ラズベリーパイの特徴まとめ。手軽にIoT機器開発に挑戦できる

コンパクトな手のひらサイズの大きさで、安価に手に入るコンピュータとして人気がある『ラズベリーパイ』をご存知でしょうか。さまざまな機能を備え、本体だけではなく周辺機器も充実しています。ここでは、ラズベリーパイの特徴を解説します。

ラズベリーパイとは

ラズベリーパイとは、ラズベリーパイ財団によってイギリスで開発された、ARMプロセッサを搭載したシングルボードコンピュータです。

2012年2月に最初のバージョンのラズベリーパイが発売されて以来、2016年11月までに全世界で累計1100万台以上が販売されています。

ラズベリーパイのようなシングルボードコンピュータは、別名ワンボードマイコンとも呼ばれ、一枚のプリント基盤の上に、最低限の電子機器を搭載したシンプルなマイクロコンピュータです。

ラズベリーパイは、どのような使われ方をしているのでしょうか。

電子工作入門ツールとして人気

もともと電子工作に取り組むためには、さまざまな電子部品や半導体素子などを使いこなす専門的な知識やスキルが必要とされていました。

しかし、ラズベリーパイは簡素でありながらOSやポートを備えているため、通常のコンピュータと同様に扱うことができます。電子工作の入門ツールとしても人気があり、周辺機器を組み合わせて多くの電子機器を作ることも可能です。

事例として、生徒1人につきラズベリーパイを1台提供して、プログラミングの学習を行なっている小学校があります。さらに、ラズベリーパイを使った電子工作やアプリケーションの制作を競うコンテストも実施されています。

子供から大人まで、これまで電子工作に触れてこなかった人々の入門ツールとして、ラズベリーパイは幅広く活用されているのです。

PCの代わりとして使用可能

ラズベリーパイはARMプロセッサを搭載し、メモリは1GB、さらにmicroSDを利用して情報を記録することも可能です。

映像出力としてHDMIがあり、USBポート、LANポートもあるので、ネットワークにつなぐこともできます。ラズベリーパイは、小さいながらもさまざまな機能を搭載しており、PCの代わりとしても使用可能な電子機器なのです。

当初は教育用に開発

もともとラズベリーパイは、学校でのコンピュータ科学の教育を推進する目的で作られました。巨大インターネット企業であるGoogleでも、10代向けにラズベリーパイを利用したプログラミングのワークショップを開催しています。

これからコンピュータを学ぶ若者たちにとって有用な教材として、ラズベリーパイは開発されたのです。

出典:Raspberry Pi Foundation - About Us

ラズベリーパイの魅力

ラズベリーパイは、名刺サイズのコンパクトな基盤にさまざまなハードウェアが搭載されているだけでなく、OSやディスプレイ、キーボードやマウスを用意すれば、立派なデスクトップパソコンとして組み立てることもできます。

ここでは、教育現場を中心にあらゆる場面で活用されているラズベリーパイの魅力を紹介します。

価格が安い

ラズベリーパイは、もともと学校で子供たちにコンピュータ教育をする目的で開発されたものです。価格も約5000円と安く抑えられており、比較的購入しやすいというメリットがあります。

コンピュータの価格が10万円前後であることと比べると、大幅に安い価格設定であり、子供でも手に届く範囲だと言えます。

拡張性が高い

ラズベリーパイの特徴として、その拡張性の高さがあげられます。ラズベリーパイに対応したソフトウェアやハードウェアが豊富にあることから、自分のアイディアと予算次第で幅広い用途の電子機器を作成できます。

ラズベリーパイを使って、Webサーバや防犯カメラ、ビデオプレーヤーやロボットなど、さまざまな電子機器を作ることが可能なのです。

初心者でも始められる

ラズベリーパイがいくらシンプルなコンピュータだとしても、初心者が使い始めるにはハードルが高いと感じる方も。

しかし、多くのメーカーからラズベリーパイを使用した電子工作キットがいくつも販売されており、子供でも手軽に始められる環境がすでに用意されています。

コンピュータの専門知識がない初心者であっても、ラズベリーパイを使ってさまざまな電子機器を作ることができるのです。

ラズベリーパイの使い方の具体例

ラズベリーパイは、安価ながらCPUやメモリ、USBポートやLANポートなどの出力端子を備えており、コンピュータと同じように使えるという特徴があります。

OSはRaspbian(ラズビアン)というラズベリーパイ用に最適化されたLinuxが利用できることから、ラズベリーパイには見た目以上に多くの使い道があるのです。ここでは、ラズベリーパイの使い方の具体例をいくつか紹介します。

センサーをつけて情報収集

ラズベリーパイに温度センサーや湿度センサー、気圧センサー、光センサーなどを接続することで、さまざまな情報収集ができます。ネットワークに接続することで、これらの情報を遠隔操作で収集することも可能です。

ラズベリーパイを利用すれば、外出先からも自分の部屋の温度を確認することや、室内から屋外の電灯のスイッチをオンにすることもできます。防犯システムや自動管理システムなど、工夫次第で幅広い用途に活用できる優れた機能を持っているのです。

スマートテレビ

ラズベリーパイにはHDMI端子があることから、液晶テレビとつなぐことで、スマートテレビとしてインターネットを楽しむことができます。

通常のスマートテレビに比べると多少動作にもたつきはありますが、簡易的なWebブラウザとして十分に機能するので、利用価値は十分です。

Webサーバ

ラズベリーパイはLinuxの動作環境が整っていることから、簡易的なWebサーバとしての利用が可能です。

仕事で利用されているような大規模Webサーバほどの機能は有していませんが、簡単なWebページや小さな容量のファイルなどであれば、ラズベリーパイで作成したWebサーバに保存でき、外部からアクセスすることが可能となります。

IoT機器

ラズベリーパイにはGPIOピンという端子があり、この端子を利用することで、手軽にIoT機器を作ることができます。

コンパクトながらさまざまなセンサーと組み合わせることで、設計段階から機器を構築することなく、多彩なIoT機器の制作が可能となるのです。

例えば、ラズベリーパイを使ったモバイルバッテリー、iPhoneのSiriを活用した音声での家電操作などが、ラズベリーパイを活用することで可能になります。

超小型パソコンとして使う手順

ラズベリーパイは超小型のパソコンとして利用できますが、購入したばかりの新品の状態のままでは、パソコンとして利用することはできません。パソコンとして利用するのであれば、いくつかの手順を踏んで準備をする必要があります。

ここでは、ラズベリーパイを超小型パソコンとして使う手順を具体的に解説します。

用意するもの

ラズベリーパイをパソコンとして利用するにあたり、用意しなければならないものがいくつかあります。以下に必要なものを挙げてありますので確認してください。

  • ラズベリーパイ本体
  • 有線キーボード
  • 有線マウス
  • ディスプレイ
  • HDMIケーブル
  • マイクロUSBケーブル
  • USB電源アダプタ
  • microSDカード

ラズベリーパイはコンピュータなので、パソコンを利用する際に必要とされる機器やコード類は、ラズベリーパイを利用する際も必要になります。大型家電量量販店やパソコンショップで手に入るので、事前に購入しておきましょう。

SDカードにOSをダウンロード

ラズベリーパイにはストレージが存在しないことから、そのままでは利用できません。利用する際は、microSDカードにOSをダウンロードする必要があります。

ラズベリーパイに対応するOSにはRaspbian(ラズビアン)とNOOBS(ヌーブス)があり、専用ページより無料ダウンロードが可能です。いずれかのOSをダウンロードしたらZIPファイルを開き、中身のデータをmicroSDカードに移しましょう。

OSのダウンロードページ|ラズベリーパイ公式サイト

必要機器の接続

用意した機器類をラズベリーパイに接続します。キーボードやマウスは無線タイプでも可能ですが、反応しないというトラブルが起きる可能性があるので、初心者は有線タイプがおすすめです。

HDMIケーブルはディスプレイに接続して利用します。マイクロUSBケーブルと電源アダプタは最後につけるようにしましょう。

OSインストール

全ての機器をラズベリーパイに接続して電源を入れたら、次はいよいよOSのインストールです。ラズベリーパイが起動したらチェックボックスにチェックを入れ、言語を日本語設定にします。

『Install』をクリックすると『本当にイメージを書き込んでもよいですか?この操作で既存のすべてのデータは削除されます!』と表示されますので、『はい』を選択しましょう。その後、インストールがスタートします。

約15分後、無事にOSのインストールが完了すると、ディスプレイにラズベリーパイのマークが表示されます。

ラズベリーパイ専用キットが色々ある

ラズベリーパイにはいくつかの専用キットが用意されています。もともとラズベリーパイは教育機関用に開発されていたことから、初めてラズベリーパイに触れる人のために、学習に必要な演習パーツが揃った専用キットが多く販売されているのです。

これらのキットを使って学習することで、ラズベリーパイを体系的に学習することが可能となります。ここでは、初心者でも使いやすいラズベリーパイ専用キットを二つ紹介します。

ラズベリーパイ 学ぶ電子工作キット

ラズベリーパイに対応した部品は膨大にあり、一つの電子機器を制作する際も必要な部品をひとつひとつ探さなくてはなりません。

しかし、『ラズベリーパイ 学ぶ電子工作キット』であれば、電子工作に必要な部品は一通り揃っているので、自分で部品を探す手間が省けます。

LEDの点灯や点滅、RGBフルカラーLEDの明るさや色の制御など、いくつかの実験をすることができる便利な電子工作キットです。

  • 商品名:ラズベリーパイ 学ぶ電子工作キット
  • 価格:4333円(税込)
  • 楽天:販売ページ

ラズベリーパイ専用 学習リモコン基板

こちらはラズベリーパイを赤外線リモコンとして動作させることが可能となる拡張基盤です。基板には10個のスイッチが備えられており、外部赤外線の動作を記録することができます。

特設されたWebサイトには、家電からエアコンまで2500以上のリモコンコードが公開されているので、その中から自由に選択して自分だけのリモコンを作ることが可能です。さまざまなプログラミングを駆使して、毎日行っているリモコン操作を自動化することもできます。

こちらも必要な部品は一通り揃っているので、手軽にラズベリーパイを使って電子工作を学べるおすすめのキットです。

  • 商品名:ラズベリーパイ専用 学習リモコン基板
  • 価格:3939円(税込)
  • Amazon:販売ページ

ラズベリーパイについて学べる書籍

実際にキットを購入することなく、書籍でラズベリーパイを学ぶこともできます。

電子機器関連の知識がほとんどない人は、いきなり工作に取り掛かるよりも基本的な用語から操作方法まで詳しく書かれている、ラズベリーパイの入門書に目を通す方が理解しやすいです。

ここでは、ラズベリーパイについて学べるおすすめの書籍を2冊紹介します。

ラズベリーパイで電子工作入門ガイド

ラズベリーパイによる電子工作の入門書です。基本OSであるラズビアンのセットアップの仕方や簡単な操作方法が記載されています。

ラズベリーパイによる温度計や湿度計、扇風機やロボットなどの電子機器の作り方も分かりやすく解説されているので、初心者でも安心して読み進めることができるでしょう。

書籍で紹介された電子機器の工作の際に使用するパーツは安価なものばかりで、簡単に入手できます。初心者でも実践できる内容が書かれているので、楽しみながら読み進めることができるでしょう。

  • 商品名:ゼロからよくわかる!ラズベリーパイで電子工作入門ガイド
  • 価格:2894円(税込)
  • Amazon:販売ページ

人工知能を作る

こちらの書籍では、ラズベリーパイを使って人工知能(AI)を作る方法について詳しく書かれています。ラズベリーパイとディープラーニングのフレームワークの組み合わせによる実験を行い、その実験結果を詳細に記載しているのです。

こちらは、ラズベリーパイの基本的な内容を解説するというより、ラズベリーパイの応用的な使用方法について解説しています。ラズベリーパイの幅広い機能や役割を学ぶ際にはおすすめの1冊です。

  • 商品名:人工知能を作る
  • 価格:2808円(税込)
  • Amazon:販売ページ

ラズベリーパイを仕事に活かす方法

これまで紹介してきたラズベリーパイですが、さまざまなキットや書籍が発売されており、私たちにとって身近な存在になりつつあります。

コンピュータの入門として手軽に実験できることから、教育現場ではすでに活躍しているラズベリーパイですが、実際にラズベリーパイに関する知識やスキルを仕事に活かす方法はあるのでしょうか。

ここでは、ラズベリーパイを仕事に活かす方法について解説します。

案件はまだ少ない

ラズベリーパイを使ってできることは非常に幅があり、大学の研究室やさまざまなスタートアップの現場でラズベリーパイは活用されています。しかし、実際にラズベリーパイを使った仕事の案件はまだ少ないのが現状です。

ただ、ラズベリーパイの特徴として多くのプログラミング言語で作動させることが可能なので、参入は容易であることから、今後はラズベリーパイの案件が広がってくることが予想されます。

IoT市場の伸びとともに需要増が期待できる

ラズベリーパイはコンパクトかつシンプルであることから、各種センサーと組み合わせて多くのIoT機器を開発することができます。ラズベリーパイとIoT機器の相性は抜群なのです。

さらに、開発コストも安価なことから、IoT機器のプロトタイプを制作する際にラズベリーパイを使ってプログラミングする機会も増えてくるでしょう。IoT市場の伸びとともに、今後はラズベリーパイのノウハウを持った人材の需要が増加することが期待できます。

まとめ

コンピュータよりも大幅に小さく、買い求めやすい価格で購入できるラズベリーパイは、シンプルな構造ゆえに、プログラミングを学ぶツールとしてすでにさまざまな場面で活用されています。

さらに、IoT機器との親和性が高いことから、今後、日常生活においてラズベリーパイを活用した電子機器を見かけるケースが増えてくることでしょう。

テクノロジーのさらなる発展とともに、ラズベリーパイに関連する仕事も増加することが予想され、ラズベリーパイに関するスキルや知識を持ったエンジニアの需要が高まるでしょう。

もし、この記事を読んで少しでもラズベリーパイに興味を持ったのであれば、まずはラズベリーパイを購入して、実際に触れてみることをおすすめします。

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