業務委託契約を終了する方法
特定の企業や団体に属さず働くフリーランスの場合、『業務委託契約』を結ぶことがほとんどです。
業務委託契約とは、クライアントから依頼された業務を遂行することで報酬を得る契約を指します。
フリーランスではよく聞く契約形態ですが、実際のところ民法上に『業務委託契約』という契約は存在しません。業務委託契約という場合は、民法上の『請負』『委任』の2つの契約を総称するものと理解しておきましょう。
なんらかの事情でこの契約を終了させたい場合、どのような方法があるのでしょうか。
契約満了後、更新しない
契約で業務期間が定められている場合は、更新手続きを取らなければ契約は自動的に終了します。まずは、事前に交わした契約書を見て、契約期間や更新について確認しましょう。
契約満了期間が近ければ、その日を待つのがベターです。しかし、満了まで期間が空いてしまう場合は、途中解約を申し出るという選択肢も考えるでしょう。
途中解約する
やむを得ない事情があれば、契約期間の途中でも解約できる場合があります。
ただし契約満了前に解約する場合は、事前に結んだ契約内容に沿って手続きをしなければなりません。契約期間の途中で解約する場合の注意点について、次の項で詳しく解説します。
岩井和幸
事前の契約で業務期間が定められていれば更新せずに契約期間の満了を待って終了します。
契約期間中であれば途中解約を申し出ることもできますが、その場合契約内容によってはペナルティを追うケースもあるので事前に契約内容をよく確認する必要があります。
契約期間中に終了したい場合の対処法
請負契約では、事前に結んだ契約がすべてです。そのため途中解約についても、契約書の内容に準ずる必要があります。
クライアントとの関係を損なわず円満に契約を終えるにはどうすればよいのでしょうか。
解約条件を確認する
まず大切なのは、契約書にある解約条件を確認することです。『書面での通知が必須』『通知は3カ月前までに』など書かれていれば、それに従って解約を進めましょう。
途中解約はクライアント・請負者の双方が申し出る可能性があります。請負者の事情で解約となるケースもあれば、クライアント側が請負者に不満を持って解約したいというケースもあるでしょう。
そのため、途中解約についての条項は、双方に配慮した内容で取り決められていることがほとんどです。事前にきちんと解約条件を定めていれば、円満な解約も難しくないでしょう。
委任契約と請負契約で差がある
業務委託契約では、委任契約よりも請負契約の方が解約しづらいというのが一般的な解釈です。
まず委任契約とは、業務そのものを主目的に結ばれた契約です。定められた期間中は業務に従事することが求められますが、何らかの成果物が求められる契約ではありません。
一方、請負契約とは、発注された業務を完成させ、その対価として報酬を得る契約です。請負者は成果物をクライアントに納める必要があるため、仕事の完成が求められます。
仕事の対価は『成果物』のため、成果を出さないままに辞めるのは、契約の性質上困難なのです。
書面を作成する
請負契約を解除する場合は、『契約解除通知書』を作成してクライアントにその旨を通知する必要があります。通知書を作成する際は、次の4つのポイントに注意しましょう。
- どの契約についての通知であるのかを明確にする
- 契約解除したいという明確な意志を示す
- 解除理由を伝える
- 契約解除期限を明記する
上記に加え、日付、宛先、自社名を記載することで、契約解除通知書としての様式が完成します。この文書の通知後にクライアントからの合意が得られれば、『契約解除合意書』を取り交わして、契約解除手続きは完了です。
岩井和幸
クライアントと円満に契約を終える上で必要なポイントは、
・契約書の解約条件をよく確認する
・『契約解除合意書』などを作成し、お互いの署名捺印をし、文書として残す。
などになります。
契約違反はリスクが伴う
結んだ契約内容によっては、途中解約は契約違反と見なされることもあります。クライアントが契約違反だと判断した場合、どのようなリスクが考えられるのでしょうか。
成果物がないと報酬が支払われない可能性あり
請負契約を結んで働く場合、成果物の納品は必須です。そのため、途中解約で成果物を納品できない場合は、仕事に従事した期間にかかわらず報酬がゼロになる可能性があります。
どんなに不満を訴えても、途中解約時の報酬については、契約内容通りにしかなりません。まずは自身の契約を確認し、途中解約時の報酬について記載された内容を探しましょう。
ここで契約上『報酬ゼロ』と定めているなら、報酬はもらえない可能性が高いです。不満がある場合はクライアントへの相談も可能ですが、一旦結んだ契約を覆すのは、ほぼ不可能でしょう。
違約金や損害賠償のリスクも考慮
契約を途中で解除することで、クライアントから違約金や損害賠償を請求されるおそれもあります。
たとえば、契約書に途中解約についての取り決めが明記されていない場合、基本的に請負者からの契約解除はできません。途中解約は明らかな契約違反と見なされ、違約金が発生するケースもあるでしょう。
また、成果物を納品できないことによってクライアントが損害を被れば、損害賠償を請求されるおそれもあります。
契約書に損害賠償義務についての範囲を定めていない場合は、『会社の評判が下がった』などの間接被害まで賠償範囲に含まれるかもしれません。この場合、損害賠償は莫大な額になることもあります。
信頼を損なう危険性もある
契約を途中で放棄することは、クライアントとの信頼関係にも影響します。特に請負契約の場合は成果物を納品せずに辞めてしまうことになるため、クライアントの心証が悪くなることは避けられないでしょう。
クライアントに契約解除を申し出る際は真摯な態度でお願いし、求められれば必要な事由を書面にまとめて提出します。信頼関係を壊さないよう、言葉や態度には十分気をつけ、誠意を見せることが重要です。
岩井和幸
クライアントによって途中解約が契約違反と見なされた場合のリスクとして、
・請負契約の場合、途中解約で成果物を納品できなければ報酬が支払われない可能性がある。
・契約書に途中解約の取り決めが明記されていない場合、クライアントから契約違反として違約金や損害賠償請求をされる可能性がある。
・クライアントの心証が悪くなり、信頼関係が破綻する可能性がある。
が挙げられます。
まとめ
業務委託契約を契約途中で終了する場合、まずは契約書の内容を確認することが重要です。契約書で途中解約についての取り決めが成されていれば、それに従って手続きを行いましょう。
ただし、途中解約には違約金や無報酬、クライアントとの信頼関係の喪失など様々なリスクがあることも承知しておく必要があります。安易に契約解除を申し出るのではなく、なんとか契約を満了するよう力を尽くすのがベターです。