなされます。

ただし、注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者はその不適合を理由として、履行の完追の請求・報酬の減額請求・損害賠償の請求及び契約の解除はできません(民法637条)

そのため請負契約は、自由度が高い反面、求められる内容は大きく、責任も大きいと言えるでしょう。

業務に時間がかかっても報酬金額は同じ

請負契約の場合には、成果物の完成に時間がかかっても、報酬金額は変わりません。

例えば、請負契約の『仕事の完成』の定義が成果物の完成だけではなく、実際の売り上げが出ることまでを含めているケースを考えましょう。この場合、一定の売り上げが出るまでは報酬が発生しません。

つまり、結果が出るのに時間がかかればかかるほど、時給で考えると報酬が割安になってしまうのです。請負契約をする際は、契約の内容をよく確認しましょう。

榎本希

請負契約は、指定の期間内に契約した仕事の完成を行うという契約です。

時間や場所や仕事の進め方などのスケジュール管理は自由に行う事が出来ます。

仕事の完成を行う事で報酬が得られるというのが請負契約です。

請負契約と準委任契約や雇用契約とは違う大きな特徴としては契約不適合責任の有無があります。

これは成果物に対しての責任の有無です。

準委任契約や雇用契約にはこのような成果物に対しての責任はありませんが、請負契約はそもそも仕事の完成を約す契約であるため、このような責任があります。

なお現行法の民法では瑕疵担保責任ですが、2020年4月1日からは瑕疵担保責任は契約不適合責任へ変わります。

他の契約形態との違いを理解しよう

請負契約について解説しましたが、契約の形は他にもあります。他の契約形態との違いを把握しておきましょう。

準委任契約・委任契約との違い

委任契約は『委任契約』『準委任契約』の2種類に分かれます。委任契約とは、弁護や債務整理などの法律的な業務に関する契約を指し、それ以外は準委任契約です。

準委任契約とは、仕事の完成が目的ではなく、業務の処理、管理などが目的の契約形態です。最近多いのは、自社のホームページやサーバーの管理などの業務です。

準委任契約は、このように継続的な業務を依頼する際に締結されます。

サーバーの保守管理でも契約の内容によっては請負契約になります。

請負契約との違いは、成果物が未完成でも業務が処理されれば報酬を受け取れるということです。また、準委任契約は結果よりも過程が重視されるため、業務の進捗状況などの報告義務が発生します。

なお、どちらの契約形態でも途中で契約を解除することは可能です。ただし、相手が不利になるようなタイミングで解除する場合には、損害賠償の必要が発生する可能性があります。

請負契約の場合は原則請負人からの契約解除はできません。

派遣との違い

業務委託契約には、さまざまな形態がありますが、共通するのは『委託者と受託者が直接雇用関係を結んでいるわけではない』ということです。

同じ外部に委託する形態として『派遣契約』がありますが、この場合には派遣業者が間に入って仲介をしています。つまり、雇い主は派遣業者ですので、労働者を管理する権限は派遣業者にあるのです。

そのため、契約上のトラブルなどが起こった際も、やりとりをする相手は労働者本人ではなく、派遣業者となります。

榎本希

請負契約と準委任契約・委任契約との違いは仕事の完成を約す契約であるか、委任事務の遂行を約す契約であるかです。

請負契約は仕事の完成が目的であるのに対し、委任契約や準委任契約では委任事務の遂行を約す契約となります。

そのため、請負契約では仕事の成果物に対して報酬が支払われるのに対し、委任契約や準委任契約では成果物が未完成であっても報酬が発生します。

また、責任についても請負契約では契約不適合責任が発生するのに対し、委任契約や準委任契約では成果物に対する責任ではなく委任された事務を遂行する上での善管注意義務が発生します。

また、委任契約や準委任契約では当事者のどちらからでもいつでも契約の解除ができます。

請負契約と派遣契約との違いは雇用関係の有無です。

請負契約では委託者と受託者が対等な関係で仕事の完成を約す契約を行うのに対し、派遣契約は派遣会社と雇用契約を締結しているという点で異なります。

雇用契約ですので労働法の適用を受けると言う点でも異なります。

業務委託でのよくあるトラブルと回避方法

業務委託に関する基本的なことがわかったところで、次は業務委託で起こりやすいトラブルとその回避法について解説していきます。

仕事の未完成を理由に報酬が支払われない

請負契約の場合には、『仕事の完成』をもって報酬が支払われるという契約になっているので、仕事が未完成ならば、報酬を請求することはできなくなります。

請負契約で業務を請け負う場合は、なによりもまず『業務の範囲』を明確にしておくことが大切です。つまり、『何をもって仕事の完成とするのか』ということです。

ここで相手との意思疎通が上手くいっていないと、後になって『ここの業務をやっていない』『そんな業務依頼されていない』などのトラブルにつながる可能性があります。

改正民法により以下の場合には請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬の請求ができます。

1.注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなった時。

2.請負契約が仕事の完成前に解除された時。

委託者から強制的な指揮命令を受けた

前述のとおり、請負契約はあくまでも結果が重視される契約です。そのため、業務を遂行する過程に関して、委任者が口出しをする権利はありません。

もし、請負契約で働いているにもかかわらず委任者が過度に指示をしてきたり、命令をしてきたりする場合、『雇用契約』として認められる可能性があります。

そうなると、労働基準法に従って残業代などの請求が可能です。特に以下の状況に置かれている場合には、雇用契約であると判断される可能性が高いでしょう。

  • 時間や場所を拘束されている
  • 給料から源泉徴収されている
  • 機材が会社負担になっている
  • 給料が従業員とほぼ同じ
  • 会社の就業規制が適用されている
  • その会社に専属で働いている
  • 福利厚生の制度を受けている

トラブル回避には契約書をしっかりチェック

契約の際のトラブルを回避するには、とにかく契約書の内容をよく確認することが大切です。特に以下の内容に注意しましょう。

  • 業務範囲
  • 報酬の発生、支払日、支払い方法
  • 諸費用
  • 損害賠償について
  • 知的財産権

榎本希

①思っていた業務内容と注文された業務内容が違った。

このようなケースを回避するためには、契約を行う前に話し合いをした上でお互いに認識のズレが生じないようにしましょう。

②報酬が支払われない。

請負契約で多いのが仕事の未完成を理由とした報酬の不払いです。

このようなトラブルを回避するためには、契約をする段階で成果物に対して「内容」「品質」「状態」を明確にした上で依頼者と自分の間で成果物に対する認識のズレがないようにしておくことです。

また、契約の内容はしっかり契約書に記載し、報酬の発生・支払日についても書面に記載しておきましょう。

③業務や時間・場所などについて指揮命令を受けた。

このようなケースは偽装請負になる場合があります。

このようなトラブルを回避するためには、契約前にしっかり契約内容の確認を行う事が大切です。

契約内容に疑問がある場合には安易にサインをせずに確認を行うこと、専門家等へ相談するようにしましょう。

まとめ

副業で働いている人やフリーランスは、業務委託で働く機会も多くなりがちです。契約形態とその意味をきちんと理解しておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

契約形態をよく確認し、トラブルにならないように注意しましょう。

榎本希 [監修]

医療機関・医大の研究室にて長年勤務をした後、行政書士試験を受験。医療系許認可をメインに扱う行政書士として、行政書士のぞみ事務所を開業。再生医療関係の許認可・診療所開設・医療広告ガイドラインに基づく医療広告のチェック等の他、任意後見・契約書作成・起業支援を扱う。


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