業務委託は立場が弱い
なぜ業務委託は、立場が弱くなってしまうのでしょうか。
「業務委託の立場が弱くなってしまうのは、
- 仕事(報酬)をもらう側なので、発注者の言い分をきいてしまいがちな点
- 人間関係を悪くすると今後の発注に影響するのではないかとの不安
- パワハラを表ざたにすると発注者からの嫌がらせが強まる恐れがあるとの不安
- 雇用関係にないため、労働者保護を目的とした法令の適用されない点
にあります。」
パワハラを受けた場合、正社員や派遣社員と比較して、業務委託で働く人は立場が弱い傾向にあると言われています。それはなぜでしょうか?
労働基準法で守られない
業務委託は『請負契約』もしくは『準委任契約』などを締結することになりますが、『雇用契約』と異なり二つの契約は労働基準法が適用されません。
労働基準法では労働時間や労働条件、最低賃金などについて定められていますが、業務委託の場合にこれらの規定はなく、事前に交わした契約内容書や、依頼先の裁量によるところが大きくなります。
そのため企業と雇用契約者を締結している社員よりも弱い立場におかれてしまうことが多いのです。
契約の壁により強く出られない傾向がある
フリーランスにとって、次回の仕事がもらえるかどうかは死活問題です。一方、クライアントにとってはそのフリーランスがダメだった場合でも、他のフリーランスを採用するという道が残っています。
もちろんフリーランスも別のクライアントを探すことはできるので、一見すると対等の権利に見えますが、フリーランスの場合、自分で営業をかけなければならないといった作業の手間や、次も確実に仕事にありつけるとは限らないという不安があります。
また、労働基準法や派遣法の適用外であるフリーランスは、途中で契約を打ち切られても保護されません。こういった理由から、クライアントに対して強く出られないという傾向があります。
発注者、受注者という上下関係ができがち
仕事をどの程度任せるか、契約が満期になったときに更新するかといった決定権は発注者側にある場合がほとんどです。そのため、発注者と受注者の間に上下関係ができてしまいます。
そのため無理な仕事を任されたり、不当な待遇を受けても強く出られなかったりといったことが、しばしば発生してしまうのです。
パワハラを受けた場合の対策は?
パワハラを受けた場合、どのような対策ができるのでしょうか。
「パワハラを受けた際にできる対策は、
- 明確に「No」を言う
- 記録を残す
- 相談窓口に相談する
の3つです。」
実際のパワハラの具体例と共に、やるべきことを把握しましょう。
パワハラの定義と具体例
パワハラの定義とはなんなのでしょうか。
「職場におけるパワハラの定義とパターンについて、2020年1月15日に厚生労働省が新たに指針を出しています。
定義は、職場で行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものです。
これには下記の6つのパターンがあります。
パターン(6類型):
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)
- 過大な要求(遂行不可能な業務の強制、仕事の妨害)
- 過小な要求(能力・経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない)
- 個の侵害(私的なことにに過度に立ち入る)」
パワハラを一言で言うと『職場における地位や契約上の優位性を利用し、苦痛を与えて職場環境を悪化させること』です。具体的には三つのパターンがあります。
第1に『断れば不利益を被ることをほのめかして、圧力をかけること』です。立場を利用して反論を封じているのであればパワハラにあたります。
第2は『業務の適正な範囲を超えた命令や指示を与えること』です。特に業務委託では業務命令を依頼者が直接行ってはいけないことになっています。契約にない雑務をやらせることはパワハラです。
第3に『相手に精神的苦痛を与えることや、作業環境を害する行為』を指します。大声で罵倒する、悪口を言うなどはもちろん、作業に必要な機材や情報を与えないといったこともパワハラです。
内容や状況を記録し証拠を作る
パワハラで問題なのが『客観性』です。誰かに報告をするにしても、事実確認が取れなければパワハラと判断されにくいことがあります。
そこで、パワハラに関する内容や情報を記録しましょう。日時や場所、相手、どんなことをされたのかを具体的に整理して記録します。
同時にパワハラと思われるメールの保存や会話の録音、パワハラが原因で病院にかかった診断書などがあれば提出できるように準備を整えておきましょう。
専門機関への相談が近道
こういった問題では該当者の上司や企業内の内部通報窓口などに報告することも必要ですが、思い切って専門機関に相談するという手もあります。
第三者の立場にある専門家からの客観的な意見を得られれば、先方も自分自身も納得がしやすいでしょうし、必要であれば法的手段への手続もしやすくなります。
パワハラ問題について扱う弁護士や、人権侵害・下請けいじめに関する相談窓口などに相談してみましょう。
業務委託が相談できる専門窓口
業務委託に従事するにあたって、相談できる専門窓口を知っておくとよいでしょう。何かあったときにすぐに動けるようにしておくことも大切ですし、心のよりどころにもなります。
自治体の無料法律相談
市役所などで、住民向けサービスの一環として無料の法律相談を行っているところは多くあります。
相談するための条件も、自治体に住民票があることなど、比較的ゆるいことが多く、相談しやすいと言えるでしょう。相談回数に制限がある場合があるので、1回の相談を濃いものにできるよう、記録や証拠を持参することをおすすめします。
弁護士や司法書士、行政書士
弁護士、司法書士、行政書士のうちどの法律職に相談すべきなのでしょうか。
「パワハラは紛争性を有する問題のため、弁護士以外の隣接法律職では取り扱うことができません。
また、所轄官庁としては、職場のパワハラを扱う厚労省ではなく、人権侵害を所轄する法務省や下請けいじめを所轄する公取委になりますので、自治体の無料法律相談は微妙と思います。」
弁護士や司法書士、行政書士といったような法律のプロに相談するという手もあります。
基本的には相談料がかかりますが、その分しっかりとしたアドバイスや手段を講じてくれることが多いです。
また弁護士会が開いている相談会を利用するという方法もあります。こちらは自治体の相談とは違って無料とは限りませんが、比較的安く相談することが可能です。
まとめ
業務委託は労働法で守られていないため、立場が弱くなってしまう傾向にあり、パワハラを受けやすい立場におかれることが多いでしょう。
実際にパワハラを受けた場合は、記録や証拠をしっかりと保存しておき、弁護士や行政書士などの法律のプロに相談することをおすすめします。