勤怠管理とは
勤怠管理とは、社員の勤務状況を一覧で把握できるシステムのことです。勤務状況を把握しておけば、残業の時間数やシフトの状況、有給の取得状況もすぐにわかります。
法律の改正などもあり、勤怠管理の必要性は高まっています。もし勤怠管理をしていなければ、会社側が違法な労働状況を見過ごしてしまうことにも繋がります。
勤怠管理の必要性
勤怠管理システムは、社員の状況を把握するために必要です。もし会社が勤怠管理を行わず、サービス残業が横行している場合法律違反です。
法令を守るため、企業は勤怠管理を取り入れています。他の理由として、計算ミスやトラブルを防ぐためにシステムを取り入れているところが大半です。
従来の手書きの勤怠管理では、間違いや異なる申請などが把握できず、ミスやトラブルにつながっていました。しかし、システムで管理をすれば、手軽に出退勤の把握が可能です。
勤怠管理に関する法律
労働基準法では、1日8時間、週40時間を超える勤務がある場合、労働者に対して割増賃金を払うことを義務付けています。
また、職業によっても異なりますが、2019年4月以降、残業時間が月45時間を超えると企業に対して罰則が与えられます。以前もルール上同じ時間数が設定されていましたが、具体的な罰則はありませんでした。
法律の改正により、時間外勤務の把握や見直しが求められています。また、勤務時間だけでなく有給休暇の取得も法律で義務付けられました。
制度の開始は2019年4月からです。年に5日間、有給を取得していない従業員がいる場合、会社に対して罰則があります。
会社側は誰が何日有給休暇を取得しているのか、勤怠管理で確認しておかなければなりません。従業員側に罰則はありませんが、有給が消えてしまう上に、会社が罰金を払わされる事態となり、利益もないでしょう。
勤怠管理を怠ると
勤怠管理を怠ると、社員の勤務状況によっては会社がブラック企業として社名を公表されるなどのトラブルにつながります。政府が長時間労働など、労働基準法に違反する企業の対策として、社名公表を行っていることが理由です。
従業員側としても、残業代の不払いが起こるなど問題です。残業に関してうるさく言われるため勤怠管理を行わないなどの行為は、給与計算を行う部署に迷惑をかけることにもつながります。
システムに出勤や退勤の情報がなければ、その都度確認が必要になるためです。
働き方改革と勤怠管理
『働き方改革』が始まったことにより、勤怠管理システムはさらに重要度が増してきました。働き方改革の基本的な考え方は、長時間労働をなくし、非正規社員との格差を減らすことです。
また、女性や高齢者など、働く人を増やすことも推進しています。改革により、勤務時間が労働基準法で決められた範囲を超えると、時間外手当の問題が出てくるようになりました。
最近では副業が推進されていますが、本業で8時間働いた後に別の場所で働けば、時間外手当が発生します。
副業の推進で勤怠管理はより重要に
副業を始めようと考えていいる人は、発生する時間手当についても考える必要があります。
本業だけで労働基準法の時間数働いているため、それ以上の勤務は時間外手当が必要です。副業を始める場合、後から契約した企業は、時間外手当を支払うことと決まっています。
副業分の時間外手当を把握するためにも、勤怠管理は重要です。勤怠管理がきちんとできていなければ、どこから時間外手当が発生するのかわからなくなってしまいます。
勤怠管理の主な方法
勤怠管理には、さまざまな方法があります。昔ながらの手書き管理や、タイムカードを使い印字する方法も主流です。
また、エクセルなどを使い、手動で入力する方法も取られています。どの方法を選んでも、時間数の計算や給与計算など事務処理が別途必要です。
手書きでの管理
古くから使われている手法で、自分で出勤した時間や退勤した時間を記入するタイプの勤怠管理方法です。現在でも、PCを使わない企業では手書きでの管理をしているケースがあります。
手書きでの管理の場合、字のクセや登録ミスなどにより、何らかのトラブルの発生が考えられるでしょう。また、従業員側としても、業務とは関係のないところで時間を余計に取られます。
タイムカードの打刻
不正などをなくすため、タイムカードの打刻を採用している企業もあります。出勤や休憩、退勤などの際にカードを通すだけのため、手書きよりスムーズに管理が可能です。
しかし給与計算などのときには、社員それぞれのタイムカード履歴を確認し、個別に計算が必要です。また、有給取得などの管理は難しいでしょう。
また、タイムカードは誰でも機械に通せるため、実際の勤務状況が把握できません。通し忘れてしまった場合、時間が異なってしまうため手間もかかります。
エクセルなどデータで管理
給与計算やデータ登録の手間を減らすため、エクセルなどのデータで勤怠管理をしている会社もあります。エクセルのデータを利用する場合、社員はそれぞれ出退勤の情報をエクセルに入力しなければなりません。
残業などの申請を面倒に感じ、入力しない社員がいると計算の際に手間がかかります。また、データ連携が難しく、個別の管理はできてもそれ以上を求めると管理者に負担です。
社員全員の時間数の把握をしたい場合でも、なかなかうまく行きません。エクセルの関数に不慣れな社員が入力すると、誤って必要なデータを消してしまうなどのトラブルも考えられます。
さらに、手書きと同じように入力が必要なため、社員の手間としては手書き管理とそれほど差はありません。
勤怠管理は難しい?
勤怠管理は、毎日記入や入力さえしていれば問題ないように感じますが、難しいものです。打刻忘れや残業の申請忘れは、どうしても起こります。
また、社員が個別に気をつけて打刻をしていても、勤務形態や雇用形態の違いで労働基準法と照らし合わせた勤務状況の把握は難しくなるでしょう。
打刻忘れなどの問題
社員が打刻忘れをしてしまうと、そもそもの勤務時間が把握できなくなります。しかし書いたつもりで忘れていることや、タイムカードに印字されていなかったなどのトラブルはどうしても起こります。
出張や出先からの直帰の場合なども、勤怠管理が難しくなる原因です。会社に出勤していないため、手書きやタイムカード、エクセルでの入力ができません。
あとで入力や申請をしようと考えていたとしても、わからなくなってしまいます。状況によっては勤務時間の水増しや、残業をしなかったことに改ざんされるなど問題も起こりやすいでしょう。
雇用形態や勤務形態の問題
アルバイトなど時短勤務の場合、残業していても労働基準法の範囲内で収まるケースがあります。しかし、正社員の場合、通常の勤務時間を超えると残業代が発生するでしょう。
時間外手当を支払えば違法にならない範囲もありますが、毎月の残業時間が多すぎると残業代が支払われていても違法です。雇用形態によって勤務時間の上限や状況が変わるため、すべての従業員に対して注意を払うことは困難です。
また、それぞれシフト勤務をしている場合、誰が何日働いているのか一括での管理が難しくなります。手書きやタイムカード、エクセルに個別に入力されたデータを見ていても、誰がどのくらい働いているのかすぐに把握できないためです。
勤怠管理システムが注目されている
最近では、手書きやタイムカードなどでの勤怠管理ではなく、勤怠管理システムを使った管理が注目されています。システムを使えば、それぞれの出勤や退勤の情報だけでなく、分析も可能です。
仮想通貨などで知られる、ブロックチェーンでの開発も進んでいます。
勤怠管理システムとは
勤怠管理システムは、手書きやタイムカードなどの勤怠管理で起こる問題を解決するツールです。ICカードやスマートフォン、ログインなどで出退勤や有給残日数などを把握できます。
社員は出勤や退勤のときに、ICカード(またはシステムへのログイン)を使うだけで勤怠管理が終了するため手間もかかりません。自動計算が行われ、勤務時間や時間外勤務などの状況も一目瞭然です。
管理だけでなく分析も可能
単に出勤や退勤の状況を確認するだけでなく、勤怠管理システムは社員の勤務状況の分析が可能です。たとえば店舗や拠点ごとにどのような勤怠状況になっているのかがまとめて表示されるため、人手不足やシフトの見直しなど、より良い労働環境を作るヒントになります。
残業時間がオーバーする前に警告を出すなど、法令に違反する前に気づける機会も作れるでしょう。また、有給休暇の取得日数もそれぞれわかります。
いつなら有給休暇が取得できるのか、シフト管理の際に組み込むこともでき、有給が取れない社員が出てくることもありません。
ブロックチェーンでの開発も進んでいる
仮想通貨などのシステムを作成するブロックチェーンでも、『トークン』を使った勤怠管理システムが開発されています。本来仮想通貨の受け渡しに使われている機能ですが、勤怠管理システムに活用することで、出勤や退勤の状況が管理者にわかるようになり、便利です。
たとえば、実際に開発されている勤怠管理システムでは、出勤や退勤の際に従業員と管理者がコミュニケーションを取ることができ、実際に出勤・退勤している様子が管理者に伝わります。他の人が代理でタイムカードを通すことや、業務をしていないのに残業しているように見せかけるなどもできなくなるため、不正も起こりにくいでしょう。
勤怠管理システムを使うメリット
勤怠管理システムを使うと、今まで勤怠管理や給与計算、シフト調整に使っていた時間がなくなり、業務効率化につながります。また、コンプライアンスに沿った管理ができているのか、正確に把握できることも特徴です。
後からトラブルが起こりにくいなとのメリットもあります。残業が多すぎる社員への声かけなどもでき、従業員全体の健康維持もできるでしょう。
業務効率の向上
勤怠管理システムでは、給与計算の自動化やそれぞれの勤務状況に合わせたシフト管理などが可能です。今まで時間をかけて行っていた計算やシフト調整に時間を取られることがなくなり、業務効率も上がります。
また、手書きやエクセル入力を使っていた場合は、従業員自体の手間も軽減されます。わざわざ名前や時間を記入する必要がなく、カードを読み取るなど一瞬の手間で勤怠が登録されるためです。
正確な管理やデータ活用
手書きや手動での勤怠管理では、どうしてもデータに正確性がありませんでした。他の人が勝手に記入することや、カードを通しておくこともできてしまいます。
人数が多い場合、勤怠を登録しているうちに退勤時間を大幅に過ぎていることもあるでしょう。勤怠管理システムでは、カードを通したときやシステムにログインしたときに出勤・退勤の情報が入力されます。
リアルタイムで勤務時間が入力されるため、細かい時間外手当の計算や把握も可能です。
トラブル回避
勤怠管理システムを導入すれば、トラブル回避にもつながります。残業のしすぎで労働基準法に違反してしまうなど、トラブルを未然に防げます。
会社側としてもブラック企業に認定される不名誉を予防でき、訴訟などの問題に発展する前に対策が可能です。従業員側も、勤怠管理システムの情報を元に時間外手当を請求できます。
健康維持や生産性の向上
従業員の健康維持には、会社がそれぞれの勤務状況を把握しておくことが重要です。法律に違反するほどの残業が発生する前に、仕事の割り振りやシフト調整ができます。
勤怠状況を知れば、適切な日程に必要な人材を配置することも可能です。分析を行えば、生産性の向上にもつながります。
勤怠管理システムを利用した例
実際に利用されている勤怠管理システムの例として、ICカードやスマホでの認証や、生体認証を使ったシステムがあげられます。また、ログイン後にすぐ申請や承認が可能で、残業時の手間が省けることも特徴です。
システムを導入し、給与計算や社員の勤務時間数の計算など、事務処理が大幅に減った例もあります。
ICカードでの認証
会社用のICカードや、交通系ICカード、電子マネーなどさまざまなカードを使って打刻できる仕組みです。スマートフォンも利用できます。
ICカードをかざすだけで出勤や退勤が管理でき、従業員側にも負担がありません。ただしICカードやスマートフォンを忘れてしまったときは打刻ができないため、いつも使うカードを1種類用意しておきましょう。
スマホでの認証
会社で出退勤を行うわけではなく、別の場所で勤怠管理をしたいときにおすすめです。スマホを使ってログインするだけで、勤怠管理ができます。
会社に出勤することがほぼないテレワークや、営業先への直行直帰など、さまざまなケースで使えます。クラウド型の勤怠管理システムは、多様な働き方を導入している企業で使いやすいタイプです。
生体認証
他の人が代理で出勤や退勤の処理をできないよう、生体認証を取り入れた勤怠管理システムもあります。顔や指紋、静脈などを使い、システムにログインする仕組みです。
勤怠管理としての側面はもちろん、セキュリティ対策としても活用できます。なりすましで社内に入って来られては困る場合や、正確なデータ管理を行いたいときに最適なシステムです。
また、必ず本人が登録するため、上司なども出退勤状況を改ざんできません。
ワンクリックでの申請や承認
勤怠管理システムでは、時間外勤務が発生した社員からの申請を受け付けることができます。また、有給休暇の取得や、スケジュール提出なども合わせて可能です。ワンクリックで申請できるため、その都度書類を作成する手間がありません。
管理者側も、内容を確認し、問題がなければボタンを押すだけで承認作業が終了します。数多くの従業員がいる場合でも、確認や承認の手間が大幅に短縮されるため便利です。企業に合わせた設定も可能で、管理者の手間を軽減します。
まとめ
勤怠管理は手書きやデータを使っても、計算やシフト管理が難しい物でしたが、現在はそれらの問題を解消する『勤怠管理システム』が登場しています。ICカードや生体認証などを使い、本人が出勤・退勤時間を登録するシステムです。
働き方改革により法律の改正もあり、勤怠管理の重要性は高まっています。特に、副業を始めるサラリーマンにとっては、副業分の時間外手当の支給にもかかわる話です。
勤怠管理システムで自分がどれだけ働いているのか管理しておけば、健康維持やトラブル防止にも役立つでしょう。