SES契約を一人で受けるのは違法?準委任契約について知ろう

SES契約とはどのような契約なのか、派遣契約との違いやメリット・デメリットをまとめました。また、SES契約で、違法性があるケースについても紹介しています。また、今回は、行政書士の岩井和幸先生にお伺いしました。

SES契約は委託契約の一つ

『SES契約(システムエンジニアリング契約)』は委託契約の一種ですが、請負契約のように完成したシステムに関する責任はありません。

あくまでも、システム関連の作業を発注した人の代わりにするだけで、問題があっても修繕などの義務を負わないのが特徴です。

『派遣契約』とも少し内容が異なります。特有のメリット・デメリットがあるので、SES契約を結ぶかどうかは、どのような仕組みなのかを確かめてから考えましょう。

準委任契約に該当する

SES契約は『準委任契約』に該当します。顧客のところに出向いて作業をするのは派遣契約と似ていますが、あくまでも『本来なら顧客が自分でしなければならない作業を代行する』だけです。

顧客が指示を出せるわけではなく、実際に作業をする受注者が手段を決めて、臨機応変に業務を進められます。

ただし、受注者が1人で作業を進められるわけではありません。作業員の上司として指揮管理を担当する責任者が必ずついてくるので、その責任者の指示に従う形になります。

SES契約と派遣の違い

SES契約と派遣契約にはどのような違いがあるのでしょうか。

「SES契約は指揮命令権が雇用者のSES企業にあります。一方、派遣契約は指揮命令権が発注元のクライアント企業にあります。」

つまり、派遣契約は、あくまでも顧客(派遣先)の指示に従う必要があります。SES契約との大きな違いは『誰の指示に従うか』です。

SES契約は、自社の責任者の指示に従っていれば、自分の裁量で仕事ができますが、派遣契約だと派遣先の指示が優先されます。派遣契約はあくまでも、労働力として雇われているためです。

さらに、派遣の場合は一つの企業に従事するので、いったんプロジェクトが完了すると、次の勤務先に派遣されるまでは仕事がなくなります。

そのほか、成果物に対する責任に関しても違いがあると言えるでしょう。

どちらもできあがったものに責任を負うことはありませんが、SES契約の場合は、作業完了時に成果物の納品書にあたる『作業報告書』などの提出が求められます。

SES契約のメリット

SES契約のメリットはどのような点にあるのでしょうか。

「雇用者にとってのSES契約のメリットは、次の2点となります。
  • 指揮命令が雇用者のSES企業にあり、常駐先の企業の指示をすべて受ける必要がない点
  • 成果物に対して責任が少なく、時間によって報酬を請求できる点
一方、SES企業側にとっては、時間給で安定した収益が期待できる点にメリットがあると言えるでしょう。」

SES契約のメリットは、ある程度手段やシステムを完成させるための方法が自社に任され、好きなように作業が進められる点です。

顧客側は、細かい指示を作業員に出してはならないと決められています。また、報告書は提出しますが、できあがったものに問題があっても、責任も問われません。

派遣契約と違い、一つの会社に勤める契約ではないため、仕事が途切れないことも特徴です。

SES契約のデメリット

SES契約のデメリットはどのような点にあるのでしょうか。

「SES契約のデメリットは、

  • 責任範囲が狭まるので、その分報酬が少なくなるという点
  • 派遣や請負契約との違いが正しく認識されずに契約範囲外の業務を指示される点

の2つです。」

一人での客先常駐は違法?

「一人での客先常駐は違法行為にあたります。客先の会社(顧客)が直接作業員に対して指示を出す形になり、そうなると派遣契約を締結する必要があります。客先常駐する場合は2人以上必要です。顧客は指示を出せないわけではありませんが、作業員ではなく、管理責任者に対して話をします。もし一人で常駐させると、顧客側が作業員に指示することを容認しているとみなされてしまうのです。」

SES契約は、自社社員の管理責任者と作業員がセットで行動しなければ指示が出せないためです。

もし、顧客側が直接作業員に指示を出しているなら、派遣として契約する必要があります。委託契約のように見せかけて、実際は派遣契約と同じ内容で働く形では、法律的に問題があるでしょう。

二人以上の常駐が必要

客先常駐する場合は『二人以上自社社員』が必要です。顧客は指示を出せないわけではありませんが、作業員ではなく、管理責任者に対して話をします。

作業員に直接何らかの指示を出し、雑用などの業務をさせることはできません。仮に、一人で常駐すると、顧客側が作業員に指示することを容認しているとみなされます。

SES契約で違法となるパターンと罰則

どのようなパターンでSES契約は違法になるのですか?

「違法となるパターンといたしましては、違法派遣と偽装請負のパターンです。この2つのパターンで本来は派遣社員や業務請負のような内情でありながら、SES契約と見せかけている場合です。罰則としてはその仕事を受注した会社の社名を公表と一年以下の懲役または100万円の罰金を科せられます。」

違法派遣と偽装請負

本来、派遣契約は、派遣会社を通して契約されます。請負契約なら『作業員に直接責任が問えるぶん完成品に対する報酬は高くなりがち』です。

一方のSES契約は『安く雇える代わりに直接顧客側からは指示が出せない仕組み』になっています。

しかし、その仕組みがきちんと守られていないと、最悪の場合『給与が安いうえに違法派遣や偽装請負の片棒をかつがされる』ことになるでしょう。

科せられる罰則

もし『違法派遣』や『偽装請負』と判断された場合、SES契約で働いている本人に被害が及びます。罰則は『その仕事を受注した会社』に科せられるためです。

社名が公表され、100万円以下の罰金もしくは1年以下の懲役が科されます。自分の会社が罰則を与えられて契約者本人も働き続けられなるのは、大きな問題です。

SES契約の内容が一人なら確認を

SES契約で働くことになった場合、一人で客先に行くようなことがないように、くれぐれも注意しましょう。

違法性があることを事前に把握していれば、危険を察知して発注側や自分の会社に報告もできます。罰則が与えられるような状況に陥る前に、違法性を指摘することが必要です。

岩井和幸 [監修]

某大手損保会社のサービスセンターに8年間勤務、在職中に行政書士の資格を取得。損害保険金の支払い調査などの業務を担当。その後、地元の不動産会社に転職。在職中に宅地建物取引士の資格を取得。賃貸物件の仲介、管理、リフォーム工事などを担当し10年間勤務する。昨年8月に行政書士として独立・開業する。現在は相続関係の相談や土地売買に関する許可申請など多岐にわたる業務を取り扱う。

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